吾輩はアトラル・カである。アトラル・ネセトになる予定はまだ無い   作:美味しいラムネ

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初投稿です

今回も後編へ続きます


吾輩はアトラル・カ。恐れ見よ、赤き災厄の彗星を。奇しき金星の女王を 

恐れ聞け。星の歌は、命の灯火すら沈める。

金属が擦れ合う様な独特な音を響かせながら、紅い星が大空を翔ける。

 

彼の存在から逃れられる者はいない。全ての存在は、等しく灰塵と帰す。それは人であれ竜であれ例外はない。

地平を砂が埋め尽くす灼熱の大地。そこに飛来するは、銀翼の凶星。

 

その存在にいち早く気づいた古龍観測隊によれば、その龍の体には、癒えかかってはいるが、傷の様なものが多く見られたそうだ。

その胸には塞がりつつあるも穴が空いており、よく見ると全身には微細な傷が刻まれ、龍気というバルファルクにとって最も重要な要素を生成する胸部には抉れた様な跡がある。

観測隊の知るところでは無いが、彼はある存在と戦い、そして互いに致命傷に近い傷を負った。その時に負った傷の所為で龍気の生成機関が歪んでしまった彼は、足りないエネルギーを他から補う必要があった。

 

その為に彼は砂原へ降り立った。手始めにティガレックスを捕食した彼は、その後も傷を癒す為に多くの竜を喰らった。その場所の生態系を変えてしまいかねない程に。

その結果本来死ぬはずだった彼の龍は生存した。死の運命を乗り越えてしまった彼の力は、もはや手の施しようが無いほどに強大なものとなりつつあった。一度壊され再生した胸部はかつて無いほどに肥大化し、その翼脚はこれまで以上に鋭く、そして練り上げられた龍気は今まで以上に濃く、強く、赫い物へと変貌していた。

 

 

恐れ見よ。凍て星を貫く無情の瞬突を。

天彗龍『バルファルク』は目の前の石の鎧を纏った女王へ、龍気を纏った翼脚を槍の様に突き刺す。

 

──これも流すか。これも避けるか。

 

女王は、その盾を砕かれながらも突き刺しを流し、お返しとばかりに大量に構えられたボウガンからの弾幕射撃を行う。

龍の体からすればあまりにもちっぽけな弾丸は、そのメタリックな装甲に弾かれる。大剣を構えた二体の人形の振り下ろしを弾き飛ばし、胸部を狙い放たれた剛射を弾き飛ばす。どうして戦闘機を地を這う歩兵風情が堕とせるだろうか?

 

バゼルギウスの爆鱗が貼り付けられたドボルベルクの投擲をクロスした翼脚で受け止め、爆発をものともせずそのまま女王へ投げ返す。

それを器用に糸で受け止めた彼女は、視界を真っ白に染め上げるほどの雷を纏った剣を振り下ろす。

 

バルファルクという生物は、その全身に龍気を纏うことで一切の属性攻撃を防ぐことが出来る。そして、彼の持つ龍気の量は通常のそれを大きく逸脱する。

赫い衣を纏っていると見紛うほどの膨大な龍気は、体内に流れるはずだった電気を全て散らす。

 

餌の補給のために、大地を這っていた蟲を喰らうだけのつもりだった。

だから、予想外の抵抗をされた時点でさっさと次に移るべきなのだろう。しかし、彼はそれをしない。

 

龍気を最大限充填する。紅いスパークを放つ翼脚を正面に構え、その照準を女王へ向けた。

龍気を束ねた光線が放たれる。その光は地面を抉り、浅くない渓谷を大地に作る。

 

間髪入れずにもう一発、さらに三発目。硬直なく放たれた三連続の極太の光線は、しかし女王には届かなかった。

 

──なるほど。

 

一発目を糸を使ってなんとか回避した彼女は、二撃目を鎧とドボルベルクを盾にして防ぎ、次いだ三撃目は粘菌による大爆発により減衰させ、さらに爆発で作った塹壕の中に隠れることでやり過ごした。

 

この瞬間、バルファルクは目の前の存在を『餌』ではなく『敵』として認識した。

この場所に来てから、全ての存在は、一撃か二撃喰らわせれば戦意を喪失し、そのまま喰われるのみだった。しかし、目の前の黄金の女王は違う。

十を超える刺突を喰らい、百に迫る龍気の放出を喰らってもなおその眼は生きる意思を失ってはいない。

 

そうだ。目の前の女王は、かつて戦い、深い傷を負わせ、そして負わされたあの全身がトゲトゲした古龍(同類)と同じ全身全霊を以って潰すべき敵だ。

 

目の前の存在を敵だと認識したバルファルクのギアが、数段上のものへと変わる。

例え龍でない存在が相手でも、(モス)の様に餌としてただ消費されるのではなく、勇敢に立ち向かってくるのであれば全身全霊を以ってそれを叩き潰す。それが礼儀であり、古龍としての矜持。

 

彼がそこまで考えていたかはわからない。しかし、間違いなく気配が変わったのは事実。

女王も、天彗龍自身も同じことを思っただろう。

 

『ここからが、本当の戦いの始まりだ。』と。

一際膨大な龍気の放出と共に、凶星は天へと駆け上がる。そして、流星の如く大地を穿った───

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎

 

 

 

 

 

吾輩である。

ついにハンター達から捕捉されてしまった吾輩である。いや、実はかなり前から捕捉されていたんだったか。

そんな訳で、もう振り切れた吾輩は、ピンチに陥ってる人間を見つけたら救助して印象をあげようと決意した訳なのだが…

 

まず第一に殆ど人間と出会わないのである。いやまぁ密猟者とは出会うけど、商人とか新米ハンターとは滅多に出会わない。それもそうか。師匠に言われるまで人間に気づかれていることにすら気づかないレベルで人間とは出会ってこなかったのだ、今更急に出会う様になる訳もない。冷静に考えるとこの広大な大自然の中でドスランポスより小さい人間と出会う方が無理があるのである。

密猟者とは出会うがな。後は吾輩が手助けするまでもない実力者のハンターとも一度出会った。怒り喰らうイビルジョーが瞬く間に解体されていく姿にははっきり言って恐怖を感じたぞ。

 

そんな一般人が古龍並みに希少な環境の中で、仮に出会ったとしてもさらなる問題がある。

仮にリオレウスに襲われている商人がいたとしよう。そこに吾輩が割って入ったとする。次の瞬間にはこれ幸いと商人は逃げ出しているぞ。もしくは護衛のハンターと三つ巴の戦いになる可能性もある。

仮に乱入してきたラージャンに襲われている初心者ハンターがいたとしよう。そこに吾輩が割って入って、そしてラージャンを倒したとする。次の瞬間には号泣しながら命乞いをするハンターか目の前にいるか、全てを投げ出してモドリ玉を使って逃亡しているかに分かれる。

号泣したハンターを宥めようと近づけばさらに事態は悪化する。酷い時にはそのまま失神する。

 

師匠に慣れきっていて忘れていたが、そういえば吾輩の言葉は普通人間には通じないんだ、ちくしょうめ!

結局友好的な関係を結べたのは大体中級者ぐらいの雰囲気があるハンターだけである。粉塵の力は偉大だ。

でも多分今頃ギルドでは『怪異!密林の黄金の化け物蟷螂!』とか言われてるんだろうな…もう二度とあの密林に立ち寄れなくなったのである。

 

しかも、泣きっ面にクイーンランゴスタ。これやっちまったなぁと肩を落としながら歩いていたらネロミェールがダイナミックエントリーしてきた。お前新大陸以外にも生息してたのかよぉ!よりによって雷+水とかいう吾輩特攻属性持ちな古龍である。本当に勘弁してくださいお願いします。

偶然その時は、吾輩に新しい狩技を教えるために師匠がいたから代わりに撃退してくれたが、吾輩だけだったら全力で逃げることになってたぞ。あまりにも相性が悪すぎるし戦ったところでメリットがねえ!

まぁそんな古龍を軽く撃退する師匠も師匠なのだが。

 

 

師匠には、毎回別れる前に次行く方角と地域だけは教えておいて、何かのクエストがてら怪しまれない程度に密会しているのである。ある程度近くまでくれば後は互いに認識している状態だから千里眼の薬で落ち合える。現実世界だからか、普通に日にちを跨ぐクエストも多い様で助かった。そうでなければ毎回数時間しか時間も確保できなかったであろうし、碌に狩技の習得もできなかっただろう。

お陰で新たに二つ、それも吾輩にとっては切り札級の狩技を習得できた。使う機会が来ないことに越したことはないがな。ちなみに言語の習得は無理そうである。一生師匠以外の人間と対話できないじゃないか!

 

そんな吾輩だが、今は砂漠っぽいところに来ている。

そして、2日前に師匠と別れたことを早くも後悔し始めている。

 

目の前に落ちているのは、全身を爆撃されたかの様な荒れ具合の、『ティガレックス』の死体。しかもちゃんと捕食された跡がある。

周りにもそこそこの深さのクレーターが出来上がっている。

 

この感じはバゼルギウスか。しかも紅蓮滾ってるだろコレ。

古龍級生物の強化個体とか、吾輩戦いたくないよ。だって死んじゃうじゃん。いや、まぁ?でも?吾輩臨界ブラキに勝ってるし?怒りジョーにも激昂ラージャンにも一勝はしてるし?紅蓮バゼルにも勝てるんじゃないか?

…すっごい地面揺れてる。探知範囲外なのに明らかに誰のものかわかる爆発が伝わってくるぞ。

 

 

ま、まぁ周囲に気配はないし要らぬ戦いになる前にここを去るのが吉………だったんだろうけどもう手遅れだな。

地平線の向こうに見えるあれ絶対紅蓮バゼルだよ。しかも絨毯爆撃しながら迫ってくるよ。いや一騎で絨毯爆撃って謎だけどそうとしか形容できないのである。荒ぶってるなぁ。退避、退避ーーーーっ!

 

いや待て。なんかもう一体いるぞ。バゼルギウス以上に強烈な気配を放つ何かが。

戦っている、のか?地平の向こうに、赤く輝く何かが見える気がする。まだ遠くてよくわからない。断続的な爆発音と、それに伴う振動が吾輩の足元を揺らす。

 

不吉な予感がするぞ。というか遠ざかる様に移動しているはずなのに吸い込まれる様にこっち来てないか!?ホーミング爆撃機とかどんな冗談だよ!

数瞬前までは地平の向こうに見えていた爆鱗竜が、今や目と鼻の先だ。

 

紅蓮滾るバゼルギウスが何と戦っていたのかが分かった。考えうる限り最悪の事態である。

それは、銀の翼を持ち、全身から赤い龍気を迸らせる、文明の終わりを告げる災厄の龍。

 

バルファルクじゃねえか。バルファルクじゃねえか!?

爆撃機に続いて今度は戦闘機かよふざけるな。命がいくつあっても足りないのである!

バゼルギウス、頼むから吾輩が探知範囲外まで逃亡するまで粘ってくれよ、吾輩死んじゃう!

 

雨霰の様に降り注ぐ爆鱗をものともせずバルファルクはバゼルギウスに接近すると、すれ違い状に翼脚による刺突をお見舞いし、そのままUターンし今度はその顎を蹴り上げる。

その衝撃で僅かに怯み、バゼルギウスは減速してしまった。それが命運を分けた。

金属が擦れ合うような音と共にその赤は加速すると、爆鱗竜に衝突。そのまま衝突されたバゼルギウスは1キロは先にいた吾輩の隣の地面に叩きつけられ、物言わぬ肉塊と成り果てる。

 

まじか。どんな馬鹿力だよ。というか一瞬で追いつかれたよちくしょう。散歩してたらいきなり音速超えで飛行する古龍とエンゲージするとかどんな奇跡だよ、本当に勘弁してくれ!

 

砂埃が中に巻き上がる。

その砂の窓帷越しに、見下ろす様な冷たい視線が吾輩の体を射抜く。

 

 

 

 

 

 

 

あー、これ吾輩死んだな、うん。

 

 

 

音速以上の速さで飛ぶやつからは流石に逃げられないが!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎

 

 

 

「ピギャアアアアアア(どうせ効かないんだろうけどさぁ!)」

 

爆発性の粘菌を纏った剣尾を燼滅刃の如く振り払い、天眼の如き蒼炎を纏った泡を斬撃の軌跡に残す。

それらは拡散された炎と接触すると同時に連鎖爆発を起こし、膨大な火と水のエネルギーを解放する。そのまま間髪入れず横一文字に青電の大剣を振るい、天からは銀嶺と見紛うほどの大きさの大氷塊が唸りを上げて突き刺さる。

 

ゲネル・セルタス型の装甲に取り付けられた一際大きな大筒が赫い光を一瞬放ったかと思うと、龍属性の一条の光線が、砲身を融解させながら放たれる。砲弾の代わりに滅龍核を込め、それを砕き溢れ出したエネルギーに指向性を持たせることでその破壊力の制御に成功した高出力の龍属性エネルギーが、直前に放たれた四属性と共鳴し、互いに高め合いながら炸裂する。

 

禁忌にしか許されない全属性の同時行使に、本来なら他の属性を喰らい尽くす龍属性と他属性の共鳴。煌黒龍だけに許された術理を、劣化とはいえ偶然再現に成功したことにより、放たれた属性エネルギーは瞬時に数倍に増幅され、天の裁きを地上に再現する。

 

絶対的捕食者たる古龍との絶死の相対という極限状態が吾輩の何かを刺激したのか、無意識下で放たれた最高の一撃は、しかしバルファルクには通用した様子がない。

 

やはりバルファルクに属性エネルギーは通じない、か。

吾輩の攻撃は悉くあのあまりにも濃い龍気の衣に散らされる。僅かについた様な傷は全て氷塊の大質量と剣尾や、爆発による物理的な衝撃に依るもののみ。

すっごい逃げたい。このままだと碌なダメージも与えられないまま嬲り殺しにされちゃうよ吾輩!でも逃亡は無理なのである。

 

最初は逃げようと思った。というか逃げた。

あの時は、バゼルギウスが肉塊にされて次は我が身かと思った。しかし、特に襲われることもなく呑気に肉塊の捕食をバルファルクが始めたのでこれ幸いとバルファルクから逃げ出した。別に吾輩を捕捉した訳じゃなかったんだなぁ、とか考えて全力で逃亡をして5分ぐらい経った頃だろうか。

 

いる。赤い凶星が全力で追いかけてきている。数キロ近く離れたはずなのにもう追いつかれている。

しかもホーミングミサイルかよと言いたくなる正確さで逃げ道を塞ぐ様に龍気弾を放ってくる。

 

この瞬間、吾輩は逃亡を諦めた。いくら吾輩の装甲が、戦車と呼ばれるゲネル・セルタスを再現しているとはいえ音速を数倍する速さで飛ぶ戦闘機からは逃げられないよ、というかそんな速度で動いたら普通の生物は内臓が爆散するんだよ!

 

 

回転運動を織り交ぜながら、左右の翼脚が交互に振るわれる。

恐れ見よ。降り注ぐ、星雨に勝る双刃を。ただ力を込めて振るっただけの攻撃が、空間を飛び越え背後にある崖に軌跡を刻む。

 

一撃で盾の装甲の半分が持ってかれる。糸越しに衝撃を感じる。

だが、この程度なら正面から受け止めず、流せば受けれないわけじゃない!あの砕竜ほど理不尽な火力ではないぞ!…まぁ問題があるとすればこれがただの通常攻撃ということなのであるが。これで吾輩が龍属性弱点だったら今頃死んでいただろうし。

 

 

突然だが、吾輩…というよりアトラル・カ、という種族には基本的に龍属性は一切効果がない。

反対に雷属性が弱点である。そしてバルファルクの使う属性は龍。つまり相性的には吾輩が有利である。有利である筈なんだけどなぁ………

 

龍気、当たったら普通に痛いんだが!?

単純に内包するエネルギーが大きすぎてその熱やら衝撃やらで当たったら怪我じゃ済まない。流石は古龍。勘弁してくれ。

それに、いくら攻撃を流せるとは言っても、それはある程度までの威力の攻撃に限られる。大技に位置するであろう攻撃を喰らえば龍気を抜きにしてもランス使いの人形が一撃で鉄塊に変わり果てるし龍気の噴出により加速された翼脚の突き刺しはグラビモス人形の装甲貫きやがった。防御方法を間違えた瞬間一瞬で吾輩は虫ステーキである。

 

 

「ピギャアアアアア(頼むから有効であってくださいお願いします!)」

 

属性エネルギーが効かないとはいえ、流石に物理的干渉を無効化するほど理不尽ではないことは先の衝突で確認済み。

こんな時こそ人類文明の本領発揮よ。

 

砦もかくやと言った量の大砲から次々と榴弾が放たれ、数門の速射砲から壁と見紛う量の砲弾が放たれる。

瓦礫で構成された巨大な武器の叩きつけは大地を揺らし、それらの大ぶりな攻撃の間を縫う様にして発掘武器が降り注ぎ、また瓦礫に隠れる様にしてハンター人形が奇襲を仕掛ける。

 

時に粘菌を撒き散らし、モンスターの人形たちが肉体を武器に古龍とぶつかり、本物の狩人の動きを間近で見たことでその動きがさらに洗練されたハンター人形達の連携攻撃が続く。

 

バルファルクの翼脚から無尽蔵に放たれる龍気弾と砲弾が大地に滅茶苦茶な破壊痕を残し、大質量の解放と、それを切り裂く龍気の光線が粉塵を撒き散らし、空を割る。空が赫く染まりゆく。

そのあまりにも暴力的な光景を見た古龍観測隊の報告を聞いたある研究員は、後に秘匿された文献の中にこう記したという。

 

『まるで、文献に残された竜大戦、その再現の様であったと。』

 

その日、砂原では断続的に小規模な地震が確認され、多くの小型モンスターが姿を隠し、空には粉塵と灰が舞ったという。

 

互いに、後一手足りない。

今の吾輩では、彗星を砕くには至らない。黒龍を使うか?否。見られていたら終わりである。それに、吾輩の劫火は所詮は劣化再現。その形成に多くの火属性エレメントが関わっている。龍気の衣によりその威力の大部分が減衰されるだろう。

 

砕く…いや、ある。あるじゃないか。吾輩にはあの龍気をものともせずに彗星を砕く方法が。吾輩を穿ったあの一撃が。

辺りを見渡す。周囲には飛び散った粘菌が付着し、怪しい光を放っている。

 

──いける。あの拳なら、貫ける。

 

獣の技を。ただ力だけを突き詰めた野生の一撃を。思い出せ。そして、再現しろ。

その前に、まずは下拵えをしよう。

 

「ピギャアアアアアア(特大の隕石だ、受けれるものなら受けてみな!)」

 

大部分が火薬岩、そしてその表面には爆鱗と粘菌の付着した巨石がバルファルク目掛けて落下する。

同時に、辺りに臨界した粘菌をばら撒くと、隕石の衝突と同時に爆発。エリア全域に付着した粘菌が一斉に爆発して、辺りが一瞬にして灼熱地獄と化す。

 

──これも防ぐか、これでも無傷か…いや、違う!

 

自身の胸部を中心に自身の全身を覆う様にして放った龍気エネルギーの解放が、爆発と衝突しその威力の全てを消滅させた。

しかし、半ば自爆紛いな方法で攻撃を防いだ代償は重かった。

自身さえ傷つけてしまうほどの膨大なエネルギーの解放はその美しかった甲殻を焼け焦げさせ、その体をよろめかせる。

 

自身の身を傷つけながらとはいえ、あの大爆発を防ぎ切ったのは事実。

でもさぁ…バルファルクよ。

 

「ピギャアアアアアア!(そんな有様じゃ、防げないだろう!)」

 

 

吾輩が取り出したのは砕竜の撃滅拳。

外装の両脚の裏に付着させた粘菌を爆発させ、それを推進力に一瞬で天彗龍との距離を詰める。移動方向を変えるつもりはない。ただ力のベクトルは正面へ。小細工もいらない。ただ、吾輩の持つ全ての破壊力を乗せた拳を放つのみ。

より深く踏み込め、より速く前へ進め。より疾く、その拳を振り抜け。

出し惜しみはなしだ。鬼火、粘菌、鬼人薬に覚蟲強化。その全てを載せたアッパーが、バルファルクの胸部を抉る様にして突き刺さる。

 

硬い外殻を突き破る感触と共にその体が天へ浮き上がる。

 

「ピギャアアアアアア!(もう一発!)」

 

天へ打ち上げておいた瓦礫を踏みつけ、体勢を崩したバルファルクの顔面へ右ストレート。

そのまま大地へ落ちるまでの間にひたすらにラッシュを繰り返す。打撃音と呼ぶにはあまりにも硬質な音が響き渡る。

 

「ピギャアアアアアア(砕けろ、バルファルクッ!!!!!!)」

 

全身を隈なく殴られ、糸が切れたかのようにバルファルクが墜落する。

古龍の血が吾輩の金色の甲殻をどす黒く染める。

 

 

「ピギャ(嘘だろ)」

 

 

ゆらり、バルファルクが立ち上がる。

そして、その傷を感じさせないほどしっかりと大地を踏みしめる。

外殻は砕かれ、全身から止めどなく血が溢れている。

顔面の一部は陥没し、翼脚の一部も破壊されている。動くのもままならないほどの苦痛を感じているはずだ。

 

なのに何故かバルファルクの闘志は消えない。寧ろ、高く、より強く研ぎ澄まされてゆく。

傷つけられ、本来の役目を果たすことさえ難しいはずの胸部から溢れる龍気は、どんどんと増殖し、ついには周囲が赤い霧で満たされたのかと錯覚するほどの量に至る。

 

これが本物の古龍。

これが、大自然だとでもいうのか。一度見せた技はもう二度と通じないだろう。…最後まで足掻くぞ。吾輩はまだ死にたくない!

撃龍槍を構え、黒龍の外装を取り出そうとした瞬間、何処からか声が聞こえた気がした。

 

 

──これは、竜の咆哮……?

 

 

吾輩達のものではない何者かの振動を感じる。

何かが、徐々に近づいていくる。

 

いや、マジでなんなんだ?吾輩何も心当たりないが…

砂の先に何か…あれは、角の先端?

 

「ピギャアアアアアア!(ま、マジか、お前がここで乱入してくるのか!)」

 

砂の大地を突き破って、2本の捻れた角を持った竜が現れる。

砂と紺色の甲殻を持ったその竜は吠えると、蒸気を噴き出しながらその角をバルファルクの体に突き立てた。

 

同時に、空から二体の竜が強襲を仕掛ける。

急降下しつつその速度を全て片足に乗せて、強烈な蹴りをお見舞いしたのは全身に逆立つ鱗を持つ竜。

そして、龍気を散らす様に大規模な竜巻を発生させ微細な岩石とともにぶつけたのは、全身に返り血を浴びた赤銅色の竜。

 

セルレギオスに、ベリオロス亜種。

そして、鏖魔に限りなく近い領域まで近づいた、この砂漠地帯で最強の存在。ディアブロス。

 

三体、その誰もが間違いなく生態系における頂点の存在。

知恵を持つことはない彼らだが、我こそが頂点であるという自負はあった。そして、自身たちの縄張りを荒らすあの存在を放っておけば、不味いことになることは悟っていた。自分たちの餌は奪われ、番が殺された個体もいた。

 

竜であれば、その存在を感知しただけで逃げてしまうほどに生物の格が違う存在である古龍。

しかし、彼らは逃げなかった。

 

知恵なき竜であるからこそ、誰が言うでもなく自然に集まった。

この砂漠地帯の生態系による古龍という災害への最後の抵抗。縄張りに入ったというだけなら、目の前の女王も排除するべきなのだろう。しかし、三体のうちの誰も、その選択肢は取らなかった。

 

殺すべきは、目の前の赤き災厄。

 

 

 

 

 

バルファルクは、その翼を構え、一際大きく咆哮する。

 

 

『掛かってこい』

 

とでも言いたげな様子で、全身から龍気を溢れさせた。

 

 

 

 















吾輩「めっちゃ逃げたい」
文字数が想像より多くなってしまったため後半に続きます。

次回あたりの後書きで装備解説とかやりたいな、と思ったり。
『滅龍砲』:リオレウスの骨髄を大量に使用し生産された厄ネタの塊のような兵器。風向き次第で外で使えば一瞬でリオレウスの群れがやってくる。通常種だけならいいけど何十回も使っていると銀色とか白いのとか黒いのとかがやってくるかもしれないから使用は控えたほうが良い。
みたいな感じの。


感想、評価、誤字報告などありがとうございます!大変感謝しています。
アンケートへのご協力ありがとうございました!

次の番外編で使うかもしれない(エイプリルフールでつかうかも)

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