カンニングの濡れ衣を着せられた秀才が試召戦争で大暴れする   作:Kicks

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第3問

「明久、時間ある?」

 

帰りのHR(ホームルーム)が終わった放課後、明久は特に予定が無いので帰ろうとした所、神野に呼び止められた。

 

「ん?何か用?」

 

「用っていうか、相談なんだけど。」

 

神野が真面目な顔をして明久に話しかける。

 

「相談?僕で良ければ聞かせてもらうけど。」

 

「ありがとう。やっぱり雄二を何とか清涼祭に引っ張り出せない?」

 

神野はFクラスの中華喫茶の成功には雄二の先導が不可欠であると判断したのだ。

自分でなんとかしようとしないのは、賢明な判断だろう。

 

「う~ん、それは難しいなぁ……。雄二は興味の無い事には徹底的に無関心だからね。」

 

「……ちょっと質問を変えるけど、雄二って試召戦争に興味あるんだよね?」

 

「うん?あるね。試召戦争に興味があって、文月学園に入ったと言ってたし。」

 

「間接的だけど試召戦争に関わることだから、明久が頼めば動いてくれるよ。」

 

「え?清涼祭のどこに試召戦争に関わるの?クラスの設備の話だからそこまで試召戦争に関係ないと思うけど……。」

 

「大輝よ。どうしてそんなに思いつめた真剣な顔をしているんじゃ?話を聞いている感じじゃと、喫茶店とクラスの設備の話ならば、そこまで深刻な話のようには聞こえないんじゃが。」

 

秀吉が神野と明久の会話に入り込んだ。

神野が真剣な表情で明久に話しかけていることが気になったのだろう。

 

「本当に深刻な話だからね……。」

 

「え?どういうこと?」

 

「本人には誰にも言わないで欲しいって言われてたから、誰にも言わないでね?」

 

「う、うん。わかった。」

 

神野の真剣な表情に、明久は少し気圧される。

 

「実は、姫路さんがこのままだと転校するかもしれないだ。」

 

「ほぇ?」

 

姫路が転校するかもしれないという話を聞いて、明久は姫路が転校したらどうなるのか考えてみた。

貴重な清涼剤である姫路がいなくなれば、Fクラスは荒廃し、暴力と略奪の跋扈する地獄となるだろう。

その後、全員の髪型がモヒカンになること間違いなしになる。

きっと秀吉と橘さんを巡って血で血で洗うような抗争が続く日々になるー

 

「明久、目を覚ますのじゃ!」

 

秀吉が明久の肩を揺すってきたので、明久は思考が一時的に止まった。

 

「秀吉……、モヒカンになった僕でも、好きでいてくれるかい……?」

 

「どうして、姫路さんの転校から明久の髪型に変わるんだ……?」

 

「ある意味、稀有な才能かもしれんのう。」

 

「大輝!姫路さんが転校ってどういうことさ!」

 

明久がトんでた意識を戻して、神野に詰め寄った。

 

「言葉通りだよ。このままだと姫路さんは転校するかもしれないんだよ。」

 

「このままだとって。普通、転校が決まったら覆せないものだと思うけど…。」

 

「清涼祭の出し物と姫路の転校が全くつながらないんじゃが。」

 

「いや、姫路さんの転校の理由が家庭の事情ではなく『Fクラスの環境』だから。」

 

その理由を聞いて、明久は思わず納得してしまった。

 

姫路は学年2位の成績なのに、最低の設備にクラスメイトはバカだらけ。

これなら両親は転校を考えても仕方がないだろう。

 

「それに、姫路さんは身体も弱いから、もし体を壊したら……。」

 

「そうだよね、それだけでも十分転校する理由としては十分だよね……。」

 

「なるほどのう。じゃから喫茶店を成功させ、設備を向上させたいのじゃな。」

 

「そう。姫路さんも抵抗して『召喚大会で優勝して両親にFクラスを見直してもらおう』とか考えているみたいだけど……。

設備を何とかしないと姫路さんの両親の考えは変わらないよね……。」

 

「じゃあ、この前の休みに橘さんと姫路さんの3人で食事を取ってたのって……。」

 

「姫路さんの相談を受けてたからだよ。午前中に勉強をしていたのもあるけど。」

 

その話を聞いて、明久は朝に抱いていた神野への嫉妬は完全に消えた。

恋愛とは全く関係のない深刻な事態だったからだ。

もともと、明久は神野からの誘いをドタキャンした結果だったので、他のFクラスメンバーに比べてそこまで嫉妬していなかったのだが。

 

「姫路さんの転校は阻止したい。だからお願いだ。手伝ってくれ。」

 

神野は明久と秀吉に頭を下げた。

 

「もちろんさ!家庭の事情でどうしようもないならともかく、こんな理由で仲間が離れていくなんて絶対に嫌だ!」

 

「そうじゃな。ワシもクラスメイトの転校と聞いて黙っておれん。」

 

「それじゃ、まずは雄二に連絡を取らないとね。」

 

明久は教室に雄二がいないか見渡した。雄二はいなかったが、鞄はまだあるので、学校内のどこかにいるだろう。

 

『―――もしもし』

 

「あ、雄二。ちょっと話が―――」

 

『明久か。丁度良かった。悪いが俺の鞄を後で届けに―――げっ!翔子!』

 

「え?雄二。今何をしているの?」

 

『くそ!見つかちまった!とにかく、鞄を頼んだぞ!』

 

「雄二!いつどこで鞄を渡せばいいの!?もしもし!もしもーし!」

 

明久が携帯電話で聞いても、プー、プー、という無機質な音しか聞こえなかった。

 

「雄二はなんて言ってた?」

 

「……霧島さんから逃げ回ってるみたい。鞄を頼んだぞって頼まれちゃって……。」

 

「雄二はああ見えて異性には滅法弱いからのう。」

 

秀吉は腕を組んでうんうんと頷いている。

 

「どうしたものか。そうなってくると、雄二と連絡を取るのは難しいね……。」

 

神野はため息をつく。雄二と連絡を取るのが難しいという事実に頭を悩ませているのだ。

 

「確かに、雄二と連絡を取るのは難しいけど、これはチャンスだ。」

 

「え?どういうこと?」

 

「雄二を喫茶店に引っ張り出すには丁度いい状況なんだよ。うん。ちょっと協力してくれるかな?」

 

「いいけど……。雄二の居場所はわかっているの?」

 

「大丈夫。大体の見当はついている。相手の考えが読めるのは、何も雄二だけじゃない。」

 

「何か考えがあるようじゃな。」

 

「まあね。」

 

明久はニヤリと笑って、神野と秀吉を連れて教室を後にした。

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