戦争コンビの抑止力は、椚ヶ丘の落ちこぼれ 作:時長凜祢@二次創作主力垢
昼休憩も終わりを告げ、5時間目の授業が始まる。すでにいくらか黒板にはいくつか文字が書かれている。短歌についての説明だ。
「お題にそって短歌を作ってみましょう。ラストの七文字を“触手なりけり”で締めてください。書けた人は先生のところへ持ってきなさい。チェックするのは、文法の正しさと、職種を美しく表現できたか。出来た者から今日は帰ってよし!」
……めちゃくちゃである。
『ぶっふ!!あっははははははは!!なにそのお題!!全然季語でもなんでもないじゃん!!真面目な授業かと思っていたらそれって!!
あっははははははは!!ダメだこれ!!お腹痛い!!触手であったとか意味わかんない!!』
そして、自分の保護者であるイザ兄の大爆笑が耳に痛い。かなりの喧しさに軽く表情を歪めてしまう。
でも、今の彼には私の表情などわからない。だって、ピアス型だからね。ピアスは常に顔の横。装着している人間の表情などわかるはずがない。
軽くため息を吐きながらも、私はピアスを強めの力で小突く。こちらではチャームとペンがぶつかり合った無機質な音にしか聞こえないけど、音を拾ってる向こう側からしたら、かなりの大きさのノイズになる。
『み……耳が……。ちょ、悪かったから通信機のマイクを小突かないで……!!』
うん、大人しくなった。これでよし。やっと静かに勉強できる。課題をクリアするつもりは毛頭もないけどね。
「先生しつもーん。」
そどうやってこの時間を潰そうか……カモフラージュとして、短歌用に渡された用紙を見つめているとクラスメイトである茅野カエデが、手を挙げて先生に質問があると主張する。
「…?何ですか、茅野さん?」
先生の反応は、わずかに遅かった。時間にして約数秒。お腹を満たした事により、多少眠気を伴っているのかもしれない。
「今更だけでさあ、先生の名前なんて言うの?他の先生と区別する時不便だよ。」
カエデの質問は、特に暗殺には関係無い質問だった。まぁでも、確かに名前が無いのはちょっとめんどくさい。
先生としか呼べなかったら、誰が呼ばれたのか、複数人その場にいた場合、反応に困る。
「名前…ですか。名乗るような名前はありませんねぇ。なんなら皆さんでつけて下さい。今は課題に集中ですよ。」
「はーい。」
……名乗る名前はない…か。それは、今の姿になってからのことなのか、それとも昔からなのか。
地球で生まれて地球で育ったと言っていたから、彼がなんらかの実験の被験者であったのは間違いないと思うけど、だとしたらいつから被験者になったのか。幼い頃からか、それとも成人してからか。
幼い頃からならば、被験体〇〇みたいな感じに呼ばれていたから名前にはならない。成人済みだったなら、それまでの名前があったはず。
まぁ、スラム街出身とかになると、戸籍も何もないため、名前も無いというのもわからなくも無いが……。
うーん、可能性が多すぎて、調べるにはまだ至らないな。お題を解くフリをしながら、薄いピンク色の肌色をしている担任の観察を続ける。
しかし、不意に潮田君が席を立つ姿が視界に入り込んだため、私は無言でそれに目を向けた。彼は、短歌を書くための紙の裏に、対先生用ナイフを隠して、ゆっくりと先生に向かって行く。
後ろから丸わかりであるそれを見た生徒達も、彼が動いた意図を理解したのか、軽く緊張しているような面持ちで、潮田君の様子を見守っていた。
先生との距離は縮まり、ナイフを含めれば十分攻撃を放てるくらい近くなる。それを確認すると同時に、潮田君は手にしていたナイフを思い切り振り上げて、担任目掛けて振り下ろした。
しかし、それは彼に当たることなく、触手一本で止められる。
「…言ったでしょう。もっと工夫を」
攻撃してきた潮田君に対して、先生は工夫を凝らすようにというアドバイスを口にしようとする。
だが、それは一瞬にして動揺へと変わった。目の前にやってきた潮田君が、ふわりと、先生の首に手を回し、小さく笑いながら拘束したために。
「しま…!」
身動きが取りにくくなった先生が硬直する中、辺りに大きな爆発音が響き渡り、対先生用の弾丸が一瞬にして四方八方に飛び散る。最後部に座る私の方にも、それは一気に飛んできた。
「ッしゃあやったぜ!!百億いただきィ!!」
火薬のにおいが嗅覚を刺激し、あたりに静寂をもたらす中、寺坂君達が席を立ち上がり、ガッツポーズしながら教卓側へと足を運ぶ。
「ざまァ!!まさかこいつも自爆テロは予想してなかったろ!!」
喜びに湧く不良組に、E組全体が無言になり、ウソだろうと言いたげな表情や、ここまでするかと言いたげな視線を向ける。
「ちょっと寺坂!!渚に何持たせたのよ!?」
その静寂を破るように、カエデが寺坂君に潮田君に何をさせたのか、一体何を持たせていたのかを問いかけると、寺坂君はカエデに目を向け、悪役がするような笑みを浮かべる。
「オモチャの手榴弾だよ。ただし火薬を使って威力を上げてる。三百発の対先生弾がすげぇ速さで飛び散るように。」
「な!?」
カエデが愕然とした表情をする。暗殺するためとはいえ、そこまでやる必要があるのかと訴えるようだ。
「……潮田君、絶対無事じゃ無いよね?」
「人間が死ぬ威力じゃねーよ。俺の百億で医療費ぐらい払ってやらァ。」
寺坂のその言葉に、無意識のうちに怒りを覚える。あれだけの爆発や、弾丸の放出。あれは普通に人の機能をいくつも損害させる事すら可能なレベルのものだ。弾丸が目に入ったら?それで失明したら?爆発による爆風で骨を折っていたら?他にも考えられる文句はあるが、一番はこれだ。
他人の体を危険に晒しておいて、自分は楽して報酬を手に入れる。そんな悪どいことを行った寺坂に対し、殺意がわずかに芽生えてくる。
これだけのことをしておいて自分は英雄気取りとか、片腹痛いにも程がある。
どのようにして寺坂に報復するべきか、無意識のうちに考える中、彼の様子がわずかながらに変わった事に気づいた。
何を思ったのか、寺坂は先生がいた場所に手を伸ばし、何かを静かに拾い上げた。それは、皮のようなもの。
まるで、蛇が脱皮した際に残すかのような……。
そこまで考えた時だった。天井の方から息が詰まるような気配を感じ取る。ゆっくりとそこに目を向けてみれば、漆黒に染まる担任の姿。
「実は先生。月に一度程脱皮をします。脱いだ皮を爆弾に被せて威力を殺した。つまりは、月イチで使える奥の手です。」
「………。」
声もかなりドスが効いており、明らかに激昂している事がわかる。それを見て私は少しだけ落ち着けた。
寺坂君を殴り飛ばそうと、同じ目に合わせてやろうと考えていた思考が霧散する。こちらがどうこうしなくても、ちゃんと間違いを正してもらえそうだ。
少しだけ安堵しながら、私は先生の近くに近寄る。
「寺坂。吉田。村松。首謀者は君らだな。」
「えっいっいや…渚が勝手に……!!」
「先生~。首謀者はそいつらで間違い無いよ。これ、証拠としてあげる。」
見苦しい言い訳をしようとしている寺坂君達を横目に見ながら、私はあるものを先生に手渡す。
それは、昼休憩の時に潮田君に仕掛けておいたカメラと盗聴器から送られて来た映像と音声を落とし込んだUSBメモリーだ。
「潮田君って、不良に絡まれやすい体質だろうと思ってたから、盗聴器と小型カメラを仕込んだタイピンを渡してたんだ。本来なら犯罪だけど、今回ばかりは許してね?」
「「「!!?」」」
まさかの状況に、寺坂君達が目を見開いて固まった。潮田君を通して、自身の企てを暴かれて驚いたみたいだ。
まぁ、そうだよね。誰だってまさか自分が盗聴され、盗撮されているとは思わないだろうし。
「……いいでしょう。回収させていただきますね。」
先生の触手が手渡したUSBメモリーを受け取る。それと同時に彼は凄まじい速さでこの場から飛び去り、すぐに戻って来た。彼の手元にあるのは……表札?
首を傾げながらそれを見つめていると、ごとごとと音を立てながら地面にそれらが転がる。間違いなく表札だ。
このクラス全員の……いや、私のは無いな。イザ兄のも。あれ?ひょっとして私の情報、先生達に伝わってない……?
「政府との契約ですから、“君達に”危害は加えないが、次また今の方法で暗殺に来たら、“君達以外”には何をするかわかりませんよ。」
次々と先生の腕から落下して行く表札を見ながら、自分の苗字の表札だけは無い事に首を傾げる。旭……あれ?旭はどこ?
「家族や友人……いや、君達以外を地球ごと消しますかねぇ。」
クラスメイト達が戦慄を覚える中、私だけ一人首を傾げていた。なんで私の表札はないんだろう?イザ兄の折原もないし……うーん?
「なっ…何なんだよテメェ…!!迷惑なんだよ!!いきなり来て地球爆破とか暗殺しろとか…!!迷惑な奴に迷惑な殺し方して何が悪いんだよォ!!」
寺坂君がギャン泣きしながら先生に対して怒鳴りつける。その声に気づいた私は、表札の事を今は置いといて、この現状がどのようにして落ち着くのかを見届けるために、静かに顔を上げた。
「迷惑?とんでもない。君達のアイディア自体はすごく良かった。特に渚君。君の肉薄までの自然な体運びは百点です。先生は見事に隙を突かれました。」
触手を一本潮田君に伸ばし、その頭を優しく撫でる担任は、肌の表面を明るい朱色へと変化させ、赤い二重丸を彼に見せる。その姿に潮田君は驚いたように目を丸くして、何度か瞬きをしてみせた。
しかし、それはすぐに反省の色へと変わる。先生の顔が暗い紫色となり、青のバッテンを浮かび上がらせたために。
「ただし!寺坂君達は渚君を、渚君は自分自身を大切にしなかった。そんな生徒に暗殺する資格はありません!」
……そもそもが暗殺する事自体非日常すぎるし、普通に過ごすだけであれば、そんな世界を見る事すら無いのだけど、彼の言葉はもっともだろう。何事も命大事にが一番だから。
だって、死んだらそこでゲームオーバー。教師として生活している彼にとって、生徒の命は何よりも大切なものだろう。
「人に笑顔で胸を張れる暗殺をしましょう。君達全員、それが出来る力を秘めた有能な
笑顔を見せながらそう言い切る担任の言葉に、生徒達は無言になる。頭を撫でられた潮田君も、その言葉に聞き惚れるように、黙って彼を見つめていた。
「…さて、問題です、渚君。先生は殺される気など微塵も無い。皆さんと3月までエンジョイしてから地球を爆破です。それが嫌なら、君達はどうしますか?」
不意に、先生から潮田君は問われる。それを聞いた彼は、目を丸くして固まった後、小さく握り拳を作った。
「…その前に、先生を殺します。」
吐き捨てられた言葉はひどく物騒で、普通に過ごしているだけでは一度も口にする事などない言葉。このクラスにいる限り、当たり前のようについて回るアンサーだった。
「ならば今殺ってみなさい。殺せた者から今日は帰ってよし!」
椅子に座り、取ってきた表札を手入れし始める担任に、全員がどうするよと相談するように顔を見合わせる。そんな中、この雰囲気には似合わない言葉がカエデから発せられた。
「殺せない…先生…あ。名前……殺せんせーは?」
「はは。それで行こうか。」
本当の名前はわからないけど、このクラスでのみ使える名前。非日常を作り出した担任である殺せんせー。
彼との日々はきっと、ドタバタ賑やかなものになるのだろう。
「ところで、みんなの表札はあるけど、私の表札は無いような?」
「いやぁ……旭さんのもと思ったんですが、あなたの身内であるお兄さんのところに行ったらお兄さんと鉢合わせそうになりまして……。
そのあと、あなたの今の保護者のを……と思ったのですが、セキュリティが固いそこに、足を踏み入れる事はできませんでした……」
「………なるほどね。」
旭 莉兎
同級生の悪巧みをちゃっかり告発した白うさぎ様。
臨也の声が耳に痛かったので、黙れと言わんばかりに通信機にノイズを走らせた。
殺せんせー
同級生のことをちゃっかり盗聴している莉兎のことはどうかと思っているが、今回は生徒達の中であったいざこざの解決に繋がったので不問とした月の破壊者。
旭さんの保護者って何者なんですかねぇ……と疑問に思いながらも、高級マンションに暮らしてる莉兎を少しだけ羨ましく思った。
主人公のオチは誰がいいですか?
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主♀溺愛臨也さん
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妹分から特別になっちゃった静雄さん
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悪友?いいえ、特別ですよカルマくん
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執着強め?主♀に惚れてる学秀くん