カンニングの濡れ衣を着せられた秀才が試召戦争で大暴れする   作:Kicks

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ここから、時系列が原作2巻開始です。


第2章(清涼祭)
第1問


桜色の花びらが坂道から徐々に姿を消し、代わりに新緑が芽吹き始めた季節になった。

 

とある休日、神野は橘と姫路と一緒に、図書館で自習をしていた。

 

いつもだったら、橘と明久の計三人で勉強を教えていたのだが、今回は明久が不参加で姫路が急遽参加することになったのだ。

 

明久はお菓子などをダシにして、勉強会を参加させていたのだが、親の仕送りが来たのでさぽったのだ。

 

3人は昼休憩がてら、ファストフード店で食べ物を注文して、呼び出されるのを待っていた。

 

「ごめんなさい、怜奈ちゃん。2人の邪魔をして。」

 

「全然いーよ。」

 

「そうだよ。勉強を教えてくれたし。」

 

試召戦争のAクラスの敗北で、自分の成績だけでなく、クラスメイトの成績アップが不可欠であると神野は気付いた。

 

そこで、毎週の土日に数学や化学といった理系科目を橘に教えていた。

 

文系科目が苦手な神野ではうまく教えることができなかったため、自然とそうなったのだ。

 

今回の勉強会は学年次席の姫路に文系科目を教わることができたので、神野は大助かりだったのだ。

 

「ちょっと、神野君にお願いがありまして、勉強会に参加しました。」

 

「ん?何?」

 

神野は姫路の真剣な表情に怪訝な顔をする。

 

「清涼祭で行われる召喚大会に一緒に参加してください。」

 

「へー、姫路さんがあんな行事に興味あるなんて驚いたな。」

 

神野は姫路の召喚大会参加の宣言に驚く。

 

姫路は行事の参加といった目立つようなことをするタイプじゃないと思っていたからだ。

 

「このままだと、私が転校されちゃうので…。」

 

「待って、この話から姫路の転校にどうつながるの?」

 

神野は不思議に思った。召喚大会の参加有無で転校につながることはないはずだ。

 

「瑞希、それに転校って普通決まったら覆せないものだと思うけど…。」

 

橘は姫路の発言に疑問に思って質問する。

 

「そ、その……」

 

複雑な顔をしながら、姫路は口を開く。

 

「お父さんが転校を進めたのは『Fクラスの環境が悪い』からだから。」

 

「なるほど、転校の理由が家庭の都合ではなく、『学校の環境』ということか。」

 

姫路の父親の言い分に、神野は納得した。

 

姫路にこのFクラスの設備は相応しくない。

 

姫路は学力がトップクラスであるはずなのに、劣悪な設備で周囲のクラスメイトはバカだらけである。

 

普通の両親なら転校を考えてもおかしくはない。

 

「だから、召喚大会で優勝して、Fクラスの評価を改めようと考えているんです。」

 

「なるほど、確かに召喚大会で優勝すれば、姫路の父親の考えを改めるはずだね。」

 

神野は姫路の考えに納得した。

 

「わかった。そういうことなら、召喚大会に参加しよう。」

 

神野は召喚大会の参加を決心した。

 

次の試召戦争で上位クラスに勝つためには姫路の力は不可欠である。

 

姫路の感情は別にしても、姫路がいなくなるのは神野にとっても困ることだった。

 

「待って、それだけじゃ姫路の両親の考えは変わらないよ。」

 

「どうして?」

 

「肝心のFクラスの劣悪な設備の問題が解決していない。それが原因で瑞希の身体が壊したらどうなると思う?」

 

「……間違いなく親は姫路さんを転校させるだろうね。」

 

「そう、だから肝心のFクラスの設備を何とかしないと。」

 

「なら、清涼祭の出し物を成功させて、その利益で設備を購入して、設備を向上させよう。」

 

「が、頑張って成功させましょう!!」

 

「そうね!まだ出し物とか決まってないからいい出し物を考えよう!」

 

神野はクラスメイトの可愛い女の子達と午前は図書館で勉強会をし、午後はファストフード店で清涼祭について話し合うという高校入学以来最高の青春の一日を過ごした。

 

そして、その幸せを噛みしめつつ、神野は清涼祭で大成功しようと心に誓った。

 

 

『諸君。ここはどこだ?』

 

『『『最期の審判を下す法廷だ!』』』

 

『異端者には?』

 

『『『死の鉄槌を!』』』

 

『男とは?』

 

『『『愛を捨て、哀に生きるもの!』』』

 

『宜しい。これより、2-F異端審問会を開催する!』

 

休日明け、神野はFクラスの教室に入った時、クラスメイトの男子達に捕まって縄でグルグル巻きにされて傷んだござの上に転がされた。

 

周りを見ると、Fクラス教室は暗幕が引かれて暗くなっており、覆面マントの異様な集団がサバトを執り行っていた。

 

神野が耳を澄ませると、クラスメイト達の妙な会話が聞こえてきた。

 

『罪状を読み上げたまえ。』

 

『はっ。須川会長。えー、被告、神野大輝は我が文月学園第2学年Fクラスの生徒であり、この者は我らが教理に反した疑いがある。罪状は背信行為である。先日未明、同Fクラスの女子生徒である姫路瑞希と橘怜奈に対して日食事をとっていたので、当日我らが同胞が確保。現在に至る。今後、然るべき対応をー』

 

『御託はいい。結論だけを述べたまえ。』

 

『一緒に食事をしていたので羨ましいであります!』

 

『うむ。実にわかりやすい報告だ。』

 

話がトントン拍子で進んでいき、神野は清涼祭どころではないことを悟った。

 

「判決は死刑だが、汝は自らの罪を悔い改めて、裁きを受け入れるか?」

 

神妙な声で神野の返事を待つ須川。

 

これに対し、神野はどうすれば自分が処刑を頭を巡らせた。

 

「その前に、俺の罪について確認したい。」

 

神野は毅然とした態度で発言をする。

 

「俺の罪とは、クラスメイトの姫路さんや橘さんと一緒に食事をしたことなのか?」

 

「そうだが、何か?」

 

「姫路さん達はよくFクラス教室で昼食をしている。これで処罰対象になるならば、Fクラス教室で昼食を取っているFクラス全員も処罰の対象になるはずだ。」

 

「…………」

 

異端審問会会長の須川が思案し始める。

 

処罰対象にする判断が難しいからだ。

 

『それは詭弁だ。』

 

他のFクラスメンバーから指摘が入る。

 

『なぜだ、福村一級審問会』

 

『異端者神野は、推定3m位の距離で女性と会話を取っていた。これは、パーソナルスペースの侵害で処罰に該当するのでは?』

 

『一理あるな。では、スタンガン責め5回で手を打とう。』

 

須川が用意したスタンガンの出力は最大20万ボルト。

1回だけでも生命が危ないのに、5回もやられれば神野は間違いなく感電死する。

 

「待つんだ、須川。ここで俺を処刑したとする。もし清涼祭後の打ち上げに女子が参加したら、参加した男子全員が処刑になってしまう。」

 

『む……。』

 

再び須川が思案する。

もし打ち上げが起きて女子が参加したら、自分を含めて参加した男子全員が神野と同じ処罰を受ける可能性を考慮しているのだろう。

 

『会長。被告の発言にも一理あると思います。』

 

『我々にもこれくらいの幸運なら訪れるかもしれませんし。』

 

会員達の掩護が入る。

清涼祭後の打ち上げに自分達も可能性があるという言葉が響いたのだろう。

 

「そもそも、食事会になったのは図書館で勉強会をしているからだ。じゃあ、俺が勉強会を開いて勉強を教えているのは『試召戦争に勝つためには俺だけでなくクラスメイトの成績アップが不可欠』だと思ったからだ。そんなに食事会に参加したいなら、一緒に勉強会に参加しないか?同じFクラスなら、参加しても俺は別に構わない。」

 

『『『何ぃ!!』』』

 

「ああ、橘だけでなく明久にも勉強を教えているしな。」

 

異端審問会の参加者全員の目の色が変わった。

自分達が休日に姫路や橘と会えるチャンスに目を輝かせたのだろう。

 

『そ、そうか。それなら、判決無罪。』

 

須川が会長として無罪の判決をした。

その事実に、神野はホッとした。

 

「貴様ら、学園祭の準備をサボって何をしているんだ…」

 

朝のホームルームにやってきた鉄人がFクラス教室を開いてため息をついていた。

 

「あー……。ロングホームルームは『清涼祭』の準備だからな。この時期になっても出し物が決まっていないのはウチのクラスだけだから、本日中に決めるように。」

 

鉄人の呆れ顔になりながら告げて、異端審問会は完全にお開きになった。

 




Fクラスメンバーの成績アップフラグ
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