カンニングの濡れ衣を着せられた秀才が試召戦争で大暴れする 作:Kicks
「そうか。姫路の転校か……」
明久と雄二は神野と秀吉の2人と合流して、Fクラスの教室内にいた。
「そうなると、喫茶店の成功だけでは不十分だな」
オンボロな教室を見渡した後、雄二は告げた。
「不十分?どうして?」
「姫路の父親が転校を勧めた要因はおそらく3つだな」
雄二は指を3本立てた。
「まず1つ目。ごさとミカン箱という貧相な設備だ。快適な学習環境ではない、という面だな。これに関しては喫茶店の利益で何とかできるだろう」
雄二は言いながら指を1本引っ込めた。
「2つ目は、老朽化した教室。これは健康に害のある学習環境という面だ」
「1つ目は道具で、2つ目は教室自体ってこと?」
「そうだ。これに関しては喫茶店の利益程度じゃ改善は無理だな、教室自体の改修となると、学校側の協力が必須だ」
雄二の言う通り、机と椅子なら清涼祭の売上次第で何とかなるだろう。しかし、教室自体の改修となってくるとその程度では払えない。また、業者の出入りや手続きが必要になってくるので、これは生徒の明久達にできることではない。
「そして最後の3つ目。レベルの低いクラスメイト。つまり姫路の成長を促すことのできない学習環境という面だ」
能力を伸ばす為には実力の近い競争相手の存在が重要になる。しかし、Fクラスに学年2位の姫路の競争相手なんているはずがない。
「参ったね。随分と問題だらけだ」
「そうじゃな。1つ目だけならともかく、2つ目と3つ目は難しいのう」
「そうでもないさ。3つ目は既に大輝と姫路で対策を練っているからな」
「そうか。姫路さん達が召喚大会で優勝したら、Fクラスにも学年トップと渡り合える生徒がいるって証明できる」
「翔子が参加するようだと優勝は厳しいが、アイツはこういった行事には無関心だしな。姫路と大輝の優勝は十分ありえるだろう」
霧島が参加するとなると、パートナーがAクラスの人になるため、科目が神野の得意科目じゃなかったら苦しい勝負になるだろう。
「本当なら姫路抜きでFクラスの生徒が優勝するのが望ましいけどな」
「それは言いっこなしだよ」
「姫路と神野が優勝したら、喫茶店の宣伝にもなるじゃろうし、一石二鳥じゃな」
秀吉と明久がうんうんと頷く。Fクラスの教室は古くて汚い旧校舎にあるため、この宣伝効果は大きいだろう。
「で、雄二。2つ目の改修はどうするの?」
「どうするも何も、学園長に直訴したらいいだけだろう?」
「それだけ?僕らが学園長に言ったくらいで何とかしてくれるかな?」
「あのな。ここは曲がりなりにも教育機関だぞ?いくら方針とはいえ、生徒の健康に害を及ぼすような状態であるなら、改善要求は当然の権利だ」
雄二の指摘通り、文月学園は教育機関である。生徒達の競争意識を高めるという方針はあるが、その生徒達が体調を崩してしまったら競争どころじゃなくなる。それに体調不良者を続出してしまったら、スポンサーや世間からバッシングがかかる。教室改修の改善要求が通る見込みは十分あるだろう。
「もしそれで何とかなるなら、3つの問題は全て解決できるね…。それなら、早速学園長に会いに行こうよ」
「そうだな。学園長室に乗り込むか。秀吉は大輝、橘と協力して学園祭の準備計画でも考えてくれ」
雄二は立ち上がり、指示を出した。こういうことが自然とできる雄二は代表としての才能があると明久は思った。
「うむ、了解じゃ。ついでに霧島翔子が見かけたら、雄二は帰ったと伝えておこう」
秀吉が微笑んで返す。霧島の名前を出されて、雄二は言葉に詰まった。
「雄二、学園長室に行こう」
「おう」
明久と雄二は学園長室を目指して教室を後にした。
☆
「……雄二がどこにいるのか知らない?」
雄二と明久が学園長室に向かった5分後、霧島が神野と一緒にFクラス教室に入った。
雄二を探すことを霧島は諦めていないようだ。
「雄二は先に帰ったのじゃぞ」
「……そう」
霧島はがっかりした表情をする。
雄二を捕まえて自分の家族に紹介する計画が頓挫したからだ。
(秀吉、雄二と明久は合流できた?)
神野は秀吉に霧島に聞こえないくらいの声で話しかける。
雄二と明久が学園長室に行ったことを神野は知らないのだ。
(雄二と明久は合流できたぞい。学園長室に行って、交渉しに向かっているのじゃ)
(そうか。なら安心だ)
無事に合流できて、神野は安堵する。
「……どうして神野は安堵しているの?」
霧島は神野の表情で首を傾げている。
「そういえば、霧島さん。Aクラスの出し物は何?」
神野は霧島に話しかけて話題を逸らした。
霧島に嘘がばれないようにするためだ。
「……メイド喫茶」
「なるほどー、メイド喫茶にするのか」
霧島や工藤や優子といった2年3大美少女がいて、設備もAクラスなので人気は期待できるだろう。
「メイド服ってどうやって調達するの?」
「……レンタルで調達する」
「どんなデザインなのか見せて」
「はい」
霧島は携帯電話の待ち受け画面にした自分が着たメイド服の写真を見せる。
長い黒髪に白いエプロンドレスがよく映えて、黒いストッキングが彼女の美脚を際立たせていた。
「うわ、綺麗だね」
「これは凄いのう……」
神野と秀吉は霧島の麗しい姿に思わず感嘆の声を漏らす。
「……ありがとう神野、木下」
メイド服の写真とHRで却下した出し物候補を思い出して、神野はとある案が思い浮かんだ。
「霧島さん、このメイド服って何着ある?」
「……予備を入れたら30着」
「…そっか。じゃあ、前日にメイド服を貸せる?」
「……前日なら多分いいと思う」
霧島は神野の携帯を壊してしまった負い目があるので、可能な限り要望に応えたいと思っているのだ。
「大輝、ワシ達の出し物は中華喫茶じゃ。中華喫茶にメイド服には合わないじゃろうし、当日ではなく前日に借りるのは変じゃろうが」
秀吉は神野に疑問を呈した。
「わかっているよ、清涼祭
神野はまるで悪戯を思い付いた小学生のような表情をして言った。