戦争コンビの抑止力は、椚ヶ丘の落ちこぼれ   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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サービスの時間

 おやつの時間と言われてもおかしくない昼過ぎ。

 昨日の夜、仕事から帰ってきたイザ兄からもらった専門店のドーナツと、休憩時間に買っておいたストレートの紅茶を口にしながら、ひと時の休憩にしゃれ込んでいると、ドタドタと教室の廊下から足音が聞こえてくる。

 

「みんな集合!!さっき殺せんせーがクラスのみんなで育てていたチューリップを引き抜いて花壇をめちゃくちゃにしたからお詫びにハンディキャップ暗殺大会をやることになったよ!!

 殺せんせーが縄で宙吊りになるからみんなでやろうよ!!」

 

「『………何て?』」

 

 教室に入って来たのはカエデで、よくわからないことを口走って私達を教室の外に呼び出す。

 意味がわからず、思わずイザ兄と一緒に何言ってんだこいつと言わんばかりの反応をしてしまったが、他のみんなはすぐに各々武器を手に取り教室の外へと足を運び始めたため、渋々私もドーナツを食べ切り、ナイフと銃を片手に教室の外へと向かう。

 

「……莉兎。何食べてたの?」

 

 そんな中、不意に私に視線を向けたカエデが、何を食べていたのか聞いて来た。

 その問いかけに何度か瞬きをした私は静かに口を開く。

 

「ドーナツ。私の保護者になってる人が昨日仕事帰りに買って来て、よかったらおやつに食べてねって渡して来たから食べてたんだ。

 確か、ラガヌムアリストクラットとか言う専門店のドーナツだったかな?」

 

「それ有名なドーナツ専門店のドーナツだよ!?」

 

「え?そうなの?よく買ってくるから知らなかった。」

 

「莉兎の保護者って何者なの!?」

 

「………何者って言われても……説明が難しいな。お金回りが凄く良くて、それで見た目はイケメンで、めちゃくちゃ頭が良くて、無駄に人脈が広過ぎる人。

 ちなみに周りからは割と眉目秀麗って言われるくらいのイケメンお兄さんだよ。性格はめちゃくちゃ残念だけど。」

 

『ちょっと莉兎ちゃん!?性格がめちゃくちゃ残念ってどう言うこと!?ねぇ!?』

 

「(うっせー……)」

 

 イザ兄みたいな人を残念なイケメンって言うんだろうな……なんて考えながら、彼のことを少しだけ教えれば、カエデはほえ〜……と間抜けな声を漏らす。

 

「なんか、逆に会ってみたいかも……」

 

「やめときな?金持ちのくせに残念なイケメン過ぎるどころか変なこと吹き込まれて混乱させられると思うから。

 そんなことより、ハンディキャップ暗殺大会があるんだろ?それなら早く移動しちゃおうよ。」

 

「ええ……?」

 

 私がサラッと切り替えたからか、カエデが少しだけ苦笑いをこぼす。そんな彼女のことなど気にすることなく、私はE組の教室をあとにした。

 縄で吊るされてぐるぐる巻きの殺せんせーを暗殺せよ……って話らしいけど、あのタコさん、ハンデがあっても殺せなさそうなんだけど、気のせいかな……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           ☪︎ ☾

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カエデと一緒に教室の外に出て、荒れに荒れまくった庭の方へと向かってみれば、そこではすでに木の枝に吊るされてブラブラしている殺せんせーと、どこから持って来たのか大量の竹竿の先に、対殺せんせー用特殊ナイフを括り付けているE組の生徒たちがいた。

 すでに武器を持ち合わせていた生徒たちが、殺せんせーに向かって攻撃をしているようだが、宙ぶらりんになってるだけで動けないわけではない殺せんせーが左右にぬるんぬるんと動きながらその攻撃の全てを躱している。

 

「うっわ、何これー……?」

 

『俺、仕事で疲れてんのかな?なんか明らかにカオス以外の何物でもない景色が広がってる気がするんだけど?』

 

「多分、気のせいじゃないかな……。」

 

『気のせいじゃないかー……ハァ……頭痛い……』

 

 イザ兄ですら頭を抱えてしまうレベルの現状に、私は一つ溜め息を吐く。

 まさか、こんなことになろうとは……あまりにもくだらないと言うかなんと言うか……。

 

「……なんだこれは?」

 

「ん?」

 

 イザ兄でも頭を抱える状況に、私が頭を抱えないなどあり得るはずもなく、思わず少しの頭痛を感じながらも、どうやって手を出すべきか考えていると、背後から声が聞こえて来た。

 静かに視線を背後に向ければ、そこには暗殺教室の初日にとんでもない問題を持って来た防衛省の烏間さんがおり、目の前で繰り広げられている景色に困惑の表情を浮かべていた。

 

「あれ、烏間さん?」

 

「こんにちは。確か君は……」

 

「旭莉兎です。」

 

「旭さん……ああ、アレにダメージを与えることができた女子生徒さんか。」

 

「はい、そうですよ。どうかなさいましたか、烏間さん?様子を見に来た感じでしょうか?」

 

 とりあえず視界に入った烏間さんに、私はいつもの調子で話しかける。

 烏間さん(この人)E組(ここ)に足を運ぶ時は、決まって私たちの様子を見にくる時……となると、今回も様子見に来たのだと思うんだけど……。

 

「様子見……ももちろんあるのだが、実は明日から俺も教師として君等を手伝うことになったんだ。

 そのことについての挨拶も含め、今日はここを訪ねさせてもらった。これから一年間、よろしく頼む。」

 

 ……どうやら、今回の烏間さんの用事は様子見だけではなかったようだ。

 まさか、防衛省の人が教師としてこっちに赴任するとは思いもよらなかったな。

 

「なるほど。そう言うことでしたか。となると、これからは烏間さんではなく烏間先生ですね。」

 

 そんなことを思いながら、烏間さんと言葉を交わしていると、あれ?と言う声が聞こえてくる。

 視線を声の方へと向けて見れば、そこにはカエデが立っており、いつのまにかやって来ていた烏間先生を見つめながら首を傾げていた。

 

「烏間さん、こんにちは!!」

 

「こんにちは。確か君は……」

 

「茅野カエデです!」

 

 烏間先生の言葉に、カエデは笑顔で自分の名前を口にして、私たちの方に走り寄ってくる。

 

「烏間さん、どうしたの?」

 

「明日からここに教師として赴任してくるって言ってたよ。」

 

「そうなんだ!じゃあ、これからは烏間先生だね!」

 

「ああ。茅野さんも、よろしく頼む。」

 

 カエデと挨拶を交わした烏間先生は、キョロキョロと辺りを見渡す。

 何かを探している……と言うか、まぁ、こんなところに来てまで探すものなど一つしかないわけで……。

 

「……ところで、奴はどこだ?」

 

 そんなことを思っていると、烏間先生は静かに口を開く。

 やはりと言うか、彼は殺せんせーを探していた。

 

「……それがさぁ………。」

 

 烏間先生の問いかけに、カエデは苦笑いを浮かべながら、視線を学校の方へと向ける。

 そして、とりあえず教室がある方向へと足を運び、殺せんせー主催のハンディキャップ暗殺大会会場へと移動した。

 

「お─────い!!棒とヒモを持って来たぞー!!」

 

「さっき、殺せんせーがクラスの花壇を荒らしちゃったんだけど、そのお詫びとして……」

 

 岡島君が教室の方へと足を運びながら、暗殺大会に必要なものを持って来たことを告げる中、たどり着いた教室前。

 先程と同じようにカオス以外の何物でもない頭が痛くなるイベントが開催され続けていた。

 

「そこだ!!刺せ!!」

 

「くそっ!!こんな状態でヌルヌルかわしやがって!!!!」

 

「……ハンディキャップ暗殺大会を開催してるの。」

 

「………………。」

 

 カエデの言葉に硬直した烏間先生。

 まぁ、その気持ちはわからなくもない。あのイザ兄でさえも頭を抱えるんだから、イザ兄程頭がよくない人だと余計に頭が痛くなるはずだ。

 

「ほら、お詫びのサービスですよ?こんなに身動きができない先生、そう滅多にいませんよぉ?」

 

『……なんかすっごいムカつくから莉兎ちゃん、サクッとやっちゃったら?莉兎ちゃんならソレ、簡単に殺せるでしょ?』

 

「……できると思うけど、構図のせいで逆にやる気失せる。」

 

『え〜……?』

 

 イザ兄からさっさと殺しちゃえと言われたが、目の前で繰り広げられている構図は、謎にやる気がごりごりと削られて行くものだった。

 

「どう、渚?」

 

「うん……完全にナメられてる……。」

 

 潮田君たちもお手上げ状態になってしまうハンディキャップ暗殺大会。

 この現状に、烏間先生がワナワナと震えて拳を握りしめる中、潮田君は何かを思い出したような表情を見せて、制服のポケットからメモ帳を取り出す。

 

「待てよ……確か、殺せんせーの弱点からすると……」

 

「弱点?」

 

「あ、うん。殺せんせーのことを観察して、弱点を見つけたらメモすることにしたんだ。

 弱点になりそうな場所をピックアップして、そこを突くように攻撃すれば、勝率は上がると思って。」

 

「なるほどね。確かにそれは一つの手段として使える。」

 

 弱点を集めていると言う潮田君に、それはいいと返しながらも、手元にあるメモ帳をさっと取り上げる。

 そこに記されているのは、“殺せんせーの弱点① カッコつけるとボロが出る”と言うなんとも言えない文字だった。

 

『ぶっ!?あっはははははははは!!何その弱点!!て言うか弱点って言っていいわけ!?』

 

「……………。」

 

 耳元から賑やかな声が聞こえてきたため、ぶら下がっているピアスへと思い切りデコピンを放つ。

 

『み、耳が………』

 

 ガツンッと言う大きな音を聞いたからか、通信機の先にいるイザ兄から苦悶の声が聞こえてくる。

 一旦黙ってろ、とやかましく笑っていたイザ兄に対して思いながら、潮田君から取り上げたメモ帳へと視線を落とす。

 

「これ、使えるのかな……?」

 

「……わかんない………。」

 

「わかんないかー……」

 

 これは弱点と言えるのか……そんな疑問を素直に口にすれば、潮田君はわからないと一言だけ告げて来た。

 わからないことを弱点と言うんじゃない……そんなことを思いながら、私は殺せんせーへと視線を戻した。

 

「ヌルフフフフ!無駄ですねぇ、E組諸君。このハンデを物ともしないスピード差!」

 

 何やら言葉を紡いでいる殺せんせーは、未だに吊られたままゆらゆらと揺れている。

 そんな彼の上の方へと視線を向けてみれば、明らかに折れてしまいそうな状況の枝だった。

 

「……へぇ。ある意味使えるみたいだね?」

 

「へ?」

 

 呟くように、潮田君の弱点手帳は使えるようだと口にする。

 私の呟きに反応した潮田君は、驚いたように声を漏らした。

 

「君達が私を殺すなど夢のまたゆ……」

 

 そこまで言った瞬間、乾いた音とともに殺せんせーがぶら下がっていた枝が折れ、殺せんせーが地面に落下する。

 辺りに広がる気まずい沈黙。しかし、殺せんせー自体もかなり焦っているようで、冷や汗をかいているような様子があった。

 

「……()っちゃえ!!!!」

 

「「「「「「おっしゃあ!!!!」」」」」

 

「にゅや─────ッ!!?しッ、しまった─────!!!」

 

 固まってるE組メンバーが動けるように攻撃指示を出せば、E組メンバーはすかさず各自武器を持って殺せんせーを攻撃し始める。

 縄により体が縛られていた殺せんせーは、ビタンビタンと暴れながら、なんとか体に巻き付いている縄を解こうとするが、どんどんそれは彼の触手と絡まり始めていた。

 

「ちょっ……!!待って!?な……縄と触手が絡まって!!」

 

 わたわた慌てながら絡まってしまった縄をなんとか抜け出そうとしている殺せんせー。

 それでもなお周りの攻撃を躱せているのは、流石と言うべきなのか……。

 

「あっ!?ちッくしょ、抜けやがった!!」

 

 なんてことを思っていると、殺せんせーが縄から抜け出して、E組の教室の屋根の上に上がる。

 それを見た私は、この場の地理を即座に把握し、殺せんせーを追うように壁と出っ張りを経由して、屋根の方へと移動する。

 

「ここまでは来れないでしょう!!基本性能が違うんです……」

 

「誰が来れないって?」

 

「にゅや─────ッ!!?」

 

 まさか屋根の上にまで私が追ってくるとは思わなかったのか、殺せんせーが焦りの表情を浮かべる。

 そんな殺せんせーめがけて手にしていた拳銃で殺せんせー目掛けていくらか発砲すれば、殺せんせーはすぐに回避したが、どこら辺に移動するかすでに計算していた私は、すかさず彼との距離を詰め、そのままナイフを振り抜く。

 

「ぎゃあ─────ッ!!?先生の触手がぁ!!?」

 

 まさかの事態に対するテンパリが抜けていないのか、回避ではなく防御行動を反射的に取っていた殺せんせーの触手をまとめて2本程切り飛ばす。

 それを確認した私は、振り抜いた勢いのまま反対の手へと逆手持ちをしていたもう一本のナイフで殺せんせーに攻撃を放つ……が、腕ごとナイフを止められてしまった。

 

「へぇ……このギリギリで止めてくるんだ?」

 

「ヒィ─────ッ!?な、なんて技術を持ち合わせてるんですか旭さんんんんん!!?」

 

 殺せんせーは焦りに焦りながら言葉を紡ぎ、私の体に触手を巻きつけ、そのまま地面に下ろしてしまう。

 

「あ、下ろしやがった。」

 

「いや、下ろしますよ!?と言うか旭さん!!明らかに教室の壁などを利用して勢いよく上ってきましたよね!?」

 

「保護者から教えられたから。パルクール♡ちなみにナイフさばきも保護者直伝です⭐︎」

 

「ナイフさばきとパルクールを教える保護者ってなんですか!?」

 

 ブイと、2本の指を立てながら、今回の技術は全て保護者(イザ兄)直伝だと笑顔を見せれば、どんな保護者だと突っ込まれてしまった。

 常にとんでも怪力なお兄さんと命懸けの追いかけっこをしてる情報屋さんです……と一瞬言いたくなってしまったが、情報屋と呼ばれている存在の情報は、そう簡単に明かしていいものではないこともわかっているのであえて黙っておこう。

 

「ハァ〜〜〜〜……。」

 

 そんなことを思いながら、屋根の上の殺せんせーを見つめていると、殺せんせーは一つ、深い溜め息を吐いたのち、私達生徒へと視線を向ける。

 

「……明日出す宿題は2倍です!!」

 

「「「「「「器小せえ!!!!」」」」」」

 

 そして、吐き捨てるように明日の宿題の量を増やすと言って、彼は校舎から飛び去っていった。

 

「……逃げた。」

 

「でも、今までで一番惜しかったよね。」

 

「て言うか旭凄すぎだろ!?俺めちゃくちゃ鳥肌立ったんだけど!?」

 

「私も私も!!」

 

「ああ!旭を中心に作戦を練ることも視野に入れたら、間違いなく殺すチャンスが来るぞ!!」

 

「それ賛成!!これからは莉兎を中心にして作戦を練ることも考えてみようよ!!」

 

「いいね、それ!!みんなで倒したら報酬は分けることになるけど、それでも十分過ぎるお金になるよね!?」

 

「やーん!!大金手に入れたら何に使おー♪」

 

「……あれ?なんか私が暗殺の中核にされそうな気がするんだけど?」

 

 E組生徒が賑わう中、自身が暗殺の中核にされそうな気配を感じてしまい、思わず引き攣った笑みを浮かべる。

 

「あれだけやったら仕方ないと思う……」

 

「僕も思う……」

 

「ええ……?」

 

 サラッと側にいたカエデと潮田君までもが私を中核にすることに賛同してしまい、マジか……と表情を歪める。

 いや、みんなだって磨いたらとんでもない牙を持ち合わせているのに、私を中心にすることを考えようとするなよ……。

 

 

 

 

 




 旭 莉兎
 臨也のせいで逸般人化してしまっているE組の女子生徒。
 ナイフさばきにパルクール、他にも様々な知識を臨也から与えられてしまっているので、E組生徒の中ではトップクラスの技術を持ち合わせている。

 殺せんせー
 花壇荒らしたら怒られてしまい、ハンディキャップ暗殺大会を開催したE組の担任。
 縄から抜け出して子供のような罵声を口にしようとしたらまさかの伏兵によりさらにピンチに陥った。
 旭さんの保護者さんって何者なんですかぁ─────!?泣

 潮田 渚
 弱点になるかわからない弱点を書き留めていたら、意外にも役に立っちゃったE組の男子生徒。
 莉兎の戦闘技術は明らかに自分達をはるかに上回るため、それを教えた莉兎の保護者って何者……?と疑問を浮かべる。

 茅野 カエデ
 明らかに一般人からかけ離れた技術を持ち合わせている莉兎にびっくりしているE組の女子生徒。
 莉兎の保護者って何者……?と疑問を浮かべる。

 烏間 惟臣
 E組の訓練をするために、近々教師としてE組に赴任することとなった防衛省所属の男性。
 ハンディキャップ暗殺大会などと言う謎の大会が繰り広げられているE組に意識を飛ばしそうになったが、同時にその際に自身の能力を発揮して殺せんせーに挑む莉兎を見て固まった。
 な、なんと言う技術力……!?

 折原 臨也
 相変わらず盗聴と盗撮を行っている新宿在住の情報屋。
 自分が身を置く裏の世界に近づけさせないつもりでいるくせに、莉兎には徹底的に自身の技術力を教え込んでいる保護者。
 え?なんでそんなに教えるのかって?だって莉兎ちゃんが危ないかもしれないだろ?俺と関わってるんだからさ。


主人公のオチは誰がいいですか?

  • 主♀溺愛臨也さん
  • 妹分から特別になっちゃった静雄さん
  • 悪友?いいえ、特別ですよカルマくん
  • 執着強め?主♀に惚れてる学秀くん
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