吾輩はアトラル・カである。アトラル・ネセトになる予定はまだ無い 作:美味しいラムネ
神域からの初投稿です
月が赤く染まる。
空に蒼い星々が瞬く。
大気は赫に侵され、
悉くを破壊する古の力は現れん。
地脈は乱れ狂い、役者は出揃った。
さぁ、始めようか
古の『運命の戦争』の再現を──!
♦︎
先手を取ったのは、ネルギガンテだった。
その圧倒的な暴力を直接ぶつけようと前足でジーヴァを組み伏せ、もつれ合うようにして押し倒しながら、至近距離でその全身の棘をぶつける。
ネルギガンテは、何も古龍専門の捕食家ではない。本来なら、吾輩も捕食対象であるはずだ。しかし、目の前のジーヴァの方が、内包するエネルギーが圧倒的に多い。故に、吾輩は見向きもされない。いや、むしろ利用されている。
だが、それは吾輩も同じこと。利害が一致したこの状況。今は互いに味方同士、精々合わせるとするのである!
古龍同士の衝突のエネルギーにより、爆発的に金剛棘が炸裂する。それに対抗する様にして、ジーヴァは自身の胸から圧倒的な炎のエネルギーを解放──それはまるでヘルフレアの様な──する。
吾輩の方にも飛んできた金剛棘を盾でいなしながら、拘束から脱しようとするジーヴァの体を拘束弾で束縛し、地を這うようにして回転する刃を背中に叩きつける。
あの取っ組み合いに付き合っていたら体が保たないのである!ならば、少しでもネルギガンテが戦いやすいように、吾輩はサポートに徹するのである!
耐久性の高いワイヤーで拘束されたジーヴァの姿を見たネルギガンテは勢いよく飛び上がる。一瞬の視線の交錯。理解した。
踠くジーヴァの頭部に、ティガレックス風の竜機装を突きつける。爆音と閃光、劇毒と麻酔、睡眠毒に、新しくホロロホルルの混乱音波を追加した波状攻撃が、ジーヴァの思考を奪う。
さらに、地面に縫い付ける様にしてその飛膜を発掘装備で貫く。
無防備な状態になったジーヴァ目掛けて、ネルギガンテの急降下突進が炸裂し、同時に全身に金剛棘が突き刺さる。
そして、棘のうちのいくつかは、近くの水晶柱に突き刺さる。
「ピギャアアアアア(お膳立てありがとうなのであるよ!本命は...こっちであるよ!)」
根本がボロボロになった水晶柱を、糸で無理やり倒し、ジーヴァをその下敷きにする。直径30mは超える太さであるが、吾輩の糸を舐めるなよ!ネセト動かせるんだぞこのヤロー!
まだまだ、押しつぶされたジーヴァ目掛けて追撃の手は緩めない。大砲、バリスタ、速射砲に罠の数々。火竜車に狙撃竜弾なんでもござれ。
龍結晶を粉々にする勢いで放たれた破壊力の中、反応がないジーヴァ目掛けてネルギガンテが突撃し、ボロボロになった翼を無理やり抑えつける。
太い骨がバキバキと折れる嫌な音がする。
苦し紛れにはなった圧縮ブレスが天を薙ぎ、遠くの崖が崩落する。
もしかすると...このまま勝ててしまうのではないだろうか。流石ネルギガンテであるな。
ネルギガンテは何を望んでいるかを察し、取り出したシャガルマガラ、クシャルダオラ、テオ・テスカトルの人形とともに押さえつけられた翼を握りしめ、そのまま根元から引きちぎる。
見たことのない色の体液が溢れる。古龍の血とも違う。これは一体...?
「Graaaaaaaaaaaaiaaaa!」
痛みから逃れようと、暴れるジーヴァの体がチカチカと発光すると、周囲に雷のエネルギーが放たれる。それを無理やり全身で押さえつけたネルギガンテは、何度も何度もジーヴァの体を殴りつける。
圧倒的な破壊の化身。再生を繰り返す棘はその鋭さを増し、ジーヴァの外殻と肉をズタズタに引き裂き、千切り、砕き続ける。
いや、ネルギガンテ怖いのであるよ!?何この容赦のなさ、攻撃力の高さ!?でも...ジーヴァは、
ついに両方の翼を失ったジーヴァは、何度も押し倒されながらも、自らもネルギガンテの棘を喰らって...いや、待て。
待て待て待て。吾輩の想像が正しければ、これは...不味い。不味いぞ。
「ピギャアアアアア(手を緩めるな、ネルギガンテ!!!さっさと狩らないと、手遅れになるのである!)」
ネルギガンテもそれを理解したのか、自身の体を使った一番の大技をジーヴァ目掛けてぶつける。その直後、吾輩も龍と他の属性を掛け合わせる大技、擬似再現したエスカトンジャッジメントをぶつける。
「ピギャアアアアア(あー、はいはい。成る程)」
ジーヴァは、その変態の途中で無理やりこの世界に生まれ落ちた。
故に、現在進行形で、成長を続けているのだ。
失われたはずの翼が新たに生える。その鱗は、ネルギガンテの様に逆立ち、背からは、吾輩の糸と対照的な、白銀の糸がふわふわと揺蕩っていた。
生命の危機に瀕し、成長は加速する。
その肉体はより強固に。自らの肉体をあえて破壊させることで、その後の超回復を誘発する。本来ならば、世代を重ねて行われるはずの進化が、一瞬にして完了した。
「ピギャアアアアア(おま、おまっ破滅の翼じゃないんだからさあああ!!!形態変化が許されるのはRPGだけ...そういえば吾輩もある意味形態変化してたのであるな)」
ぴしゃん。音が遅れてやってきた。
振るわれた白銀の糸は、僅かに吾輩たちを逸れて、背後の山を薄く削り取るに終わった。
...出し惜しみして勝てる相手じゃないことは分かっているのである。が、これ。黒龍でも通じるかどうかわからないのである。
一か八か。例え目の前の龍が、禁忌の領域へ至っていようとも。全身全霊を以って立ち向かうのみ。越えられない試練は無いのである!絶対に生き残ってやるからな、吾輩は!
「Graaaaaaaaaaa!」
「Ggyaaaaaaaa!」
「ピギャアアアアア!」
咆哮が響き渡る。
白銀と金色の糸が互いに絡み合い、星空の下で瞬く。その中でネルギガンテはがむしゃらにジーヴァへ突撃を続け、その棘をより研ぎ澄ませてゆく。どちらの根性が先に尽きるのか。古龍同士、意地と意地のぶつかり合い。
ネルギガンテが爆発的に広がる棘をぶつければ、呼応するようにジーヴァの鱗も弾け飛ぶ。が、無理な進化が祟ったのか、表皮からは血が溢れる。
ジーヴァ目掛けて、ポンっという小気味良い音と共に滅竜砲の炎が放たれ、追撃する様に蝕龍の力を加えられた龍属性のレーザーが放たれる。
「Graaaaaaa!」
全身を焼かれたジーヴァは苦悶の声を漏らすが、その生命力に限りは見えない。
寧ろ、どんどん増している様にさえ思える。凄絶な生命力の発露。いっそ芸術品とさえ思えるほどに美しい。
ただ、どこか、危うさも感じる。線香花火が、最後に最も美しく輝くように、燃やしてはいけないものまで燃やしてしまっているような。
また、進化が始まった。その翼は異常に発達し、ゴア・マガラの様に腕が生える。黒龍の見た目をした外装に取り付けられた黒蝕竜の腕と、ジーヴァの腕が掴み合う。
「ピギャアアアアア(離れろ!撃龍槍っ!)」
腹から、龍結晶と狂竜結晶で構成された穂先を保つ撃龍槍が三発放たれる。臨界した粘菌と鬼火を纏ったその一撃は、ジーヴァの膝を砕き、一瞬だけ体を地面につかせる。
瞬間、ネルギガンテがジーヴァの背中に飛び乗り、その背中を引き裂く様に棘で薙ぎ払う。
ジーヴァがその首を180°回転させたかと思うと、ネルギガンテの腹目がけて圧縮されたブレスを放つ。
腹に圧縮されたエネルギーを叩き込まれたことで、ネルギガンテの体が宙に浮き上がる。そこ目がけて、何度も何度もブレスが叩きつけられる。それが触れた大地は一瞬で溶解する。
ゴグマジオスを思わせる威力の熱線。これでもまだ未完成なのだろう。それが、恐ろしい。
「ピギャアアアアア(つけ入る隙があるとすれば...恐らく正気を失っていること)」
牽制に放った武器が弾かれる。ネルギガンテを援護しようと殺到した狩人人形が次々に撃破される中、ナルガクルガ人形に乗った弓使いが、その脳天に矢を穿った。
「ピギャアアアアア(頭部に直撃した程度じゃ堪えないであるか...)」
ネルギガンテを振り払った突進を、ディノバルドの剣尾で辛くも受け止める。お返しにリチャージの終わった滅竜砲をぶちかます。
だめだ、半端な威力じゃ再生される。古龍数体分に匹敵するエネルギーを内蔵した体は、滅竜砲や撃龍槍程度の威力じゃ瞬時に再生される。
無論、完全に再生されるわけでは無いが、超過分で削るのは時間がかかりすぎる。
どこかの廃墟を構成していたであろう尖塔を次々に投擲し、燃え盛る丸太が空からガラガラと降り注ぐ。対龍地雷を踏み抜いたのか、足下が爆散するが、硬い外殻に阻まれて部位破壊にまでは至らない。
ネルギガンテ、お前も理解しているだろう。
『どちらかが囮になって、最大火力をぶちかます』
それ以外に勝ち目はない。
月が朱色に染まる。
龍気充填。いつでも行ける。覚悟はとうの昔に終えている。極限化の丸薬を飲み込み、体が全能感に満たされる。もう何も怖くない!
ジーヴァが目を見張る。
目の前の餌が、防御を捨てた。今出会ったばかりのはずなのに、生まれた時から一緒だった姉妹の様な連携で、制御された暴風をぶつけ続けてくる。
腕を使い、四つ足を使い、糸を使い対応する。おかしい、何故こいつらは、こんなにも無謀なことをする?曇った思考は理解を拒む。
ほら、いくら棘をぶつけようが、鋭い金属をぶつけようが、無駄だというのに。
鬱陶しい狂竜の力が再生途中の体を焼き、死に損ないの炎王龍は、番の敵討だと言わんばかりに体を壊しながら爆炎を放ち続ける。
自爆覚悟の攻撃。互いの攻撃で互いを傷つけながらも、奴らは、迫ってくる。
刺々しい方が引いた。龍の衣に身を包んだ女王が、何かを準備している。ここまで熱気が伝わってくる。
曇った思考は、直近でより危険な方に注意を向けてしまう。
否、残った理性が警鐘を鳴らす。女王は囮だ、本命は...!
「Graaaaaaaa!」
背後から迫っていた、全ての力を込めたネルギガンテの左前足による渾身の一撃を受け止める。やってやった。最早抵抗する力など残っては...
空から、何かがくる。
── 打ち上げタル爆弾が飛翔し、内部に秘めた鉄片が甲殻の下に突き刺さる。
「ピギャアアアアア(なぁ、なんであの瞬間、大した威力もない打ち上げタル爆弾を放ったと思う?)」
背中に、炎王龍の最強の一撃にも似た衝撃が走る。
数個、ジーヴァの体をそれて、天に登って行ったタル爆弾があった。
「ピギャアアアアア(戦いながら、作っておいた試作品...炎王龍の鱗粉を大量に使った、地対地打ち上げタルミサイル...ってところであるかな?)」
「ピギャアアアアア(さて...ぶちかませ、ネルギガンテッ!」
反撃を喰らい、頭部を露出させたアトラル・カが叫ぶ。その甘い反撃が、致命の隙となる。例えその爪が体に食い込み、血が流れようとも、激痛に苛まれようとも。絶対に離すものか。
背中への衝撃と、アトラル・カの拘束により動けなくなったジーヴァの胸目掛けて、ネルギガンテの全身全霊の一撃が炸裂する。
──そういえば、全力の一撃にしては、やけに簡単に吹き飛ばされたな。そうか...力を込めていたのは、右の脚の方...
胸骨を砕かれ、心臓付近の内臓が露出する。
その痛みで、曇った思考がクリアになる。あぁ、何故こんなにも飢えているのかが、わかった。私の役目は──成体になれなかった、幾千もの屍を超えて、この世界にジーヴァの力を刻みつけること。そのためには、力が必要だった。エネルギーが足りなかったんだ。
生き残って、繁栄すること。この地に流れるジーヴァの遺伝子が、語りかけてくる。
生き残るのは、私の方だ!邪魔を、するなッ!
「ピギャアアアアア(お前がこれでもまだ死なないことは知っていたぞ!)」
囮ではなかった。どちらも、本命だったんだッ!
劫火の熱が、ジーヴァの鱗を溶かし、肉を萎縮させ、ちぎれかけていた腕を炭化させる。飛びそうな意識を繋ぎ止める。まだだ、まだ終わらない。
「ピギャアアアアア(ほとんど死に体だろ、お前...!)」
唯の雫では駄目だ。
続け様に放った二つの雫を掛け合わせる。目に映るもの、全てを灰燼に帰す。これが私の最後の反撃だ。これが通れば勝ち、通らなければ、死ぬだけ!
おいおい、マジであるか。
ジーヴァの口元で形成されてゆく、蒼い星を見る。
あれは出させたら終わりだ。
咄嗟に翼脚を構え、炉心に接続する。反動も考えると、この体勢から撃つと、当たるかは5分といったところか。
「grru…」
ネルギガンテが、吾輩の体をがっしりと掴んだのを感じた。あぁ、確かに。これなら当たる。
星から溢れ出る衝撃により、ぱきん、パキンという音と共に外装が崩れ始める。吾輩の甲殻にヒビが入り、どうやらネルギガンテの棘も砕けているようだ。
炸裂する前から、この威力。
止められなければ、死が待っているな。
「ピギャアアアアア(さぁ、星墜としと洒落込もうか!)」
龍気の吸引音と共に、翼脚と炉心に龍気が充填される。
放たれた一条の光線は、星を貫き、そのままジーヴァの胸を貫く。心臓は砕け、自身の口元で炸裂した雫は、ジーヴァの頭部を砕いた。
♦︎♦︎♦︎
地面に倒れ伏し、空を眺める。
天に向かって、ジーヴァの力の残滓が登ってゆく。蒼い光が、蛍の様に輝く。
ネルギガンテはというと、ジーヴァの尻尾をガジガジと齧っていた。あ、呑み込んだ。
「graaaaa」
正当な報酬だ、と言わんばかりに残った肉を渡してくる。吾輩は後でいいかなぁ。しまっておくのである。
本当、よく生き残ったよ、吾輩。
周囲を見渡すと、折れた水晶柱、崩れた崖、崩落した山など。どれだけの相手と戦っていたのかがよくわかる。
テオ夫妻が削り、ネルギガンテが追い詰めた。それで漸く手の届く範囲まで堕ちてきた。正真正銘化け物であったよ、奴は。
外装を仕舞い、水をガブガブと飲み干す。こっそり金剛棘も回収しておく。
ネルギガンテの方はというと、ジーヴァの肉を食べて満足したのか、吾輩を襲うつもりは無いようだ。
あぁ、疲れた。
月が綺麗だ。赤い、綺麗な...まて、月は、こんなにも赤かったか?
一瞬でも、反応が遅れていたら絶命は免れなかった。
「ピギャアアアアア(おい、おい...嘘だろ、巫山戯るなよ!!!!)」
悠々と空で佇むのは、神域の主。ソレがいる場所は、常に神域になるという。
煌黒龍『アルバトリオン』。
瞬時に理解する。
生命としての格が違いすぎる。勝てるわけがない、と。
自身の
だから、これはついでだ。目に入った虫をついでに追い払ってやろうと、そう思っただけ。悪意などない。ただ、運が悪かっただけだ。
「graaaaaaaaa!!!」
ネルギガンテ...お前は、こいつ相手にも立ち向かえるというのか!
そうか...あぁもう!
「ピギャアアアアア(やってやろうじゃないか!禁忌だろうが関係ない!吾輩はなんとしても生き残ってやる!)」
蒼い星がそれを見て「気に入らないな」と呟いた。
感想、評価、誤字報告などありがとうございます!大変感謝しています。
アトラル・カが水着姿でビーチバレーしている姿を見た研究者はSANC1/1d6+1です。
というかお前は水着でどこを隠すつもりなんだ。
ついでに古龍三体の人形を持っているのを見たギルド上層部もSANC0/1です。
次の番外編で使うかもしれない(エイプリルフールでつかうかも)
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掲示板if②
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擬人化if
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vsアルバトリオン