改めて考えても全てに於いてイケメンとか、お前に隙は無いのかラスティ。
これは独立傭兵 レイヴンによる二度目の声明。
1度目はコーラル情報流出事件を引き金に、ルビコン3に激しい戦火を齎した罪人としてその姿を現して。
2度目はルビコン3を支配し、
そして2度目の声明は、ルビコン3に燃え残っていた人々の闘志に火をつけた。
『行くぞ同志諸君、企業勢力を打ち払え!!』
『地を這うだけがルビコニアンではないという事を、上のカラスにも見せつけてやれ!!』
レイヴンの声明を合図に、ルビコン3全域でルビコン解放戦線による総攻撃が開始。星内企業のBAWSとエルカノに加え、新たに星外企業のファーロン・エレクトニクスとシュナイダーの支援を取り付けた彼らの攻勢は凄まじく、超巨大建造物「バスキュラープラント」を有する技研都市へ突入を開始している。
高空では、恒星間入植船「ザイレム」にて三つ巴の戦いが繰り広げられていた。
コーラル根絶の為、如何なる犠牲を払ってでも、バスキュラープラントへのザイレム特攻を企む秘密結社 オーバーシアー。
コーラル搾取の為、ザイレムを撃沈し、ルビコン3の再掌握を試みる星外企業 アーキバス。
コーラル共生の為、ザイレム及びアーキバスを撃破し、ルビコン3の解放を目指す
オーバーシアーは牽引役であったシンダー・カーラとそれを補助するチャティ・スティック*1が倒れ、既に組織的な抵抗は不可能になりつつある。
勢力規模としては頭ひとつどころかふたつは飛び抜けているアーキバスは、ザイレムにも未だ
ルビコン勢力。ザイレム周辺に展開している戦力は、僅かにAC2機。されども僅か2機で対等に対抗している特級戦力。
1機は、独立傭兵
三つ巴の戦いは、今一つの局面を迎えようとしていた。
…
ザイレム第4下部発着場。
開けたその場所にて、621とスネイルが対決していた。
621がACを駆るのに対し、スネイルが搭乗しているのは惑星封鎖機構から鹵獲し、有人化かつ大部分の武装をEN兵器へと換装された特殊兵器「AAP07A アーキバス・バルテウス」。
先進技術による常時浮遊、強力なパルスアーマー、豊富な武装による大火力。更に搭乗者たるスネイルも、幾人も使い捨てて確実な安全性を担保させた最新鋭の第10世代強化人間施術を施し、バルデウスからの乗り換えも完璧に完了されたその操縦技術は、正に「人機一体」。
──バルテウスのバックパックに搭載された2門の超高振動パルスアレイから、621に向けてパルス弾の弾幕が放たれる。
だが、ルビコン3で幾重にも及ぶ激戦を生き残ってきた621の技量も、決して劣ってはいない。寧ろ、スネイルのそれを上回り得ると称する事が相応の表現に値する。
──ギリギリまで引き付け、ジャンプ。バランスの良い中量機体のジャンプ力に、更にブーストを吹かすことによってパルス弾の弾幕を躱しつつ、スネイルの上を取る。反撃に右手の重ショットガンの銃口がスネイルに合わさり、発砲。20発の散弾が放たれる。
故に機体性能に大きな開きがあろうとも、この戦いは正に「対等」。
──パルスアーマーに着弾する直前、バルデウスの大型ブースターの展開及び機体旋回が完了、アサルト・ブースト発動。僅かに4発の散弾がパルスアーマーを揺らすだけで終わり、大きく距離を取りつつ急旋回して仕切り直しを図る。
いや、621が優勢に進めていると言っても過言ではない。
──だが速度が高いという事は、機動が直線的になるという事。
スネイルはナンバーに恥じない実力こそあれど、V.Iフロイトに代わってヴェスパーの実質的な主席を勤め、後方作業を務める事が多かった。
対して621は先も述べた通り最前線で戦い続け、何人もの強敵を倒してきた。
ルビコン3の戦いに於いての、圧倒的な経験値差というアドバンテージは決して安くはない。
──パルスアーマー消失、同時にスタッガー状態。621、アサルトブースト始動。重機関銃を連射しつつ、威力減衰を承知でやや遠距離からショットガンを撃つ。即座に左肩のウェポンハンガーを起動、パルスブレードに持ち替え、2連撃。更にダメ押しと言わんばかりにブーストキック。重い機体とはいえ、常時浮遊状態のバルテウスが大きく後退。
しかし、だ。スネイルのV.Ⅱの看板は伊達ではない。
『消えろ…害獣!!』
『後退を、レイヴン!!』
バルテウス、ジェネレーターオーバーロード。過大なエネルギーが機体全体に流れ込み、通常より大きな威力と範囲でアサルト・アーマーが発動。同時にパルスアーマーを強制再展開。エアの呼びかけに咄嗟に後退を選択した621だったが、範囲内から完全に逃れる事が出来ずダメージと衝撃を受ける。
『裏切り者の第4隊長、頭の悪い上層部…』
『これは…回避を最優先して下さい!』
プラズマライフル及びパルスアレイの弾幕を展開。改めて621から距離を取りオーバーヒート前に射撃を終了。続けて流れるように水平リングの超高出力ENユニットを起動。超高出力レーザーが放たれ、仮想的な2振りの超巨大レーザーブレードとなる。
『そして何より、火種を撒き散らすルビコンの害獣…!』
グワリ、と。一瞬バルテウスの機体が沈んだと思った瞬間、大型ブースターを不規則に変形させながら回転を開始しつつ、621の真上を過ぎるように勢い良く突っ込んでくる。
流石に紫色にまで染まるレーザーブレードをまともに受けては不味い。そう判断した621は回避優先で立ち回る。が、各種ブースターを不規則に動かして、機体を回転させつつ迫ってくるバルテウス本体を躱した結果、一発が直撃、スタッガーではないものの機体が怯む。
『どいつもこいつも、この私を苛立たせる…!』
その隙に水平リングを稼働させて超高出力ENユニットを連結。結果、レーザーブレードの出力が更に引き上げられ、刀身が巨大化。
『死んで平伏しろ!』
怯みから立ち直りクイックターンで振り返った621から見て右下への、巨大レーザーブレードの振り下ろし。回避、間に合わない。
『レイヴンッ!!』
直撃、スタッガー状態に突入。更に大きく後方へ吹き飛ばされ、発着場の外側…ザイレムの縁でギリギリ踏みとどまる。
だが、その大きな隙をスネイルが見逃す道理など存在しない。レーザーブレードの展開を終了し、両手のプラズマライフルのチャージを開始。オーバーロード状態のジェネレーターから供給される膨大なエネルギーが2丁に注ぎ込まれ、僅か2秒でフルチャージ。
スタッガー状態からの復帰は間に合わない。再び来る大きな衝撃に備え、機体が持つ幸運を祈って最後のリペアキット展開のボタンに指を添える。
次の瞬間、バルテウスより軌跡を引くほどの出力で2発の巨大プラズマ弾が放たれ。
…
2発のプラズマ弾が、LOADER 4には
直撃、及びプラズマ爆発の高威力を完全に吸収し、僅か1秒でパルスプロテクションは消え失せた。
だが621もスネイルも、エアでさえも言葉を失い、動かない。その事実の衝撃は、双方の闘争を一時停止させるに足る威力。
スタッガーから復帰した621の機体の右後方。そこに1機の四脚ACが着地する。普段なら接近の時点で察知出来るエアのサポートも、スネイル及びバルテウスの観測に集中し切ってしまっていたせいで、この瞬間まで気付けていなかった。
緑と赤を主なペイントとし、コアの右部には2丁の拳銃を組み合わせたような赤いエンブレムの上に、尾を剣とした1匹のライガーが描かれたエンブレム。
『彼、は…』
『何をボケッとしている?』
その機体構成、その塗装、そのエンブレム、その声色。その全てに、とても覚えがある。
『何故だ…何故貴様が生きている!?』
何故ならば彼は、ウォッチポイントの戦いで。
『どうやら、貴様にはまだ教導が足りていないようだな!!』
621の手によって、
「…………ミシ……ガン………」
621の声帯が震え、声を発する。旧世代の第4強化人間施術を施された621の身体能力は、ウォルターによって最低限の機能回復こそ施されているが、発声など酷く困難な事だった。にも関わらず、声を発せたというのは一種の奇跡に近い。
『貴様も俺も、話す事はそれなりにはあるだろうが、それは後に回すとしよう』
621の隣にミシガンが並び立ち、ミシガンの全兵装が見下ろしている
無線越しでも良く響くミシガンの大声に、漸くハッと衝撃から立ち直った621は、改めて両手の重機関銃とショットガンの銃口をバルテウスに合わせた。
エア「
ルビコニアン「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
ラスティ「戦友に恥じない戦いをするまでだ!!」
要撃艦隊「アイエエエ!?V.Ⅳ!?V.Ⅳナンデ!?」
スネイル「
621「あっヤベ、直撃──」
ミシガン『愉快な遠足の
スネイル・621・エア「!!!!?」
次回はこうなるまでの経緯を書いていく予定。いつ投稿出来るかは分からぬ。