カンニングの濡れ衣を着せられた秀才が試召戦争で大暴れする   作:Kicks

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第4問

「雄二。ちょっといいかな?」

 

神野は部屋の物陰で大きな身体を小さくしている雄二に話しかける。

 

「……この必死に隠れている状況でOK貰えると思って言っているのか?」

 

神野が雄二と会っているのは、体育館の倉庫だった。

雄二が素直に女子禁制の男子トイレや更衣室に行くとは思えない。しかし、男子禁制の場所ならバレた時の処罰を考えると行けない。ならば、場所が分かっても暗くて見つけるのが難しい倉庫辺りだろうという明久は予想し、明久と神野が手分けして探した結果、神野が雄二を見つけたのだ。

 

「まあ、事情を話せばわかってくれると思うよ。」

 

「あのな、どういう事情か知らないけど後にしてくれ。それどころじゃないんだ。」

 

雄二と神野が話している最中、ガラガラと倉庫の出入り口が開いた。

そこには長い黒髪とすらりと長い手足が魅力的な女の子の霧島が入って来た。

出入り口からの光で霧島の魅力が引き出され、神々しく感じる。

 

「……雄二、やっと見つけた。」

 

「逃げるぞ、大輝!」

 

「わかった!」

 

神野と雄二は上履きのまま倉庫の窓から外に飛び出す。

神野は霧島に追われる理由はなかったが、ここで雄二と別れると今日中に接触できるのが難しくなるので、後についていく。

 

「……雄二、逃がさない。」

 

霧島も雄二を捕まえようと追いかける。

体が鍛えられている雄二が撒けない位、霧島は足が速かった。

このまま走り続けても、雄二達は逃げぎれないだろう。

 

「雄二の鞄は明久が持っている。明久が待っている場所と時間は携帯のメールで確認して!」

 

「了解!大輝!」

 

雄二が神野を呼ぶ。

その視線は、前方の新校舎2階にある開け放たれた窓に向いていた。

あそこから校舎内に逃げ込む寸法だ。

 

「オーケー!」

 

合図を受けて、神野は雄二よりも先行して立ち止まり、こちらを向く。

 

「あいよっ!」

 

神野が手を組んで作った踏み台に足をかけ、雄二は一気に飛び上がる。

その瞬間に神野が勢いよく腕を跳ね上げていたので、雄二はなんなく開いている2階の窓に飛びつくことができた。

 

「雄二、明久によろしくね!」

 

「おう!ありがとうな!」

 

雄二は2階の校舎内に入った後、鞄を回収するために校舎内にいる明久を合流しようと移動する。

 

「……神野、どうして私の邪魔をするの?」

 

雄二との逢瀬の邪魔をしてきたので、霧島は神野を問い詰めていた。

 

「明久と雄二に頼まれてね。」

 

神野は何事も無いように返す。

やや端折っているが、概ね間違っていない。

 

「……雄二の向かっている場所を知ってる?」

 

霧島が神野に詰め寄る。

普段クールな霧島が詰め寄ると、他の人よりも迫力が段違いだ。

 

「明久が雄二の鞄を持っているから、それを取りに向かっているね。明久のいる場所は知らないけど、メールで伝えたから、雄二は知っているはず。」

 

「……そう。神野の携帯を見せて。」

 

神野は事実を話したら、霧島は神野の携帯を見せるように言う。

雄二だけでなく神野の携帯電話にも明久が送っている可能性を考慮したのだ。

 

「別に構わないよ。」

 

アッサリと神野は霧島に渡す。

万一霧島に捕まっても問題ないように、明久にはメールを送らないように頼んでいるからだ。

 

しかし霧島が神野の携帯電話を操作した数分後、神野の携帯電話に煙が発生した。

 

「霧島さーん!携帯電話に煙が!何をやったの!?」

 

「……ごめん、強くボタンを押しすぎた。」

 

携帯電話が壊されて、神野は思わず悲鳴が上がる。

霧島は機械オンチだった。

 

 

「おーっす、明久。」

 

雄二が空き教室に入って、明久と会う。

目的は勿論鞄の回収だ。

 

「雄二、どうしてそんなに必死に霧島さんから逃げているの?」

 

「……ちょっと、家に呼ばれていてな……。」

 

雄二が苦々しい表情を浮かべる。

 

「僕から見れば羨ましいけど?霧島さんの部屋でしょ?入ってみたいけどな~。」

 

明久は雄二がどうして嫌がっているのか不思議に思いながらも、霧島の部屋がどんな感じなのか明久は想像する。

 

「…………家族に紹介したいそうだ。」

 

「…………まだ付き合っているわけじゃないんだよね?」

 

霧島の強すぎる想いに、明久は雄二に同情心が湧き始めた。

しかし、姫路の転校阻止の為、そんな同情心を切り捨てた。

 

「さて雄二。そんな君に朗報ですっ」

 

「そうか。嫌な報せだったら殺すぞ。」

 

「…………。」

 

本気っぽい雄二の台詞に明久は一瞬言葉を失う。

 

「こ、こちらの携帯電話をどうぞ。」

 

明久は携帯電話を取り出し、秀吉の番号を呼び出して雄二に渡す。

 

「まったく、何の真似だ?」

 

雄二は訝しみながらも携帯電話を受け取り、耳に当てた。

 

『もしもし?雄二か?』

 

「秀吉か。一体何の真似だ?」

 

雄二は訝しみながらも携帯電話を受け取り、耳に当てた。

 

『ちょっと待つのじゃ。今替わるからのう。』

 

「替わる?誰と——おい。もしもし?」

 

向こうの携帯電話が誰かに渡された雰囲気が伝わってくる。

 

『……雄二。今どこ?』

 

「人違いです。」

 

雄二は即座に電話を切る。

 

明久は雄二の判断力に凄いと思った。即座に『人違いです』と切り返せる人間はそうはいないと考えたからだ。

 

「コロス。」

 

雄二の片言の日本語が異様に怖く感じたので、明久は雄二をなだめようとする。

 

「まぁまぁ、ちょっと落ち着いてよ。お願いを聞いてくれたら悪いようにしないからさ。」

 

「お願い?ふん。学園祭の喫茶店のことか。」

 

雄二の頭の回転がとても速いのを見て、雄二が本当に神童だったと明久は認識させられた。

 

「やれやれ。お前がこんな回りくどいことをしなくても、『大好きな姫路さんの為に頑張りたいんだ!協力して下さい!』と言えば面倒だが引き受けてやるというのに。」

 

「なっ!?べ、別にそんなことは一言も……!」

 

「あー、はいはい。話は分かった。仕方ないから協力してやるよ。」

 

一転して雄二の表情が楽し気な物となる。他人の恋路を見るのが楽しいのだろう。

 

「まあとにかく、引き受けてくれてありがとう。」

 

「気にするな。それより、秀吉と翔子は親しかったのか?」

 

雄二は探るような目つきで明久を見る。

Fクラスの秀吉とAクラスの霧島が一緒にいることが気になる様だ。

 

「さあ?」

 

明久が白を切る。

実際は秀吉の声真似だが、話すと雄二は怒るだろうし、何より脅迫ネタは温存しておきたいと思ったからだ。

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