吾輩はアトラル・カである。アトラル・ネセトになる予定はまだ無い 作:美味しいラムネ
まだ土曜日の24:40なので初投稿です
「ピギャアアアア(滅茶苦茶疲れた...しかも怠い...)」
ペシャリ、と溶けかけのアイスのようにぐったりと骨の大地に倒れ込む。オストガロアの剛力により半分近くは捲れ上がり、石の大地が見えている。
あの瞬間、オストガロアの瘴龍ブレスが放たれる寸前。本来なら、吾輩の槍よりもコンマ1秒ほどオストガロアの瘴龍ブレスの方が速く放たれる筈だった。
──間に合わないっ...!いや、まだだ!
咄嗟に取り出した蝕龍カートリッジ。対生物特攻である蝕龍の力でオストガロアの体を包む粘液を破壊し、そこに狂竜の鱗粉を送り込むことでその刹那の有利を逆転させた。
全てを出し切り、瀕死だった状態だからこそ、刹那の時間だけ通用した干渉。この時点で、二者の攻撃が衝突するタイミングは同時となった。つまり、相打ち。ブレスが吾輩の体を破壊するのと、吾輩の槍が体内からオストガロアを爆散させる、それが同時に起きる筈だった。
この時点で、衝突まであとコンマ2秒。オストガロアはこの刹那に割り込む手段を探し、見つけた。自身の触腕にこびりついていたラギアクルス希少種の素材を破壊し、残滓である以上低威力ではあるものの雷速の一撃を齎し、再度先の先を取ろうとした。
「ピギャアアアア(死ん──いや、まだだ!)」
生き残るために、命を燃やせ。自分の命を守るために、命を燃やせ。
その瞬間、声が聞こえた気がした。誰かに心臓を抱きしめられた気がした。──私の元へ、堕ちてきなさい、と。
極限化の丸薬を使った上で、さらに大量の狂竜ウイルスを吸い込んだことで身体のリミッターが外れる。甲虫種としての生物的限界を超えた加速が、オストガロアの心臓を貫き、爆発の衝撃で大きくその体を上に向けたことで、洞窟の天井を貫きながら、全生命力を乗せたブレスが放たれた。
「ピギャアアアア(生き残った...あぁもう!疲れたであるよ。本当に)」
本当に、ハンターって、人間って凄いなぁ。短い期間だったけど、弟子だったアイツ。こんなデカくて強いやつに、自分を臆病者だと卑下してた奴が立ち向かったんだもんなぁ。しかもおかげで大切な人達は守れたのであろう?
ハンターの中でも最上位の者達は、よくもまぁあんな小さい体で立ち向かおうと思えるであるよ、本当に。
「ピギャアアアア(体が動かないであるよ...滅茶苦茶に怠いし体も痛い)」
限界を超えた反動は、いつだって辛い。
しばらく、寝転がって空を眺める。光の粒が空へ昇っては消え、黄昏時の赤い空に吸い込まれてゆく。
オストガロア、お前もまた強敵であった。似たもの同士、いつかは吾輩も誰かに喰らわれて死ぬ事になるのだろうか。因果応報って蟲にも適応されるのであるか?
薄い黄金色に輝く粒に手を伸ばす。綺麗だな、と思う。
「ピギャアアアア(...お腹減ったな)」
何とか起き上がって、モゾモゾと鍋と食材を取り出す。流石に今日は動けそうもない。少し休憩していくか。
鍋に火をつけ、イャンクックの骨から取った出汁で千年米を炊く。炊いている途中でウチケシの実の殻を剥いたものを混ぜ、炊き上がる直前に刻んだ各種薬草を入れる。ついさっき狩ったばかりの新鮮なイカの足を茹でて塩で味付けしたものを添える。薬膳粥って奴である。
「ピギャアアアア(冷静に考えると、この骨まみれの場所で飯食べるのって精神衛生上よろしくないのでは...?)」
お粥を啜りながら、ふと思う。ちなみに味は「多分体にいいんだろうな」って味がする。ウチケシの実ってさ、美味しくないのであるよ。
残ったオストガロアの触腕は...まぁスルメにでもするか。古龍の干物を食べたことがある蟲は世界広しといえども吾輩だけであろうな。
ダンスパイスを混ぜたマヨネーズにつけて食べたら美味しいであろうな。ビールが飲みたくなるのであるが...ホップって何処かに自生してないであるかなぁ?
粥を食べ終え、ゴロンと横になる。わざわざ古龍の住処に来るのなんて、ハンターか同じ古龍ぐらいだろうからな、実際ここで寝るのは正解だろう。
その夜、妙な夢を見た。
誰かに優しく抱き止められているような感覚。白い翼が目に入る。ついこの前、戦ったばかりの相手だ。シャガルマガラが、吾輩の体表を引っ掻くようにして撫でてくる。少し痛い。爪を突き立てながらぎゅ、と抱きしめてくる。だから少し痛いって。
吾輩を撫でながら、遠くに向けて何やら狂竜エネルギーを放っている。「こっちを見るな」、と言わんばかりに。
赤い雷鳴が轟いた気がした。
その向こう側では、巨大な烏賊の化け物が、ブラキディオスに殴られまくって背負った骨を砕かれ、バルファルクの彗星のごとき突進に貫かれ、哀れ爆散している。
いや、本当に何なんだこの状況は!
「ピギャアアアア!ピギャアアアア!(いや何なんだこの状況は!...夢か)」
もぞり、と起き上がる。変な夢を見た。叫んだ瞬間、内容は忘れてしまったが。アトラル・カ。吾輩さぁ...疲れてんだよ。空を見上げる。正午はとうの昔にすぎていそうであるな。半日以上は寝た、ということか。
「ピギャアアアア(そろそろ報告しに戻るか。依頼主に報告は義務であるからな)」
モンスターに依頼を出した村長は、後にも先にも彼だけであろうな!
♦︎♦︎♦︎
「おい、おい!村長!アイツ帰ってきたぞ!やりやがった、アイツやりやがったよ!!!」
村の跡地を越え、その先の臨時の避難所にたどり着く。
弓を持って入り口を見張っていた男が、吾輩に気づいたのか大声をあげる。
「
これが人なら、にこりと笑いかけていたのだろう。人間の少女のような、その雰囲気を見て、見張りはそう感じた。しかし、そこにあるのは異形の、理解し難き表情だ。むしろ、恐怖さえ感じさせるような、そんな表情だ。
「帰って、帰って来れたんか...無事に...!」
村長が駆け寄ってくる。信じられないものを見たという表情で、吾輩の前で膝をつく。
「あの後、後悔しとったんや。あんたは村の英雄の命の恩人や。そうやのに、死地に送りこんじまって...ありがとう。村を...いや、この地域を守ってくれて。本当に、よく無事に帰ってきてくれた...!」
こらこら、仮にも村の最高権力者がそう簡単に頭を下げるんじゃないであるよ。勝手にやった事だし。吾輩モンスターよ。そう簡単にホイホイと信頼していいものじゃないと思うのであるが。
「ちょ、ハンターさん!まだ安静に...!」
ドタドタという音と共に、見覚えのある顔がヨロヨロと洞窟の壁に手をつきながら寄ってくるのが見えた。
「師匠...!俺」
「
こいつ絶対HR2じゃないよなぁ。本当にそう思う。吾輩がお前だったら多分立ち向かってそのまま食われて胃の中だろうしなぁ。
近寄ってきた村人達に、オストガロアの討伐の証に相応しい、その首を見せる。
「見ろ。彼女の...姫の勝利だ!儂らの村は、助かったんや!!!」
村人達の歓声が聞こえる。
うむ。嬉しそうで何よりである。命が助かった時が一番嬉しいからなぁ。古龍に怯えての生活とか想像もしたく...あ、日常だった。
♦︎
この世界の人間は、随分と力強いであるなぁ。手伝おうかとも思ったけど、簡易的な住居がもう立ち始めている。
「まぁ、ここみたいな村は、基本的にいつ大型モンスターに襲撃されても大丈夫なように備蓄は分散してるし、簡易的な住居ぐらいならいつでも建てられるように準備してるからなぁ。なんか、俺が生まれる前に一度、ラギアクルス亜種に襲撃されて、その脅威が消えるまで隠れて建て直したらしいし」
まぁ、この世界の支配者って地球と違って人間3割モンスター7割ぐらいのノリだからなぁ。いつでも村が崩壊してもいいように用意ぐらいはしているか。ミラにアルバに、禁忌じゃなくてもジーヴァにシャガルにアマツにほぼ禁忌のダラ。うん、いつでも人類滅べるね。怖。吾輩が生きる世界があまりにも脆いという事実を知った吾輩はSAN値チェックであるよ。狂気点が4点になって発狂しちゃう!
「その時にさ、村人が逃げる時間を稼ぐためにラギアクルスを食い止めたのが、俺の爺ちゃんなんだよ。...爺ちゃんがモンスターに殺されたって聞いて、モンスターが怖かったけど。同時に憧れもしたんだ。だから村人を守りたいって、臆病者なのにハンターになってさ」
母ちゃんには止められたけどな、とハンターは笑う。
「貴女のお陰だよ。少しは、”憧れたハンター“の姿に近づけたと思う」
いや、吾輩がいなくても元々お前はハンターであるよ。そもそも、普通の奴だったら、リオレウスに襲われた時点で心が死ぬ。でもお前の目は死んでいなかった。
「
ところで、オトモアイルーがずっと通訳しているけど、これちゃんと伝わってるのかなぁ...?
♦︎
満点の星空の下。魚の焼けるいい音がする。
「報酬はこれって話やったからな。あんたが帰ってくる前に、気概のある漁師が数人行って釣ってきたんや。オストガロアから逃げてか、逆に浅瀬の方に割と魚が居たらしいんや」
いや、普通は短時間でドスダイオウカジキを釣ってくるのは無理だと思うのであるよ。モンスターサイズの巨大なカジキの丸焼きを頬張りながらそう考える。
他人が作った飯は美味いであるな!あと、酒がうまい!洞窟を冷蔵室代わりに保存していたからか、たまたま無事だったらしい。
「
「あぁ、そんな話聞いたことあるにゃ。...何で知ってるんだにゃ?」
キレアジの刺身をつまみながら海を眺める。もちろんヒレは取り除いてある。砥石代わりにできるようなヒレ、食べたら喉切れちゃうであるよ。まぁ吾輩鉱石だって食べるのであるが。海といえば、シーブライト鉱石はなかなか美味であるよ。
定番のサシミウオに、ハリマグロの干物。美味しいであるな。報酬としては充分であるよ。金もらっても、師匠に頼んで買い物してもらう以外に使い道ないし...
早速復興が進み始めた村を眺めながら、その奥を透かすように海を眺める。満月が水面に反射して、光の道が海にできている。
何を考えるでもなく、ぼーっと月を眺めていると、見張りをやっていた男が、慌てた様子で駆け込んでくる!
「ハンターズギルドだ!ギルドが来るぞ!!!」
初めは、何故こんなに見張りが慌てているのか村人はわかっていない様子だったが、ハンターと村長の言葉で、はっと気づく。
「「まずい、彼女が狩られてしまう!」」
と。
♦︎
大規模な龍属性エネルギーの解放。それを感知したハンターズギルドは、古龍の仕業であると仮定。近隣にいたG級ハンターを含めたハンターのパーティを派遣する準備の傍ら、先遣隊として観測船を派遣。その中で、例のアトラル・カの影を発見。
その情報を得たハンター達が、ちょうど村に到着しようとしていた。
(古龍がいるにしては、普通すぎる。やっぱ、情報にあったエネルギーの放出は、絶命時のものって事だな)
「あー、村長。ギルドから派遣されてきたハンターなんだが...なんかでかい、骨を着たモンスターが来たはずだ。どうなった?」
「うちの専属ハンターが、決死の覚悟で撃退した。その後は知らん。どこか行ったよ」
んー、まぁ嘘だろうな。撃退の事は本当だろうが、その後だ。確実に何か知っている。というか、あんなでかい気配を見逃すわけないだろ、俺が。今なら狩れる。けどなぁ。
村人は隠そうと、守ろうとしているわけだ、そのモンスターを。オストガロアから村を守ってくれたそのモンスターを。
要は、俺たちギルドが間に合わなかったのに、そのモンスターが理不尽から救ってくれたってわけだ。
「なるほど。いやまぁ、知らねえなら仕方ねえか。大方、他の古龍か、もしくはキレたイビルジョーあたりに想定外の反撃されて逃げ帰ったんだろうな?なぁ?村長」
エスカドラ装備に身を包んだ男が、村長に同意を促すように言う。
いやぁ、ギルドとしては、狩った方がいいんだろうが。
それをこいつらは望まねえだろ。それに、だ。この村とあの村を置き換えて考えてみろ。そして、オストガロアとナバルデウスを。
「しょうがない。知らないならしょうがないな。ま、そうだな。オストガロアが戻ってくるかもしれないしな。1週間ぐらいここに残ってから、住処の探索でいいだろ。後ろのお前らもそれでいいだろ?」
他の3人のハンターにそう話しかける。
いや、これで1週間経ってもまだこの辺りにいたら流石に面倒見きれねえからな!?
感想、評価、誤字報告などありがとうございます!大変感謝しています!
最後のハンターは、世界の最上位帯だからアトラル・カくんちゃん割とピンチだった。あそこにいたのは本当にたまたま。
シャガルマガラ、無性だけどある意味両性と言えるわけで。今作のあの個体は女性的に描いてるけど。アトラル・カは雌な訳で。あれ?業が深いな?
今話、途中でアルバトリオン差し込もうかとも思ったけど土曜日のうちの投稿が間に合わなくなるって悟って没になりました
次の番外編で使うかもしれない(エイプリルフールでつかうかも)
-
掲示板if②
-
擬人化if
-
vsアルバトリオン