硝子とは幼馴染ですよ   作:ノワールキャット

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雨日和

『今日は関東全体で1日中雨が降ることになるでしょう。雨の影響で1日を通して気温はあまり上がらず、少し肌寒い1日になる為、体温調節がしやすい服装がお薦めです』

 

「げ〜、今日1日雨かよ!気分下がるわ〜!」

 

「確かに1日中雨だと私も憂鬱な気分になるよ」

 

呪術高専東京校共有スペースにて天気予報を見ながら愚痴を溢す五条悟。悟の文句を肯定するのは同級生である夏油傑だ。

 

今日は土曜日で授業と任務はお休みである。術師に休みは少ないが学生は緊急の任務が入らない限り土日は基本的に休日である。

 

「おはよ〜」

 

「はよ〜」

 

間延びした挨拶が二つ。寝巻きの格好で共有スペースに来たのは千里と硝子だ。硝子はまだ目が覚めきっていないのか少しフラフラしている。

 

「う〜さむ」

 

雨が降り、肌寒い今日は体温が低い硝子には辛いようだ。体の小さい硝子はブルブルと体を震わせ、おまけに格好のせいで余計に寒いのだろう。今の硝子の格好は白い半袖に黒い半ズボンだ。

 

「2人ともおはよう。今日は随分と起きるのが遅かったね」

 

コーヒーメーカーで淹れたホットコーヒーを挨拶と一緒に渡す傑。さすが学生一気遣いが出来る男だ。

 

「いや〜、2人で深夜まで映画ずっと見てたからさ〜」

 

「夜更かしは体に触るよ」

 

「へーきだよ」

 

「問題なし」と笑いながらサムズアップする千里。元気な千里とは裏腹に硝子は体を千里に預け、寝言を呟いている。

 

「しょーこー起きろー。朝だよー」

 

「やだ...まだ寝てたい」

 

「硝子、朝からヘロヘロじゃん。どんだけ眠いんだよ」

 

「うるさい...クズその一」

 

「ひっでー」

 

罵倒されたと言うのにカラカラと笑う悟。クズと呼ばれるのは日常茶飯事で傑もクズと呼ばれている。誰かふざけ始め、皆んなで悪ノリに乗る。全員で何かをやらかし担任に怒られる。呪術師と言う特殊な仕事の中、彼らの関係性はそこらの学校よりもずっと良いと言えるだろう。

 

「それよりもさー、今日1日中雨なんだよ。暇で暇でしょうがねぇ」

 

「暇って言われてもね」

 

「そんなにやる事が無いならクズその二と桃鉄でもやってなよ」

 

「何でこんな憂鬱な日にむさ苦しい奴と桃鉄をしなくちゃいけないんだい」

 

「おい!誰がむさ苦しい奴だって!」

 

「「「悟しかいないだろう/お前以外で誰がいる/クズ(五条)しか知らないな」」」

 

3人とも酷い評価である。

 

「ひっでぇ!」

 

「とりあえずうるさい奴は放っておいて朝ごはんでも食べに行こうぜ」

 

「さんせーい」

 

「そうだね」

 

「無視すんなー!」

 

悟の言い分を無視して朝食を食べに行く3人。「置いてくなよー」と言いながら後を追いかける悟。こうやって誰かを弄り倒すのも彼らにとっては一種のコミュニケーションの一つであり、その証拠に「早く来い」、「おせーぞ」と文句を言いながら待っていた。

 

その後、朝食を取った4人は雑談やトランプ、テレビゲームをしたりして適当に時間を潰していたが電話で夜蛾から緊急の任務が入ったことが知らされた。もちろん悟が文句を言っていたが「お前達以外で動ける者がいない」の一言で渋々任務に行った。祀り上げられ、敬われるのが当たり前だった彼にとって頼られるのは嬉しいのである。そして悟にも任務が入ったと言うことは傑、千里、硝子にももちろん任務が入った。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「なーんでせっかくの休日に任務が入るんだか」

 

「ほんとそれ。大して負傷者もいなかったし、絶対クズ共で良かっただろ」

 

車内で硝子と千里はごねていた。2人は自分達の時間を奪われるのが最も嫌いであり、くつろいでいた時に任務が入った為、その気分は最悪である。

 

「も、もうすぐ、高専に着きますので...も、もう少しお待ちください」

 

「「...」」

 

車を運転する補助監督はビクビクしながら少しでも早く高専に着くように速度を上げた。硝子はまだしも術師一の呪力量を誇る千里は抑えられている呪力を解放するだけでも辺り一体は更地になる。呪力に当てられれば人間は死ぬかよくて気絶する。今現在彼は絶賛不機嫌で抑えている呪力が少し漏れ出ている。硝子が近くにいるおかげで漏れ出ている呪力は少量だがその呪力は全て運転席に居る補助監督に向けられている。おかげで補助監督は顔面蒼白で肌寒い1日だと言うのに背中は汗でびっしょりである。

 

─────キィ!

 

「と、到着しました!お疲れ様です!」

 

「あぁ、運転ご苦労様」

 

「ありがとねー」

 

不機嫌な状態でも感謝の言葉は忘れない千里。ひらひらと手を振りながらお礼を言う硝子。彼らは何だかんだで礼儀は欠かさないのである。

 

「地味に疲れたな」

 

「それなー」

 

高専の正門を通り、校舎へと歩く千里と硝子。貴重な反転術式使いである2人は仕事が多い。特に千里は戦闘も出来る為、任務にも駆り出される。学生の中で一番多忙なのは間違いなく千里だろう。

 

「ねぇ千里」

 

「ん?」

 

「ちょっと休んでかない?」

 

「え?校舎までもうすぐだろ?報告書は明日でも問題はないだろうからそのまま休めるだろ?」

 

「そうじゃなくてさ...千里は雨の降る中で寝るの好きだったろ。高専には公園のような施設もあっただろうからそこで一休みしていこうって話だ」

 

「いいのか?」

 

「別にいいよ。私も雨の中で寝るのは結構好きだぞ」

 

「そうか...じゃあ行こっか」

 

神原千里は雨が好きである。雨は雑音を掻き消し、呪霊の声も聞こえなくさせるからだ。リズム良く音を立てる雨音が心地良く、雨の降る中のベンチで寝るのが好きなのだ。

 

「お!あったぞ」

 

「それじゃあ、そこ座ろうか」

 

屋根が備え付けられているベンチに座り、背凭れに体を倒す。

 

高専には校舎、学生寮、グラウンド、訓練場、休憩所etc...様々な施設が備え付けられている。術師達の拠点でもある為、共同の食堂や大浴場もあり、今千里と硝子が居る公園もその一つだ。噴水を中心に花壇や垣根があり、憩いの場となっている。

 

(やっば、疲れが一気に来た。おまけに雨音ですげぇ眠気が...)

 

ベンチに体を預けた途端、今まで溜まっていた疲れが一気に押し寄せて来た千里。

 

「千里、眠いのか?」

 

「...あぁ」

 

「眠いなら寝てもいいぞ。遅くなりそうなら私が起こせばいいし」

 

「...お言葉に甘えてもいいか?」

 

「いいよ。普段から私の身体診てもらってるお礼だ」

 

「...そうか。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらう」

 

「せっかくならこっちで寝るか?」

 

「ん?」

 

千里が疑問に思い、硝子の方に目をやると硝子はにやりと笑みを浮かべながら自身の膝をポンポンと叩いていた。つまり「膝枕(・・)をしてやろうか」と硝子は言っているのだ。

 

「...重くないか?」

 

「問題ないって。あんた小顔だし、大丈夫だよ」

 

「そうか?」

 

「いいから、ほら」

 

「...じゃあ」

 

千里は体を横にし、硝子の膝の上に頭を置く。足が手すりからはみ出すがそこは足を組むことで解決した。悟と傑の背が高いせいで埋もれがちだが彼も高校1年生にしてはかなり背が高い部類だ。

かなり眠気が来ていた千里は横になったことでさらに眠気が押し寄せて来た。ゆっくりと目を閉じると深い眠りに入った。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

ポツポツと雨が地面を打ち付け、濡らしていく。屋根付きのベンチに座るのは2人の男女。

男の方は膝枕をしてもらい規則的な寝息を立てている。女の方は顔を傾けながらクゥクゥと寝息を立てながら幸せそうな顔を浮かべている。

 

「ん?」

 

目を覚ました千里はパチパチと何度か目を瞬かせ、脳を覚醒させると体を起こそうとしてやめた。今の自分は幼馴染に膝枕をしてもらい、その膝枕をしている幼馴染当人は幸せそうな顔をして眠っている。ゴソゴソと懐を漁り、スライド式の携帯を取り出して時間を確認する。

 

─────P.M.4:30

 

千里は頭を悩ませた。どうすれば硝子を起こさずに起きれるかを。もうすぐで5時であり、夏手前の今の季節は冬の時と比べ日が出ている時間は長いが辺りは暗くなって来ており、生憎も今日は雨で雨雲のせいで空は拍車を掛けるように暗くなっている。高専内である為、呪霊の襲撃は心配ないが帰るのが遅くなれば担任が心配するだろうし、同期にダル絡みされるのが目に見えた。依然として硝子は眠っており、起きる気配は無い。

 

「...まぁ、しょうがねぇか。幸いにも雨は弱くなってるし」

 

千里はゆっくりと振動を与えないように起き上がると、ベンチからそっと立ち上がった。

軽く体をほぐすとコートを脱ぎ、そっと硝子に掛けた。そのまま横から抱き抱え、お姫様抱っこの状態にすると静かに学生寮へ向かって歩き出した。

弱くなったとはいえ、いまだに降っている雨は降りかかる前に頭上で術式を展開させ、吸収している。

普段滅多に使わない道を通って、学生寮に向かい悟達と接触しないように静かに戻り、硝子の部屋のベッドに静かに寝かせた。

 

「ありがとう、硝子。よく眠れたよ」

 

千里は誰にも聞こえないよう呟いて部屋を後にした。

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