雨の音   作:檜の棒

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鉄の星

 潮時。か…

遂にならず者(スペーサー)に目を付けられてしまった。スペーサーと言えば「よく放棄された建造物を拠点にする」と有人星系中で伝えられているが、今対峙しているのはそうじゃないらしい。一応義勇軍(バンガード)に救援の連絡を取ったが、スペーサーが採掘場内に侵入してくる方が十中八九先だな。

 

 長々と話している暇なんぞ無いが、後々の証拠と証言、そして私が生きていたという証明の為、こいつ(スレート)に記録しようと思う。

 ふぅ……改めて私はここ〈不毛の土地、火星〉の採掘場で監督をしている。年は2329、月日は…忘れた。シドニアからは1000mとちょっとぐらいの距離だ。いや、この情報は意味が無いな。

 

*激しい爆発音

 

 ……多分入口前に配備していたタレットと攻撃ロボットがやられたのだろう。続いていた銃撃音も止まった。ここも長くは持たなさそうだ。

 続けよう。従業員は全員逃がした。勿論裏口からだ。

私は退却しない。スペーサーの襲撃を許してしまったのは、監督である私の責任だからだ。……まったく、コロニー連合の範囲内だと言えど、安心しきっていた。自分が情けない。

 最初はたまたま彷徨っていたスペーサーが採掘場近辺に現れた事だった。あの時にもっと睨みを効かせておけば…いや、今は懺悔ではない。

最初の遭遇は『ここは採掘場だから近付くと危ないぞ』と外のスピーカー越しに注意喚起し離れるように要請した。その時はそのまま何処かへ行ったが、数日後そのスペーサーが仲間を連れて近くにまたやってきたのだ。

その時は『バンガードを呼べる立場だ、痛い目に遭うぞ』と威嚇して、またそそくさと何処かへと行ったが、その後からが本題だ。

 採掘場の外に置いていたメンテナンス用の軽い用具を何個か盗み始めたのだ。火星には目立ったエネミー(生物)は居ない。だから最初はたまに起きる砂嵐に持っていかれたか、または紛失したかのどちらかかと思っていたが、何者かに荒らされた形跡を見つけてようやくちょっかいをかけられている事に気付いた。

これに関しては部下である従業員の管理の杜撰さが元でもあるが、その元の元は作業員を束ねる私だ。

 

*射撃音

 

 入口の扉を開けて侵入してきたようだ。ロックを仕掛けたはずだが、突破されてしまったか……だが、内部にも一応トラップは仕掛けさせて頂いている。もう少しだけ記録を続けたい。

 これがトリガーとも言える出来事だろうか。休憩に入った従業員が「気分転換」と伝え、採掘場の外に出た時、潜伏していたスペーサーに襲われたのだ。4人体制だった。従業員は所持していたレーザーカッターで何とか応戦し1人仕留めたが、右足に銃撃を受け治療室行きになってしまった。3人になったスペーサーは退却したが、その間際に再度此処を襲いに行くと告げていた。

 一応の為色々と設備を揃え準備していたが、それもついさっき一部が砕かれてしまった。そもそもスペーサーの事だ、本当にまた襲ってくるかもわからない。だが現実になってしまった。こうなったからには、後は私がけりを付ける他無い。幸い、それなりの装備がある。相手の数が少なければ良いのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「火星は鉄の宝物庫、やっぱ採掘場も多いなァ」

 

「あんま浮かれるんじゃないぞ、今回は調査っていうか仕事で来たんだから」

 

「でもよ、ワクワクすんだろ?1年前に襲撃されて完全に放棄する事になってしまった採掘場の調査とか!」

 

「バカ、襲撃してきたスペーサーはもうバンガードに掃討されたとは言え、1年前だぞ。今また何かの巣窟になっていてもおかしくは無い」

 

「へいへい……お?」

 

「どうした、ヒートリーチでも居たか?」

 

「いや、スレートがあった。それもここの監督のだ」

 

「ほう…監督の記録となると報告に追加出来そうな品物だな。ここの監督を今データベースから調べる。待ってろ」

 

 

 

「ご存命だ。だが既に仕事は辞めている」

 

「個人情報の方はあまり詮索かけないほうが良さそうだな」

 

「取り敢えず、回収しておくぜ」

 

「了解」

 

 

[採掘場の監督のスレートを入手した]

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