吾輩はアトラル・カである。アトラル・ネセトになる予定はまだ無い 作:美味しいラムネ
初投稿です。投稿が遅れて申し訳ございません
白龍は、自分が観察していた少女が黒龍の呪いから解放されたことを知覚する。
アレが我々と同族になるのもいいが、しかしそれは少しつまらない。だから、たまたま目に入った彼女を打ち破りうる存在と彼女をぶつけてみた。
もしも呪いから解放されるのならそれはそれで良い。仮に解放されず、そのまま飲まれたのならば、黒いのに奪われる前に私のモノにすればいい。
ミラボレアスと呼ばれる存在の中でも、白い体毛を持った存在が、人類の手が未だ及ばない秘境の中で微睡む。
時間と空間を超え、あらゆる時代、あらゆる場所に望むように降臨できる、古龍の領域さえ逸脱したその存在。その中でも観る者全てに『全ての龍の祖』であるという印象を抱かせる白龍。
──ああ、彼女は解放されたのか。
──そしてあの存在…生きにくそうね。別に、彼の逆鱗に触れる様な、竜を虐殺する様な禁はまだ犯していない。でも…よりによってあの兵器を連想させるもので彼の姿を再現するなんて、ね。まぁ、私には関係のないことだけど。竜が死のうが人が死のうが、星が滅ぼうが極論私には関係ない。
彼の存在に関する文献は恐ろしいほどに少ない。
あの黒龍でさえ、竜大戦時代のごく僅かな文献や、旧シュレイド王国での一件など大規模に人類と関わった痕跡は残っているのだ。
しかし、白龍にはそれがない。竜大戦や、それよりも前の時代まで遡っても、その存在は殆ど登場しない。既に失われた竜人族の詩や、滅んだ王城で見つかった書物で語られる『祖なる存在の到来』という単語や、皆既日食に纏わる逸話でその存在は示唆されるのみ。人類の前に直接姿を晒した例は殆どない。極一部の選ばれたハンターの前に現れ、気まぐれに試練を与えてくるだとか、昔、ある竜人族の少女が連れ去られただとか、殆ど与太話の様な噂しか残っていないのだ。
白龍は、自分が興味を持った存在にしか干渉しない。
遥か太古、千を超え、万を超える年より出で、この星で生まれたかさえも定かではない。この時空で生まれたかさえも定かではないことが近年の研究でわかってきたミラボレアスという現象、その一体。その中でも最も古き存在である彼女が、どうして自然などという細事に興味を抱こうか!何故文明の興亡などという細事に興味を抱こうか!人間の尺度で彼女を語ろうなど、烏滸がましい!
彼女が行う思考の内容でさえ、それが真なのかは解らない。
彼女がそこに存在している、それ自体も真なのかは解らない。
それこそが祖龍。人に、『ミラルーツ』や、『ミラアンセス』と呼ばれる存在なのだ!
──あの子、なんなんでしょうね。でも、面白いから、退屈を紛らわせてくれそうだし、まぁいいか。
………あまりにも神聖で不可侵な様に感じる彼女だが、その実、何も考えていないだけなのかもしれない。
♦︎
吾輩である。
さーて、目の前のこいつはどうするべきなんだろうか。ネコタクも来ないし。
多分ミラボレアスを越えた経験があるであろう人外ハンター。劫火喰らって生きてた時は流石に死を覚悟したぞ吾輩。撃龍槍も一本消し飛んだし。まぁ黒龍素材が手に入ったと思えば収支はプラスであろうか?とりあえず金糸でぐるぐる巻にした上からネルスキュラの糸でさらに雁字搦めにしてはいるが、目覚めた瞬間糸を引きちぎって脱走しても吾輩は驚かないぞ。
本当にどうするべきなんだろうか。
仮に目の前の相手を殺したとしよう。勿論『最低でも黒龍と相対する資格を持っている実力者』のハンターが唐突に消えたことは一瞬でハンターズギルド上層部に伝わるであろう。そして吾輩のことも芋づる式にバレる。そして『なんだこいつ人類の脅威すぎるだろ、いけ!歴代主人公ハンターズ!こいつ解体してこい!』ってやられてゴール武器持った四人組とか機動力が屈強すぎるカムラの猛き炎&盟勇とかがやってくるのが目に見えている。そして吾輩は死ぬ。
じゃあ放置して逃げたとしよう。
それでもやはり吾輩は危険な存在だとしてギルドに伝わるだろう。なんなら装備を整えて目の前のハンターが復讐に来るかもしれない。というか100%来る。このハンターの目つきは間違いなく戦闘狂とかTA勢とか1ヶ月以上繰り返される周回作業で意識が遺群嶺のその上まで行ってしまった人のソレだった。ここで何もせずに放置したら「絶対に許さんぞ虫ケラ!」とか言って一生追いかけ回されること間違いなしだ。そして吾輩は死ぬ。
殺してもダメ、逃げてもダメ、吾輩は詰んでいるのか!?吾輩はおしまい!
しかし、まだ、まだ第三の選択肢が残っている!説得ロールに成功すればいいのだ!なんとかして、吾輩が危険ではないことを証明する。これに成功すれば吾輩の安全は保たれるし、なんなら強いハンターとのコネという最強のカードまで手に入る。なんならハンターを通じて人間社会でしか手に入らない物品も手に入るかもしれない。抗竜石とか抗竜石とか抗竜石とか。説得に成功すれば、一石ニガーグァ、いや一石三ガーグァなのである。
そもそも目の前のハンターに言葉が通じなくて説得ができない可能性もある。しかし、吾輩は聞き逃さなかったぞ。戦闘中、何度か会話が成立していたタイミングがあった。恐らく、彼女も吾輩と同じく相手の言っていることがなんとなくわかるタイプなのであろう。
会話は成立しても見逃してはくれなかったけどな!あれ、やっぱりこれ詰んでね?
………目の前の彼女が、戦闘の時だけ人格が変わるタイプでいつもはまともであることを願おう。
まぁこれ以上うだうだ考えていても仕方がない。吾輩が生き残るための仕込みを始めよう。
とりあえず鍋を用意して、火を付けて、と。吾輩の最終兵器、料理の出番である。鍋料理である。
料理を通じて吾輩は過去に野良アイルーと交流することができた。なら、それを人間に応用することも出来るだろう。それに、『人語を理解して、人の様な営みをし、それでいて人類に害意がない』存在をまともな精神を持った人間が狩れるだろうか?いやまぁ目の前の相手はまともじゃない側かもしれんが。
♦︎
む。そろそろ起きそうであるな。
冷静に考えると少しでも印象を良くするために縛りは解いた方がいいな。流石に武器のない人間には瞬殺はされない…と思う。
ちょうど料理も出来上がったタイミングである。ちなみにタイクンザムザの甲羅で蟹の出汁を取ろうとしたら死にかけた。吾輩は雷弱点なんだ…!結果、蟹とコナマキダケの出汁のしみ込んだ美味しい鍋の出来上がりである。え?ドスファンゴの肉が獣臭いって?臭い消しとかどうやればいいんだよとりあえず塩につけて放置してダンスパイスぶっかけてはいるけどちゃんとは消えないぞ。吾輩虫だし内容にはそんなに期待するなよ。
………起きそうなのに起きない。
ダメだ、我慢できない。先に食ってしまおうか。いやこれ振る舞う用なんだけども、それはそうと吾輩の分も作ってあるし先に食べても……
あ、目があった。
♦︎
長い夢を見ていた気がする。
そして、目が覚めたら目の前に料理らしき何かを食べようとしている虫がいた。
「アトラル・カ…?」
私は負けた。なら、死んでいないとおかしい。
ひょっとして、私は今から料理されるのだろうか。人間の行動を模倣しているという情報のある特殊個体だ。それもありうる。
口の中に、挽肉の塊の様な何かを放り込もうとした体勢で、アトラル・カは固まっている。
それは、気まずそうに自分の椀の様な何かを地面に置くと、糸でできた腕でもう一つの椀に汁を注ぐと、私に渡してくる。
「ピギャアアアア(食え)」
ほかほかとした湯気のでているそれを、恐る恐る受け取る。多分、食べろ、と言っているのだろう。
あぁ、アイルーの料理長の作るそれと比べれば随分と原始的なモノだが、間違いなくこれは料理だ。
夢でも見ているみたい。
私の知っている、威厳に溢れた女王の姿とは余りにも違う姿に、可笑しくって笑いが込み上げてくる。そういえば、自分の意思で笑ったのはいつぶりだろうか。常に聞こえていた、黒龍の声が全く聞こえない。黒龍の存在が何も感じられない。そうか。意識してやった訳ではないんだろうけど、目の前の存在が、私を解放したのか。
何も言い出さない蟷螂を横目に見ながら、汁を啜る。毒が入っている、なんてことは無いだろう。殺す気ならあの鎌でスパッと首を断ち切れば一瞬で終わる。
彼女は、一体何なんだろう。
知りたい。どうして私を殺さなかったのだろう。何故、人間の真似事をしようと思ったのだろう。
「ピギャアアアア(いや、だって人間怖いじゃん。吾輩は人間とは戦う気はないぞ)」
人間に対する恐怖心、かな?あとは敵意は無いと伝えようとしているのだろう。
今まで出会ったどんな竜よりも、それこそ古龍よりも自意識がはっきりとしている。
間違いなく、目の前の存在は人知の及ばない存在、禁忌に並び立つ存在なのだろう。貴女も、黒龍の力を真似たということはアレに一度は出会って生き残っている訳だし、そんじょそこらの竜とは格が違うのは分かっていたが。
それなのに、目の前の存在が、自分よりも強い存在に怯える幼児の様に思えてしまう。
…所詮、一度は捨てた命だ。人間社会にも愛想が尽きた。元より、黒龍の次は彼らのつもりだったんだ。今はその気は失せたが、別に義理立てする必要も無いだろう。
「ピギャアアアア(だから、頼むからギルドには吾輩の存在は言わないでくれよ!な、な!吾輩は悪いアトラル・カじゃ無いよ!)」
「あはは!分かってる、分かってるわよ!勿論言わない。まぁもうギルドは貴女のこと知っているから無駄かもしれないけど。」
ピシっ、と。アトラル・カの動きが止まった。
──ああ、彼女。ギルドに気づかれていることに気づいていなかったのね………
♦︎
「お互い、生きていたらまたどこかで」
「ピギャアアアア(人間社会に居られなくなったら、まぁ会いにくれば飯ぐらいは出してやるからなー)」
吾輩の渡した最低限の性能は持った発掘装備に身を包んだ女ハンター、いや師匠が手を振りながら吾輩の元を去る。
2週間前の激闘が嘘の様だ。昨日の敵は今日の友というが、真面目に戦っていた時の彼女と今の彼女は別人なのでは無いだろうか。
最終的に、説得には成功した。どうやらかなりのプラス補正がかかっていたらしい。何でも吾輩は恩人だそうだ。理由は分からん。
後、衝撃の事実が発覚した。
吾輩の存在はとうの昔に人間にバレていた様である。嘘だろおい、勘弁してくれよ。なんなら初等的な調合や料理をすること、ハンター人形を使うこともバレているらしい。最終兵器と秘薬レベルの調合のことがバレていないだけマシか…?いやもう終わりだよ吾輩。
でも、でもだ。目の前の彼女が!吾輩は危険な存在じゃ無いと他のハンターにも広めてくれると約束してくれたのだ!上層部相手は仲が悪いから難しいそうだが。まぁ、現場と上層部の仲が悪いのは良くあることだし……
人間に既にバレているとわかれば、吾輩の今後の動きも変わってくる。
これからは積極的に死にかけているハンターがいれば粉塵をぶっかけ、モンスターに襲われている商人がいれば助け、人類の味方アピールをすればいいのである。吾輩は悪いアトラル・カじゃ無いよ、とわかれば早々狩られることも無くなるだろう。
さらに衝撃の事実が発覚した。彼女のメイン武器は大剣ではなくヘビィボウガンであること、その上黒龍の討伐には失敗しているということだ。
二つ言わせてくれ。あの化け物じみた動きで全力じゃなかったのかよ。そして、あれ以上に強い状態でも黒龍には勝てないのかよ。ミラボレアス怖っ。シュレイドには近寄らんどこ…
うぅむ。ひょっとすると最初に出会ったハンターが、吾輩の言っていることを理解できる師匠だったのは幸運だったのか?殺されかけたけど。
え、何故吾輩が彼女のことを師匠と呼んでいるかって?簡単なことである。彼女は吾輩の、『狩技』の師匠なのである。
説得に成功した後、じゃあ吾輩が危険じゃ無いことを伝えるために早く街へ帰ろうということになった。
ここで問題が発生した。どうやらあの戦闘の動きはハンター的にも少し無茶があった様で、あとはよくわからんが今までの反動が襲ってきたとかで全身の骨が砕け散って、内臓も殆どイカれてるとかで暫くうごけないらしいのである。ちなみに全治2週間。どうして内臓が崩壊しているのに2週間で治るんですか!?
その間、特にすることもないらしいのでダメ元で狩技を教えてくれないか、と頼んだら快諾してくれたのである。
狩人の秘技的なモノをそう簡単に教えていいのだろうか、とか色々言いたいことはあったが師匠がいいって言ったってことはいいのだろう。
まぁ、時間もなかったし三つしか習得はできなかったのだが。
『不死鳥の息吹』『エスケープランナー』『覚蟲強化(自分)』である。こいつ生き残ることしか考えてねーな。
『覚蟲強化』は本来なら操虫棍の猟虫と共生関係にある蟲を呼び寄せ、猟虫を強化する技であるが、吾輩が使った場合は普通に吾輩自身が強化される。使うとどっと疲れるが、それは強走薬を飲めば問題ない。
この中でも、個人的には『不死鳥の息吹』が最強技である。吾輩は、ついに!狂竜症の恐怖から真の意味で解放されたのだ!これがあればシャガルマガラに苗床にされる心配が無くなる!
『エスケープランナー』は、単に習得難易度が吾輩にとっては一番低かったから習得したが、卵を運ぶシチュエーションがない吾輩にとってはただのちょっと強い強走薬グレートである。
どうやら天はまだ吾輩を見放してはいない様だな!
大自然と人類を同時に相手しなきゃいけなくなりかけたときはどうしようかと思ったが、割と上手くいきそうである!がっはっは!
その夜、吾輩はひさしぶりに夢を見た。
枕元に置いていた黒龍素材から半透明のミラボレアスが出てくる夢である。
それは、吾輩に襲い掛かろうとした瞬間、猛り爆ぜるブラキディオスにぐちゃぐちゃにされていた。うわぁ、グロい。
「ピギャアアアア(なんか、滅茶苦茶変な夢を見たぞ…)
2匹のアイルーの墓の前には、久しぶりに花が添えられてたという。
感想、評価、誤字報告などありがとうございます!大変感謝しています
今回は短めで申し訳ございません。言い訳がましいのですが、少々体調を崩しておりました。
アンケートを追加しました。これはまぁアトラル・カくんちゃんの未来になるかもしれません。
次の番外編で使うかもしれない(エイプリルフールでつかうかも)
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掲示板if②
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擬人化if
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vsアルバトリオン