ある女の回顧録   作:狐腹劇場

1 / 1
AC6が楽しすぎて4週目に入ったので不定期更新で新作を書いて行こうと思いました。
投稿2作目なのでまだまだ拙い文章ですがよろしくお願いします。
自己解釈が妄想なのか捏造なのか解らない所も多々あると思いますので、寛容な心で読んで頂けると幸いです


1

ボロボロのシャワーで水を浴び、重い体を引きずるようにして鏡に向かう

そこそこに育った胸に目を向け、溜息をひとつ

正直邪魔

続いてコーラル焼けで赤く染まった髪を見る

毛先には元の青色がまばらに残るそれを確認し、だるそうに頭を振って水気をとばす

軽い素材の貧弱なシャツに袖を通し、『4』と書かれたハンガーへと向かう

大半のパーツがくすんだ灰色に染められた愛機

その足元に寄りかかり、チューブに入ったドロドロの流動食を胃に流し込む

 

未だにこの身体の機能はあれこれ死んでいる

特に消化機能がアウトで固形物は一切無理

目を覚ましてしばらくは、水すら受け付けずに栄養注射だけでこの身体を維持していたな

……あの人は苦虫を嚙みつぶしたような顔でそれを見ていたけど

それでも必要な物だといって用意してくれていた

 

「思えば最初から優しい人だった…私がそれを理解できるほど、できた人間じゃなかっただけで」

 

目を閉じると初めてこの惑星…【ルビコン3】に降り立った時の記憶が蘇る

 

-----------------------------------------------------------

 

『621 もうひとつ反応を検出した』

『マーカー情報を送る 当たってみろ』

 

通信越しに流れる私の所有者の声

ハンドラー・ウォルターからのミッション更新が下される

それに合わせてモニタ上に表示される新しいマーカー

 

「……うかい」

 

冷凍睡眠から解凍された後、多少のリハビリで身体は動くようになったが

喉の筋肉はまだまだまともに動くとは言い難い

喋ろうとする言葉は掠れ、中途半端になった単語で返答し、機体をマーカーへと進める

 

ここまでの戦闘で各武装の大体の感覚は掴んだと思う

 

マーカー前の上昇カタパルトの周囲に居る敵機は3体

強烈に吹かしたブースターで接近しながら真ん中の敵に右手のライフルを数発叩き込む

即座に左の敵をサイトの中心に据え、ミサイルのロックを確認しトリガーを引く

銃弾が背後から飛んでくるのは右の敵が背後に回ったせい

だけどこちらの強襲でパニックになったのか、狙いがめちゃくちゃ

そのまま振り返らずにバックで移動し、突っ込んできた敵とすれ違った瞬間に左腕のブレードで背後から切り捨てる

 

「…(はい)じょ、…(か)んりょう。…(もく)てきちに、…(む)かう」

 

いざという時に会話ができないと対処が遅れるから

「普段から状況報告は出来るだけ言葉を発して行え」

とはハンドラーの指示だ

 

「…(りょ)うかい…(ハ)ンドラー」

 

思い出した指示に返答を返し機体をカタパルトに乗せる

暴力的な上昇推力が此処までの戦闘で疲労を覚え始めた身体を痛めつけてくる事を把握する

 

「…(つ)うかく、…(せい)じょうに、…(き)のうちゅう」

 

痛いとは思うがそれが自分の反応を鈍らせる事は無い

私は改造の失敗で感情というものが壊れたらしい

痛覚による自身の性能低下を認識しながらも

逆にそれが原因で感情的、感覚的なミスが発生しないという意味ではむしろ都合の良い道具になったのだ…さっきのパニックを起こした敵を思い出しながら考える

 

『あれだ あの残骸にアクセスしろ』

 

マーカーが指示した機体がカメラに映った

データを吸い上げてハンドラーに送信

 

『登録番号 Rb23 傭兵ランク圏内 識別名は…む!?』

 

「…(サブ)ジェクト…(ガ)ード……(か)くにん」

 

『やはり目を付けられていたか』

『封鎖機構とやり合うのは本意ではないが』

『構わん迎撃しろ 今ならお前が特定されることはない』

 

「…(ミッ)ション…(こう)しん」

「……(サブ)ジェクト…(ガ)ードの、…(げき)つい」

 

敵機の行動を確認

左右から挟み込むように飛来する高い誘導のミサイル

左右の翼部につけられた軽4門ずつの機銃

極めつけは…

 

『爆撃は上昇で回避しろ 地上では巻き込まれるぞ』

 

機体下部に取り付けられた大型のロケット砲合計8門が此方に狙いを定める

ピピピッという警告音が耳に届いた瞬間、ハンドラーの言葉に従いサブジェクトガードと同じ高さまで上昇する

直後に打ち出されたロケットで地面が抉られ爆発が周囲を焦がす

 

「…(けい)かい、…(す)べき」

 

直撃をもらえばそれだけで行動不能になりかねない火力を確認しながらライフルとミサイルのトリガーを引く

 

「…(かた)い…(ラ)イフル、…(は)じかれる」

 

ミサイルは命中と同時に爆発を起こし、損傷を与えているが、

ライフルは距離を詰めないとあまり効果がなさそうだ

 

「…(きん)せつの、…(こ)うかを…(たし)かめる」

 

機銃の掃射をある程度装甲頼みで受けつつブーストを吹かして機体の下に潜り込む

 

「…(こ)うか……(あ)り」

 

腹部、表現して良いのかは不明だが、

コクピットの真下辺りに二発の斬撃を加えると、サブジェクトガードの動きが大きくブレたのが解る

何度か繰り返せば、機体の制御機能にエラーを引き起こせそうだ

 

「…(すい)しんよう、…(エネ)ルギー…(こ)かつ」

 

問題は無駄に動くとエネルギーを使い切り、敵に振り切られる事

じめに落下しながらライフルとミサイルを再度撃ちこむ

敵機の真下であるため、ライフルも多少のダメージは与えられている

 

「…(は)なれた…(つい)げきを…!?」

 

ガクンと自機が衝撃で揺れる

 

「……(ミ)サイル……(い)つのまに」

 

サブジェクトガードが大きく移動する時に合わせてこちらのカメラ外にミサイルを撃っていた?

重ねて機銃の掃射も来ている

これ以上の被弾はまずい

 

「…(おか)わり(追加ミサイル)も、…(き)た」

 

エネルギーのリカバリは完了

ブースト盛大に吹かして吶喊

左右からの挟み込んでくるミサイルの真ん中を真っすぐに突っ切りにくは…

 

ピピピッ

 

「…(こう)どうせんたく…(ミ)ス」

 

正面の穴を埋める様に放たれたロケット砲を強引に回避しようとしたが機体の右腕を持っていかれる

二の腕あたりから吹き飛んだ右腕

ライフルはおしゃか

機体自体も強烈な衝撃でショートして動かない

コクピットの警告音は鳴りやまないし、相手は機銃を撃ちながら体当たりを敢行してきている

どうやら轢潰すつもりらしい

 

「…(ジェ)ネレーター、…(ブー)スター…(き)んきゅう、…(てい)し」

 

機体の動力を落とし、重力に預ける

警告音が消え、カメラが死ぬと直ぐに落下が始まる

相手の速度と落下速度がうまく噛みえば…

 

「…(さ)いきどう」

 

相手の巨体が私の上を越えるであろう瞬間に機体に火を入れ直す

生き返ったカメラでとらえたのは相手の腹

ブースターで無理やり機体のバランスを取り直してそこに左腕のブレードを叩き込む

狙いは最初に斬りつけた場所

 

『効いているぞ 畳みかけていけ 621』

 

「…(お)まけ」

 

更に密着状態で肩のミサイルを同じ場所にまとめてぶつける

慌てて離れる相手を地面を滑走しながら追いかけつつ、次弾装填の終わったミサイルを相手の推進部に撃ちこむ

 

ガクン、っとサブジェクトガードが動きを止める

 

『目当てのものはすでに手に入った』

『621 あとはそいつを落とせ』

 

「…(し)とめる」

 

最大でブースターを吹かした瞬間、またあの音が聞こえる

 

ピピピッ

 

「…(ミ)スは、…(まな)んだ」

 

私の機体は既にサブジェクトガードより高度が上

ブースターで吶喊する度に下に潜っていたおかげで反射で下の迎撃を選択した相手のミス

 

「…(とっ)た」

 

そのまま残りカスの推進エネルギーを使ってサブジェクトガードのコクピットにブレードを突っ込む

つぶれたコクピットから火の手があがり、徐々に機体全体に誘爆していくのを、地面に向かって落下しながら見上げる

盛大に爆発した

まきこまれるような事にならなくて良かった

 

『惑星封鎖機構のSG 大型武装ヘリの撃墜を確認した』

『621 今日の仕事は終わりだ』

『《レイブン》 これがお前の ルビコンでの名義だ』

 

そして私はライセンスを手に入れ、《レイヴン》になった

 

-----------------------------------------------------------

 

目を開ける

マズイ流動食をあらかた平らげ、ポーチからガムを取り出す

 

「『621 肉体の維持に必要な栄養はその注射で十分だ だが筋肉は使わなければ劣化する 顎の劣化を抑える為にそれを齧っておけ』…だったか」

 

名義を手に入れたあと、拠点として使えるハンガーへと機体を運び

疲労した身体の回復を図ろうとハンガー内に用意されていた食事(注射)に手を伸ばした時に横に用意されていたのが板状のガムだった

嗜好品としては値の張る物じゃないが、ここで手に入れるとなると苦労する

 

「またどこかで手に入れて来ないと」

 

口の中に入れるとスゥーっとミントの香りが鼻に抜ける

 

「最初は甘いのや酸っぱいのも用意してくれてたが、コレの減りばっかり早いからいつ頃からかこれしか用意しなくなったんだよな。あの人」

「お前はそれが好きなのか…って」

「間違っても飲み込むなって注意されたっけ。消化できないのも手伝って事故が起きかねないし」

 

ヴィー!ヴィー!ヴィー!

 

ハンガー内に警報が鳴る

それと同時に壁にある通信機の画面がオンになり、相手の顔が写る

 

『失礼します!企業ACが我々の拠点に攻撃を仕掛けてきました』

『《フクス》。企業ACの排除をお願いします』

 

「敵ACの数は?」

 

『1機。別方向からはMT部隊が進行してきているので私達はそちらの防衛に向かいます』

 

「了解。仕事はこなすわ」

 

モニターを消してから、今いるハンガーを出て『1』と書かれたハンガーへ移動する

 

「依頼内容自体は対面戦闘のみ」

「だけどできるならMT側の援護も行けるように、時間は出来るだけかけずにACを撃破して継続戦闘もってなると《1本目の尾》が適役かな」

 

過去に《レイヴン》を奪い、名乗った傭兵は今は《フクス()》と名乗っている

仕事の内容に合わせて用意した愛機達から相性のよさそうな物を選択する傭兵

全ての機体はその大部分がくすんだ灰色に染められ、所々に残り火のように輝く赤

1番ハンガーに置いてあった機体は軽量の逆関節を脚部にもつ高速機動型

 

「さて…仕事の時間よ。独立傭兵《フクス》【シュヴァンツ・アイン(1本目の尾)】」

フォックスハント(狐の狩り)を始めよう」

 

コクピットに乗り込みながら呟き

今日も日常(戦場)へと走り出す




本編中に出力できなかった設定

・621こと本編主人公
「ACを動かす事」以外の機能が死んでいる
とまで言われる主人公ですが、プレイヤー毎に解釈は多肢にわたると思うので、この作品ではこうだよって設定です。

1.感情の欠落
喜怒哀楽を感じる機能が死んでいるだけで、本人の嗜好・思考は存在する。
本人がソレを自覚できず、外に出力できないだけ。

2.消化機能の欠落(食の楽しみが無い)
胃の消化機能が死んでいる為、何を食べても胃で柔らかくすることが出来ない。
腸は機能している為、栄養自体は取りこむことが可能
味覚は生きている事が逆に地獄

3.生殖機能の欠落(子供を作れない)
行為自体は可能だが、子供を作る機能が失われている為、人間が子孫を残すという意味では無意味である

総じて人間が生きる為の楽しみや、意味をそぎ落とされている状態となります。
ただ生きている事は、人間であると言えるのか?状態と言ってもいいです。

言語や筋力に関しては冷凍保存(ラップ巻のアレをそう解釈させていただきました)されていた事の後遺症であり、長期的なリハビリで取り戻せる機能となっています
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。