ルビコン3食糧輸送記録   作:クローサー

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思った以上に長くなったので分割。
多分次の話あたりでコーラル(幻覚)が燃え尽きる。


お人好しな大企業

アリサワ・フードコーポレーション。

 

地球の日本列島に本社を置く飲食業界最大の星外企業であり、各惑星に存在している幾多の飲食企業や畜産農家等を傘下とした「アリサワグループ」を形成している。

その規模たるや、ベイラムグループやアーキバスグループをも凌ぐと言えばその巨大さが分かるだろう。

アリサワグループで生産される食料品は品質に拘り抜く日系企業らしく、とても高品質で美味であると好評であり、飲食業界はアリサワグループ一強で染め上げられている。

 

そしてアリサワ本社もグループの力に驕る事無く、辺境惑星を開拓。惑星丸ごと、余す事無く全てを農耕地帯及び食品加工場とした「農耕惑星」を8惑星保有。更に農耕惑星からの輸送範囲外をカバーするように建造された、農耕能力に特化したスペースコロニー「農耕コロニー」を32基保有。そしてアリサワ本社が保有している膨大な輸送艦隊によって食料を送り届ける。

辺境の膨大な食料提供を殆ど単独で賄う事を可能とするマンパワーと技術を持っているアリサワは、正に星外企業の最大手の一角だ。

しかしアリサワグループは明確な弱点が存在する。

 

 

アリサワグループは、「軍事企業が一社も存在していない」。

 

 

本社であるアリサワが唯一軍事技術及び戦力を保有している。しかし防衛こそは十二分に出来ても、間違っても敵対勢力に大規模攻勢を仕掛けられるような人材やノウハウは持ち合わせて無い。

防衛一辺倒な軍事力では、同じく星外企業のベイラムグループやアーキバスグループ等に攻撃を受ける可能性があるだろう。しかしアリサワグループが取り扱っている品が、軍事侵攻の選択肢を奪い去っている。

 

「人類の食糧庫」とすら謳われているアリサワグループが提供するのは食料品及び輸送能力。そしてアリサワグループは飲食業界一強。

これによるアリサワグループが提供する食料の総量は、人類社会の食料総生産の8割を担っている。

 

つまりアリサワグループに対して軍事行動を起こした日には、経済制裁によって敵対勢力の糧食調達ルートが瞬時に壊滅的となるのだ。

無論、アリサワグループ以外の企業から糧食を調達する事は出来るだろう。しかし確実に足元を見られて値段が釣り上げられるのは目に見えていて、尚且つそれが不味い糧食である可能性すらある。糧食が不足し、苦労して手に入れた糧食は不味いともなれば、兵士達の士気は落ちる。そして消費量に対して調達量が圧倒的に不足するという事は、敵対勢力の市民達(人的資源)が餓死する事となる。

何よりもアリサワグループが取り扱っているのは高価な資源でも何でもない、ただの食料品だ。わざわざ軍事行動を起こしてまで奪い取るメリットよりも、アリサワグループの経済制裁によるデメリットが遥かに上回っている。

 

アリサワグループの真の強みは「明確な軍事的敵対勢力が存在しない」という事だ。

 

ベイラムグループの上層部(老人達)も、アーキバスグループの上層部(老人達)も。あらゆる上層部(老人達)がアリサワグループの高級食料品を嗜んでいる。

そんな彼等が、わざわざ不味い飯を食べる事になる選択肢は選ばない、選べない。

例えアリサワ本社所有の農耕惑星にどれだけ高価な資源が発見されたとしても、農耕惑星に戦火を起こす事は、「人類の食糧庫」への攻撃、つまりは人類社会への宣戦布告にも等しい事だ。

そんな愚行を犯す者がいれば、アリサワグループに恩を売るチャンスだとその他多数の勢力からタコ殴りにされるのが目に見えている。そんな事を承知でしでかせるのは、自殺志願者のテロリストが関の山だろう。

 

人類社会の8割の食料を生産しているアリサワグループは、極端な話ではあるが人類社会の8割を支配していると言ってもいいだろう。

どんなに強い兵器を生産出来たとしても、それを操るのは大抵の場合は人間。人間である以上食料は必要不可欠であり、パイロットが例えAIであったとしても、それを整備するのも、作るのも結局は人間だ。

食料が無ければ人は倒れる。戦う兵士も、兵器を操るパイロットも、後方要員の事務員も、高級な椅子を尻で磨く上層部(老人達)も、果てには彼等の支配下で生活する市民達も。アリサワグループの怒りを買えば、一手を下すだけでいとも容易くモラル・ハザードを引き起こして餓死させる事が出来る。

 

 

一部の人々は、こう嘯く。

人類社会を真に支配出来るのは「政府」でも、ベイラムグループでも、アーキバスグループでもない。

誰もが必要な食料の8割を生産しているアリサワグループの本社、アリサワ・フードコーポレーションであると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事を言われているアリサワ・フードコーポレーションだが、人類社会を支配する訳でも無く、何処かの勢力を自分達から締め上げる訳も無く。せっせと食料を生産し、あらゆる惑星と人々に分け隔てる事無く食料を運び続けていた。

 

「どんな場所でも、あらゆる人々に食べ物を」。

それを社訓としているアリサワ・コーポレーションにとって、人類社会の支配や企業政治などに一切興味は示さなかった。寧ろそんな事を自分達がやるのは面倒臭いから、「政府」や他の企業グループにそういうのは全投げしているまであった。

 

噛み砕いて言えば「ウチらは美味い飯を作って売るのが好きなだけだから、人類社会の支配とか資源競争とか企業政治とかはお前らがやってろ。こっち巻き込んだら二度とウチらの飯食わせないからな」である。

 

人類社会の8割の胃袋を握っているからこそ出来る、完全なる中立宣言。

彼等はただひたすらに美食による幸福を追い求める職人達であり、それ以外の悉くが些事でしかなかった。

 

故に、アリサワグループは当然の如く当時のルビコン3にも食料の提供を行っていた。

とはいえ当時のルビコン3はとても自然豊かな環境であり、食料自給率は極めて高かった。アリサワグループが輸送していた食料は、ルビコン3では生産出来ない高級品に限られており、数隻程度の小規模な輸送艦隊程度の物。それも不定期的であるという事もあって、アリサワグループにとってルビコン3は商売の地とはなり得なかった。

 

 

しかしアイビスの火によって、それらは全て塗り変わった。

 

 

周辺星系が文字通り燃え上がるという空前絶後の大災害に人類社会がパニックに陥っている中、アリサワグループは即応。

ルビコン3にて被災している人々を助ける為に輸送ローテーションの圧迫を覚悟で、即時対応可能な輸送艦に救援物資を積載した救助艦隊を緊急編成。

その隻数は僅か20隻であったが、爆心地であるルビコン3の被害状況を考えると、この艦隊の派遣すら無駄ではないとアリサワ本社ですら考えられていた。

 

何せ今回の災害は、周辺星系すら燃やす程の業火だ。下手すればルビコン3そのものが爆散していても何ら不思議な事ではない。例え爆散は免れていたとしても、果たして人間が呼吸出来る環境であるかすら分からなかった。

それでもルビコン3に生存者が居る可能性を賭けて、救助艦隊はルビコン3へと進み続けた。

 

救助艦隊は安全圏よりアイビスの火を観測。突入タイミングを見計らい、アイビスの火の鎮火と同時にルビコン星系へと突入した。




星外企業達「技術競争!資源開発!軍事衝突!」
アリサワ「そんな事より皆の胃袋を満たしたい」

ルビコン3「アイビスの火が起きて周辺星系ごと燃え始めた☆」
人類社会「ファッ!?」
アリサワ「飯作ってぬくぬくしてる場合じゃねえ!!」
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