吾輩はアトラル・カである。アトラル・ネセトになる予定はまだ無い   作:美味しいラムネ

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主人公が空気な初投稿です



吾輩はアトラル・カ。怨嗟の慟哭/狩人の咆哮

 

 

 ある意味では、この村は運が良かったのだろう。

 海に流入する河川に面したこの辺境の小さな村。数十年前に一度あった海からの魚竜種の襲撃の経験があり、海からの脅威に備えて大枚を叩いて購入した望遠鏡による偵察が行われていた。

 また、村長が定期的にくる商人に追加で金を払い、ハンター向けの情報誌を購入していたこと。これが命運を分けたといってもいいだろう。

 

「あれは、あれは...古龍種『オストガロア』。はるか彼方の村を一個丸ごと捕食し、一人を除いて全員喰らってしまった化け物や」

 

「村長!...それって」

 

「あぁ。猟に使われる、旧式の銛を飛ばすだけのバリスタだとか、大タル爆弾で何とかなる相手やない...幸い、少し森の方に入れば、数年前まで保管庫に使っていた洞穴がある。あの大きさじゃあ入れはせんやろ。多少の備蓄もある」

 

 村長の家の中に暗い雰囲気が流れる。村を捨てて逃げるしかない、それは覚悟していた。こういった辺境の村は、このような事態に備えて備蓄の分散はしている。しかし、オストガロアの噂が本当なら、それもあまり意味はない。

 

「...あまりこういうことは言いたくないが、奴の進行速度的に、我々の避難が完了するより、奴が追いつく速度のほうが速い」

 

 見張り番の男がいう。村の専属ハンターほどではないにしろ、一人で「ドス」がいないランポスの集団ぐらいなら何とか出来る実力者だ。そんな彼のいった言葉だ。全員の雰囲気がさらに暗くなる。

 

「全滅を防ぐために、全員でバラバラの方向に逃げるか?」

 

「それで生き残ってどうする。一番近い都市にたどり着くには数日じゃ済まないぞ」

 

 会議は踊る、されど進まず。生き残る方法、どうすれば一番多く生き残れるか。そして、この情報をどうやって他の村に伝えるか。最善手を導き出せ。でないとここら一帯は全滅だ。

 

「他の大型モンスターを引き付けて、かち合わせるのは?」

 

「無理だろうな」

 

 バン、とアイアンガンランスを持った少年──この村の専属ハンターが立ち上がる。

 

「...俺が殿を務める」

 

 何かを決意した目で少年は言い放つ。

 

「無茶だ!確かにお前は一番強い、だが、幾ら何でも無茶だ!」

 

「そうよ!貴方一人なら逃げ切れる!そうして逃げ延びて、都市に情報を伝えて!私たちを無駄死にさせるな!」

 

「俺たちだって、ハンターではないが狩人だ。荒波の中魚を狩り、獣を狩って村を支えてきた。多少は戦える。数分は保たせてみせるさ」

 

「いや、俺が勝てないこと前提で話すなよ。相手は古龍だ。流石に一人じゃ逃げきれない。皆が逃げ切れる時間を稼げるのは俺だけだ。他の奴じゃ、数秒も保たない」

 

「でも、それだとお前が」

 

「知ってるか?臆病者は、自分が死なないために命を燃やすんだよ。ここで皆を置いて一人で逃げたら、このあと死にたくなる。だから俺に任せろ」

 

 あ、その代わり備蓄の罠や武器、火薬は全部使わせてもらうけどな、と冗談めかして笑う。

 

「『気炎万丈』って奴やな...月刊『狩りに生きる』に書いてあったわ。...全部、お前に任せる」

 

「村長!専属ハンターとはいえ、こいつはまだ若い!それをみすみす見殺しにするような真似を!」

 

「じゃあ他にどうしろっていうんや!他の誰も、古龍相手には一分と持たない。多少なりとも可能性があるのはアイツだけなんや。それに、儂含め他のやつは、何人いても邪魔にしかならない。──すまん。村の命運、託したぞ」

 

「任せろって。大丈夫、大丈夫。いい感じに時間稼いだら俺も離脱するから。オトモもいるし」

 

「旦那さんとボクに任せろですにゃ!」

 

「それに、俺はこの村最強のガンランサーだぞ?」

 

 そのガンランスを握る腕はカタカタと震えていた。怖いのだろう。当たり前だ。虚勢なのだろう。それでも、その目には覚悟の焔が灯っていた。

 

 

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 

 HR2で古龍と対面か。やっぱ運使い果たしたな、俺。

 俺とオトモ以外誰もいなくなった村の中心に一人立つ。教官、彼女が魚竜種みたいな顔をしている話ばかりしていた教官。俺古龍の狩り方なんて教わった記憶ないけど頑張るよ。

 もう一人。短い間だったけど、師匠だったモンスターの姿が脳裏によぎる。師匠、なんとかして生き延びます。

 

「見えてきましたにゃ、旦那さん」

 

 村に狙いを定めた双頭の骸龍を視界に収める。

 

「ごめんな、お前だけでも逃げていいんだぞ?」

 

「地獄でも何処でもオトモしますにゃ!僕は旦那さんのオトモですからにゃ!」

 

 本当、いいオトモだよお前は。

 武者震いが止まらない。いや、普通に怖いだけだな。死にたくないな。なんでこんなことしてるんだろ!本当に!!!!

 母ちゃん。俺、今から神話に挑むよ。古龍。ハンターになった今でもまだ御伽話の存在だったよ。それに今から挑むんだ。

 

「じゃあ...一狩り行こうぜ!」

 

 心を奮い立たせろ。ここまで準備ができた狩りは初めてだ。こんな有利な条件で戦えたことがあったか?

 オトモに指示した地点まで移動させ、自分はオストガロアを見据える。

 村の近く。ある距離まで近づいた瞬間。近くに置いておいたボーンシューターから1発の弾丸を放つ。それは水面に機雷のように浮遊していたバクレツアロワナに命中し、その爆発に釣られて誘爆するように他のバクレツアロワナやカクサンデメキンも爆発する。

 

「これが漁村の戦い方だよ!」

 

 上流からオトモが大タル爆弾を流しまくり、それが大きな骨の甲殻に命中する。ガノトトスだろうと大ダメージを喰らう火力の集中。

 

「やっぱあんま効いてないか...!」

 

 多少甲殻は削れるが、まるで怯む様子はない。進行速度はまるで変わっていない。むしろ、「イキのいい獲物を見つけた」と言わんばかりに双頭が蠢く。

 村の前に壁のように設置した、先端の尖った丸太の防壁がいとも容易く薙ぎ倒される。瞬間、足元に転がっていた球体を踏み潰したことで、中から毒煙と麻酔の煙が溢れる。

 

「確か師匠はこうやって...!」

 

 指先に結んだ糸で、屋根に取り付けた6門のライトボウガンから弾丸を発射する。さらに、駆けつけたオトモが爆弾を投げつける。

 面倒だ、とでも思ったのか。オストガロアの動きが止まり、ただの餌だった俺が、迷惑な羽虫ぐらいには格上げされたのを感じる。

 

「おっと、いいのか?そこにはキレアジで作った撒菱がたっぷりだぞ」

 

 甲殻に阻まれていない柔らかい部位に刺さったのか、苛立たしげにオストガロアが双頭を振り回す。

 

(妙だな...あれ、頭だよな?それにしては動きが妙というか...)

 

 ライトボウガンごと家々が薙ぎ倒される。瞬間、家の壁に塗られていたネンチャク草の影響で、家々がその双頭を地面に押さえつける。

 その怪力で、数秒もせず張り付いた重しは粉微塵になるが、その一瞬で頭部目掛けて弓を構える。

 

「弓なんて初めて使うんだけどな...!」

 

 つがえたのは、矢ではなく「ランス」。火薬を塗りたくったそれをつがえる。あまりの重さにギチギチと嫌な音が鳴り、ランスを放った瞬間に弓が破損する。

 さらに、次の瞬間には地面に埋まっていた打ち上げタル爆弾が勢いよく頭部に命中する。

 

「げっ」

 

 双頭から赤黒い龍属性の光線が放たれる。流石に喰らったら死ぬと悟り、落とし穴を意図的に起動して、その中に飛び込みやり過ごす。

 次の瞬間、オトモが放った猟用のバリスタからネットが放たれ、双頭を絡めとる。

 

「よくやった!」

 

 勢いよく落とし穴から飛び出し、ガンランスを双頭に向けて構える。

 

「竜撃砲だッ!」

 

 火竜のブレスの如く放たれた灼熱は、ネットごと双頭を焼き切り、()()()()()()()()()()()()

 

「がっ」

 

 破壊したはずの頭部が...再生した?

 いや、違う。これは頭じゃない!そういうことか!あまりの衝撃に口から血が溢れる。薬で治しても後1発くらえば死、だな。

 

「あぁ、糞!生きて帰れるのかね、俺!」

 

 毒が効いた様子はない、か...

 ケムリ玉をばら撒き、自身も真っ白な外套に身を隠す。

 

「今度はかくれんぼの時間だ!少し付き合っていけよ」

 

 家の間からボウガンによる弾丸が鬱陶しい。地面に埋め込まれた大タル爆弾を気付かずに踏み込んだことで、腹を衝撃が揺らす。

 勇猛果敢な闘士(ストライカー)の戦い方ではない、誉れ高き武士(ブシドー)の流儀でもない。あるもの全部使って、古龍を押し留める。サバイバーの戦い方。

 

 村の8割が更地になろうかという頃。

 オストガロアは苛立たしげにハンターを睨む。僅かにだが、動きが鈍ったように見える。家の中に置いておいた生肉や魚の塊。その全てが毒を持ったもの。いわば大量の毒テングダケを摂取した状態だ。

 

「あー、死んだわこれ。死にたくねー」

 

 下位の、ちっぽけなハンターにしては健闘した方だろう。村の住民は全員避難場所へ辿り着いた。一度ではあるが、その双頭を破壊した。そこらのハンターじゃ、それすらも出来ずに死んでいただろう。

 だが、その健闘ももう終わりだ。鎧は砕け、オトモも遠くで気絶している。

 ガタガタと震え、涙を流しながらガンランスを構える。

 

「今の俺、最高に英雄じゃね?まぁ俺栄誉とかどうでもいいんだけど、それよか命の方が大事なんだけど」

 

 ハンターの突撃を、オストガロアは受けるのではなく避けた。食らったところでダメージはない。別に怖くも何ともない相手だ。しかし、『こいつは何かしてくるかもしれない』。その考えが刷り込まれていたのだ。碌なダメージも与えてこない羽虫が、何故かずっと食い下がってくる。理解不能な性質が、オストガロアに回避行動を取らせた。

 実際、砲身には猛毒が散布され、ニトロダケも塗りつけられていた。全弾発射の後、オーバーヒートの熱を利用して自爆する算段であった。

 全力の突撃を躱され、よろめいたハンターにオストガロアの口が迫る。

 

 喰らってやらなければ気が済まない。

 そうして噛みつこうとして──火薬の匂い。毒の匂い。変な匂い。

 

 もう、いい。もう沢山だ。こいつを食べようとしても何も得をしない。あの爆発。胃の中で起きたら大変だ。毒もそうだ。もっと大きくて美味い肉は他にいる。例えば、百獣の王ライオンがわざわざ、毒を持った蠍や蜂を好んで食すだろうか。自分の腹を満たすこともできず、その癖一丁前に毒なんか持ってる奴らを。

 捕まえるのが簡単で、それでいて色んな味がして。男、女、大人、幼児、老人に。筋肉質なやつと脂肪がたっぷりなやつで味も違う。人間を食べるのはそこそこ楽しめるが、こいつはだめだ。もう食べる気分じゃない。捕まえるのが大変で、その癖不味い。

 

 オストガロアは腹いせに村を更地にして、おまけにハンターを触腕で掴み、地面に叩きつけてから河へと去っていく。

 最後に、気力を振り絞ってその背中にペイントボールを当てる。何処まで追ってくれるかはわからないが、俺よりもっと強い、本物のハンターが何とかする時に役に立つだろう。

 

「あー、死んだわコレ」

 

 意識が朦朧としてきた。全身が動かない。骨、滅茶苦茶になってるだろうな。まぁ、これでみんな生き残ってくれるだろう。

 死ぬのは嫌だ。でも、誰も死ななかった。俺は臆病者だからな。後悔して死ぬのって怖くね?

 

「ハンターが、呆気なくモンスターの胃の中に入って死ぬんじゃなくて、最後に誰かを護って死ねるってさ、後悔なく死ねたってさ、割と及第点では?」

 

 意識が消える寸前、誰かが俺の体を引きずる感覚があった。あぁ、あいつか。猟師のおっちゃん。なんで来ちゃうかなぁ...?ここで俺以外が死んだら台無しだろ?

 

「絶対、絶対死なせねえからな。村の英雄」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 

 吾輩である。アトラル・カである。

 ここの生態系、何か変...?何かに怯えるように、生態系の頂点に位置するような、捕食者側のモンスターが大移動を始めている。飛竜ぶっ殺しゾーンでもできているのであるか?森が普通に魔界である。

 

「ピギャアアア(古龍でも来ているのであるか...?)」

 

 森が騒めいているのを感じる。あのハンターは大丈夫だろうか?この状況、少し不味いのではないか...?

 少しだけ、気になってしまう。こう、何かが痞えている感覚。

 

「ピギャアアア(村...まぁ、川沿いにあるのが定番であるが。水って大事だし)」

 

 とはいえ、手掛りもない村をどうやって探すか...まぁ、そのうち見つかるだろう。そう呑気に考えていた。そう──あの薄らとした龍属性の軌跡を見るまでは。

 

「ピギャアアア(...は?)」

 

 龍属性を使うモンスター。パッと思いつく奴らは全部、駆け出しハンターになんとかなるやつじゃない。上がっている煙も、完全に人為的なものだ。ジンオウガ亜種にイビルジョー、あとオドガロン亜種と色々終わってる面子しか出てこない。生態系が崩れた原因としては納得の強さを持った奴らだ。

 

「ピギャアアア(対龍属性...実は複属性でした!とか言われなきゃ大丈夫...!)」

 

 そうして、駆けつけた時には全てが終わっていた。

 更地になった村。飛び散る血痕。骨の破片に、青っぽい粘液。あぁ、アイツだ。

 

「ピギャアアア(...オストガロア、であるな)」

 

 外界に通じる河。条件は満たしている。

 だが、ハンターは何処へ?血痕がポツポツ、と続いているのを辿る。

 

 その先にあったのは、洞窟。その前に寝かされているのは、あの時のハンター。

 

「くそ、こんな時にモンスターが!」

 

「死ぬ気で守れ!これじゃあ、こいつが何のために死んだかわかんねえ!」

 

 死んだ?倒れ伏すハンターを眺める。

 いや、死んでないな。まだ、吾輩なら全然間に合う。こんな辺境の村にあるわけもない、か。

 

 『いにしえの秘薬』。流石に、色々教えた弟子が死ぬのは、寝覚めが悪いとかの次元越えてるのであるよ。

 

「あ、おい!何をする!」

 

 勝てないと分かっていながらも、止めようとする村人を、優しく押し留める。

 

「ま、まつにゃ!ソイツは多分、旦那さんを治そうと...!」

 

 あぁ、オトモはなんとか無事だったか。頭に包帯を巻いているところを見ると、頭を打って早々に意識が飛んで、おかげで生き残った感じか。

 糸を伝わせて、いにしえの秘薬を飲ませる。骨折が酷いため、暫くは動けないだろうが、これであとは安静にしていれば死なないだろう。

 

「...どうして、モンスターのあんたが?...いや、もうそんなことはどうでもええ」

 

 理解不能なことが起きたという顔で怯える村人たちを後ろへ下げ、村長と呼ばれる壮年の男が前に出る。

 

「ありがとう、村の英雄を救ってくれて...!」

 

ピギャアアア(礼は、後に取っておいて)(まだ、礼を言うのは早いであるよ)」

 

 オストガロア。こいつがまたいつ来るかわからない。それじゃあ吾輩の旅は台無しだ。それに、ここでオストガロアをなんとかしなければ、生態系は滅茶苦茶なままだ。そうなれば、傷も治りきってないのにこのハンターは動こうとするだろう。

 

ピギャアアア(依頼、出して。村長)(依頼を出すであるよ。報酬は...まぁ、この村とっておきのもんでも食わせてくれればいいのである)」

 

「村長、このモンスターは!」

 

「...くははっ!モンスターが狩人気取りか!すまない。見ず知らずの人...いや蟲に頼るのはあまり良くないということはわかっている、だが」

 

 任せろ!任された!吾輩に任せておくであるよ!こんなやつ放っておいて、楽しく生きれるわけないであるよ!

 

 短い期間だったけど、お前は弟子だったんだ。吾輩に任せてあとは寝とけ。

 

 後に、村長は語る。

 『あれこそが、竜の頂点。竜の姫君だった』と。龍に臆することないその後ろ姿は、高貴な者のソレを思わせたと。

 







感想、評価、誤字報告などありがとうございます!大変感謝しています。

かっこいいガンランサーが書きたかった。


クエスト名:『X XX(トリプルクロス)

メインターゲット:オストガロアの討伐
サブターゲット:無し
失敗条件:一回力尽きる

遠く、遠く離れた村の話。その村は、一人を残して全員が奴に喰われたそうだ。儂らは、一人のハンターのお陰で喰われることはなかった。
村は消えた。積み上げた歴史も、その全ては奴に喰らわれる所だった。たった一人の英雄が、全てを掬い上げた。自分を犠牲にして。
女王よ、歴史を積み上げる者よ、英雄を奪った骸の龍に鉄槌を。儂らの友人の仇を取ってくれ。

追記:いや、俺のことまるで死んだみたいに書くのやめてくんない?

次の番外編で使うかもしれない(エイプリルフールでつかうかも)

  • 掲示板if②
  • 擬人化if
  • vsアルバトリオン
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