カンニングの濡れ衣を着せられた秀才が試召戦争で大暴れする 作:Kicks
「では、3人目の方どうぞ。」
「3連敗を阻止するために、僕が出よう。科目は総合科目。」
久保利光がAクラスの3戦目として名乗り出る。
これには、ちゃんとした理由がある。
2連敗になっているので、Aクラスの流れが悪い。
しかも姫路が残っている以上、Aクラスの3敗目が出てしまう可能性が高い。
ならば、ここで確実にAクラスの1勝を取って、流れを良くしようとしているのだ。
「よし。頼んだぞ、明久。」
「え、僕!?学年次席相手に!?」
指定されたので、明久は動揺する。
「自信を持て。神野と姫路以外で久保に勝てる可能性があるのは明久だけだ。」
雄二が自信たっぷりに言う。
「どうして僕なら久保君に勝てる可能性があるの?」
ふと、気になったことを明久は聞く。
「…………。」
雄二達は気まずそうな顔で目を逸らす。
これにはちゃんとした理由がある。
久保は同性である明久に好意を抱いているからだ。
加えて、明久は観察処分者で召喚獣のダメージのフィードバックがある。
このことから、久保は明久に手心を加えるのではないのかという考えだ。
しかし、本当のことを言ってしまったら、久保と明久双方を色んな意味で傷つけることになってしまう。
だから、雄二は何も言えなかったのだ。
「あ、明久は召喚獣の操作が上手いからじゃな。」
秀吉が明久の強みを指摘して納得させた。
「それでは……。」
高橋先生が前と同じように操作を行う。
それぞれの召喚獣が喚び出されて、お互いの召喚獣が出る。
明久の召喚獣は改造学ランに木刀。
それに対し、久保の召喚獣は鎧と袴を着ていて、二振りの大鎌を装備している。
『総合科目
Aクラス 久保利光 3997点 VS
Fクラス 吉井明久 813点』
「吉井君、君に痛い思いをして欲しくない。」
「あ、うん。ありがとう。」
「だから今すぐ降参するんだ。」
久保はお互いの点数を見て明久に降伏勧告をする。
明久が痛い思いをしないよう久保なりの優しさだった。
「気持ちは嬉しいけど、僕はFクラスだからね。逃げるわけにはいかないよ。」
明久は逃げることはできなかった。
勝ち目が薄くても、ここで逃げてしまったら今まで頑張ってくれた皆に合わせる顔がないからだ。
「そうか、ならばせめて痛みは一瞬で終わらせるよ。」
久保の召喚獣は明久の召喚獣に首元に向けて一閃を放つ。
しかし、明久の召喚獣はバックステップで躱す。
久保の召喚獣は更に距離を詰めてもう一振りの鎌で突き出す。
しかし、明久の召喚獣は横に飛んで、木刀で思いっきり切りかかる。
久保の召喚獣は明久の召喚獣の木刀を鎌の刃で受け止めた。
スパッ!!
「「「……は??」」」
明久の木刀が久保の召喚獣の鎌の刃に当たって、切れてしまった。
明久が動揺した一瞬の隙に死神の刃が明久の召喚獣の首に突きつけられる。
「勝負ありだね。吉井君。」
「……僕の負けだ。」
自分の武器が折られ、武器を首元を突き付けられた明久の召喚獣にもはや勝ち目が無かった。
「ごめん、雄二。久保君には敵わなかったよ。」
「気にするな、明久。ここまでの差だったら仕方ない。」
明久の謝罪に、雄二は何も責めれなかった。
久保の召喚獣の戦闘力がそれだけ圧倒的だったからだ。
「これで1対2ですね。次の方は?」
高橋先生が淡々と作業を進める。
「あ、はいっ。私ですっ。」
ここで姫路が出る。
Fクラスにいながら、Aクラスに戦える数少ない人材だ。
「俺が出よう。科目は古典でお願いします。」
Aクラスから出たのは飯島卓也だ。
久保の次に古典が得意で有名だ。
「わかりました…。」
高橋先生が操作を行い、お互いの召喚獣が呼び出される。
『古典
Aクラス 飯島卓也 367点 VS
Fクラス 姫路瑞希 403点』
「負けてたまるかぁぁ!」
飯島の召喚獣が小細工されないように突撃する。
気合と根性で押し通そうという考えだ。
「負けません!」
しかし、姫路が小さな手を握りこんだら、姫路の召喚獣の腕輪が光を発した。
左腕の腕輪から光線がほとばしったかと思った瞬間、Aクラスの召喚獣が炎に包まれる。
姫路の腕輪の特殊能力は熱線である。
Aクラスの飯島の敗因は、気持ちで乗り切ろうとしたことと姫路の召喚獣の腕輪の特殊能力が知らなかったことである。
気持ちの強さでは、力の差はひっくり返らない。
それが許されるのは少年漫画だけである。
試召戦争で大事なのは、テストの点数・召喚獣の操作技術・戦術・運である。
それを知るには、飯島は試召戦争での戦闘経験が足りていなかった。
試召戦争が初めてだから仕方のない面はあったが。