吾輩はアトラル・カである。アトラル・ネセトになる予定はまだ無い   作:美味しいラムネ

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 お久しぶりの初投稿です
 今回は少々短いです。申し訳ないです。


吾輩はアトラル・カである。これ以上力を解放すると吾輩はアトラル・ネセトになってしまうのである!

 

 

 

 意識が沈む。角、折ってやったのであるよ...はは...ここまで頑張ったのであるがなぁ。

 禁忌という理不尽な存在に嬲られて死ぬのか。偶然生き残って、強大な存在に恐れをなし、息を潜めながら生きるのか。こんな結末、認めるものか。

 

 一生このまま、負けたままで生きたくない。

 アルバトリオンよ、魅せてやる。女王の狩りというものを。

 

 お前に、勝つ。

 

 

 どれぐらい、意識を失っていたのだろうか。

 

 人間の脳には、リミッターが設けられている。

 自身の振るう力によって自滅することを防ぐため、最大でも20〜30%の力しか出せないようになっている。これは、人間だけではなく、この星の通常の生物であれば誰もが持っている。

 

 何かと何かが戦う音が聞こえる。

 

 ハンターのような存在は、比較的そのリミッターが緩いという研究結果が出ているが、それでも精々が60%前後。リミッターを超えた力の解放は、それだけで危険である。

 怒り喰らうイビルジョーや、極限化した生物、最近発見された『キュリア』の影響を受けた生物などは、超えては行けないリミッターを超えた生物と言って良いだろう。

 それでも、80%かそこらだと言われている。

 

 では、もし仮に90%を超えて、文字通り生物としての限界の領域に踏み込めばどうなるのだろうか?

 ある狩人は、こんな言葉を残した。『これ以上解放すると、俺はジンオウガになってしまう』、と。過ぎる力の解放は、人を獣に堕とす。

 

 女王の瞳が、開かれる。

 

 「────」

 

 「へぇ?」

 

 撃ち合っていた煌黒龍と、蒼い星が思わず動きを止める。

 限界を超えた力の解放。その先に待っているのは──暴走だ。複数回にわたる極限化。自身よりも圧倒的に格上の存在に命を狙われる極限状態。そして、眼前に迫る死を否定する足掻きが、意識を失った女王の体を無理やり起き上がらせた。

 

 命を繋ぐために、命を燃やすと言う一見矛盾した行為。どんな強靭なモンスターであれ、瀕死になれば足を引きずる。どんな強靭なハンターであれ、強力な一撃を貰えば倒れることもあるし、気絶もする。

 生存本能などと言いながら、生物はどこかで生を諦める。諦めて、自身の生を奪う存在に席を譲る。大人しく捕食される。限界を越えればまだ足掻けるのに、足掻くのを止めるのが普通。苦痛から逃れることを何処かで優先してしまう。それが、世界の理であった。

 

 

 「pigyaaaaaaaaaaaa!!!!」

 

 

 バインドボイスが脳を震わせる。

 自我を失い、理性を失い、残ったのは『知恵』と『兵器』だけ。

 

 しかし、世界の超越者たる1人と1匹は、警戒により、動けなかった。理性なく振るわれる超兵器の恐ろしさを、一瞬で悟ったのだから。

 

 「────!?」

 

 アルバトリオンが吠えると、氷が壁のように展開される。同時に、狩人はハンマーを盾のように構えた。

 次の瞬間、勢いよく回転するアトラル・カを中心に竜巻じみた暴風が発生し、周囲を撃龍槍が回転した。

 

 (いや、狩りに生きるで読んで知ってるけどさぁ...竜巻旋風撃の技じゃん、あれ)

 

 アイルーがやれば可愛らしい竜巻が発生するだけのサポート行動。それを成すのが大型モンスターになっただけでこれだ。

 暴風に巻き込まれながら無差別に暴れ回る撃龍槍を避ける。

 

 次の瞬間、竜巻を解除した女王が、地面に腕を叩きつけると、そこから放射状に地割れが発生し、そこから狂竜のエネルギーが放出されると同時に、その流れに乗って鬼火と鱗粉がばら撒かれる。

 

 

 ──撃龍×狂竜鱗粉爆破×大鬼火怨み返し×スーパーノヴァ

 

 音が消え、空間全体が爆風に飲まれる。熱い、なんて生易しいものではない。感覚が肌から消え去るほどの爆炎。前転をしつつ、アルバトリオンの方を見た狩人が見たのは、爆風の勢いを利用して切りかかる女王だった。

 

 それを好機と見た狩人は、壁を蹴って加速し、流星の如き速さで煌黒龍の全身を殴りつけながら、思う。

 

 (正気は...なさそう。これ私認識してねえな。偶々連携にはなってるけど...)

 

 アルバトリオンの顔面にビンが叩きつけられる。その中に入っていたのは、ヴァルハザクからこっそり採取していた、濃密な瘴気。

 流石に面食らったのか、嫌そうな声を出して放たれた雷は、アトラル・カの体を掠め、そこから体液が溢れる。

 

 「p…pgyaaaaaaaaaa!!!」

 

 ラオシャンロンの頭骨をそのまま使ったハンマーがアルバトリオンの胸を叩くと、衝撃に耐えかねたハンマーの柄が吹き飛ぶ。アルバトリオンの方は、羽虫でも集っているかのように苛立たしげだ。

 

 (まぁ、圧倒的格下が無限に食い下がってくるわけだ、イライラするだろうけど...)

 

 狩人の方は、少し見守ることにしたのか、離れた位置へ跳んで、見守っている。動作を理解しなければ、邪魔になりかねないと判断したのだろうか。

   

 吹き飛んだ頭骨が、瓦礫の大山と結合し、山のように巨大な龍を形成する。『老山龍』ラオシャンロンの如き瓦礫の人形が、アルバトリオンの体を踏みつける。

 何度も豪雷が撫でるうちに、巨体はあっけなく破壊されるが、すぐさま新たな人形へと組み替えられる。それを阻止しようと放たれる攻撃は、分厚すぎる瓦礫の山に阻まれる。『砦蟹』シェンガオレン型のソレは、長い腕をムチのようにしならせ、何度もアルバトリオンを叩きつける。

 

 「すっごいねえ、本当。ただのモンスターとは思えないな」

 

 今度は、巨人の如きグロテスクな口を持った生物、『浮岳龍』ヤマツカミへ変貌し、石臼の如き巨大な歯で、アルバトリオンの頭を噛み砕こうとガチガチと歯を鳴らす。

 瓦礫で構成された体から、ボロボロと細かい破片が落ちる。

 

 (そろそろ止めた方が良いかな?)

 

 それを操る女王の体からは、緑色の体液が流れている。明らかに限界以上の力を発揮しないと操れない人形だ。体が崩壊するのも時間の問題だろう。

 

 (大団長の言ってた言葉の意味がよくわかるね...この子は、あまりにも異質すぎる。禁忌以上に表に出ちゃいけない存在でしょ。ほんと、現大陸は何をやってるんだか)

 

 とはいえ、アルバトリオンの乱入。これはいただけない。気に入らない。今回限りは見逃そうかな、なんて考えて武器を抜こうとして──すぐに思い直し、地面に落とし穴を設置して、即席の塹壕として中に飛び込む。

 

 狩人としての危機探知能力がそうさせたのだ。

 

 

 既に、試作品や没兵器も含めて殆どの兵器を出し尽くしたアトラル・カではあるが、一つだけ、使っていない兵器があった。

 不安定な上に、未完成。相手に与えるよりも自分が受けるダメージの方が多いため、使わずに封印された最終兵器。

 

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 

 ある日のこと。

 吾輩はアトラル・カである。臨界した粘菌、吾輩はこれにはまだまだ可能性があるのではないかと思っているのである。

 

 「ピギャアアア(例えば圧縮して...あっ)」

 

 少し弄ろうとした瞬間、爆発。変に加工しようとするとすぐ爆発しようとするのである。あぁ、隣に放置していた絡繰ヨツミワドウ人形が爆発四散した!!!

 

 うーむ。しかし、やっぱり可能性を感じるのであるよ。粘菌から漏れるこの謎の液体。一瞬で気化して消えている訳であるが、何かに使えそうである。バゼルギウスの爆腺液と混ぜれば安定したり...もっと酷くなった!!!遠くであっためてたお弁当が消し炭になったのである!吾輩のポポノタン弁当が!!!!

 

 この時作った不安定な液体。実験を重ねる中で、高圧下でのみ液体として安定する物質であるとのちに判明した。ガンランスやスラッシュアックスの機構を利用して製作した、加圧装置の中だと、安定するのである。判明するまでに何十回かは爆発で死にかけたのである!

 

 で、まぁこれを使えばある兵器を作れそうな気がするのであるが...自爆、威力が不安定、そもそもこれが必要なレベルのモンスターにこんな単純な兵器が効くのかが微妙と言う点で凍結であるな。そもそも持て余しそうだし。

 

 その後、龍気やら狂竜ウイルスやらもっと便利で強力な素材を手に入れたことですっかりアトラル・カの脳みそからソレは抜け落ちていた。

 その結果、研究は全く進まずに今日に至るまで凍結されてきた。

 

 一か八か、理性を失った女王は、その兵器の封印を解除することにした。

 

 『気化タル爆弾』。ソレが、この兵器の名前である。

 アルバトリオンを飲み込んだヤマツカミ人形の中に投げ入れられたソレは、衝撃で割れた。

 タル内部に圧縮されていた液化爆薬は、瞬間的に体積を膨張させ、酸素と混ざり合い───

 

 

 瞬間、瓦礫の龍は消滅した。

 半径10mの酸素を一瞬にして燃やし尽くし、3000度を超える高温が周囲を満たす。衝撃波が周囲のあらゆるものを薙ぎ倒し、巻き上がった粉塵は巨大な雲を作った。

 

 仮にこれを通常の生物が喰らえば、まず高熱により全身に酷い火傷を負うだろう。仮に高熱に耐えたとしてもついだ衝撃が防御の上から全身を破壊する。それさえ耐えたとしても、酸素玉でも使わない限り、最後には燃焼による真空、それによる肺の破裂が待っている。

 

 「─────」

 

 アルバトリオンは、女王のことを睨みつける。

 目の前の存在が出せる威力など、高が知れる。そう思っていたが、違った。

 大タル爆弾にして約1000個分は有に超える威力の放出を喰らい、流石に無傷とはいかなかったようだ。

 角を折られ、そして己が身に通用するレベルの兵器を運用している存在。角を折られた直後は、感心が勝っていたが──駄目だ。明確な脅威だ、目の前の存在は。

 

 「あっついなぁ、もう」

 

 人里に打てば、そこが地図から消えてしまいかねない攻撃ではあるが、この場にいるものは全員耐え抜いている。

 

 この威力の攻撃を出すことができる。これで、英雄や禁忌が住まう世界のスタートライン。ただ、逆に言えば──アトラル・カは、遂にその領域に脚を突っ込んでしまったと言えるだろう。

 

 本人は意識がないため、気づいてはいない。しかし、貧者の核爆弾の衝撃は、たった一工程でアルバトリオンにダメージを与えた。

 無論、至近距離での直撃だったと言うこともある。油断しなければ直撃を喰らうことはない。そうなれば、ダメージはないだろう。そのことを考えると、普段は他の兵器の方が便利だと言える。しかし、煌黒龍からすればそんなことは知ったことではない。

 己が身を容易に傷つける手段を、眼前の蟲が獲得した。そのことが問題なのだ。

 

 パラパラと降り注ぐ灰の下で、か細い咆哮を上げる蟲を、煌黒龍は見下ろす。

 仮に彼の龍に、人と同じような思考があれば、唯の竜の身でありながらそこまで極めたと言う事実に、賞賛を送っていたことであろう。天晴れだ、貴様のことは忘れないだろう、と。

 

 自爆紛いの自身の攻撃で、ボロボロになったアトラル・カが起き上がる。時を同じくして、気絶していたネルギガンテが起きあがろうとしている気配を感じる。

 

 まだ、やる気なのかと超越者たちは思う。

 

 「でもまぁ...これ以上は死ぬよ。暫く眠っときな」

 

 がん、と女王の後頭部をハンマーが叩く。理性を失っていた女王の瞳が、ふっと光を失い、眠りにつく。

 

 「さて、と」

 

 「本当なら、この娘。見逃しちゃダメなんだろうけど、今回のメインターゲットはアルバトリオン。君だ」

 

 狩人の周囲に、氷界が創りだされる。

 先ほどまでは、2匹を巻き込む可能性があって使えなかったスキルだが、今ならその力を万全に発揮できる。

 

 空気の層を割る音を出しながら、その体は加速して、アルバトリオンの体を穿った。

 2体の勇士が眠っている側で、神話の戦いが再び地上に降り立った。

 

 

 

 

 

 

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 吾輩である。アトラル・カである。

 

 「ピギャアアア(体が痛い、お腹減った、喉が渇いたのである!)」

 

 目が覚めたのであるが。マジでどうなってるのであるか???

 

 荒れ果てた周囲。謎のクレーター。使った覚えのない兵器。放置されたアルバトリオンの角と鱗。で、周囲には誰もいない。ネルギガンテもどっか行ったのである。なんか肌寒いし。吾輩裸になってるし*1。え、本当に何があったのであるか?

 

 空を飛んでいるラフィノスを眺めながら、思う。...記憶飛ぶまで飲んだ時と同じ感覚がするのであるよ。

 

 

 誰か...誰か吾輩に何が起きたのかを説明してくれ!!!とりあえず黒龍外装が外に漏れたかだけでも!!!!!あとアルバトリオンどこいったのであるか!!!

 

 「ピギャアアア(吾輩なんか変なことしてないのであるよな???大丈夫であるよな???)」

 

 記憶が無いって、恐ろしいのである!!

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
外装が破壊されただけ






 感想、評価、誤字報告などありがとうございます!大変感謝しています。
 次回こそ掲示板回にしようかなって思うけどネタどうしようかな...

 Q.気化爆弾って?
 A.あぁ!貧者の核爆弾だったり宿儺のアレだったりピンク髪のお姫様には効かないあれだったりするやつですね。

 Q.W(IB)主人公の性別は?
 A.決めていないので想像にお任せします

 

 

次の番外編で使うかもしれない(エイプリルフールでつかうかも)

  • 掲示板if②
  • 擬人化if
  • vsアルバトリオン
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