カンニングの濡れ衣を着せられた秀才が試召戦争で大暴れする   作:Kicks

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第9問

「えー。それでは、試験召喚大会1回戦を始めます」

 

 校庭に作られた特設ステージで召喚大会が催される。

 

「3回戦までは一般公開もありませんので、リラックスして全力を出してください」

 

 今回立会人を務めるのは数学の木内先生だ。

 当然勝負科目は数学となる。

 

「初戦はFクラスコンビか。楽勝だな」

 

「ああ、もらったも同然だな」

 

 今回の神野の対戦相手は優勝候補と言われている3年Aクラスのコンビだ。

 片方は坊主頭で、もう片方はモヒカン頭で、どちらも見下した態度を取っていた。

 

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

「先輩、今回は胸を借りるつもりでよろしくお願いします」

 

 姫路はいつも通りで、神野は敢えて礼節を弁えた風に挨拶した。

 

「おう、流石はFクラスだ。格上を立ててるのが様になっているぜ」

 

 3年生達は神野と姫路の振る舞いを見て、いやらしい笑みを浮かべる。

 

「3年の実力を見せつけてやるぜ。試獣召喚(サモン)

 

「俺達が各上だという事を思い知らされてやるぜ。試獣召喚(サモン)

 

 掛け声を上げて、3年生コンビが召喚獣を呼び出した。

 片方の装備はオーソドックスな剣と鎧で、もう片方の装備は僧侶服に煙管形のハンマーだ。

 

『数学

Aクラス 常村勇作 378点 &

      夏川俊平 366点』

 

 Aクラスに所属しているだけのことはあり、点数はかなりのものだった。

 Aクラスのトップ層にいるペアである事実に、神野は思わず顔をしかめた。

 

「どうした?俺達の点数を見て腰が引けたか?」

 

「Fクラスじゃお目にかからないような点数だからな。無理もないな」

 

 夏川と常村は表示された点数を見て誇らしげな表情を示す。

 

「「試獣召喚(サモン)」」

 

 敢えて何も言わずに、神野と姫路は召喚獣を呼ぶ。

 

「さあ、お前達の貧相な点数を見せてくれよ」

 

「夏川。あまりいじめるなよ。どうせすぐに晒されるんだぜ?」

 

 ククッとモヒカン頭の常村が趣味の悪い笑い方をした。

 

 だから神野は夏川と常村に意趣返しとして、応える。

 

「……悪いね、貧相な点数は見せれそうにないです」

 

『数学

Fクラス 神野大輝 468点 &

      姫路瑞希 432点』

 

「「なっ!?」」

 

 表示された点数を見て、2人の目の色が変わった。

 

「先輩方、よろしくお願い致します」

 

 神野は試験召喚獣に得物を構えさせ、突撃させる。

 動揺している隙を突くことが目的だ。

 

「上等じゃねぇか!ちょっと点が高い位でいい気になるなよ!

 常村!こっちは俺が引き受ける!」

 

 夏川が慌てて神野の正面に立ち、召喚獣に煙管型のハンマーを構えて突撃させる。

 しかし、神野の召喚獣は慌てることなく避ける。

 何回も試召戦争を経験しているため、正面突撃は問題なく回避できた。

 

「っ!この……」

 

 背中から振り向き様に横薙ぎの一撃を見舞ってきた。

 

「ふっ!」

 

 神野の召喚獣はアッサリと躱し、そこから足元に向けて3度突きを放つ。

 夏川の召喚獣は慌てて躱そうとしたが、3度目の突きが足に当たってダメージを受けた。

 足のダメージで、夏川の召喚獣の機動力を削ぐことができた。

 

「くそっ!」

 

 夏川は仕切り直すように大きく一歩下がった。

 

「テメェ、振り分け試験ではカンニングしてたのに良い点数じゃねぇか……」

 

 夏川は荒い語気で神野を睨み付けた。

 情報を集めていたようで、取るに足らない相手と侮っていたのだ。

 

「振り分け試験では濡れ衣を着せられて、成績無効にされてね」

 

「…………。くそっ、苦しい戦いだな」

 

 夏川は実情を知って一瞬だけ目を見開いたが、召喚獣勝負の苦しい状況に歯噛みした。

 神野は、点数差と夏川の召喚獣の足のダメージで機動力に差をつけられていることを利用し、一撃入れて距離を置くというヒット&ランアタックの戦法を取った。

 夏川の召喚獣は反撃できずに防戦一方だった。

 

「この女、見かけの割にか弱くねえじゃねえか……」

 

 一方、常村と姫路の召喚獣は拮抗した戦いをしていた。

 常村は相方の苦しい状況を見て、積極的に攻撃をしかけるように指示を送る。

 しかし、姫路の召喚獣は焦らずに大剣で防御した。

 神野優勢である以上、姫路の召喚獣は無理に攻撃する必要はどこにも無いのだ。

 

「仕方ねぇ。2年生相手に大人げないが、経験の差って奴を教えてやるよ!」

 

 夏川はそう告げると、夏川の召喚獣は神野の召喚獣から大きく距離を取り、姫路の召喚獣に向かった。

 神野の召喚獣を無視して、姫路を速攻で倒すという魂胆だろう。

 

「させるか!」

 

 神野は自分の召喚獣に追撃の指示を出す。

 

「そら、引っかかった」

 

 夏川が神野の目に砂利を投げ込む。

 見えなくなった神野は思わず目をこすった。

 その隙に、夏川の召喚獣は神野の召喚獣に攻撃し、神野の点数を消耗させる。

 

『数学

Aクラス 夏川俊平 298点 VS

Fクラス 神野大輝 187点』

 

「これが経験の差って奴───おぉぉぉ!」

 

 夏川は点数の差が逆転したので、得意げになったが召喚獣を伏せさせた。

 このままだと負けると判断した神野は腕輪を起動し、刀の刀身を伸ばしながら突きを放ったのだ。

 

「へっ、お前の行動なんて俺には通用しないんだよ」

 

 神野の渾身の突きを回避して、夏川は勝ち誇った顔をする。

 

 夏川の召喚獣は回避成功したが、刃は伸びて伸びて───その先の常村の召喚獣の脇腹を貫通し、地面に深く突き刺さった。

 さらに動きを止めるために、神野の召喚獣は刀を手放す。

 刀は常村の召喚獣の所に行き、常村の召喚獣は地面に縫い付けられて動けなくなった。

 

「いきます!」

 

 常村の召喚獣は動けなくなったので、姫路の召喚獣は額めがけて大剣を振り落とそうとした。

 常村はハルバートを掲げて守ろうとしたが、それを見た姫路は横からの攻撃に切り替えた。

 脇腹を刀で縫われた常村の召喚獣は思うように防御できずに、両断された。

 

「野郎!得物を手放すなんて上等じゃねぇか!」

 

 夏川の召喚獣が神野の召喚獣に迫り、煙管型のハンマーを頭目がけて振り落とそうとする。

 神野の召喚獣を倒して、姫路と1対1に持ち込もうとする考えだ。

 しかし、神野は慌てることなく、召喚獣に夏川の一撃を左手で受け止めさせて、夏川の召喚獣目がけて抱き着いた。

 

「お前、まさか……」

 

 夏川は神野の狙いに気付いた様だが、一手遅かった。

 

「はぁっ!」

 

 姫路は召喚獣の掌を夏川と神野の召喚獣に向けさせた。

 装着している腕輪の力を発動させて、夏川の召喚獣を神野の召喚獣もろとも焼き払った。

 常村・夏川の召喚獣は戦死し、姫路の召喚獣が残ったため1回戦が決着した。

 

「勝者、神野・姫路ペア。……激戦でしたね」

 

 木内先生が名勝負に感心しながら、勝者の名を告げる。

 

「ちくしょう、ちくしょう……!」

 

「Fクラス如きにAクラスの俺達が負けるなんて……」

 

 3年Aクラスコンビは揃って悔しそうな顔をしながら、睨み付けた。

 神野はそんな視線をスルーして、姫路と一緒に特設ステージを後にした。 




ちなみに数学ではなく物理だったら、神野は常夏コンビに負けてました。
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