吾輩はアトラル・カである。アトラル・ネセトになる予定はまだ無い   作:美味しいラムネ

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これ以上力を解放すると初投稿です




吾輩はアトラル・カである。明日に向かってライドオン!(される側)

 

 

 

 

 蟲の女王は思った。こいつ人間じゃねえ、と。

 

 猛き炎は思った。こいつ唯のモンスターじゃない、と。

 

 そして互いに思った。

 糸が絡まって外れねぇ...!

 

 

 

 

 ♦︎

 

 

 

 吾輩である。アトラル・カである。

 吾輩、竜機装作って乗り込むのは好きであるが、乗られるのは嫌いなのであるよ。まぁ絶賛操竜されているのであるがな!勘弁してくれ!

 

 一瞬意識が硬直した瞬間に全身に銀色の糸が絡まっていたのであるよ。無理やり振り払う?絶妙なバランスで落ちてくれないのである。背中の相手を攻撃する?いや、目の前に脅威がいる状態で狩人と吾輩で戦い始めたら共倒れ...いや吾輩だけ美味しい蟲ステーキになりそうであるな。

 

 背中に乗ってるハンター、師匠と似た雰囲気があるのであるよ。多分猛き炎であるな。うん、淵源目掛けて突進させたり壁に激突させない間は勘弁してあげるのである。

 というか怖い。手を出したくない。いや、だってビジュアルが今まで見てきたどんなハンターよりも禍々しいのである。

 

 キュリアは寄生しているし風は纏ってるし嵐は纏ってるし狂竜ウイルスは纏ってるし粉塵は纏っているしどうしてそれで平然な顔をしていられるのかが不思議なのである。というか人類の技術はどうなっているのであるか。何故あんな小さな装備にあそこ迄の機能を...?吾輩が再現しようとするともっと大型になってしまうのであるよ。実際背中に背負っている装置は大きい訳だし。

 

 

 ──右、回避

 

 「ピギャ(了解)」

 

 リング上の剛雷の棚を飛び退いて避け、回転する撃龍槍の間を縫い、相手の弱点に自身が振るう撃龍槍を突き立てる。

 

 龍の絶叫が響き、周囲の壁が崩落して女王の体に降り注ぐ。それらを金色の糸が全て受け止め、巨人の手のように組み上げられた落石は、淵源の体を握りしめる。

 

 それにしても...想像していた操竜とは随分と違うのである。

 動きやすい。吾輩の動きを、猛き炎は俯瞰視点で見ているからなのであろうか、今までにないほど、吾輩は吾輩の体を巧く使えているのである。

 

 ──上、跳んで

 

 ──そこ、崩れる

 

 ──今、殴りつけて

 

 

 体に絡みついた糸越しに、次どのように動けばいいのか。その指示が飛んでくる。初めは無理やり動かされている感覚が強かったが、2人の意志は徐々に同期してゆく。

 

 鋼龍の如き大竜巻が、無数の武具を巻き込みながら致死の刃の嵐となって龍の体を巻き上げ、圧縮された熱量の滴が、雷撃と相殺し合う。

 レールガンから放たれた弾丸が、淵源の頭部で弾けた頃、女王はふと首を傾げた。

 

 背中に乗っている猛き炎、いつになったら落ちるのだろうか、と。

 そして同時に気づいた。吾輩の糸と、猛き炎の糸。絡まって取れなくなっている。

 

 ...今回の戦い、本当に吾輩には関係ないのである。関係ないのであるが...強制的に最後まで付き合わされることが確定したのである。

 

 

 

 ♦︎

 

 噂には聞いていた。

 あらゆる武具を操り、高度な知能を以って龍さえも堕とし、その力を技術に堕とす金色の女王。

 

 直接この目で見るまでは信じられなかった。再びこの地に現れた百竜ノ淵源との戦いの最中、突然飛び込んできたそれを見た時、噂は嘘だとわかった。何故なら、恐らくあれは──高度な知能を持つ、そんな言葉で形容できる存在ではない。

 

 鬼火を纏い、泡を纏い、龍気を纏い、狂竜ウイルスを操り、嵐を纏い、なんなら一瞬『死』すらも纏っていた*1気がする。禍々しいというか、明らかに自然の中で浮いている存在だな、なんていう感想が浮かぶ。まぁ狩れない事も無さそうだけど。鎧に閉じこもってはいるけど、あの辺とか脆そうだし。

 

 でも、不思議だ。敵意は感じない。

 そういえば、昔少し話したハンターが、「彼女は敵じゃない」って言ってたな、と思い出す。村を骸龍から救った、自分の狩りの師匠なんだって言ってたっけ。

 なんとなくだけど、この太刀をどんなふうに振るえば命を獲れるのかは、龍が相手でも分かる。目の前の蟲なんか、龍と比べれば簡単に奪れそうだ。それなのに、いざ奪ろうとすれば逃げられそうな気がする。

 

 蟲に──アトラル・カに操竜してみて、その不思議な感覚はさらに増した。抵抗を感じないのだ。

 自分のやりたい動きに合わせてくれている気がする。こう動いてくれたらいいのにな、その通りに動いてくれるのだ。今まで様々な竜や龍を操ってきたが、こんな経験は初めてだ。

 

 初対面であるはずなのに、自分の体の一部のように、操ることができる。それは、女王も同じ糸使いであることが関係しているんだろうか。ともあれ、とても便利な女王である。

 

 若干、ムッとした感情が伝わってきた気がする。ごめんて。

 所々、女王の動きではノーダメージでは済まなさそうな攻撃を、自分の太刀やクナイを以って捌き切る。雷でも、目に見える以上は後の先を取ってカウンターを叩き込める。

 

 普通なら、操竜中に手を離す余裕はないが、一瞬なら離しても女王は暴れずに、むしろ逆に金色の糸が体を支えてくれる。

 そのサポートの分、こっちは斬撃を以って答えるだけ。一瞬の離脱で、雷を超えてヒレを切り飛ばす。

 

 楽だ、やりやすい。

 

 アトラル・カが人間で、普段のクエストにもついてきてくれたら楽なんだけども、なんて考えながら操作に──いや、指示に戻る。

 

 未来予知にも等しい、猛き炎の予測と、龍さえ操る操竜技術。そこに、女王の学習能力と知能が噛み合った結果。

 百竜を脅かす鳴神の姫さえ寄せ付けない一個の生命体が、ここに誕生した。

 

 避ける。動きを読んで、風を読んで。

 雷速でも、発生前に避けてしまえば避けられる。

 

 里の皆は、再び発生した百竜夜行、それもキュリアの影響を受けて凶暴化したそれを食い止めている。だから1人で狩るしかなかったが、随分と心強い援軍が来たものだ。

 

 避け、斬り、避け、殴り。それを繰り返す。

 再び飛び降りて、カウンターを叩き込もうとして気づく。

 

 降りられない。

 糸と糸とが絡まって降りられない。しかも金色の糸がこれでもかと体に絡んでいて飛び降りられない。

 

 一瞬の思考。そういえば、アトラル・カの持っていた剣のようなモンスターの素材を加工したらしき兵器。形状は太刀というよりも大剣だけど...やってみるか。

 

 糸を操り、構えを取らせる。女王も糸使いだ。金色の糸、性質は異なるが、できるはずだ。

 水月の構え。飛び込んできた淵源に対して、強烈なカウンターを女王が叩き込む。

 

 成功した。

 

 女王が追撃を叩き込む。

 知らない龍の頭骨を使った大槌が、淵源を地面に叩き落とす。

 好機だ、そう思って、ある考えを飛ばす。

 

 今まで操ってきた竜達。其れ等は、一瞬だけ人と竜との意識が噛み合った瞬間にだけ見せる大技を持っていた。多様な兵器を持つアトラル・カだが、彼女であれば、どんな技を見せてくれるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 こ、これがハンター達の見ている世界であるか...!

 溢れる全能感、もう何も怖くないのである!相手の攻撃は当たらず、吾輩の攻撃は面白いように当たるのである!

 

 で、目の前のナルハタタヒメを倒したら、この世界を見ている吾輩の背中に乗っているハンターと戦わなきゃいけない可能性があるのであるか。無理であるな。

 多分、避けることさえ叶わないような攻撃を用意する必要があるのである。あれ?火力を追い求めていた吾輩ってやっぱり間違っていたのであるか?いや、仮想敵はアルバトリオンなので間違っていないはずなのである。ハンター、或いは人類と戦おうとした時点で負けなのである。それは吾輩が1番わかっているのである。

 

 背中にいる小さな英雄のような力と、飽くなき探究心が作り出した破龍砲のような兵器、遂には竜機兵や、吾輩の隠し持つ気化爆弾のような兵器にたどり着くかもしれない知恵、それを併せ持つのが人間であるからなぁ。*2

 

 吾輩に取って致命的な雷でさえ、今の吾輩には脅威になり得ない。龍気で和らげるまでもなく、当たらない。

 今のうちに、この予測能力を学びたいのであるが...理解不能である。プロハンの動きは複雑怪奇である。

 

 ステップを踏んで、突進と共に放たれた雷のリングを避け、交差する雷を飛び越える。穴の底に落下してきたバリスタや速射砲を発掘し、それらを一斉に放つ。

 兵器も拾えて、動きも学べて。いい経験である。いや、本当は速く逃げたいのであるが。背中に乗っている猛き炎に生殺与奪の権限を握られている状況であるからな。助けて師匠、助けて祖龍。どうして突然祖龍が脳裏に...?

 

 まぁいいのである。

 磁力で浮かび上がった岩石を逆に利用して、それらをつなぎ合わせて巨大なヨツミワドウ型の人形を作り出し、その質量を落下させる。

 

 内部に仕込んで置いた大タル爆弾が衝突と同時に炸裂し、砲弾の如き礫岩がナルハタタヒメの体を抉る。

 

 とはいえ、徐々に疲れてきたのであるよ。指示を正しく理解し、正確に動くのは体も、それ以上に頭も疲れるのである。尤も、それは猛き炎も同じことであるが。

 息が荒くなっている。興奮していて気づいていないようだけども、猛き炎は狩人(ハンター)であって、指揮官(コマンダー)ではないのである。むしろ、初めての経験でここまで正確に指示を送れているのがおかしいのである。普段は糸で無理やり動かしているだろうし。

 

 一見順調ではあるが...実のところ、体力的に限界が近いのである。

 ナルハタタヒメの一撃が頬を掠め、体液が垂れる。...少し、頭が痛くなってきたのである。

 

 ガララアジャラの外殻と岩石を組み合わせ、即興で作り上げた蛇腹剣を振るい、周囲の地形ごと一閃。目的は傷をつけることではなく、地形を崩してナルハタタヒメの移動ルートを制限し、吾輩の足場を増やすこと。

 

 壁を蹴って、金色の糸を張り巡らす。本来ならこの狭い空間は、吾輩に不利に働くはずであるが、今の、英雄たちの動きができる吾輩なら別。むしろ、金色の糸が空間を埋め尽くし、この大穴の最下部は、吾輩の領域と化している。

 

 磁力と暴風で無理やり撃龍槍を操っているお前では、吾輩の技には届かない。糸で絡め取って終わり...力が強すぎて引きちぎれただと!?

 

 慌てるよりも速く、吾輩がどう避ければいいのかが伝えられる。掻い潜り、突進してきた相手を前に構える。自分に突進が届くよりも速く、その頭を切り付ける。それは、吾輩も知らないカムラの技。

 鉄蟲糸技。水月の構え。成る程...こう撃つのであるか。勉強になったのである。

 

 更に、吾輩なりに追撃を加える。一瞬のチャンスに叩き込まなければ、古龍の圧倒的生命力を前にすり潰される。大槌の一撃を、榴弾の爆発を、龍気の放出を叩き込む。爆音を、閃光を、激毒を、狂竜の一撃を。

 

 その全てを余すことなくその身に受け、しかし淵源は起き上がる。

 竜にも劣る蟲風情が、百竜を踏み躙る淵源に届くとでも思ったか、咆哮と共に雷撃が吹き荒れ、指向性を持って撃龍槍が吾輩目掛けて射出される。

 分厚い城壁の如き盾でそれを辛くも防ぎ切る。そうだ、学習するのは何も人間だけではない。吾輩の狩りを学んだか。自身の力、その振るい方を理解したか。混ざり合った力に適応したか。

 

 長引かせると不味いのである。

 その考えが一致したのか、吾輩の体を、猛き炎の銀色の糸が引っ張る。

 

 うん。何をして欲しいのか理解したのである。要は、操竜大技に位置する大技を使って欲しいのであろう。

 そんなものはない。吾輩、もうこの戦いで見せても問題ない兵器は大分見せたのであるよ?スーパーセル擬きも王の雫擬きも見せたのである。

 待って痛い痛い!わかったから!わかったから!だから突進させようとするのは辞めるのである!冗談?絶対冗談じゃなかったのであるよ今の雰囲気!

 

 さて...即興ではあるのであるが、やってみるのである。意識が戻って始めの激闘からお世話になってきた、あの技を使うのである。

 雷を堕とすのは星。より高い位置から、雷雲ごと破砕する。

 

 

 

 

 壁を翔け上がり、そこへ粘菌を塗りつける。螺旋を描き、ある程度上がったところで着火。大穴は崩れて、無数の岩石が流星雨のように堕ちる。

 土煙が鳴神の姫を覆い隠す。爆音が鳴り響くが、細かい土しかその体にかからず、不審に思って空を見上げる。

 

 そこには、星があった。穴を埋めるほどの大きさの巨岩が、燃え盛りながら勢いよく落下する。

 

 

 「ピギャアアアア(さて...ダラアマデュラ亜種って知ってるか?)」

 

 

 

 

 星だ。星が来る。

 撃ち落とす。唯の雷では、その奥には届かない。岩盤よりも分厚い岩の塊。壊すには、自身の最強の一撃を以て迎え撃つしかない。

 

 霹靂神。しかし、あの力の塊は、下に落とすことしかできない。

 本当に?方法は、あの金色の女王が見せてくれた。別の力で押し出して、放てばいい。

 竜の女王よりも、龍の姫の方が格としては上であることを教えてあげましょう。

 

 圧縮された雷球が、筒状に束ねられた雷撃によって射出され、巨石と衝突する。

 

 星が融解し、亀裂が走り、最後には塵となって消えた。

 これなら、後ろの奴らもタダでは済まないはず。いや、待て。いない。どこへ行った。気配は──

 

 腹に、衝撃。突き立てられた鉄の棒から、体内に流し込まれた粘菌が爆発する。

 

 

 「ピギャアアアア(まぁ、あれは囮であるよ)」

 

 

 この程度、何のダメージにもならないと言わんばかりに雷を浴びせかけて、気づく。あの小さき者がいない。

 

 

 「ピギャアアアア(いやぁ、引き立て役にされたみたいで勘弁して欲しいのであるが──)」

 

 

 銀と金の糸が舞う。

 

 

 「ピギャアアアア(吾輩に、あれは出来ないのであるからな)」

 

 

 空を見上げる。大穴の上。雲の切れ目から差し込んだ太陽が目に入り、思わず目を閉じかけた瞬間、姫の視界が回った。

 

 落下の速度を乗せた一刀。猛き炎の一撃が、その首を刎ね落とした。

 

 

 

 

 

 

*1
落下した時に思わずびっくりして兵器の操作を間違えた結果一瞬だけ瘴気が漏れた

*2
それをお前は1匹で併せ持つから問題なんだよ byギルド





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糸をなんとかしろ!

背中にいるのが師匠だったら絆技とか出るんじゃないかな
ちなみに猛き炎は、アトラル・カの言っていることはミリも理解できません。全部勘です。
猛き炎はちょうど今回で戦慄く神解をクリアしたことになります。


じゃあアトラル・カくんちゃんは淵源の死体と撃龍槍と古い兵器もらって帰るから...

次の番外編で使うかもしれない(エイプリルフールでつかうかも)

  • 掲示板if②
  • 擬人化if
  • vsアルバトリオン
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