カンニングの濡れ衣を着せられた秀才が試召戦争で大暴れする   作:Kicks

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第10問

「姫路、1回戦が終わったんじゃな、すぐに手伝ってほしいぞい」

 

「はい、わかりました!」

 

 神野が姫路と一緒にFクラスの喫茶店に戻ると、喫茶店の席がかなり埋まっていた。

 ホール班の一員である秀吉は忙しくなってきたので、同じホール班の姫路が戻ってきたので手伝うように呼びかけた。

 

「じゃあ、明久、雄二。俺達Fクラスの設備向上の為に、召喚大会に勝ってよ」

 

「うん、任せてよ」

 

「そっちこそ写真目的の客対応を頼んだぞ」

 

 明久と雄二は神野の声援を背に、召喚大会の特設ステージに向かう。

 

「さて、こっちも写真購入の客対応をするか」

 

 神野は、雄二が対応していた中華喫茶のレジ係兼写真売買の受付係を務め始める。

 

「はい、お会計は2000円ですね。1500円を超えましたので、メイド写真は1枚サービスでもらえますが誰の写真にしますか?」

 

「木下のメイド写真で頼む」

 

「かしこまりました」

 

 

 話は清涼祭の数日前に遡る。

 

「チャイナドレスを用意しろだと?」

 

「正確には、チャイナドレスと男性用チャイナ服だね」

 

「なるほど、姫路さんや秀吉がチャイナ服を着て受付すれば、売上効果は絶大だね」

 

「そうだね、ちなみに男性用チャイナ服を用意するのは女性陣に断りにくくするためだよ」

 

 チャイナドレスを女子だけ着るのでは、女子達が嫌がって断られる可能性があった。

 しかし、男性陣のホール班が男性用チャイナ服を着ているならお互い様と女子達も納得するだろうという神野の考えだ。

 

「レンタルにするか、購入するかで悩むね」

 

「……!!(チクチクチクチク)」

 

「ム、ムッツリーニ!どうしてそんな凄い勢いで裁縫を!?」

 

「……売上の為、設備向上の為、全力を尽くす」

 

 カッコいい台詞と行動で神野はムッツリーニの事をカッコ良いと思ってしまった。

 

「ちなみに、男性用チャイナ服はどうするの?」

 

「……レンタルで頼む」

 

 相変わらずムッツリーニがスケベ心ダダ漏れである為、神野はカッコ悪いと思ってしまった。

 

「神野よ、そういえば霧島から借りたメイド服をどうするのじゃ。前日に借りても意味ないと思うのじゃが」

 

「え、メイド服借りてどうするの?」

 

「ああ、これにはムッツリーニにも協力する必要があるんだけど」

 

 神野は一拍置いて、自分のアイデアを言う。

 

「前日に借りたメイド服を女子達が着て、それを撮るんだ」

 

「なるほど、その写真で売り上げに利用するのか」

 

「そっ、中華喫茶でお茶と飲茶とチャイナ服着た女子の写真を注文したら、1500円毎にサービスとして好きなメイド服着た女子の写真を1枚サービスするってことにするんだ」

 

「そ、それは凄すぎる。それを知った男子達はきっと中華喫茶に殺到するんだろうね」

 

「大丈夫なのじゃ?運営委員会の見回りで営業停止処分を受ける可能性がありそうなのじゃが……」

 

「大丈夫。運営委員会には話を通して許可は取ってあるから」

 

「どうやって、許可を取ったのじゃ?」

 

「運営委員会は1年生か2年生で構成されていることを知っている?」

 

「そうだね」

 

 3年生は受験がある為、出し物作りに専念し、運営委員会には入らないことになっている。

 また、教師達のほとんどは召喚大会でかかりきりで、関与しているのは運営委員会の顧問だけである。

 

「運営委員会の1年・2年の男子達に撮った写真を無料で渡すと約束したら、過半数は快く賛成してくれたよ」

 

「待つのじゃ、女子が残っているじゃろうが」

 

「チャイナ服を着た久保の写真を渡すと約束したら、残りの過半数は納得してくれたよ」

 

「………よく久保君が許してくれたね」

 

「クラスメイトの写真を渡すと言ったら、引き受けてくれたよ」

 

 渡すのはチャイナ服の明久が写ってある写真であることは言うまでもない。

 

「ちなみに、久保君だけじゃなく、一部の2年Aクラスの方に頼んで、用意したチャイナ服を着た写真を撮って売ってもいいか頼んで、承認は貰ったよ」

 

「凄いね、FクラスメンバーだけでなくAクラスメンバーのチャイナドレスの写真を拝めるなんて」

 

「交渉した結果、写真を渡すとは別にAクラスメンバーの写真の売上の半分を渡すってことになったのが痛いけどね。ムッツリーニ、チャイナドレスの用意と撮影できそう?」

 

「……命に代えても、やり遂げて見せる」

 

 ムッツリーニは、3日間徹夜でチャイナドレスを仕上げて、撮影を行うというハードスケジュールを完遂した。

 撮影時に鼻血を出してカメラのレンズが血で汚れてしまい、何回か撮り直しすることになったのはご愛敬である。

 

 

「それでは、試験召喚大会1回戦を始めます」

 

 雄二と明久は特設ステージへ上がると、対戦相手が先に着いていたため、直ぐに1回戦が始まろうとしていた。

 

「頑張ろうね、律子」

 

「うん」

 

 対戦相手の女子2人が頷き合っている。微笑ましい光景である。

 

「では、召喚してください」

 

「「「「試獣召喚(サモン)」」」」

 

 4人が喚び声を上げると、おなじみの魔方陣が足元に現れて召喚者の姿をデフォルメされた形態を持つ試験召喚獣が喚び出された。

 

『数学

 Bクラス 岩下律子  179点 &

      菊入真由美 163点』

 

 明久達の相手は似たような装備で、西洋風の鎧と剣を持った召喚獣だ。

 姫路の召喚獣を一般的な強さにしたようん召喚獣だ。

 

 それに対して、明久の召喚獣は相変わらず改造制服と木刀を装備している。

 しかし、雄二の召喚獣は何も武器を持っていないように見える。

 

「……素手?」

 

 明久は雄二の召喚獣を見て、思わず首を傾げた。

 

「馬鹿が。よく見ろ」

 

 雄二が召喚獣を動かし、拳を掲げて見せる。

 

「メリケンサックを装備しているだろう?」

 

「ざ、雑魚だ!雑魚がいる!」

 

 明久は雄二の召喚獣の装備をボロクソに言う。

 木刀の召喚獣である明久も五十歩百歩なのだが。

 

「行くわよ、修学旅行のお土産コンビ」

 

「律子、違うよ。チンピラコンビだよ」

 

 改造制服に木刀&メリケンサックの召喚獣なので、対戦相手も言いたい放題だ。

 

『数学

 Fクラス 坂本雄二 213点

      吉井明久 102点』

 

「!?ゆ、雄二!」

 

「何だ」

 

「どうしてそんな点数になっているの!?」

 

 雄二の点数がAクラス並の点数に明久は驚愕する。

 

「前回の試召戦争以来、Aクラスに勝つ為に本気で勉強をしているからな。

 それより、お前の点数が上がっていることにも驚きだ。試召戦争の時は60点程度だったはずなんだが」

 

「大輝に勉強を教えてもらっているからね。雄二は何で勉強を?」

 

 『勉強だけが全てじゃない』ことを証明したくてAクラスに挑んたのを覆す理由が気になったので、明久は雄二に聞いてみた。

 

「前に、翔子に聞かれたんだ」

 

「何を?」

 

「…………………式はどこで挙げたいか、と」

 

 明久は霧島の一途さにホロリとした。

 

「俺はもう負けられない!次で勝たないと、俺の人生は!俺の人生は……!」

 

「雄二、落ち着いて!きっと幸せな家庭を築けるから!」

 

 明久は暴れだしそうになる雄二を羽交い締めにする。

 

「そろそろ開始してもらえますか?」

 

 木内先生が困った顔で明久達を見る。

 

「あ、すみません。もう大丈夫ですから」

 

「婿入りは嫌だ……。霧島雄二なんて御免ぼごぁっ!はっ!?」

 

 明久は雄二を殴って正気に戻らせた。

 

「若干不安もありますが、とにかく始めてください」

 

 木内先生は勝負の邪魔にならないように若干距離を撮った。

 明久達は対戦相手と向かい合い、勝負が始まる。

 

「律子!」

 

「真由美!」

 

「「行くわよ!」」

 

 対戦相手の2人は名前を呼び合って頷き、明久達を挟み込むように移動してきた。

 明久達も対戦相手に負けないように、コンビネーションを見せつけようとする。

 

「雄二っ!」

 

「明久っ!」

 

 明久と雄二はお互いに目で合図を送り、息を大きく吸って、それぞれの意見を口にする。

 

「「ここは任せたっ!」」

 

 明久達は2人揃って大きく飛び退った。

 

「って雄二!お互い相手に任せてどうするのさ!」

 

「いや、ここは明らかにお前の出番だろ!俺は前の試召戦争でほとんど召喚をしていないんだぞ!?」

 

「なっ、なんて使えない男なんだ!それならせめて僕の盾になれ!」

 

「使えないとは何だ!お前の点数なんて俺の半分以下でゴミだろうが!」

 

「言ったな!?上等だ!表に出ろ!」

 

「望むところだ!」

 

 明久と雄二はお互いに胸倉をつかみ合った。

 

「男の仲良しって変わっているね……」

 

「私たち、女で良かったね」

 

 対戦相手の女子達は凄く蔑んだ目で明久達を見た。

 

「…………あ~、コホン。雄二、作戦を発表してくれ!」

 

 間を取って、1つ咳払いをしてから雄二に話を振る。

 

「いいだろう。俺の作戦はこうだ」

 

 雄二が作戦内容を口にする。

 

「ここまで来たら小細工無用!真っ向勝負だ!」

 

「明らかに無策を誤魔化しているようにしか聞こえないけど了解!1人1殺で僕らの勝利だ!」

 

 明久達はお互いに自分の正面にいる的に召喚獣を突っ込ませた。

 

「律子、どうしよう?」

 

「こんなバカ相手に私たちが負けるわけないわ!受けて立ちましょう!」

 

「うんっ!」

 

 2対2ではなく、1対1が2つという構図になった。

 明久の相手は律子と呼ばれていた髪の長い女の子だ。

 

「やあっ!」

 

 相手が手にしている剣を振り下ろしてきたので、明久はその動きに合わせて召喚獣を一歩横に動かして鎧の隙間の腿を打ち据えた。

 

「このっ!」

 

 ダメージを受けて体勢を崩されたが、直ぐに立て直して大きく横に薙いで来た。

 明久は召喚獣をジャンプさせて、相手の眉間に叩きつけさせた。

 

「この、このぉっ!」

 

 敵はムキになって振り回してきた。しかし、隙だらけだったので、明久は躱して攻撃させ躱して攻撃させるといったヒットアンドアウェイの戦術をとった。

 

「ふはははは!無駄無駄無駄ぁっ!」

 

 雄二は射程が短いので、敵の剣を躱して、拳を相手の身体にぶち込むといったインファイトをしていた。

 

 改造制服を着て女子達を痛めつけるのだから、明久達が悪役に見える。

 

「……教育者としては、坂本・吉井ペアにはぜひとも負けてもらいたいものです」

 

 木内先生は、可憐な女子生徒がヤンキーにいじめられている光景を連想してしまい、思わずつぶやいてしまった。

 

「とどめっ!」

 

 雄二の召喚獣は隙を突いて顎にアッパーを加え、相手をノックアウトさせた。

 

「それじゃあ、僕も」

 

 明久の召喚獣は相打ち覚悟の一撃を躱して、止めを刺した。

 一撃もダメージを受けずに、倒したのだ。

 

「くぅぅっ!悔しいぃっ!」

 

「こんなのに負けるなんてっ!」

 

 相手の2人が揃って明久達を睨み付けた。

 

「……勝者、坂本・吉井ペア」

 

 木内先生が凄く不服そうに勝者の名前を告げる。

 

「まずは1勝だな、明久」

 

「そうだね」

 

「それじゃ、さっきの決着をつけるぞクソ野郎!」

 

「それはこっちの台詞だよバカ野郎!」

 

 雄二と明久は1回戦を突破したので、召喚大会とは関係のない第2ラウンドを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

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