硝子とは幼馴染ですよ   作:ノワールキャット

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第三話 vs土地神_弐

千里の術式は吸収が主である。順転での運用で得られる効果は呪力を主としたエネルギーの吸収と備蓄。千里の呪力量は呪術師一と言われるほど膨大であり、そこまでの呪力量を得られたのは順転での備蓄によるおかげである。

 

そして、土地神に向けて放った一撃は術式反転によるものである。術式反転で得られる効果は発散と放出の2種類あり、発散は広範囲に特化しており、放出は一点集中に特化している。

 

─────ピシッ!

 

放出の出力は【赫】にも匹敵し、千里の設定した呪力量に比例して出力は大きくなる。ソレを一点集中にすることで更に威力は増す。

 

しかし、今回は威力を最低値にし、呪霊の領域が崩壊に至るまでにする。理由は主に二つある。一つ、まず出力が大きく、余波が凄まじいことにある。回復要因である硝子と生存者まで巻き込む恐れがあるからだ。二つ、術式反転は出力がまだ安定しておらず、非常に不安定であることが挙げられる。

 

─────カシャアァァン!

 

呪霊は破壊された体を修復するために呪力を回す。結果、領域を保てず崩壊を起こした。

 

生得領域が崩壊し、元の風景へと戻る。千里達は竹林に囲まれた開けた土地に居た。千里は呪力感知で呪霊を探り、再び呪力を巡らせる。

 

「イ"イ"イ"!アァッ"オォオオッ"!」

 

「ちっ!今ので祓えてたら楽だったんだけどな」

 

呪霊は変態し、先程のような巨躯は無かったが呪力の密度が高まっているように千里は感じた。人型へと姿を変えている。二対の目に顔面中央に縦一線に開く眼球。腕には鋭く尖った突起物が生えており、先から液体が垂れている。足は四つへと増え、円環を成している。

 

「随分と気色悪い姿じゃねぇか」

 

─────ドガン!

 

呪霊の拳を千里は受け止め、蹴り上げるが呪霊は自ら受けに行き、頭で受け止める。続いて右腕で斬り付けに掛かる。千里は後方へとバク転し、回避する。呪霊の腕から飛び散った液体が地面や雑草に掛かるとジュウゥウと音を立てている。

 

(毒...って言うよりかは強酸性の液体か?何にせよ触れるのは得策じゃないな)

 

「【簡易領域(かんいりょういき)調(ちょう)】」 

 

千里は見て盗んだシン・陰流(かげりゅう)の簡易領域を基とした術式を付与した領域を展開した。千里の展開した簡易領域は言わば、小規模な領域展開。攻撃ではなく守りに特化しているのが特徴であり、相手の術式効果と結界に付与された術式によって攻撃を中和し、相殺することが出来る。

 

─────ドゴッ!

 

千里は後退し、頭上からの攻撃を避ける。呪霊は腕を振り下ろし、叩き潰そうとしたのだ。飛び散った液体は千里の簡易領域によって中和され相殺される。

 

「ギッギギギィイ"」

 

─────【燦燦酸雨(さんさんさんう)

 

頭上でおどろおどろしい球体が生み出されパァンと音を立てて弾ける。弾けた球体は雨のように降り落ちた。千里は術式効果が付与された攻撃だと判断し、すぐさま硝子の元に駆け寄る。

 

「硝子、俺の側を離れるなよ!」

 

─────【簡易領域(かんいりょういき)(めつ)

 

千里は【簡易領域・調】の上位互換である【簡易領域・滅】を展開する。【調】の上位互換の【滅】は術式効果の全てのリソースを簡易領域に付与し、相手の術式効果を絶対(・・)に破壊することが可能となる。この結界は領域展開にも有効である。術式効果が付与された領域内では必中命令が下されており、必殺の術式が術式対象へと襲いかかるが【滅】は結界を中和するのではなく、展開した簡易領域の範囲のみ、術式効果及び必中命令を 破壊(・・)し、防御することが可能である。

 

簡易領域で雨のような攻撃を防ぐ千里だが雨に当たった草木が溶け出し、一部は炎が上がっている。

 

「千里あれって...どう言うことだ?」

 

「強酸性と発火性の両方を持った雨を降らせる拡張術式だな。もし、この拡張術式が術式の副次的効果のようなものだったらまずいな」

 

「まずいって...一体何が?」

 

「術式の実態がよく分からねぇんだ。祀っていた土地神に関する資料だけがどこも全部あやふやで分からなかった」

 

「それ...勝てるの?」

 

「予定変更だ。削ってから吸収しようと思ったけどやめだ。術式反転で一気に潰す」

 

手を上へ上げるように翳す。

 

「出番だぞ、黄龍(おうりゅう)!」

 

瞬間、黄金色の鱗に包まれた龍が出現し、呪霊を上空へと飛ばした。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

千里は黄龍を顕現させ、呪霊を上空へと飛ばす。

 

「黄龍!そのまま削れ!」

 

「ガアァァァア!」

 

黄龍はそのまま呪霊へと噛み付き、削っていく。

 

(黄龍の術式なら確実に削れる。削ったところを術式反転で一気に決める)

 

黄龍の術式は他者へのエネルギー干渉を可能とする。干渉したエネルギーを黄龍は自在に操ることが出来、黄龍にエネルギーを供給することが出来る。そして、黄龍自身がとてつもない呪力量を誇り、生半可な攻撃は通さない硬度を持っている。

 

「叩き落とせ!」

 

─────ドガン!

 

黄龍が呪霊を叩き落とし、千里の上へ落下してくる。

 

─────パキン!

 

簡易領域を解除し、銃の形を作り、構える。【簡易領域・滅】は確実に術式効果から守ることが出来るが代わりに展開中は術式が使用不可能になる。

 

「確実に潰す」

 

術式反転を撃つ構えを取り、タイミングを伺う。呪霊も口元に呪力を集める。

 

「呪力の塊を放つつもりか」

 

(呪力の総量は俺のほうが上だ。術式効果を付与させたわけでもない...特段警戒する必要はないだろう)

 

呪霊は呪力を練り上げ、呪力の塊を形成していく。圧縮された呪力を一気に解放し、千里に向けて撃ち放った。同時に千里も術式反転を発動する。

 

─────ドガン!

 

凄まじい衝撃波が発生し、強風と呪力が吹き荒れる。千里は後ろに飛び退き、その場で踏みとどまる。

 

(どうなった?呪力が入り乱れて全く分からん!)

 

─────【領域展開(りょういきてんかい)

 

「!?」

 

千里は感じ取った。突然の呪力の高まりを。そして...それが意味するのは...。

 

─────【燦燦髑髏(さんさんされこうべ)

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

ほぼ、本能だった。頭で鳴らされた警鐘は死の危険を警告し、直感のまま動いた。優先したのは非戦闘員の退避。硝子と生存者2名を領域展開の結界外に出すため、黄龍を顕現させ、押し出した。

 

結界が構築され、千里を包む。呪霊の心象風景が形成され実態が顕となる。

 

─────【領域展開(りょういきてんかい)燦燦髑髏(さんさんされこうべ)

 

人間の背骨の形を模し、縦一直線に伸びた骨のような大樹。横から枝分かれするように骨が伸び、先には頭蓋骨が吊るされている。そして、その骨のような大樹を取り囲むように頭から血を被ったような白い鳥居に囲まれた禍々しいオブジェが形成されていた。

 

呪霊は禍々しいオブジェの前で直立しており、呪霊の胴体に風穴を開けたと思われたが風穴は開いておらず、胴体に印を描いていた。

 

領域展開とは術式の最終段階であり、呪術戦の極致である。術師の中にある生得領域...いわゆる心象風景を結界という形で体外に創り出し、対象を閉じ込め、その結界に術者の生得術式を付与する術師の奥義。

 

領域内では環境要因による術者のステータス上昇、領域内で発動した術者の術式の絶対命中の主に二つの効果がある。

 

まず、前者に関しては領域内は言わば『術者の精神世界』もしくは『術者の術式の中』である為、術者は自身の能力をさらに強化して遺憾なく発揮出来る上、術式のポテンシャルを引き出すことも出来る。領域内は術者自身が最も行動しやすいホームグラウンドのような環境であり、術式の発動速度の上昇、術式効果や能力の強化などもされる。

 

後者は術式の付与された領域内に対象がおり『すでに術式が当たっている』ということになる為、領域内での術式に基づく攻撃は必ず当たるのである。

 

強力な術である反面、デメリットも大きいのが特徴でもある。そんな特徴は主に二つある。まず一つ目は領域展開には莫大な呪力を消費し、基本的に1日に何度も使うことは出来ない。しかし、膨大な呪力量を持つもしくは呪力操作技術が高く、呪力消費量が限りなく0(ゼロ)であれば理論上は可能である。二つ目は領域展開の起動は術式そのものに大きな負担がかかり、領域の解除後は術式が焼き切れ、一定時間術式が使用困難な状態に陥ってしまう。

 

(領域展開!?生得領域を展開していたから出来るとは思っていたが...そうか!あの高出力の呪力放出はこれを隠す為のブラフか!)

 

「...使った方が得策だな。情報量が凄まじいからあまり使いたくなかったけどな」

 

─────【千里眼(せんりがん)

 

千里の両眼が鮮血のように赤く染まり、呪霊の術式を丸裸にする。

 

千里眼は五条悟の持つ六眼と同じく特異体質のようなものであり、その能力は六眼以上に呪力を詳細に読み解くことが可能な眼である。呪具や結界などを用いて、視認を妨害したとしても正確に見ることが可能で相手の細かな動きや高速に動く物体すらも見切る異次元の動体視力、内部構造を明らかにする透視能力。だが、発動中は常に千里眼が捉えた視覚情報を直接脳に伝える為、発動中は凄まじい負荷が脳に掛かるのだ。

 

(この術式は炎に関するものか?という事は軻遇突智(かぐつち)と言った教派に当たる宗教だったのか?)

 

「モ...エ...ロ」

 

「?」

 

「モ...エ...ロ。モエロ!モエロ!モエロ!モエロー!」

 

「!?」

 

片言だがその意味はしっかりと聞き取れた、強い意志が込められた言葉を呪霊は発したのだ。

 

─────【シン陰流(かげりゅう)簡易領域(かんいりょういき)

 

千里はすぐさま簡易領域を展開した。相手が炎の術式を持つ以上、体が突然発火する事だってあり得るからだ。何せ領域内での術式を基とした攻撃は必中なのだ。ただでさえ殺傷能力の高い必殺の術式を必中必殺へと昇華させる領域展開は厄介なこと極まりないのだ。

 

「さて...どう切り抜けるか」

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