吾輩はアトラル・カである。アトラル・ネセトになる予定はまだ無い 作:美味しいラムネ
シン・初投稿です
「あぁ、クソ、クソ!!」
怖い、あまりにも怖い。空の王者『リオレウス』の猛攻を必死に盾で受け止める。ガンランスの砲撃を何とか差し込もうとするが、まるで有効打になっていない。『フィオレセロベルデ』の鮮やかな色彩を湛えた盾が歪み、軋み始める。これが壊れれば俺は呆気なく死ぬだろう。
ドスランポスとか、少し大型なイャンクック、大変だったけどテツカブラだって狩ってみせた。でも...これはダメだ。
HR2とHR3の差。ハンターの大半は、一度ここで挫折する。どうして自分の何十倍もの大きさがあり、空を我が物顔で駆け回る竜を堕とそうなどと考えられるのか。上位ハンターや、それよりも上。MRやG級ハンターなんて想像もつかない。俺にとっちゃ、古龍と同じ、御伽話の存在だ。
今までは心強かった、テツカブラの甲殻が今では紙一枚にも満たない薄い存在に思える。
「旦那さんを離すにゃああ!!」
俺のオトモが必死にブーメランを投げているが、それを気にも留めない。
ああ、怖い。怖い。どうしてモンスター相手に挑み掛かれるんだ。俺は臆病なんだ。だから、盾を持った。ガンランスを持った。分厚い鎧を着込んだ。そして、故郷の辺境の村の専属ハンターになった。ここで俺が死んだら村はどうなるんだ。怖い。怖くて体が動かない。
そうだ、HR3への昇格の話はあったんだ。だが、あの時戦ったジンオウガが、あまりにも恐ろしくて。勝ち目がなくて諦めたんだ。
でも、そんな臆病な俺だから。
「ピギャアアアア」
──大丈夫?
黄金色が煌めく。陽光に照らされた外郭を、天使の輪の様な日輪が飾る。
大丈夫?とでも言いたげな声色で、手を差し伸べてくれた姫君に、憧憬を覚えたんだ。なぁ、どうしてお前は、「臆病者」の気配を感じるのに、そこまで堂々としていられるんだ?
♦︎♦︎♦︎
吾輩である。アトラル・カである。シャガルマガラは強かった。あれ、多分脱皮したてだと思うのであるが...異次元であるな、古龍は。
「ピギャアアアア(狂竜エネルギーの抽出...できれば便利なのであろうが、)」
これが如何せん難しい。環境汚染物質みたいなものだから下手な実験もできないというわけだ。高密度の狂竜ウイルスにゴア・マガラの体組織を晒すことで結晶の生成はできたが、そこからエネルギーを取り出して兵器転用するのが難しい。
とはいえ、何にも使えないわけではない。結晶を猛り爆ぜるブラキディオスの炉心に焚べることで生成されるエネルギー量は跳ね上がり、外装の性能も跳ね上がる。少し熱くなるのが問題だが。
あとは、ゴア・マガラの翼脚を使って製作した腕をいつものゲネル・セルタス型外装に取り付けておいた。シャガルマガラとの取っ組み合いで再認識したが、一度押し倒された後の引き剥がしが弱すぎる。やっぱ腕だな、糸と瓦礫で作る腕と比べたらよっぽど強度もある。ちゃんと鱗粉は洗い流したから普段使いも可能であるよ。バルファルクの翼脚と合わせたら翼4枚になって動きづらくないかって?そこは気合いで糸を操れば大丈夫である。自分の体より糸の方が動かしてる時間長いのが吾輩である。糸使いの技術なら誰にも負けない!
「ピギャアアアア(装備の見た目がどんどん禍々しく...)」
金の装甲に、キリン亜種とゴア・マガラの漆黒の装甲。なんか赤黒いオーラを放ってる(龍気)。キリンの毛皮とバルファルクの翼脚がなかったら完全に色合いガウェイン。ドルイドシステムでも積んでるのか?残念中身はポンコツ虫姫だ!誰がポンコツであるか。
あとはこれだな。
ビンの中に入った禍々しい丸薬。なんか、完全に作っちゃいけないものを作ってしまったマッドサイエンティストの気分であるよ。
『極限化の丸薬』
シャガルマガラとの戦いの折、一瞬だけ感じたあの全能感。擬似的な極限化ともいうべきあの現象を誘発する丸薬。怪力の丸薬や忍耐の丸薬を参考にして作ったコレは、まぁ封印であるな。一日に使って一個が上限か。効果が切れるとすごい疲れる。二個使った日には多分寿命が勢いよく削れる。後狂竜化しかねない。吾輩、死にたくないから戦ってるのに、それで死んだら大阿呆であるよ。目的と手段が逆転しているであるよ。
「ピギャアアアア(こんなもん持ってるのバレたら間違いなくギルドに...そういえば龍歴院に『狂竜身』とかいうイかれた狩技があった気が...)」
一方その頃、ハンターズギルドは、『ついでにアトラル・カ討伐してくれないかな』と思って送り出したハンターが普通に帰ってきて頭を抱えているのだが、そんなことは知る由もない。
閑話休題。こんな超兵器の数々を身につけている蟲が、人類を侵略したり他のモンスターを喰らい尽くして生態系を崩す訳でもなく、呑気にピザ窯を作ってピザを焼いているのだから驚きである。
「ピギャアアアア(大自然の中で食べるピザは格別であるなぁ)」
数十年後にこのポツンと置かれたピザ窯が発見され、「古代文明の遺構か!?」と騒ぎになるのだがそんなことは知ったこっちゃない。
ウォーミル麦で作った生地に、シモフリトマトとたっぷりのチーズを。やっぱりピザはマルゲリータであるな。焼き上げた後、上質なハーブを乗せて完成である。
あとは、ピザを焼いた窯を使って上質なアプトノスのもも肉を焼けば、石窯焼きこんがり肉の出来上がりである。
「ピギャアアアア(そういえば、あの神剣ハンター。いなくなる前にお土産に石窯焼きこんがり肉をご馳走したら、滅茶苦茶喜んでいたのであるな。...まさか見逃された理由って)」
団長、私の事呼び忘れてたからなぁ、と呟いていたことを思い出す。ハンターってやっぱりブラックなのか?
焼きたての熱いピザをハフハフとしながら食べる。寄ってきた数匹のメラルーにも分けてあげる。一人で食い切れる量じゃないからなぁ。
「ピギャアアアア(本当、メラルーはどこにでもいるなぁ)」
石窯で焼いたこんがり肉を食べようとした時、突然遠くから何かが爆発する音が聞こえる。何だ?...吾輩はまた飯を中断されるのか!?
「ピギャアアアア(申し訳ないであるが、メラルー達。その残った肉は全部あげるから、片付け頼んだであるよ!)」
間違いなく、人の悲鳴が聞こえた。ハンターか、商人か。
素早く外装に身を包み、木々の間をすり抜け、音のした場所へ辿り着く。
そこにいたのは、根本から折れたガンランスを握りしめた、今にも潰されそうなハンター。明らかに初心者、と言った様子だ。
「ピギャアアアア(馬鹿なのか、ハンターズギルドは!?どう考えても、新人にやらせていいクエストじゃないだろ!)」
ハンターにのしかかるのは、空の王者『リオレウス』。少なくとも、ぱっと見HR1か2の新人にやらせていいクエストじゃない。
リオレウスを追い払い、死にかけていたハンターに回復薬グレートを飲ませる。
「ピギャアアアア(大丈夫であるか?少年)」
「いててて...」
根本から折れたガンランスを支えに何とか起き上がる。致命的な傷は受けていないようだ。よかった。それにしても、ギルドは一体何をしているのだろうか。
「って、モンスター!?」
ハンターの顔が恐怖で引き攣る。
ま、そうなるであろうな。じゃあ、吾輩はお暇させてもらうとするか。怖がられても悲しいだけだし。ガタガタと震えるハンターを尻目に、立ち去ろうとした吾輩のことを、小さな手が掴む。
「ま、待ってくれ」
「ピギャアアアア(何であるか?)」
「教えてくれ、どうやったらあんたみたいになれるんだ!」
...はい?
♦︎♦︎♦︎
「なるほど...これが噂の操竜技術か!!」
多分違うんじゃないかな?
ワイヤーを使った即席の罠を製作しているハンターとそのオトモを眺める。
別に暇だったし、放っておいたら死にそうで放っておけなかったしで稽古をつけることになった。2、3日なら暇だしいいかなって。吾輩の評判も上がるだろうし。
どうもこの少年、辺境の村の専属ハンターらしい。まぁ、この近くに都市がある雰囲気もなかった。都市からハンターが派遣されてくるまで村を守るハンター、と言ったところか。
一般人からすればドスランポスは疎か、ランポスすらも脅威だ。そういった畑や家畜を荒らすモンスターを狩る、と言った小さなクエストでも、それを出来る彼は歴とした村の守り手なのだろうな。
言葉は通じないから、オトモの通訳を挟んで吾輩の動作を見よう見まねでやってもらうことになるが、流石ハンターというべきか、なかなかに筋がいい。ハンターというかレンジャーとかゲリラの戦い方な気もするがそこは気にしない。
「
吾輩の狩技を見よう見まねで真似る少年を見る。まぁ、当然これは狩人の技だし彼の方が習得は楽であろうな。師匠。吾輩も師匠になったよ。
「なるほど、攻撃の瞬間に一瞬だけ鉄鋼身を発動すれば!」
え、何その変態技術。知らないんだけど。怖...
「自分は臆病者だ」と相談してきたが、あれの何処が臆病者なんだろうか。重装備だから?盾持ちだから?馬鹿らしい。仮に吾輩が人間の体だったら、どんな古龍の鎧に身を包んでいてもモンスターと戦うなんて嫌であるよ。
アトラル・カ。その身体能力は自然界では下の方とはいえ、人間よりは上だ。それに、便利な糸もある。
それに比べて、人間の体で前に出ている時点で十分勇敢だと思うのであるがなぁ、気にしすぎであるよ。美味い飯でも食って寝てろ。多分疲れてるんだ。吾輩そんなこと一度たりとも気にしたことないよ?
「
臆病な方が生き残りやすいし。何だったかな、テオ・テスカトルの如き強さと、タマミツネの如き狡猾さが云々だったか。自分が死ぬのが怖い臆病者だからこそ、一番大切な自分の命を守るために必死に何でも出来るのである。まぁ単純に楽しいからってのもあるけど...
「臆病でもいい、か...」
盾に守られていないと安心できない。それが普通である。現実で双剣使いとか操虫棍使いとか、正気じゃやれないであるよ。
...あれ?今まで出会ってきたプロハンはほとんど正気じゃないってことにならないか、コレ?
「旦那さん、やっぱりこの蟲、おかしいんじゃないですかにゃ...?サポート行動も覚えてるし、狩技も使えるし...」
「まぁ、古龍ならそういうこともあるだろ。おとぎ話でよく言われてるじゃないか」
吾輩古龍じゃないんだけどなぁ。
♦︎♦︎♦︎
日も暮れてきた。「そろそろお仕舞いだね」と言いたげな目線を、金色の姫は送ってくる。「そうだな」と俺は答える。
なんかこう、一生涯の運を使い果たした気がする。あのままだったらリオレウスに食い殺されていた気がする。
「あぁ、クソ。長年連れ添った相棒ともお別れかぁ」
折れたガンランス、加工屋のおっちゃんに行ったら治してもらえるかな。予備は昔使っていたアイアンガンランスがマイルームにあるけど。
大自然も捨てたもんじゃない。誰かに相談したなんていつぶりだろうか。何いってんのかわかんないけど。ピギャアアアアしか聞こえてこないし。
「もう少し、踏ん張ってみるか」
──頑張れよ、少年
そう言われた気がした。
姫に感謝と別れを告げ、村の方へ歩く。
村を守ろうと思ってハンターになったんだ。
(リオレウスなんて一度も見たことがなかったんだけどな...)
予備の武装であるハンターナイフを装備し、なるべく戦闘を避けて村への帰路に就く。
そうやって、村が見えてきたとき。
「全員逃げろ!!!オストガロアだ!!!」
いつだって、平和は突然崩れ去る。
感想、評価、誤字報告などありがとうございます!大変感謝しています
「少年」って呼んでくるお姉さん好き。なお外見は虫。
オストガロア戦、導入です。いつもこんな感じで人助けしてるよーっていうモデルケースです。
次はハンター目線のif掲示板でも書くかな?それとも素直に続き書くか
次の番外編で使うかもしれない(エイプリルフールでつかうかも)
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掲示板if②
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擬人化if
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vsアルバトリオン