硝子とは幼馴染ですよ   作:ノワールキャット

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第六話 合同任務_弐

「こちら皆様の鍵となりますので無くさないように気を付けてください」

 

清潔感溢れ、アンティークの調度品が飾られ、気品の高さを醸し出しているフロントでスーツに身を包んだ女性の補助監督が真っ黒な制服に身を包んだ4人の男女にルームキーを渡している。

 

ここは山梨県△市の市外周辺に位置するホテルである。悟、傑、硝子、千里は山梨県△市で起きた神隠しの事件について調査の為に訪れていた。悟の六眼、千里の千里眼でも呪霊の存在を確認することが出来なかった為、元々予約していたホテルで呪霊への対策をすることにした。

 

「では、朝8時にフロントに集合してください。それでは、私はこれで」

 

チェックインを終えた補助監督は受け取った四部屋の鍵を悟らに渡し終えると小走りで離れて行った。

 

「取り敢えず、荷物を部屋に置いてこようか」

 

「この後どうする?」

 

「どっか食べ行くか?」

 

「だったらこのホテルで済まそうよ。レストランくらいあんじゃねぇーの?」

 

「残念だけどこのホテルにレストランはないよ」

 

「あ、ないんだ」

 

「まぁ、地方のホテルだしね。近場の飲食店探しといたからそこで食べよう」

 

ポチポチと携帯を片手に千里が話す。宿泊施設にレストランがないと予想していた千里は近場の飲食店を探していた。

 

「じゃあそこで食事と今回の事件について会議しよーぜ」

 

「珍しいな五条。お前がそう言うなんて」

 

「いや...俺の六眼と千里の千里眼でも確認できなかったんだから、一筋縄じゃいかねぇと思ってよ」

 

「常日頃からそうしてくれるといんだけどね」

 

「五条に言っても無駄だろ」

 

「クズには一生出来ないことだろ」

 

「お前らひっでぇなぁ!俺の評価散々すぎるだろ!」

 

「「「普段の行いだよ」」」

 

何を隠そう、五条悟は学生一の問題児であり、高専に留まらず、呪術界全体の共通認識になっている。

 

不満がある悟だが自分がいつも好き勝手にやっている自覚はある為、反論は出来なかった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

訪れたのは昭和のようなレトロな雰囲気を残す古風な飲食店で開業して50年以上になる。地元から親しまれ、お好み焼きが人気な飲食店だ。

 

悟は目を輝かせ、ワクワクしていた。何せ悟は御三家の一角である五条家で甘やかされて育ったのだ。およそ400年振りとなる六眼と無下限呪術の抱き合わせで底知れぬ呪術師としての才能に千里を下回るが他とは一線を画した圧倒的な呪力量。当然、手塩を掛けて育てられた。そのせいか俗世の知識に疎く、金銭感覚も大きくズレているのだ。傑、硝子、千里と関わったことにより、自身の知らない物に触れ、五条家の屋敷で暮らしていた時よりも楽しんでいる。

 

「それで天成山はどうする?」

 

「出来るなら次の被害者が出る前に解決しておきたいが...肝心の呪霊が見つからないことには何もしようがないね」

 

「まさか俺の眼でも見れないなんてな、どんな方法を使ってるんだか」

 

「千里眼だったら呪具や結界で隠していても見えるはずだろ?何で見えねぇんだ?」

 

4人は頭を悩ませた。五条の六眼は特定の状況下なら殆ど機能しなくなるが千里眼はそれすらも無視して見通すことが可能だからだ。

 

「伝承から考えれば生贄によって生まれた呪霊と考えるべきかな?」

 

「いや、だとしたら今回のようなケースは起きないはずだ。大人数ならまだしも死んでるのは巫女1人だけだろ」

 

「だけどその巫女が死んでどれくらい時間が経ってるのかによってまた変わるはずだ」

 

「千里、あの伝承は何年ぐらい前か分かるかい?」

 

「いや、分からん。そもそも天成山自体の認知度が低すぎて、情報が見つかってもあんま当てにならん」

 

「せめて、巫女に関して何か分かればいいんだけどな」

 

「結局、発生原因が分からないってことだろ」

 

悟、傑、千里の3人が話し合いを進めて行くが硝子の一言にぐうの音も出ずに押し黙った。話し合いは平行線で呪霊の発生原因に関しては有力な仮説を立てることは叶わなかった。そもそも、天成山、天成神に関する有力な情報及び資料が少なく、見つけたとしてもあまりの知名度の低さから信憑性が皆無で千里が見付けた山道や伝承の話もたまたま見つけた石碑の画像を読み解いたもので、後に石碑の場所が△市の管理する物だと分かってから信憑性が持てた物だ。

 

「確かに硝子の言う通り今の情報だと原因は突き詰められないな」

 

「聞き込みして郷土資料で探すしかなさそうだね」

 

「めんどくせぇーし、いっそのこと俺が特攻して呪霊祓ってやろうか」

 

「「「やめてくれ」」」

 

「何でだよ!」

 

自分を最強だと信じてやまない悟は意を唱えた。

 

「お前、前それで呪霊削りきれずにガス欠になっただろ」

 

「うっ」

 

「私との任務で加減を間違えて建物を壊したよね」

 

「うっ」

 

「術式を酷使しすぎたせいで体壊してオフだった私を呼び出したよな」

 

「うっ」

 

術式が強力な為、悟は任務では独断専行が非常に多い。その上に蒼の加減を間違えて必要以上の損害を出すことは日常茶飯事だ。3人が先ほど言ったことも全て事実でこう言った話ならば、まだゴロゴロ出てくると胸を張って言えるレベルでだ。

 

こうして3人から何本物釘を刺された悟は「単独行動はしない」と渋々頷いた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「ねぇ、千里」

 

「ん?」

 

「今回の任務...どう考えてるの?」

 

ホテルの一室で硝子は千里はソファーに座りながらトランプをしていた。千里ならある程度、事件の真相が分かっているのではないかと思った硝子は千里の泊まっている部屋に訪れ問い質していた。

 

「そうだな...確定ではないが二つの可能性を考えている」

 

「その二つは?」

 

「一つは五条が言っていたように巫女を人柱にしたことで呪霊が生まれた」

 

「でもたった1人で1級相当の呪霊を生み出せるのか?」

 

「出来ない...とも言い切れないな。発生要因が数百年前だとした場合、時間を掛けて今の呪霊が形作られたことになる。でも相当の思いがなければ不可能だろうな」

 

「二つ目は?」

 

「この事件の裏に呪詛師が居ること」

 

「!?」

 

呪詛師とは呪術師とは正反対に位置する術師達の総称で呪術を私利私欲に使うようは犯罪者のことを指している。等級も術師同様、特級、1級、2級、3級、4級の五つに分けられている。呪術高専で確認されている呪詛師は全員捕縛もしくは即刻処刑するように伝達されている。

 

「俺はこの二つが最も可能性が高いと考えている。呪詛師が手引きでもしてない限り、土地神クラスの呪霊が発生するとは到底思えないからな。だが...もし、一つ目が原因だった場合はかなりまずいぞ」

 

「どうして?」

 

「伝承話では巫女が望んで犠牲になった(・・・・・・・・・・・・)ように書かれているが巫女が無理矢理生贄にされた(・・・・・・・・・・・・・)可能性がある」

 

「それって...どういう...」

 

「強制的に人柱にされたってことだ。もしそうだとしたら巫女の思いが怨霊となり、土地神の伝承話で形作られた呪霊を依代として発生したかもしれない。現に被害が出始めたのはここ数ヶ月前だ」

 

「じゃあ...」

 

「でも確証がない。もし、先言ったのが呪霊の発生要因だったらどうしてこうなったのか突き止めなくちゃいけない」

 

(もし、これが事実なら相当質が悪いぞ。何せたった1人で土地神クラスを発生させたことになるからな...だとしたら、今になって動き始めたのは何故だ?やはり、呪詛師も関係しているのか?)

 

結論は出ない。ゴールまでの中継地点はあるがそこに至るまでの道が分からない状態だからだ。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「な、なぁもうやめよう。ここで引き返そう!」

 

「何言ってんだよ、佐藤。どうせ何も出やしねぇよ」

 

「そうそう、どうせ噂話だから平気だっての」

 

脅えた青年と携帯で辺り一体を録画する2人の青年。彼ら3人は天成山の森に囲まれた巳南山道を歩いていた。神隠しの森で化け物が出ると言う噂を確認する為に訪れていたが佐藤と呼ばれた青年は乗り気ではなかった。昔からこう言ったヤバそうなのは関わらない方が良いと相場が決まっており、現に佐藤はこういうのには非常に敏感だった。

 

「お、俺は帰るからな!絶対にだ!もう無理だ!付き合ってられない!」

 

─────ダッ!

 

「おい逃げんのかよ!この弱虫野郎!」

 

「こんなことにビビんなよ!」

 

歩いて来た道を走って帰って行く佐藤に向かって「弱虫」だの「ビビり」だのと罵るが一向に止まる気配はなかった。姿が見えなくなったところで2人はため息をついて無視して先を進むことを決めた。

 

「いや〜、にしても佐藤の慌てっぷり凄かったなw」

 

「ほんとほんと〜、何をビビってんだよって話w」

 

「「ギャッハハハハ!」」

 

「なぁ、次どこ連れてく圭太?」

 

「あ!次は廃屋に連れて行こうぜ!」

 

「それいいな!じゃあ次は誠也も連れて行くか?アイツもこう言うの好きだろ」

 

「...」

 

「ん?圭太?どうした?」

 

突然、返答がなくなった為、後ろを振り向くが圭太の姿は何処にも見当たらない。「便所か?」と携帯のライトを付け、辺りを照らすが足跡さえも見付からない。

 

─────ドスッ!

 

「いって!何だよ一体!」

 

背中に何か塊がぶつかり、怒鳴り散らしながら後ろふを振り向くと...

 

─────ゴロリ

 

「はっ...?」

 

先ほど楽しく喋っていた圭太の生首が転がっていた。ドクドクと血を垂れ流し、その目からは生気を感じることが出来ない。

 

「な、何で...?」

 

「キャハハハ」

 

「!?」

 

「シズカ、ニ」

 

後悔した。佐藤の言う通りにあの時に引き返すのが正解だったかもしれない。今、自分の目の前には薄ら笑いの笑みを張り付けた上半身と下半身に分かれた圭太の身体を持つ異形の怪物が居たのだから。ソイツは男の方へと手を伸ばしてきた。恐怖で体が動かない男は涙を流すことしか出来ず...

 

「うわぁあああ!!!!」

 

山全体に響くほど絶叫した。

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