宇宙空間には空気が無い。そして振動させる空気が無いから人の耳になどには決して「音」は伝わらない。時に、孤独感を人知れず、文字通り『静かに』味わいたいなら
俺はしがない星間運送のアルバイト。今は一人、時前の
宇宙は広い、それも想像以上に。
そして人類もそれと同じように多く、しぶとい。
普通広大な土地の中をトボトボ歩いてても人には合わないとは思うけど、ここ数日、いや2−3日は他の船に出逢っている。次に誰かと遭遇したら5艦目だ。めぐり逢い宇宙?まぁまぁ。だが良い出逢いだけじゃない、不穏なこともあった。
無人船。それも過去に人を乗せていた船。今は「載せている」が正しいだろうか。
出逢って3艦目だった。最近よく他の船に遭うなと思いながら軽く挨拶でもしてやろうと通信を試みると、何故か雨の降る音を通信先から受信してスピーカーから出力していた。人の声は無い。あれだ、テレビが壊れた時によくある「ザーザー音」だとか、比喩なんだとかは、違う。
でも通信の応対を録音した音声で済ませたりする船長も居たりするから、その時は間違えて他の音声を流しちゃってるのかなとか考えたんだ。だけど、少し様子がおかしいのに気付いたんだ。最初見た時は船体の影で見えなかったけど、通り過ぎる前に後部確認で後ろを見たら、さっき通信した船の片側、エンジンが無かったんだ。よくよく見ると船体全体がボロついてて、その上船体を守るシールドも積まれているっていうのに展開されてなかったんだ。
もしあの通信、人が返してたのなら内容としては大分不思議だけど、中に誰か居たとしたら中々に危険なんじゃないかって思って船をバックさせてもう一度通信を試したんだ。
*雨の音
少し普通じゃないって直感で感じて、船体の
そうしたら接続したハッチの方から、何か…音が微かに聞こえ始めた。一応の事を考えて銃とナイフを持ってハッチに行き、ノブに手をかけた。微弱な振動、それも機械のじゃなくて、音の振動。手に染みるような、優しくて止まらない感じの振動。何があっても良いように覚悟して、思い切り扉を開けた。
船内中に雨の落ちる音が響き渡っていた。いや、雨が実際にソコに降っているような感触だった。だけど何も降ってはいない。船内のスピーカーから大音量で流してるような感じでも無く。ただただ雨が船内で降って、したたり地面に落ちている感じだった。
内装は別に異常は無かった。ただの生活感のある船。海賊が漁ったような跡も無く、無機質で穏やかな風景だった。
コックピットに向かう。別に大きい船でも無いからハシゴとかで回数行き来するような事も無かったけど、唯一扉があった。重々しい扉。海賊から身を守ったりするのにコックピット室に設置するのもおかしくはない。手をかけ、開けようとした。かなり重い。その触れた瞬間にも船体を伝わって身体に振動が流れていた。だけど…少し雨の音が強まった気がした。
もう一度扉にチャレンジしてみると、さっきとは違いすんなり言う事聞いて空いてくれた。
コックピット室には、遺体があった。
宇宙服とヘルメットを着けたまま、壁にもたれかかるようにして、血を流して死んでいた。俺自身仕事柄海賊に邪魔されたりしてやむを得ず殺害とかが何度かあって、死体には慣れていたつもりだったけど、その時は何故か深いショックを受けた。
静かで穏やかな雨音は、いつの間にか豪雨へと変わっていた。
遺体のすぐそばにはピストルが1丁。恐らくはこれで最期を締めくくったんだろう。そして倒れかかっていた遺体の右手の下に、何かがあった。
一切れの紙だった。
《スター・レイン》
それが何を指し示しているのかさっぱりだったけど、何かを遺そうとしたのは明確だった。
気付いたら雨の音は完全に消えていて、俺も船から離れて順路に着いた。
宇宙で雨が降るってのは聞いたことが無いけど、多分スター・レインは流れ星だとか、流星群とかじゃない
なんだと思った。
それが何なのかは未だにわからないけどね。
だけど、何故かいつかかわる時が来るって気がしてる。
ああ、そういえばアキラって街の雨は良かったな。乾いた土地に浸る雨の泥っぽい匂い。そして雨音。良いマイクで録音したいぐらいだ━━━
《とある船長のスレート》