「えっ、反転術式のコツ?」
「硝子に聞いてもよく分かんねぇんだよ!何だよ!ひゅ~とやってひょいって!訳分かんねぇよ!」
声を荒げる
「そうだね…」
反転術式は負のエネルギーである呪力を掛け合わせ、正のエネルギーを作り出す呪力操作の高等技術である。習得は非常に難しく、高専に所属する術師で反転術式が使用できるのは悟と話している神原千里と千里の幼馴染である
「う〜ん...ひゅ〜ひょいって...感じ...かな?」
「お前の説明も硝子と同レベルじゃねぇか!」
(いや、無茶言うな)
説明しようにも今までなんとなくで反転術式を扱ってきた千里は頭を悩ませた。ほぼ感覚の世界で理論的に説明しようにも(-)×(-)=(+)としか説明出来ず、しかも今のは反転術式と言うものをどう説明すればいいのか一番簡略化させたものだ。
「そんなに声を荒げてどうしたんだい、悟」
穏やかな口調で割って入って来たのは悟と千里の同級生である
「傑!聞いてくれよ!千里にも反転術式のコツを聞いたらよぉ!コイツも硝子と同じような訳分かんねぇ、説明なんだよ!」
「あ〜、あの説明かい?確かにあれは説明にはなっていないね。だけど意外だね、千里は勉強や呪術でも基本的に分かりやすく説明していたから、こういう説明もできると思ったんだけど」
「無茶を言うな、無茶を。なんとなくで使っていた技術を論理的に教えるのって想像の何十倍もむずいぞコレは」
「て言うか千里はその眼があるから反転術式とかの複雑な呪力の流れとか読めるんだろ!ズルだろズル!」
「「お前が言うな」」
そう、五条悟には呪術界の御三家、【
一方、千里には六眼の亜種的な眼があるが、六眼のような緻密な呪力操作ができるわけではないが術式や呪力の流れなど、
◇◆◇
コンコン!
「硝子!ちょっと良いか?」
空が赤く染まり、夕焼けとなっている午後5時頃、千里は幼馴染である硝子の部屋を訪ねていた。呪術高専は男子寮と女子寮で分かれており、双方の寮を挟むように共有スペースがある。共有スペースはソファやテレビが設置されており、休憩スペースも兼ねている。また、共有スペースは食堂も兼ねており、料理することも可能で寮母に頼めば食事を作ってもらうことも出来る。
「どうした、千里?」
「明日の任務の打ち合わせ。今、時間あるか?」
「大丈夫だよ。突っ立てたら疲れるでしょ、部屋入りなよ」
「じゃあ、お邪魔しますよっと」
こうやって硝子の部屋に入るのもよくあることだ。思春期の男子高校生なら羨ましがるかもしれないが俺にとっては日常茶飯事なことだ。家もお隣同士だった俺と硝子は幼馴染でほとんど一緒に居た。小さい頃はお互いの家に泊まることも当たり前で食事の時も、お風呂に入る時も、寝る時も一緒だった。流石に中学になる頃にはお互いに自重し始めたが関係性に特に変わりは無かった。
「で、任務の打ち合わせだっけ?」
「そうそう、ぶっちゃけ打ち合わせは建前で任務終わりの予定決めだよ」
呪霊の任務なんて俺かしたらお遊びでしかない。俺の術式は呪霊に対しては絶対的な優位性を有しているし、術式の解釈次第で俺の術式はさらに化けた。おまけに反転術式も使えるから術式反転も使える。そして、便利なツールみたいに思っていたこの眼もちゃんと訓練し始めてから戦闘が非常に楽になった。ぶっちゃけると呪霊を祓うことは息をするように簡単なことで移動手段も調伏した呪霊を使ったりしているので移動にもそんなに時間はかからない。
「あ〜、そっか。あんたの術式なら呪霊なんてちょちょいのちょいだもんね」
「そそ。明日、硝子も俺の任務に同伴するでしょ。すぐに終わると思うし、また一緒にご飯でも食べて帰ろうよ」
「奢りはもちろん...?」
「はいはい、ありがたく奢らせていただきますよ」
「じゃあ、寿司でお願い」
「はいはい」
俺は苦笑しながら頷いた。高専に来て、呪術師になってからかなり稼いでいると思う。等級の高い任務ほど、危険度は高くなるがその分、報酬は多く、いつも財布の中は潤沢で余裕がある。
「あ!硝子、身体見なくても大丈夫?」
俺は思い出したように硝子に問い掛けた。
「う〜ん、とくには大丈夫だけど。一応、見てもらうか。お願いしていいか?」
「オッケー、後ろ向いとくから、服脱いで、ベッドに寝そべってて」
「ん」
俺は後ろを向き、硝子からOKが出るまで待つ。硝子は高専に来てからタバコを吸うようになった。回復要因として重宝される俺と硝子は仕事が多く、ストレスが溜まった。さらに同級生である五条と夏油の性格の悪さがさらにストレスを掛けることに拍車をかけた。まぁ、五条は単純に口が悪い。初対面で人を雑魚呼ばわりしたり、人をすぐ煽るのだから、ストレスが掛かるの無理はない。夏油も五条ほど口は悪くないが、五条の言ったことを擁護しているように見せかけ、否定せずにただ煽っている。うん、ほんとロクでもないなアイツらは。
以上の理由でストレス発散のためにタバコを吸っているが正直言って、体によろしくないのでやめて頂きたいがストレス発散は人に迷惑をかけなければ個人の自由なのでとやかくは言わない。だけど、体調は心配になるので俺の術式を応用して硝子の体を定期的に検査し、異常があれば治療している。
「いいよ〜」
「じゃあ、見させて頂きますよ」
千里はベッドに近寄った。ベッドには上着と下着を脱ぎ、背中を晒している硝子が居る。普通の男子高校生なら鼻血でも出しているだろうが千里はこの程度で、顔を赤らめたりはしなければ性欲を刺激されることもない。硝子の傷一つ無い白い背中に手を当て、
◇◆◇
私は今、自分の背中を晒して幼馴染に体調を見てもらっている。千里とは家が隣同士で昔からよく一緒に居て、私に慣れていることは分かる。それでも、動揺の一つも見せないのは複雑な思いだ。
小学生なら女との距離が近いのは分かる。中学生でも仲が良ければ、距離も近いだろう。だけど、高校生だとさすがに、関係に変化が生まれる。高校生は大人の一歩前で心身共に一番、発達する時期だ。幼馴染であってもお互いを意識してしまう。だけど、千里には一切それが無い。
私自身、胸も大きいと思うし、美人な部類に入ると思うが、こんなにも意識されないと言うのは正直言って悲しい。逆に言えば、下心も無いから、そう言う心配は無いと言う信頼と安心感はある。部屋に入れるのも許すし、体を触れるのも許してしまう。案外、私も人のことを言えないのかも知れない。
「オッケだよ〜」
私の身体を診終えたのか千里は後ろを向いた。こう言うところとか律儀だよな、ホント。
「ありがと。毎回思うけど、面倒くさくないの?」
「何が?」
私は服を着ながら、千里に話しかける。
「私の身体を診るのは呪力操作やあんたの眼を使ってるとして、身体の異常の除去は術式の応用でしょ?一度に複数もやって毎度大変じゃないの?」
「あ〜、そのことね」
ストレス解消のためにタバコを吸ったり、お酒を飲んでいる私だが、私の体調が崩れないように、私の身体を診て治療するのは大変ではないだろうか?しかも、体調を崩すのは私の自己責任でもある。私のせいで千里に負担を掛けたくはない。
「別に大変じゃないよ。むしろ、呪力操作や術式制御の訓練に丁度良いから、そこまで負担は無いさ。だから、責任感じて気負うなよ」
「...分かるんだ」
「当たり前だろ。何年、お前と一緒に居ると思ってんだよ。お前の考えてることなんて大体分かる」
「...そう」
「俺がしたくてやってんだ。お前が死んだら、俺は悲しい。だから、生きていて欲しい」
「...分かった」
千里には私の考えていることなんてお見通しらしい。言葉を交えただけで私の心を読み取れるクセに
「じゃあ、俺は帰るね。また、明日な〜」
千里は手を振りながら私の部屋を後にした。
─────ボスッ!
千里が部屋を後にし、足音が聞こえなくなると硝子は自室のベッドに倒れ込んだ。枕をギュッと強く抱きしめ、顔に押し付けていた。
「...ずるいって」
呟いた硝子の顔は赤く染まっていた。
◇◆◇
「硝子、おはよ〜」
「おはよ、千里」
硝子が寮を出ると缶コーヒーを片手に千里は任務内容が記載された資料を読んでいた。
「朝食は食べたか?」
「だいじょぶ、簡単な惣菜パン食べてきたから。それに、千里が寿司奢ってくれるんだから、たくさん食べれるようにお腹空かせとかなきゃ」
「なら、さっさと終わらせないとね」
「行くか」と千里は声を掛け、千里は駐車場へと向かう。テクテクと硝子も千里の後を着いて行く。
3分ほど歩くと高専専用の駐車場に着いたが、今回の任務に送り迎えをしてくれる
補助監督とは高専に所属する呪術師のサポートをすることが主な仕事で報告書、術師の送迎、高専の事務処理、帳の構築とやることは多岐に渡る。
駐車場に着くと千里は簡易的な屋根が取り付けられている駐輪場の方へと歩いていく。千里は高専生になってから普通二輪免許を取っている。任務行く際や硝子と出かける時などはバイクを利用している。慣れた手つきで千里は400ccのバイクに取り付けられたチェーンを外し、バイクに掛けられている二つのヘルメットを取り、硝子へと渡す。ヘルメットを被ると千里はバイクへと跨り、その後ろに硝子も乗るとエンジンをかけ、バイクを発進させた。
本来、免許を取ってから1年経過しなければ二人乗りは許されないが2人にとってはどうでも良かった。すでに硝子はタバコと飲酒をやっており、千里も違反等はバイク以外で特にやっていないがバレなければ良いだろうと言う考えをしている。
バイクを走らせること2時間足らず。目的地へと近づいた千里はバイクを近場のコンビニに止めると2人は目的地へと歩き出した。
「そう言えばさ」
「うん?」
「結局任務って何?」
「あっ!そう言えば説明してなかったね」
昨日、硝子の部屋を訪れた千里だが任務の内容はほとんど話していなかった。任務終わりの予定を話し合って寿司を食べることしか決めていなかった。
千里は改めて任務の概要を話す。
事の発端は数名の小学生が行方不明になったことから始まった。行方不明になったのは地元の学校に通う数名の小学生。1年生、2名。3年生、1名。5年生、3名。計6名が行方不明となり大規模な捜索が行われた。警察、消防、公務員など、その数は100名を超えるほどの人数で捜索されたが2週間経っても発見には至らなかった。そして、行方不明から1ヶ月後、廃墟となった神社の境内で意識を失っている小学生3名と血が付着した3名分の子供用の衣服を市役所の職員が発見。
意識を失っていた小学生3名は命に別条はなく、1ヶ月後に復帰。死亡したと思われる3名の小学生は血の付着量から生存の可能性は無いとして死亡扱いとなる。
生存者
小学5年生
小学5年生
小学1年生
死亡者
小学5年生
小学3年生
小学1年生
発見から3日後、警察は猟奇殺人として捜査を開始。
この事件を境に行方不明者が続出。2ヶ月で行方不明者は53名を超え、その内、42名の死亡を確認。
「ヤバすぎでしょ。てかそれって」
「多分、硝子が考えてる通り、土地神の可能性がある。行方不明者のほとんどは神社を中心に半径100mの範囲で消えている。そして死体は無く、遺品の発見場所は荒廃した元神社。これは間違い無く、堕ちた土地神の仕業だ」
「そうなると私が呼ばれた理由は何だ?呪霊の正体が土地神としら1級...下手したら特級案件だろ?千里ならまだしも私にできることって何だ?」
「その心配はないよ。今回の任務は1級案件だけど恐らく呪霊は
硝子を手招きし、神社の方へと2人は足を進めた。