カンニングの濡れ衣を着せられた秀才が試召戦争で大暴れする   作:Kicks

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第22問

「これで3対3で、最後の1人どうぞ。」

 

高橋先生の顔色が落ち着き始めているのを神野は感じ取った。

Aクラスが3勝していて、最後に出るのは学年主席の霧島翔子だ。

霧島は負けることはないだろうとの考えで安心しているのだ。

 

万が一Fクラスが勝ってしまったら、担任がAクラスからFクラスになってしまうので、高橋先生にとっても他人事ではない。

 

「……はい」

 

「俺の出番だな」

 

事前の取り決め通り、一騎討ちの最後は代表同士で行うことになっている。

Aクラスからは最強の敵である霧島翔子が出る。

Fクラスからはもちろん坂本雄二が出る。

 

「教科はどうしますか?」

 

選択権はFクラスにあるが、Aクラスの皆は騒いでいない。

学年代表である霧島が負ける訳がないと思っているからだ。

 

「教科は日本史、内容は小学生レベルで方式は100点満点の上限有りだ!」

 

雄二の宣言で、Aクラスにざわめきが生まれる。

 

『上限有りだって?』

 

『小学生レベルなら、満点確実じゃないか』

 

『これは集中力と注意力の勝負になるぞ……』

 

Aクラスの皆は、雄二の意図に気付いて、顔色が変わった。

これなら、Fクラスでも勝てる可能性があると。

 

「問題を用意する必要があるので、少しこのまま待っていてください。」

 

高橋先生はノートパソコンを閉じて、教室を出ていく。

小学生レベルのテストの資料を取りに行くのだろう。

 

高橋先生の背中を見守り、明久と神野は雄二に近づく。

 

「雄二、後は任せたよ。」

 

「坂本君、勉強の成果を発揮してね。」

 

実は神野は前日に雄二に日本史の勉強をするように声をかけていたのだ。

この作戦は雄二が満点を取ることが前提の作戦だからだ。

 

「ああ。任された。」

 

雄二はガッツポーズをする。

 

「……(ビッ)」

 

ムッツリーニが歩み寄り、ピースサインを雄二に向ける。

 

「お前の力には随分助けられた。感謝している。」

 

「……(フッ)」

 

ムッツリーニは口の端を軽く持ち上げ、元の位置に戻った。

 

「坂本君、あのこと、教えてくれてありがとうございました。」

 

「ああ。明久のことか。気にするな。後は頑張れよ。」

 

「ハイッ」

 

姫路の元気な返事を聞いて、雄二は楽しそうにやんわりとした笑みを浮かべる。

まるで、相手を思いやるような優しい慈しみの表情であった。

 

「では、最後の勝負、日本史を行います。参加者の霧島さんと坂本君は視聴覚室に向かってください。」

 

「その前に、高橋先生に質問があります。」

 

雄二がその前に提案する。

 

「はい?何の用でしょうか?」

 

高橋先生が不思議な顔をする。

 

「もし、どちらも100点満点になったら試召戦争を引き分けにすることは可能でしょうか?」

 

「引き分けってどういうことですが?」

 

「ああ。具体的な内容としては、もう一度AクラスとFクラスの皆で振り分け試験を行い、総合科目の上位50人がAクラスに入るということだ。」

 

「それって、メンバー交換をするという事でいいでしょうか?」

 

「そうだ。姫路が試験当日で体調不良でFクラスというのが気の毒でな。

もし引き分けならば、姫路だけでもAクラスに入れてやりたい。」

 

「…Aクラスの代表が合意してくれるなら和平交渉という形になるので問題ないですよ。」

 

「悪いけど、他のAクラスメンバーと相談して決めたいかな。あたし個人では決められないし。」

 

木下が仕切って、Aクラスの人達と相談を開始する。

 

(……雄二、どういうつもりなの?)

 

明久は目で雄二に訴える。

いつも雄二と一緒に行動しているので、アイコンタクトでコミュニケーションができるのだ。

 

(あれは、万が一の保険対策だ。)

 

(保険って、どういうこと?)

 

(あのな、翔子に勝つ作戦はテストの問題に「大化の改新の年号」が出てくることが前提だ。しかし、もし出なかったらどうなるんだ?)

 

(……両者満点で延長戦になる。集中力や注意力にブランクがある以上、雄二は延長戦で負けるだろうね。)

 

(そうだ。そのために、負けではなく引き分けに持ち込ませて、後日Aクラスと再戦する。)

 

(でも、こんな接戦になった以上、もう一騎打ちは引き受けてくれないよ。それに、クラスメイトで交換するのは姫路さんと神野君よりも点数が低いAクラスの人だろうからますます勝ち目が無いよ。)

 

(普通に試験を受ければな。姫路と神野に後で事情を話して、白紙で全科目の答案を提出するように頼む。)

 

(それだと、Fクラスメンバーは変わらないんじゃ?)

 

(白紙で提出するメンツは姫路や神野だけじゃない。主力の久保や翔子を懐柔して、全科目白紙で提出してもらう。)

 

(久保や翔子を懐柔って、できるの?)

 

(……まあ、交渉の仕方は考えている。)

 

雄二は微妙な表情で返す。まるで、自分が身を切るような思いをしている表情である。

 

「Fクラスの皆、聞いてくれ。もしAクラスと引き分けになったら後日Aクラスと再戦して、勝利をつかむことを約束しよう。」

 

雄二がFクラスのメンバーを説得させる。




神野の忠告で、雄二は一夜漬けですが日本史を勉強しています。
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