硝子とは幼馴染ですよ   作:ノワールキャット

5 / 12
第五話 合同任務

「明日、お前達には4人で任務に行ってもらう」

 

静かな教室内で夜蛾は生徒4人に告げた。

 

「はぁ、任務?」

 

「4人でですか?」

 

「あぁそうだ。今回の任務は地方で起きた神隠し(・・・)についてだ」

 

「「「「神隠し?」」」」

 

「そうだ」

 

夜蛾が淡々と任務の概要を話し始めた。

 

今回の任務は東京郊外の地方で発生したらしい。

最初の行方不明者は東京都内の大学生立花優斗(たちばなゆうと)。宗教学科の大学で信仰や伝承を調べるサークルに所属しており、山梨県△市天成山(そらなりやま)にサークル活動で赴いたと言う。下見の為に天成山に入山し、音信不通になったのだと言う。その後、サークルメンバーが5名で探しに天成山に入山したが3名が行方不明となり、警察へ通報。

 

1人目の行方不明者が出てから1ヶ月後、天成山の麓で意識不明の大学生1名を保護。すぐさま病院へ搬送され、容態を確認。診察の結果、軽度の栄養失調と擦り傷や切り傷、一部の記憶障害を確認し、それ以外は心身共に安定しており、命に別状はなし。

 

更に3日後、天成山下流で地元住民が行方不明となった大学生の物と思われる所持品を複数発見。中身を確認した所、携帯、学生証、保険証、保存食、飲料水、上着などがあり、学生証や保険証から行方不明となっていた立花優斗、加奈江宗谷(かなえそうや)を確認。

 

後日、窓により呪霊の存在を確認し、準2級術師を中心に複数の補助監督で調査した所、△市特有の土地神による事案だと判断し、1級案件とした。

 

「今回の任務は天成山で発生した呪霊の究明と解決が主な任務だ。そして行方不明者も保護することも任務だ。もし、死亡していた場合は遺体の回収をすること。以上だ、心して掛かるように」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「土地神ねぇー...めんどくせーな。明日の任務バックれていい?」

 

「ダメに決まってるだろう。先生が言うには今回の任務は本格的に調査したそうだ。調査した結果、1級以上の呪霊が居ると判断した上で私達に任務が回って来たんだ」

 

「はぁー...こんな任務、傑や千里でもどうにかなるんじゃねーの?」

 

「それはないと思うぞ」

 

「えっ?」

 

2人の会話に混ざった千里は一つの資料を持っていた。

 

悟、傑、千里の3人は1年生の時点で既に準1級術師となった天才。この3人が全員行くこともないだろうと思っていた悟は素っ頓狂な声を出した。

 

「△市と天成山について調べてみたが結構凄いことが出て来たぞ...聞くか?」

 

資料を片手に真剣な表情で千里は聞いて来た。いつも以上の真剣な様子の千里に悟と傑は息を呑んだ。

 

「...内容は?」

 

「天成山は山全体が禁足地(・・・・・・・)となっているんだ」

 

「山全体が禁足地?」

 

「待ってくれ、確か△市は山に囲まれてるだろう。そうだとすると、他の市や街に移動する時はどうするんだ?」

 

「どうやらちゃんと定めた道があるらしいぞ。山を越えなくても行くことは出来るがかなりの遠回りをすることになるみたいだけどな。天成山にある山道を現地の人は巳南山道(みなさんどう)と呼んでいるそうだ」

 

「巳南山道...」

 

「何でも『蛇のように曲がりくねっている』、『南に位置する』これが名前の由来だそうだ」

 

「他はなんかあんの?」

 

「他は...天成神(そらなりがみ)って言う伝承だな」

 

「「天成神?」」

 

「あぁ、△市に伝わる神様の伝承だそうだ」

 

天成神、それは天気を操る山の神様。雨を降らせ、作物の成長を促す天気と豊穣の神様。

 

ある時、雨が降らず、日照りが続いた村があった。作物が育たず、死人が増える中、村の神社の巫女が当時、名前の無かった現在の天成山に入り、己の身を犠牲に雨乞いを願った。巫女の願いは神に届き、翌日にはこれでもかと雨が降り、村の人々は救われた。それ以来、空、天気の神様として天成神として崇め称え、己の命と引き換えに村を救った巫女の追悼式を行う風習が生まれた。

 

「話を聞く限り天成神って言う神様が呪霊として顕現したのかな?」

 

「どっちかって言うと土地神じゃないか?」

 

「山の神って村の連中は言ってたんなら神霊だってあり得るぞ」

 

「生贄で生まれた呪霊って言う解釈も出来るぞ」

 

生贄、巫女、山神、土地神、神霊...天成神を元として生まれた呪霊は間違いないだろうが巫女のことが頭に引っ掛かる3人。伝承の話は脚色されているんじゃないかと思うが情報が無い上に確証も無い為、一旦この考えを頭の中から消去した。

 

「いずれにしろ1級案件の任務だな」

 

「1級だとしても3人も必要か?回復は別に千里でも出来るし、硝子連れてく意味が分かんねぇ」

 

「慎重なんじゃない?もし、戦闘になったら怪我人なんて見れないだろうし、俺はそんなに医療知識知らないからな」

 

「とりあえず明日になったら現地に行くことになるんだし、後はその場で調べれば良いんじゃないかい?」

 

「それもそうだな」

 

「ここでいくら議論しようと解決出来ないだろうしね」

 

現時点で分かることは何も無いだろうと思った3人は解散し、明日の任務に持ち越した。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「狭い」

 

「おい、五条もっとそっちに行け」

 

「無理だわ!これ以上行けねぇよ!」

 

「夏油、お前1人で抜け駆けしやがったな」

 

「何のことかな?」

 

悟、傑、硝子、千里は山梨県△市の任務に向かう為、補助監督の乗用車に乗っていた。

傑は助手席に、後部座席に悟ら3人が乗っている。3人は余裕で後部座席に乗れるが如何せん悟の図体がデカい為、ぎゅうぎゅうの状態だ。硝子は小柄な体躯な為、特に問題は無いが千里は別だった。悟や傑のように体が大きいわけではないが悟が席を半分近く占めているせいで狭いのだ。

 

傑はこんなことになるだろうと思っていた為、一足早く今回の任務の担当となった補助監督の元に行き、一人分のスペースが確保されている助手席に乗り込んだのだ。

 

「千里、大丈夫か?」

 

「大丈夫だけど...窮屈だな」

 

「...そろそろ任務について説明してもよろしいでしょうか?」

 

「ちょっと待て...そうだ!千里、ちょっと上乗るぞ」

 

「ん?上?」

 

硝子は良い案が思いついたのか千里の許可も取らずに移動を始めた。千里が疑問に思っているのを後目に硝子は千里の膝の上に座る。

 

「よし、これで問題ないな」

 

「あー、上って膝のことね」

 

「傑...こいつらナチュラルにいちゃつき始めたぞ」

 

「いつものことだからね。気にしたら負けさ」

 

兎にも角にも硝子が千里の膝の上に乗ったことでスペースが生まれ、そのおかげで千里は窮屈さから解放された。硝子自身そこまで重いわけではないので千里には何も負担にならないのだ。なんなら中学生の時は自転車で二人乗りして学校に登校していたのでとくに支障はないのだ。

 

「えーっと...任務の説明をしてもよろしいでしょうか?」

 

「構いませんよ、説明をお願いします」

 

「では、今回の任務は天成山で起きた神隠しの事件を解決してもらいます。神隠しを引き起こした原因の解明と解決、この二つが目的となります」

 

「被害者はどうすればいい?」

 

「被害者に関してですが上層部はもう生きてないだろうと見切りを付けているようです。生存していたなら速やかなを保護をお願いします。もし、死んでいたならば遺体の回収をお願いします」

 

「他には何かありますか?」

 

「そうですね...夜蛾1級術師からは大学生のことについて話されていたと思いますが改めて調べてみたところ地元住民の間でも行方不明者が出ているようです。行方不明者は高校生が2名、会社員が3名、公務員が6名確認できました」

 

「11名か...結構な被害者が出ているな」

 

「はい、なので早急な解決をお願いします」

 

「分かりました」

 

「まず、聞き込みから始め原因を探っていきます。ある程度予測がついてから天成山に突入してください」

 

「直接はダメなのかよ?」

 

「五条、恐らく上層部が呪霊の発生原因を徹底的に調べろとでも命令されたんだろ」

 

「その通りです、上層部は今回のことに関してはかなり慎重になっている様子でして」

 

「はぁー...相変わらず臆病なジジイ共だな」

 

「いえ、何でも今回のことに関してはかなり特殊だそうです」

 

「「「「特殊?」」」」

 

「はい、呪霊を確認したのは窓ですが確認した窓は△市の市民ではありません」

 

「はっ?」

 

「「うん?」」

 

「どう言うことですか?」

 

「つまりですね、△市の窓が確認した(・・・・・・・・・)のではなく△市以外の地区の窓が確認した( ・・・・・・・・・・・・・・)と言うことです」

 

「「「「...?」」」」

 

「それはおかしいと言うことで徹底的な調査を命じられたんです」

 

「なるほど」

 

「それは確かに妙だな」

 

「まもなく△市に到着しますので聞き込みをお願いします」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「どうだった」

 

「俺んところは成果なーし」

 

「私もだ。硝子と千里は?」

 

「「こっちもなーし」」

 

△市に訪れていた悟ら4人は神隠しの事件について聞き込みをしていたが大した情報を得ることが出来なかった。

 

「目撃情報はあったけど山に行くことしか分からなかったな」

 

「これ以上分かることは無さそうだね」

 

「なら、一回補助監督の所に戻るか?」

 

「それでいいんじゃない。どうせすぐ解決しないだろうからって長期滞在許されてるし」

 

この市の地区の窓が観測出来ず、△市以外の窓が呪霊を観測出来た理由が不明だったことから高専生は長期滞在が許されていた。△市の外で観測出来たと言うことは呪霊の呪力が強いことが原因だろうが尚更、この地区の窓が観測出来なかった理由が分からないのだ。

 

「最後に悟と千里で山を確認してみてくれないか?」

 

「何で?」

 

「夏油は居るかどうか白黒付けたいんでしょ」

 

「あー、なるほどね。まぁ、居るかどうかぐらいはっきりさせとくか」

 

傑の意見に悟と千里は賛成し、天成山へ向かう。

 

天成山に到着し、手始めに呪力感知で山を探ってみるが特に何か見つかるわけではない。次に悟がサングラスを取り、六眼で見る。

 

「どう悟?」

 

「山全体が呪力で満ちてんな、それ以外は分かんねぇ」

 

「じゃあ、千里の出番だな」

 

「はいはい」

 

─────【千里眼】

 

千里の目が赤く染まり、千里眼が発現する。

 

「...山の中腹辺りか?呪力が濃い...気がする」

 

「それだけ?」

 

「それだけ」

 

「千里眼でも呪霊がいるか分かんねぇのかよ!」

 

「どうやらこれは私達が思っている以上に面倒臭いことになりそうだね」

 

「...取り敢えず、補助監督と合流してホテルに向かおう。今後の予定やその他諸々はその時にでも決めよう」

 

「そうだね」

 

情報が少ない今現在、山へ突入するのはあまりにも無謀だった。六眼以上の解析能力を持つ千里眼でも呪霊が居るかどうか断定出来なかったのだ。最低でも呪霊の正体を突き止める必要があり、贅沢を言うなら呪霊の発生原因を知りたいのが現状である。

 

ひとまずホテルへ向かい、今後の予想と呪霊への対策はホテルで行うことになった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。