カンニングの濡れ衣を着せられた秀才が試召戦争で大暴れする 作:Kicks
FクラスvsBクラス戦後に始まったBクラスvsCクラス戦が終わった。3日に渡る長期戦だったが、Bクラスの勝利だった。
BクラスがAクラスに試召戦争の準備が出来ている宣言を確認した後、Fクラスの生徒達は、Fクラスで雄二のAクラス戦での最後の説明を受けていた。
「まず、皆に礼を言いたい。周りの連中には不可能だと言われていたにも関わらずここまで来れたのは、他でもない皆の協力があってこそだ。感謝している。」
前置きとして、壇上の雄二がこれまで協力してくれたクラスメイト達に礼を言う。
「ゆ、雄二、どうしたのさ。らしくないよ?」
「ああ。自分でもそう思う。だが、これは偽らざる俺の気持ちだ。」
去年からの付き合いである明久が指摘してくると、雄二が自分の気持ちを素直に述べる。
「ここまで来た以上、絶対にAクラスにも勝ちたい。勝って生き残るには勉強だけが全てじゃないという事実を教師達に突きつけるんだ!」
『おおーっ!』
『そうだーっ!』
『勉強だけじゃねぇんだーっ!』
雄二の演説で、Fクラス生徒達の気持ちが1つになっていく。
「皆ありがとう。Aクラス戦だが、Bクラス戦後の対談でも説明したが、一騎打ちで決着をつけたいと考えている。」
クラスの皆は戸惑いの空気が流れ、ざわめきが広がった。
『誰と誰が一騎打ちをするんだ?』
『それで本当に勝てるのか?』
「落ち着いてくれ。それを今から説明する。」
雄二が机を叩いて、Fクラス生徒達を静まらせる。
「やるのは当然、俺と翔子だ。」
クラス間の戦争を代理で行う以上、代表同士の一騎打ちは当然と言えば当然だろう。
しかし、問題は相手が学年主席の霧島であることだ。Fクラスでトップの姫路でもかなりの差を付けられている。
「馬鹿の雄二が勝てる訳なぁぁっ!?」
明久が代表の一騎打ちでは勝ち目がないことを指摘してきたので、雄二は黙らせるために明久の頬めがけてシャーペンを投げつける。
「まぁ、確かにまともにやりあえば勝ち目は無いかもしれない。…しかし、それは前の戦いでもそうだっただろう。まともにやりあえば俺達に勝ち目はなかった。今回だって同じだ。FクラスはAクラスに勝って設備を手に入れる!」
『おうっ!』
「俺を信じて任せてくれ。過去に神童とまで言われた力を今皆に見せてやる。」
『うおおおぉーーーっ!!』
何度も勝利に導いてきた雄二の実績でFクラス全員が雄二の力を信じている。
「さて具体的なやり方だが、一騎討ちでは科目を限定するつもりだ。」
「何の科目でやるつもりじゃ?」
「日本史だ。」
雄二の質問で皆が不思議に思った。霧島が日本史を苦手という訳でもなければ、雄二が日本史を得意としている訳でもないからだ。
「ただし、内容は限定する。レベルは小学生程度、方式は100点満点の上限あり、召喚獣勝負ではなく純粋な点数勝負とする。」
「でも同点だったら、きっと延長戦だと?そうなったら問題のレベルも上げられちゃうだろうし、雄二には厳しくない?」
「確かに明久の言う通りじゃ。」
明久の指摘に皆内心で同意する。小学生程度のレベルで満点ありのテストなら、注意力勝負となり真っ向勝負よりも勝ち目があるかもしれないが、分の悪い賭けである。同点の引き分けなら、明久の指摘通り延長戦となり雄二の負けになるだろう。
「おいおい、いくら何でもそこまで運に頼り切ったやり方を作戦などと言うものか。」
「それなら、霧島さんの集中を乱す方法を知っているとか?」
「いいや。アイツなら集中なんてしていなくとも、小学生レベルのテストならば何の問題も無いだろう。」
「雄二、そろそろタネを明かしてもいいじゃろう?」
Fクラスのクラスメイト達は不可解に思い、秀吉の言葉に頷いていた。
「ああ、前置きが長くなった。」
雄二がかぶりを振って、改めて口を開いた。
「俺がこのやり方を採った理由は、ある問題が出れば、アイツが確実に間違えると知っているからだ。」
「坂本君、何の問題?」
「大化の改新だ。」
「大化の改新?誰が何をしたのか説明しろとか?」
「いや、そんな難しい問題じゃない。もっと単純な問いだ。」
「単純というと何年に起きた、とかかのう。」
「ビンゴだ秀吉。年号を問う問題が出たら俺達の勝ちだ。」
「645年だよな?それは確実なの?」
「ああ、確実だ。その問題が出たら俺達の勝ちで、晴れてこの教室とおさらばっていう寸法だ。」
「あの、坂本君。」
「ん?何だ姫路?」
「霧島さんとは、仲が良いんですか?」
姫路が作戦内容で発生した疑問を指摘する。雄二は霧島を『アイツ』か『翔子』と呼んでいたのだ。仲が良くなかったら、こんな呼び方はしないだろう。
「ああ。アイツとは幼馴染だ。」
「総員、狙えぇっ!」
「なっ!?なぜ明久の号令で皆が急に上履きを構える!?」
「黙れ、男の敵!Aクラス戦前に貴様を殺す!」
男子生徒からの告白が絶えない美少女の霧島と仲のいいと判明したので、霧島が雄二と恋人にならないようにFクラス男子はリンチを行おうとしているのだ。
「遺言はそれだけか?……待つんだ須川君。靴下はまだ早い。それは押さえつけた後で口に押し込むものだ、」
「了解です。吉井隊長。」
明久は確実に雄二の息の根を止めるために、リンチの具体的な内容を決めようとしている。
「あの、吉井君。」
「ん?何、姫路さん。」
「吉井君は霧島さんが好みなんですか?」
「そりゃあ、まあ、美人だし。」
「…………。」
「え?何で姫路さんは僕に向かって攻撃態勢をとるの!?美波はどうして僕に教卓を投げようとしているの!?」
「神野君は、霧島さんに興味は無いの?」
慌て始める明久の近くで、橘は他の男子クラスメイトとは違って落ち着いている神野に聞く。
「霧島さんに勉強教えて欲しいという下心なら確かにあるよ。」
「……神野君らしいよね。」
騒いでいる男子生徒をしげしげと眺めながら返す神野を見て、橘は苦笑いをする。
「まぁまぁ。落ち着くんじゃ皆の衆。」
秀吉は卓袱台を手で強く叩いて冷静に場を取り持つ。
「む。秀吉は雄二が憎くないの?」
「相手はあの霧島翔子じゃぞ?男である雄二に興味があるとは思えんじゃろうが。」
秀吉の一言でFクラス男子達は冷静になっていく。
「むしろ、興味があるとすれば……。」
「……そうだね。」
「な、何ですか?もしかして私、何かしましたか?」
明久達の視線が姫路さんに集中する。
「とにかく、俺と翔子は幼馴染で、小さな頃に間違えて嘘を教えていたんだ。」
明久達は幼馴染という立場に引っ掛かりを覚えたが、霧島は女の子が好きだという事実に免じて雄二への怒りは水に流す。
「アイツは一度教えたことは忘れない。俺はそれを利用してアイツに勝つ。そうしたら俺達の机はシステムデスクだ!」
『おぉーーー!!』