吾輩はアトラル・カである。アトラル・ネセトになる予定はまだ無い 作:美味しいラムネ
まだ10月110日なので初投稿です
アマツマガツチが去ったのは、何も恐れをなしたからでもなく、興味を失ったからでもない。
近づいてくる「ソレ」を警戒したまでだ。嵐には届かない暴風なれど、傷ついた状態では分が悪い。そう判断しただけ。
戦慄く神解。百竜夜行は終わらない。
今のカムラは魔境である。
炎王龍が、鋼龍が、爵銀龍が、嵐龍が、そして『百竜ノ淵源』が集った。遍く生物の頂点に君臨する王者たちが、惹かれ合うようにして集まった。
そして、その災禍の只中にいる蟲の名を聞いて、誰もが頭を抱えた。『特異個体』アトラル・カ。まるで英雄たちのように、只人であれば一度さえ越えることが叶わない死地を越え、その度に成長する人理の冒涜者。人の知恵を嘲笑う、金色の女王...とかなんとかギルドから呼ばれている存在である。別にそんな大仰な存在ではないとは本人談。
古龍への対応で精一杯なところに、態々やってきた。その高い知能から推定するに、技術を奪いに来たか?
初めて確認された地方は、カムラ周辺だ。その当時は、廃棄された兵器を再利用するしかなかったが...今の実力なら充分だと判断して襲撃を狙っている?
あの共鳴現象...自身と波長の合う相手を求めてカムラへ来た?
祖龍にとっての彼女のように。...あの子だけではなく、新たな巫女を求めて?あれは龍ですらないのに?
古龍観測所、龍歴院、ギルドのお歴々が考えても答えに辿りつかない。それも当然だ。
件のアトラル・カは、何も考えていないのである。
人間に匹敵する高度な知能を持った竜だから、何か目的を持って行動している。──そんなわけがない。人間の全ての行動に意味がある訳ではないように、アトラル・カの全ての行動に意味を求めてはいけないのである。
そしてそんなアトラル・カは、里帰りをしていた。自身の意識が目覚めた地へ、折角だし戻ってみようと思ったのだ。
そこが、地獄よりも地獄な惨状になっていることなど知らずに──
同時刻、カムラの里にて。
ヒノエが、頭を抱えながら、苦しそうに言葉を漏らしたと言う。
「女王が、来る」
♦︎
吾輩である。アトラル・カである。アマツマガツチの奴め、勘弁して欲しいのであるよ。お陰で半年分ぐらいの疲れがどっと溜まったのである。...本当に半年経過してないよね?*1
落ちていた鱗やら素材やらを拾っても収支マイナスである。にしても本当に水餃子みたいなヒレであるなぁ。
量的に見れば収支マイナスであるが、古龍の素材っていうのは使い道が色々あるのであるよ。他の一般素材と比べると壊れにくいし。
アマツマガツチの素材といえば、やっぱり天衣無崩である。ところでこれどういう仕組みで発動しているのであろうな。作った吾輩にも分からないのであるよ。というか古龍の素材なんて大半ノリと勘で扱うぐらいが丁度いいのである。
クシャルダオラの素材と、天廊で拾った小型の吸引装置で風を増幅する機構を作成、小型のバックパック型にして新型竜機装の完成である。風を纏うアトラル・カである。一度攻撃を受けると、風を増幅するのに時間がかかるのであるが、風を纏っている間は盾として使えるのである。あとは風に乗ることで疲れ知らずで動き回れるのであるよ。
機構を、頑丈なコスモライト合金とブラキディオスを始めとした堅いモンスターの外殻で覆えば完成である。ちょうど背負う形になるため、背中からの強襲の時には盾になってくれるであろうよ。
まぁ、吾輩の警戒を掻い潜って奇襲できる相手にこの防具が意味あるとは思えないのであるがな!
後は、超強力な風を発生させる機構さえ組み込めれば、理論上は龍風圧だって出せるはずなのであるが...どこかにイブシマキヒコの死体でも落ちていないのであろうか。ちなみに現段階でも瘴気の鎧は纏えるのであるよ。既に培養は完了しているのである。ただ、下手な場所で使うと生態系破壊してしまうので封印指定装備行きであるが。死を纏うアトラル・カとか言われたらどうすればいいのであるか?*2
それにしても、最近激闘続きすぎるのであるよ。世界が吾輩を殺しにかかってきているのである。吾輩古龍ですらない一般的な竜であるよ?そういうのは師匠とかネルギガンテとかの仕事である。
激闘続きな所為もあって。普通のモンスターの素材で作った昔からの武器がどんどん壊れていって、規格外の武器やら古龍素材の兵器ばかりが残っていくのである。武器の蠱毒かな?どんどん数や種類は増えていくのであるが、それ以上に壊れたり没になって死蔵される種類の方が多いのである。
例えば自走する巨大車輪に大量の大タル爆弾をくくりつけた兵器とか、三輪型の大型火竜車とか。前者に至っては没兵器として封印していたはずなのに何故か使われた形跡があるのであるよ。*3
こうして、今まで作った兵器の整理をしながら、ついでに手慰みに簡単な兵器を作りつつ思ったことがあったのである。最近の吾輩は怠惰ではないか、と。
今までありえない程の強敵と戦ってきながら、吾輩は高みを目指す努力を怠ってきたのである。精神的に向上心が無いと大自然に殺されてしまうのである。最近、そこそこ強くなったせいで、吾輩は弛んでいたのではないか、と。生態系ピラミットの中では吾輩単体だとリオレウスにも劣ることを忘れてはいないか、と。アルバトリオンから生き延びたし割となんとかなるのではないかと少し弛んでいたのである。
アルバトリオンとの戦いの時、思い知った絶望を忘れたか。そう、あの──火力不足を思い知らされたあの一瞬を。全てを注ぎ込んで、角がせいぜい。虎の子の気化タル爆弾があるとはいえ、あの様子じゃ使っていたとしても効いていたか怪しい。というかそもそもあれは表に出せない*4から使えないのであるがな。不安定だし。
しかし、あれ以上の火力を求める方法がわからない。中性子タル爆弾とか使った瞬間吾輩も死ぬし、いやまぁ蟲だし死なないかもしれないけど空から黒龍が祖龍と編隊飛行しながら懲罰しにくること間違いなしである。吾輩もあんな生態系破壊兵器使いたくないし作り方わかんないし。
ならばどうするか。原点に立ち返ろう。吾輩の意識が覚醒したあの地。あそこには、とてもいいものがあるではないか。
破龍砲である。破龍砲なのである。『龍宮砦跡』には、あれがあるのである。滅龍砲の残骸を調べて身につけた砲の知識と合わされば、今の吾輩なら現物を見ることができれば再現可能であると思うのである。
何より、人間の領域で普通にみられる防衛設備である以上、古龍の大宝玉とかは使っていないはずであるから、極論量産して連続発射とかも可能かもしれない。まぁ、重いしでかいしで現実的には不可能であろうが。シェンガオレン型の人形でも作って、そこに二門載せるだけでも心強い味方になってくれる筈である。まぁあのレベルの大きさになると凄く疲れるのであまりやりたくはないのであるが。
火力、やっぱ火力であるよ。機動力には限界があるのであるよ。あのキリンのような機動力は手に入らないであろうし、だったら火力で勝負である。吾輩であれば、カムラの里以上に破龍砲を有効活用して見せるのであるよ。内部機構に黒翼超弩を組み込んでさらに火力アップである。
まぁ、全部机上の空論であるが。まずは実物を見ないと始まらないのである。
なんと無くではあるが、龍宮砦跡の方向は分かるのである。まぁこの辺に来てからようやくではあるが。まっさかあそこに常時ハンターがいる訳でもあるまいし、下手に大社跡にいるよりも安全であるよ。常時監視するような場所でもあるまいし。
「ピギャアアアアア(ある意味では里帰りであるよ!帰ってきたのであるよ、龍宮砦跡!)」
あの頃から、吾輩はどれぐらい強くなったのであろうか。なんて考えながら龍宮砦跡に到着したのであるが...多分失敗したのである。
なんか...すっごい天気が悪い。しかも大穴が空いているのである。破龍砲の場所に辿り着けはしたのであるが...
あと、さっきから穴の中から轟音が聞こえるし、極光は見えるし...多分これ不味いのである。破龍砲見ている場合じゃねえ。
でも多分ここまできたら見ない方が損である。まず間違いなくギルドに発見されている訳だし、だったら破龍砲を見てった方がマシである。
ふむ。なるほど。こんな構造に...うん、手持ちの鉱物注ぎ込んで一門がギリギリかな...あぁっ!?今度はなんだ!?
突然の灼熱、そして響くような轟音。一瞬穴の中に見えた影。
古龍なのかい古龍!?吾輩の命を執拗に狙う人間の屑こと古龍なのかい!?
なぁんだ、テオ・テスカトルであるか...テオ・テスカトル!?しかも一瞬クシャルダオラも見えたぞ!?どうなっているのであるか!?
多分、今にも吾輩を側から見たらすごい間抜けである。ガタガタ震えながら破龍砲に張り付いているカマキリである。だって怖いもん。竜巻と爆発とキュリアと...おい待てキュリア!?本当にどうなっているのであるか!?
と言うかこの組み合わせ、覚えがあるのである。そして、予想が正しければ吾輩多分最悪なタイミングで龍宮砦跡にきたのである。
破龍砲から飛び降り、フル武装で穴の側によって、双眼鏡で内部を覗き込む。
3匹の古龍と、1人の狩人、そして──2匹で1匹の龍が舞っている。
美しいまでの破壊が吹き荒れ、雷と火炎が、竜巻と風が。キュリアが舞い、その間を音速を超えた一太刀が暴れ回る。
達人同士の死合というのは、一種の美しさを持っている。誰が味方同士という訳でも無く、何の了解もなく。世界の頂点たちが殺し合っている。
縄張り争い、そんな言葉で片付けることができる筈もない。それに見惚れてしまったのだ。炎王龍が、鋼龍が、最初に脱落し、大穴から去ってもなお、それから目が離せる訳もなかった。
アトラル・カとしての本能、その学習能力がそうさせたのだろうか。実際、頂点同士の争いを傍観者として眺める機会など殆どなかった。その貴重な機会を逃してはいけないと本能が引き留めたのだろう。
参加者の数は減ったはずなのに、その戦いの激しさは増してゆく。
──今まで、吾輩はあんな化け物と競っていたのか...!
客観視する機会を得て、本当の意味で『大自然』という脅威を理解する。今までは当事者だったからこそ、見えていなかった脅威。
あまりにも熱中して見続けていたせいだろう。
足元の地盤が緩んでいることに気が付かなかった。そして、メル・ゼナが飛び去った時。その衝撃で自分の立っている場所が崩壊して初めて気が付いた。
「ピギャ?(あら?)」
激闘の只中にダイナミックエントリー。翔蟲を駆使して舞う太刀使いと、荒れ狂う百龍ノ淵源の真ん中に堂々と着地。
あっ、不味い。そう思うよりも先に体は動いていた。ナルハタタヒメの雷撃を、脚元を爆破することによるジャンプで回避し、続く突進を盾でいなす。すれ違いざまに速射砲から弾丸を乱れ撃ち、撃龍槍をランスのように突き刺し、マム・タロトの黄金でコーティングされたディノバルドの剣尾で切り付ける。
無意識のうちに、体は狩の動きを放っていた。
「ピギャアアアアア(あっぶないのであるよ...)」
巻き込まれた、のであるか。ハンターは...首を傾げているのである。
ジェスチャーで敵じゃないってわかってもらえないのであろうか...あ、なんかいけそうである。というか吾輩に対する敵意は無さそうであるな。
さて...
どうしてこうなったのであるか!?吾輩!!
「ピギャアアアアア(吾輩、操竜されるのはゴメンであるよ!)」
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ワイルズが近づいてきたので帰ってきました。失踪していて本当に申し訳ない。
次の番外編で使うかもしれない(エイプリルフールでつかうかも)
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掲示板if②
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擬人化if
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vsアルバトリオン