吾輩はアトラル・カである。アトラル・ネセトになる予定はまだ無い   作:美味しいラムネ

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 注意:今話の後半部分にて、ワイルズの下位の範囲でのネタバレがあります


 ワイルズを遊んできたので初投稿です


吾輩はアトラル・カである。吾輩は敵じゃないんです!信じてください!!

 

 

 

 

 

 ナルハタタヒメの首が回転し、そのまま地面に落ちる。

 暫くして、漸く自身が死んだことに気がついた胴体が、暴れるのをやめて倒れる。

 

 どんな兵器も弾く強靭な古龍の鱗。分厚い筋肉と骨。それらを軽く乗り越える一閃。魔法でも、超能力でもない。それは純然なる技術の賜物である。

 龍鱗と龍鱗の隙間。呼吸や力みと共に筋肉が緩む瞬間。肉質を見極め、全身全霊で太刀を振るうだけ。

 それだけで、ランポスだろうがリオレウスだろうが──ナルハタタヒメだろうが、一刀両断。

 

 少し自慢げに、太刀を納刀した猛き炎が地面に着地する。

 やってやったぞ、と言わんばかりのドヤ顔。

 

 

 「ピギャアア...(え、何それ、怖...)」

 

 

 

 ♦︎

 

 

 吾輩はアトラル・カである。そして目の前にいるのは猛き炎である。そして吾輩の命の危機である。

 

 確かに、吾輩はトドメを猛き炎に譲ったのである。吾輩の瞬間火力、技術はハンターには劣るのであるからな。でもまさか首落とすって思わないのであるよ。怖...

 兜割りっていうか首が...ナルハタタヒメ、首が...!

 

 思わず自分の首に触れる。よかった、吾輩の首は飛んでないのである。流石に首がなくなったら吾輩も死ぬと思うのであるよ、首がちぎれて生きていられる生物はいないってアバン先生が言ってたし。というか吾輩はただの蟲である。古龍以上の生命力を期待しないで欲しいのである。

 

 もう一度、胴体だけになったナルハタタヒメを見る。死んでいるのである。その表情は穏やかである。痛みすら感じないほどの絶技。怖...

 

 何度見ても、やっぱり首と胴体が泣き別れしているのである。死んだのであるよ。別に弱い相手じゃない、むしろ吾輩1人なら大分怪しい相手だったのであるが。

 

 目の前で、ナルハタタヒメの鱗を剥ぎ取っている猛き炎を眺める。わ、吾輩のことを歯牙にもかけていないのであるよ。うん、吾輩はただの蟲ただの蟲...そのまま帰って欲しいのである。この隙に飛んで逃げろだって?離陸時に放出する龍気の放出と爆発で相手を刺激したくないのであるよ。

 

 体についた埃や龍血を払い除けて、猛き炎が立ち上がる。

 そして、太刀を構えて──

 

 

 ──手伝ってくれたことは感謝するけどお前のせいでヒノエが体調崩したんだわ、1発殴らせろ

 

 

 ──え、冤罪っ!!

 

 

 逃しては...くれないようであるな、勘弁して欲しいのである!

 

 

 

 ♦︎

 

 

 ハンターと戦う時にやるべきこと、それは──

 

 自分が狩人(プレイヤー)だった時に、されたら嫌だったことを積極的にやること!

 咆哮、拘束、麻痺ハメ睡眠風圧振動と畳み掛け、複数体のモンスターで囲んで殴り、攻撃の手は緩めず、常に最高速で動き続けろ。

 狂竜症は克服させるな、アイテムは使わせるな、何もさせるな!

 

 「ピギャアア(やっぱお前ら人間じゃないのであるよ!!)」

 

 

 避けるないなすな壁を走るな空跳ぶなぁ!ハンターというか忍者であるよ!師匠もここまで人間辞めては...辞めてたなぁ。

 ちょっとの工夫じゃ、ハンターには届かない。先ほど見た、英雄たちが見るあの視界。未来予知でもしてるんじゃないかというほどに全てが見えていたあの視界。そこには、生半可な技術じゃ届かない隔絶した差があった。

 

 何でも切るなら、切れないものを用意してやるのであるよ!

 オストガロアの触腕から、水のレーザーを放ち、ティガレックスの頭部を模した兵器から、大地が揺れるほどの爆音を鳴らす。

 

 まるで曲芸のような動きで水レーザーを掻い潜り、爆音は、鳴らされる前に兵器に接近され、破壊される。

 

 さらに、追撃に吾輩の胴体を狙おうとした切先に盾を割り込ませて、何とか防ぐ。く、喰らったら危なかった。

 盾の内部に仕込まれていた油が溢れ出し、それを全身に浴びる前に猛き炎は離脱する。

 追撃に放った油入りの打ち上げタル爆弾は、起爆しないギリギリの衝撃で打ち払われ、そのまま離れた位置で爆散する。

 

 「ピギャアア(カウンターは...決まらないのであるか!)」

 

 だったら今度は避けられない攻撃を、と言わんばかりに空間を鬼火粉塵で埋め尽くし、着火。炸裂後、四方八方より人形を繰り出し、雪崩れ込ませる。

 

 油に炎が燃え移り、穴底を照らし出す。

 

 どうやって鬼火を防いだのかはもう考えない。古龍よりモンスターであるよ、ハンター。

 綺麗に切ってくれるから、直すのも楽なのである。切断面を縫い直せば、また吾輩のために戦ってくれるのである。百竜を切れるのなら、百鬼も切れるか試してみるといいのであるよ!

 

 さて、と。今の隙に、即興で兵器を作るのである。

 材料は、ここに落ちている死にたてほやほやのナルハタタヒメである。その力、存分に使わせてもらうのであるよ。

 その首を金色の糸で縫い合わせ、糸で操る。その身体構造について理解はまだ及んでいないのであるから、唯の強靭なだけの人形であるが...シャガルマガラと並べれば威圧感はすごいのである。

 

 

 倒した筈の相手が起き上がった事実に、猛き炎が目を見開く。

 そういえば、今切った相手も。少し前に切った相手だった気がする。

 

 

 撃龍槍は全部回収した、ナルハタタヒメも入手した、破龍砲の構造も理解した。あとは生きて帰れば収支はプラスである。生きて帰ることが出来ればであるがなぁ!

 

 あるものは全部使うのである。壁を破壊し、地形を崩して、環境生物も使う。あっヌリカメが一撃を防いでくれたのである。...いつのまに懐に潜り込んだのであるか!?

 

 大剣をやたらめったら振り回し、スーパーセルを放った反動で後ろへ飛び退く。瓦礫と砲弾を纏った竜巻の中でも、猛き炎は平気な顔をして立っているのである。

 竜巻の中で、人形たちが雪崩のように猛き炎に押し寄せる。マガイマガドにラージャン、イビルジョーやバゼルギウスが一つの生命体のように襲いかかる。

 皮を切れば、血の代わりに金色の糸が溢れ、強靭な糸は刃の様に暴れ、反撃する。

 

 

 流石の猛き炎も、切っても切っても蘇ってくる百鬼の群れに押され始めたか、徐々に疲労が見え始めた。

 

 ──おかしい。この程度で疲労する訳がない。自分の体のことは1番分かっている

 

 それに、ほんの少し息苦しい気がする。

 

 

 

 さて...種明かしをするのである。ここは大穴の底。空気の出入り口は上だけである。いま、この底に気化させた麻痺毒や睡眠毒、薄めた鱗粉を混ぜた、空気よりも重い毒を流し込んでいるのである。

 その上、今この谷底では炎が燃え盛っている。絶賛酸素消費中である。

 酸素が薄く、その上様々な毒で汚染されたこの空間、全力戦闘は難しいのではあるまいか?

 

 

 ほら、炎が弱まってきた。

 猛き炎が膝をつく。

 

 吾輩は酸素玉があるし、毒も対策済みであるが...猛き炎。お前は異常状態対策なんて積んできていないであろう?だって、攻撃が当たらないなら気にする必要がないから。

 ここが、吾輩にとって有利な戦場でよかった。

 

 

 どこまで行っても、ハンターは人間。酸素がなきゃ碌に動けないであろ...うわっ危ないのである!!!?

 

 「ピギャアア(!?)」

 

 無数の人形、ナルハタタヒメの突進、シャガルマガラの狂竜ブレスを潜り抜け、一直線に吾輩の命狙って来たのであるよ!?瞬間的に天衣無崩の風を増幅させて横に飛ばなきゃ危なかったのである。

 

 というか、散々動けなくなった理由を説明した後にこれであるか!?全然ピンピンであるよ!?

 

 

 「ピギャアア(これが...猛き炎...!)」

 

 

 

 吾輩の後ろで、吾輩の甲殻を削り取った猛き炎が、その甲殻を左手で持ちながら、満足そうに太刀を納刀する。

 

 ──これで1発。

 

 

 急に、戦意が薄まった。

 これは、逃してくれるということでいいのだろうか?

 

 猛き炎の肩に、何処より飛んできたフクズクが止まる。

 その後、脚に括り付けられた書簡を読んだ猛き炎は、少し申し訳なさそうな顔をして、翔蟲で穴の外へ飛んで行った。

 

 置いていかれたのである、吾輩。穴の底で、呆然と佇む。

 あ、切られた部分の止血をしなくては、何てどうでもいいことが脳裏に浮かんだ瞬間。

 

 

 空を、極光が埋め尽くした。

 

 

 「ピギャアアアアア(いやこれ破龍ほ──)」

 

 

 

 

 

 ♦︎

 

 

 特異個体「アトラル・カ」、カムラの里周辺に出現。

 破龍砲の技術獲得が目的と推測。調査の結果、事実だと判明。

 

 同時に、百竜ノ淵源ナルハタタヒメとの戦闘に乱入、その死体と旧式の撃龍槍を奪取した模様。

 

 結果として、今回。人類はアトラル・カにいい様に出し抜かれたことになる。

  

 特異個体「アトラル・カ」について、龍歴院より恐ろしい仮説が上がっている。「おそらく、現在確認されているどのモンスターよりも、正しく人類の脅威度を理解しているアトラル・カは、理解しているが故に人類と敵対しないのではないか」というものだ。

 今回、アトラル・カは現人類の、()()()()対古龍兵器として最高峰の技術を獲得した。

 

 最早、アトラル・カは人類を脅威と感じないのではないか。否、既に感じていないから今回の行動に至ったのではないか。

 実際、どの古龍よりも効率的に人類文明を解体できるのはアトラル・カであり──それをする可能性があるのもアトラル・カだ。

 古龍の行動は、結果として文明を脅かすだけでそこに人類を脅かそうという意志はない。まぁ、何体か例外はあるが。

 

 

 追加の調査報告として、アトラル・カが瘴気を利用する可能性が示唆された。

 今回の戦闘跡地から、僅かではあるが瘴気が確認された。新大陸から、人類にとって致命的な毒を持ち帰ってきたということになる。

 

 研究者は頭を抱えた。

 古龍級、なんて話じゃない。間違いなく禁忌級だ。それはとうの昔から分かっていたことだが。

 

 

 だが、今回破龍砲でアトラル・カを撃破できた可能性がある。現場に監視員として派遣していたギルドナイトの暴走ではあるが、撃破できた。砲撃の影響で大穴が潰れてしまい、死体は確認できなかったが、仮に砲撃を耐えても瓦礫により圧死するだろう。周囲に脱出するための穴も確認されなかった。

 

 あの生物がなぜ生まれたのかは謎のまま終わったが、これで決着──

 

 

 ──しなかった。する訳がなかった。冷静に考えて、煌黒龍相手に生き残ったモンスターが、不意打ちとはいえこの程度で死ぬ訳が無かった。

 禁足地への調査隊よりもたらされた、古代文明に関わる恐るべき情報。それに頭を抱えていたところに追撃で飛んできた「護竜アルシュベルドとの戦闘に乱入したアトラル・カ」の存在。

 

 生きていた。しかもよりによって最悪な技術が側にある場所で発見された。何よりこれを、それがどちらの技術であってもアトラル・カが使いこなし始めたらいよいよ人類の終わり、何なら新大陸の事例を考えれば最低でも煌黒龍が出張ってくる。

 

 しかし、なぜこのタイミングなのか。我々が始めて探索を開始したこのタイミングなのか。

 

 ここで、ある仮説が建てられた。

 アトラル・カは、人類を「自分にとって都合のいい技術を発明、発見するビーコン」として扱っているのではないかというものだ。

 

 だから、都合のいい人類は生かす。阻害する可能性のある密猟者は殺す。

 

 今回は、ハンターが禁足地に到達したから、それを追いかけてアトラル・カも現れた。

 竜都の技術を求めて、彼の存在は現れた。

 

 

 

 

 そんな訳ない、偶然である。

 

 

 「ピギャアア(知らないモンスターがいっぱいである...)」

 

 

 破龍砲を受け切って彷徨って数ヶ月。ここはどこであるか?

 知らないモンスターばっかりであるよ。しかも、なんか変な感じがするのであるよ。こう、新大陸の方に似た、何かに介入された自然って感じがするのである。またお前か、ジーヴァ。

 

 まさか人間にそんなことが出来るわけもないであろうし、きっとジーヴァ族がここの地脈を操作しているのであろう。吾輩知ってるよ。

 

 

 「ピギャアア(本当に、ここ。どこであるか...?)」

 

 

 その言葉に返答する相手はいない。

 アトラル・カ、絶賛迷子中である──

 

 村っぽい場所は見つけたし、人類の生存圏ではあるのだろうが...武器を持っていない民族とか、どうやって今まで生き残ってきたのであるか?

 

 いや、あの鳴子の音...あいつの鳴らす音に似ているのであるな。あれでモンスター避けをしているのであるか。今度寝床に仕込んでみるのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「砂嵐の中に、金色のナニカを見た...?」

 

 

 

 







 感想、評価、誤字報告などありがとうございます!大変励みになっております。

 実際は炎で空気が温められて空気が循環してあそこまでうまくはいかないんでしょうがそこには目を瞑る方針で

 とりあえずワイルズを上位突入直後まで進めたので戻ってきました。今度はストーリークリアしたら帰ってきます。

 蟲の化け物が、攻城兵器やら細菌兵器やら死体を操って「人類の敵じゃないよー」って言ってすり寄ってきて信頼できますか?そういうことです。


 ずっと思ってたんですけど、モンハン世界で石器時代レベルのホモサピが生き残れるとは思えないんですよね。完全に与太話なんですけど、現人類は古代竜人が奴隷用に作った生命体だったら面白いなーって。繁殖を滅多にしないから人手が少ない、だったら簡単に増えてしかもすぐ死ぬから品種改良が簡単な人間を作った、みたいな。

次の番外編で使うかもしれない(エイプリルフールでつかうかも)

  • 掲示板if②
  • 擬人化if
  • vsアルバトリオン
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