戦争コンビの抑止力は、椚ヶ丘の落ちこぼれ   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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暗殺の時間②

 あれから時間が経った。すでに午前中の授業は3時間目の授業まで終わっており、今は4時間目の英語の時間。黒板にはいくつもの英文が書かれており、英文に使われている単語に関しての説明をしている。

 

「そこで問題です、木村君。この四本の触手のうちの仲間外れは?」

 

 すると、先生が複数の触手を色を変化させ、三本のオレンジ色の触手と、一本の青い触手を見せながら、このE組のクラスの中にある生徒、木村正義に声をかける。

 

「…青い触手?」

 

 名指しされた生徒、木村君は、すぐに青く変色させている触手が仲間外れでいる事を告げる。

 

「正解!!青の例文のwhoだけが関係詞です。」

 

 木村君の説明を聞いた先生は、顔を明るい朱色に変化させ、正解した木村君に対して褒める言葉をかけ、whoだけが関係詞である事を告げ、それを踏まえて英文を見れば、どんな事が書かれているか読み取れると言ってくる。

 それを聞いた生徒達は、すぐに正解の訳し方を見つけ、しっかりとノートを取っていく。まぁ、私だけは取ってないけど。頭に入ってるし。

 

「ちょっと旭さん!!貴女さっきからノート一つも取らないじゃないですか!!」

 

「あー……すみません。」

 

 取らなくても読めるというか、イザ兄にいろいろと叩き込んでもらったから、英語の授業とか今更というか……口にしたい理由はいくつも浮かんだが、めんどくさいし、寺坂君あたりの視線が痛いし、とりあえずノートだけは取る事にした。別に必要ないんだけど。

 

『見た目ただのヘンテコ教師なのに、ちゃんとわかりやすく説明できる凄腕教師じゃん。

 ちょっと興味湧いてきたかも。その教師は一体、どうやってそれほどまでの学を身につけたんだろうね?』

 

 ノート取るのめんどくさー……と考えながら黒板の全てを写していると、多機能付きピアスからイザ兄の声が聞こえてきた。

 いつの間にカメラをオンにしたんだろ……。

 

「皆さんノートを取れたようですし、次に行きましょうかねぇ。」

 

 音声もカメラもいつ頃オンにしたんだろ、イザ兄…なんて考えながらペンを回していると、黒板に記されていた文字を全て先生は消していく。そして、綺麗になったそれに、新たな例文を書き記すなり、再び訳すためのヒントを教えようと口を開く。

 

 が……そんな中、パンッと一発の銃声が辺りに響き渡った。音の発生源へと目を向けてみると、そこにはギャル風の見た目をしている1人の生徒、中村莉桜の姿があった。

 突然の発砲を受けた先生はというと……

 

「……中村さん。暗殺は勉強の妨げにならない時にと言ったはずです!罰として後ろで立って受講しなさい!」

 

 ……飛んできた弾丸を手にしていたチョークで摘んで止めていた。

 

「…………すいませーん…。そんな真っ赤になって怒らなくても。」

 

 チョークにヒビが入ってるんだけど……チョークってそんなに脆かったっけ?それとも、やっぱり火薬を使ってるだけあって威力は普通のエアガンとは違うのか?そんな事を考えながら、後ろに立たされそうになってる莉桜を見つめる。

 

「先生。その指示って、昔はよくあったらしいですが、今やると場合によっては生徒の虐待だの体罰だのと騒ぐ親とか記者がいるらしいので、考えて発言した方が宜しいかと思われますよ?」

 

 だが、すぐに後ろに立って勉強をしろという罰に対して、世間では良くない反応をされる可能性もある事を指摘した。

 

「にゅや!?そ、それは困りますね……!!では、罰として明日までに解いてくる課題を出すので、それをやってください。」

 

「……はーい。」

 

 課題より立ってる方が楽だったんだけど、なんて目を向けられてしまったけど気にしない気にしない。ていうか気にしたらいけない。

 ジト目を向けてくる莉桜から目を逸らしながら、暗示をかけるように黙り込む。

 

『今はモンペとか普通にあちこちにいるからね。教師陣にとってはなかなかに肩幅狭い時代になったもんだよ。

 それだけ子供が大切にされているって証拠でもあるけど、大切にし過ぎて逆に暴走する図もあるよね。

 子供が立派な生活をできるように、自分のように苦労しないように、あれこれ決めてはそれが正しいのだと教える親。

 毒親ってそんな感じに出来上がるんだよね。子供のためだ何だと口でら言ってはいるけど、あれって一つの自己満足だと思うんだけど、莉兎ちゃんはどう思う?』

 

 ……授業中に妙な質問をするんじゃない。答えられるわけ無いし、議論できるわけ無いだろ折原アホヤ。そんなことしたらそっちがこの教室を盗聴、盗撮してるのがバレるっての。

 それに、この声は私にしか聞こえて無いんだから、急に変な話し始めたヤバいやつになりかねないでしょうが。

 

「………。」

 

『無言ってたまに寂しいよね。ていうか暇なら授業サボったら?このクラスなら平然とそんなことしても問題無いと思うんだけど?』

 

「………。」

 

『おーい。莉兎ちゃ~ん?』

 

 U☆ZE☆Eーーーー☆!!構ってちゃんかこの野郎!!そんなことこの教師の前じゃ無意味だからできるわけ無いだろ!!サボった瞬間何があったんだと問い詰めてくるような教師なんだよこれ!!話しかけるな!!頼むから少し黙ってくれ!!

 軽くイラつきを抱きながらも、再び授業を再開する先生の姿を見つめながら、黒板に書いてある内容を丸写しし、本当はいらないんだけど重要なポイントになる部分を記しておく。

 と、ちょうどいいタイミングで4時間目の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。

 

「昼休みですね。先生、ちょっと中国行って麻婆豆腐食べてきます。暗殺希望者がもしいれば、携帯で呼んで下さい。」

 

 それに気づいた先生は、中国に麻婆豆腐を食べに行ってくると私たちに告げては、勢いよく飛び去って行った。

 コンビニ行く感覚で中国に行くなよ……軽い呆れを抱きながら、先生が消えて行った方角へと目を向ける。

 

「マッハ20だから……ええと…」

 

「麻婆の本場四川省まで10分くらい…」

 

「確かにあんなもん、ミサイルでも落とせんわな…」

 

 同じく空を見上げていた生徒達が勢いよく飛んでいった先生を見つめながら、引きつった笑みを浮かべて、口々に言葉を紡ぐ。

 

「しかも、あのタコ。音速飛行中にテストの採点までしてるんだぜ。」

 

「マジ!?」

 

「うん。俺なんかイラスト付きで褒められた。」

 

『……とんでもない教師だな。本当に怪物じゃん。』

 

 イザ兄の言葉に同意する。かなりのスピードで動いているにも関わらず、的確な採点をしながらイラストも描けるとは、怪物以外の言葉が出てこない。一体どんな体質をしているのか……。

 

「てかあいつ、何気に教えるの上手くない?」

 

「わかるー。私、放課後に暗殺行った時、ついでに数学教わってさぁ。次のテスト良かったもん。」

 

 そんなことを考えていたら、一部の生徒達が、先生の教え方のセンスについて評価を始める。確かに、それにも同意できる。

 生徒1人1人の得手不得手を見抜いており、どのようにすればそれを突破できるのか、そんな細かいことまで彼は教えてくれる。

 教師としては理想的な存在と言えるだろう。見た目だけはなんとも言えないが。

 

『暗殺ついでに数学を教えてもらうとか、普通なら出てこない会話だよね。改めて、今の莉兎ちゃんの状態が異常であることを思い知らされるよ。まぁ、護身術以上に襲われた際の対処法とかも学べるだろうから、俺としては安心できるけどね。

 自分が危ない橋を渡ってるのは嫌でも理解してるし。どこから恨みを買うか知ったもんじゃ無い。』

 

 そうだね、と一瞬同意の言葉を漏らしそうになった。でも、何とかそれは堪えて、私も昼を食べるために席に戻る。

 先生の評価をしていた生徒達が、所詮自分達はE組だから、頑張っても仕方ないという諦めの言葉を聞きながら。

 

『完全に諦めるのは早いのに、若いうちにそんな事を考えるなんて、相当だな、そのクラス。皆弱気になりすぎだよ。所詮まだ中学生なんだから。

 確かに、劣悪な環境での勉強は時に集中力を妨げて、やる気自体を失わせる。普通の生徒とは悪い意味で違うのだと思い知らされるような環境は、メンタル面でもかなりのダメージになり、諦めの感情を抱いてしまうというのは当然とも言えるだろうけどさ。

 見捨てない誰かがいるだけで、如何様にも覆せるって知らないのかな?それに、悪い意味で普通とは違うけど、同時に良い意味でも違うイレギュラーがあるじゃ無いか。楽しまなきゃ損だって。』

 

 生徒達の諦めの声を聞いたイザ兄が、呆れたように言葉を紡ぐ。諦めるには早すぎる……か。確かに、それは言えているかもしれない。

 椚ヶ丘高等学校には行けないかもしれないけど、この場所でダメならダメなりに頑張ってみて、偏差値が若干低いような学校でも良いから進学したら、そこで何かしらの道を切り拓く事ができるかもしれないし、できないかもしれない。

 でも、まだ道を拓ける可能性があるのであれば、それを少しでも大きな可能性へ昇華できるように、惨めなりにも頑張った方が何倍も良いし、何倍も楽しめるはずだ。

 まぁ、イザ兄がこんな考えを持ってるかはわからないけど、私はそう思う。

 

「…おい、渚。」

 

「!」

 

「ちょっと来いよ。暗殺の計画進めようぜ。」

 

「…………うん。」

 

 ごちゃごちゃと考え込みながら、荷物の中から弁当を取り出していると、何やら不良組と潮田君が怪しい動きをしていることに気づく。

 なんか嫌な予感がする……そう思った私は、弁当を片手に、その場から移動するのであった。

 

 

 ・*:..。o○☆*゚¨゚゚・*:..。o○☆*゚¨゚゚・*:..。o○☆*゚¨゚

 

 

 弁当を片手に潮田君達をこっそりと追いかければ、4人は校舎から校庭……とはいっても、雑草や砂利や石ころなんかが大量にあるため、校庭として上手く機能してるとは言い難い広場だけど、そこに向かうための階段の下の方でたむろっている。

 それを一瞥した私は、彼らの視界には入らない位置まで移動して、こっそりと潮田君に仕掛けておいた盗聴器を起動する。

 

「あのタコ。機嫌によって顔の色が変わるだろ。観察しとけって言ったやつ、できてるか?」

 

 ふむ。どうやら顔色からいろいろと判断してスキをつく方法を使った暗殺を行おうとしているようだ。先生の顔の色なんてじっと観察していないから、何かに使えないか一応メモをしておこう。

 弁当をもぐもぐと咀嚼しながら、制服のポケットよりメモとペンを取り出して、ペンの先をすぐに出す。

 それとほぼ同時に、潮田君の一応という呟きが聞こえてきた。

 

「余裕な時は緑のしましまなのは覚えてるよね。生徒の解答が間違っていたら暗い紫。正解だったら明るい朱色。面白いのは昼休みの後で…」

 

 丁寧に先生の顔の色の変化の法則を口にする潮田君。それを聞きながらメモを取る。

 だが、それは寺坂君のある一言により最後まで聞く事ができなかった。

 

「俺は知らなくていーんだよ。作戦がある。

 あいつが一番“油断”してる顔の時だ。お前が刺しに行け。」

 

 それを聞いた瞬間、思わず舌打ちが漏れたのは仕方がないだろう。せっかくあの変な教師のスキを突くためのヒントが得られると思ったのに、聞けなかったのだから。

 というか、寺坂のやつ、自分で殺らないんかい。普通そこはガタイのいいあんたがやるべきだろうに。

 

『こっちの方にも聞こえるようにいろいろいじった盗聴器使ってんだね。隠しカメラは?』

 

「流石にカメラまでは使ってないよ。だって、あの盗撮用モニタリングカメラ、つけんの難しいし、画質が荒いし、距離が近くなけりゃ上手く機能しないし、録画できる時間短いから。

 カメラ渡してくるんだったら、もうちょっとマシなやつ用意してよ。」

 

『なるほどね。貴重な意見ありがとう。翠星君、もっといいの作れないかな……連絡してみよ。』

 

「イザ兄。たまに思うんだけど、翠兄にいろいろ作らせた後で私に持たせるのってひょっとしなくても試験運用するため?」

 

『その通り。翠星君が作る機械ってかなり運用しやすいもので、情報を集めるのに最適なものばっかだからさ。

 でも、どれくらいの性能かまではわからないから、妹ちゃんである莉兎ちゃんに渡して調べてんの。

 翠星君から許可はもらってるしね。莉兎ちゃんの日々の成長や、変化なんかを報告するのを条件に。』

 

「何やってんだ2人して……」

 

 保護者代わりの青年と、今は結婚して離れている実兄のやり取りを聞いて、思わず呆れの声が出る。

 幼馴染だとは聞いていたけど、どことなく似たもの同士だったようだ。だから意気投合したんだろうか……。

 そんなことを思いながら、潮田君にこっそり仕掛けておいたもう一つの機械の電源を遠隔操作でオンにして、同時に手にしているスマホの方に入れてある特殊なアプリを開く。

 それによりスマホの画面に映し出されたのは、潮田君に渡していたタイピン型カメラから送られてくる映像だ。

 カメラのレンズを軽く操作して上を向かせれば、寺坂君の顔と、対先生用ナイフが映り込む。

 

「…僕が?で、でも…」

 

「いい子ぶってんじゃねーよ。俺らはE組だぜ?進学校(ここ)勉強(レベル)についていけなかった脱落組。

 ……通称“エンドのE組”。毎日山の上の隔離校舎まで通わされて、あらゆる面でカスみたいに差別される。」

 

 カメラが軽く揺れ、寺坂君の手と思わしき肌色が映り込む。間違いなく彼が潮田君の肩に腕を回した証拠だ。取れないよな、タイピン……そんなことを思いながらも、2人のやり取りを、弁当を食べながら眺め続ける。

 

「落ちこぼれの俺らが百億円稼ぐチャンスなんて……社会に出たってこの先一生回ってこねぇぞ。」

 

 再び映り込む映像が変わる。寺坂君のドアップとか嬉しくないな。くだらないことを考えながらも、送られてくる映像を見つめる。

 

「脱け出すんだよ。このクソみてぇな状況から。たとえ…どんな手を使ってもな。」

 

 その一言と共に、寺坂君は巾着袋に入った何かを取り出して、潮田君に押し付ける。押し付けられた潮田君は、どうすることもできずそれを受け取り、バカ笑いしながら立ち去っていく寺坂君達の背中を見つめている。

 

「……なんとも悪趣味な事で。自分は怪我をする事なく、高みの見物をしながら、一番弱そうな潮田君に暗殺させようって魂胆?

 まぁ、その計画を盗み聞きプラスの盗み見してる私も悪趣味だけど。」

 

『まぁ、でも、時には口八丁に、時には他人を利用して情報を得るのも情報屋の仕事だから仕方ないよ。』

 

「身近に情報屋がいると、盗聴器や盗撮カメラを仕掛けることに抵抗が無くなって困るよ。それが当たり前だったから、感覚が麻痺すんのかな。」

 

『かもね。後悔してる?翠星君についてかなかった事。』

 

「後悔してたら、とっくにイザ兄の元からいなくなってシズくんの所に行ってるよ。」

 

『はは。相変わらず莉兎ちゃんは物好きだねぇ。』

 

「どっかの誰かさんのせいでね。」

 

 ピアス型通信機の向こう側で小さく笑ってるイザ兄の声を聞きながら、空っぽになった弁当箱を片付ける。

 そして、ゆっくりと立ち上がりながら、開いていたアプリを閉じて、イヤホンの電源も切り、制服のポケットの中へと納めた私は、潮田君へと歩み寄る。

 

「潮田君。」

 

「うわ!?え、あ、旭さん……!?」

 

 後ろから声をかけてみれば、潮田君はエビのようにビクゥッと飛びのいては、いつからそこに!?と聞いてくる。

 

「君が、寺坂君達とここで話し始めた時から、ずっとあっちの方にいたんだよ。これから情報を得るためにね。」

 

 そんな潮田君に、いつからいたのか素直な答えた私は、彼のタイピンを回収する。え?と彼はキョトンとする。

 まぁ、これ、私があげたもんね。そりゃそんな反応をする。

 

「これ、盗聴器と小型のカメラが仕込まれてる情報収集にうってつけなアイテムだったんだよ。気づかなかった?」

 

なんてもの仕掛けてんの!?

 

 小さく笑いながら、タイピンの秘密を明かせば、彼はショックを受けたようにツッコんできた。まぁ、学友に盗聴プラス盗撮されてるなんて思わないもんね。

 だからこそ、身内を利用して情報収集することもあるんだけど。だって、こっちが欲しい情報を持ち合わせている人間が、自身の身内や友人と知り合いだったら、口を滑らせるし、身内や友人と言った存在は、相手を信頼も信用もしてるから、利用されているとは気が付かない。

 イザ兄がよく使っている情報収集の手段や情報を聞き出す方法、その他知識は、しっかりと私にも継承されているのである。

 イザ兄が主に身を潜めている裏側の世界には、確かに足を踏み入れていないけど、いつ莉兎ちゃんに手伝ってもらうかわからないからと教え込まれた。

 シズくんが懸念している私の将来……確かに、今はまだ関わることは無いだろうけど、可能性の一つとして用意はされているんだよね。彼には申し訳ないけど。

 

「そんなことより潮田君。」

 

そんなこと!?

 

「……寺坂君の提案、まさかとは思うけど、実行しようとして無いよね?彼、君を捨て駒にする気満々に見えるけど?」

 

「!!」

 

 私の指摘を聞いた潮田君は、一瞬だけ目を見開く。でも、すぐに黙り込んでは、ぎゅっと巾着袋を握りしめた。

 彼の瞳には、わずかな焦燥と、絶望、恐怖が見え隠れしている。この目は知ってる。

 辛い過去を持ってる人間がよくしている目だ。おそらくだが、ここに落とされた時の事を思い出しているのだろう。

 

 でも、恐怖に関しては、多分違う。過去を思い出したからじゃ無い。

 怪我を負うかもしれない。無事じゃ済まないかもしれない。自分の身に降りかかるであろう痛み、自らが行おうとしている暗殺の意図を感じているから。

 その恐怖があるならば、なんとか丸め込み、辞めさせることができるかもしれない。そう思い、私は静かに口を開く。

 だが、それは突如として空から降りてきた物体のせいで音を発することがなかった。

 

「…おかえり、先生。」

 

「…なんでミサイルなんか持ってんの?」

 

 舌打ちしたくなったのは無理もない。せっかく止めて潮田君に考えを改めさせて、巾着袋を回収しようと思ったのに、急にこんな所に降りてきて……話を切り出すタイミングを失ってしまった。

 

「お土産です。日本海で自衛隊に待ち伏せされて。」

 

「いらない土産だな。」

 

 少しだけイラついてしまい、声がどことなく低くなる。

 ほんと、このタコってたまに空気読めないよな。今は空気ブレイカーは求めてないっての。

 

「にゅや!?な、なんか旭さん、怒ってません……!?」

 

 先生何かしました!?悪いところがあったら言ってください直すので!!泣きつくようにそう言ってくるタコに舌打ちをする。

 それに彼は固まって、ガタガタ震え始めた。生徒に嫌われたりイラつかれたりするのに弱すぎだろこいつ。

 

「大変ですね……標的(ターゲット)だと。」

 

 イライラすんのもバカらしくなってきた……そう思った矢先、潮田君が静かに口を開く。するタコは潮田君に目を向けては、いつもの笑みを浮かべた。

 

「いえいえ。皆から狙われるのは…力を持つ者の証ですから。」

 

「!」

 

「あーあ……余計なことしやがって……」

 

「にゅや!?余計なこと!?」

 

 小さく吐き捨てた言葉にびびるタコ。だが、今はそんなのどうでもいい。そう思いながら潮田君に目を向ける。

 彼の瞳からは、自身を防衛するための恐怖が消えており、絶望と仄暗い殺意が宿っていた。

 イザ兄なら、こんな状態も口でなんとかできただろうけど、私はそこまで高いスキルは持ち合わせていない。

 もう止めるのは無理だなと考え、私は潮田君に背中を向け、校舎へと戻る。きっと、この子と寺坂君達は痛い目に遭うだろうと考えながら。

 

 

 




 旭 莉兎
 臨也からしっかりと情報屋スキルを教えられている女子中学生。
 渚がやろうとしている暗殺を止めようとしたが、標的が余計なことを言ったせいで止めれなくなり舌打ちをする。

 潮田 渚
 まさかの同級生の行動にツッコミを入れたが、結局スルーされてしまった男子中学生。
 標的の言動により、何かが潰えてしまった。

 寺坂組
 戦犯とも言えるガキ大将組。
 このあとの報復に気づかずに、楽して報酬を得ようとしている。

 標的の教師
 莉兎にキレられた月の破壊者。
 普段は落ち着いている彼女から確かな苛立ちを向けられ、何かがヒュンッとした。

 折原 臨也
 だいたいこいつのせいで今の莉兎が生まれた。
 莉兎をうらの世界に引き摺り込むつもりは本気でないのだが、場合によっては必要になるかもと色々教えている。

主人公のオチは誰がいいですか?

  • 主♀溺愛臨也さん
  • 妹分から特別になっちゃった静雄さん
  • 悪友?いいえ、特別ですよカルマくん
  • 執着強め?主♀に惚れてる学秀くん
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