カンニングの濡れ衣を着せられた秀才が試召戦争で大暴れする   作:Kicks

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第11問

「明久に雄二。殴り合いなぞしておらんで、急いで教室に来てくれんかの?」

 

 明久と雄二が特設ステージで殴り合いをしていると、秀吉が宣伝のプラカードを持ってやってきた。

 少し息が弾んでいるところを見ると、急いでいるようだ。

 

「あれ?喫茶店で何かあったの?」

 

「……営業妨害か?」

 

 明久と雄二は先を急ぐ秀吉の後に続く。

 

「いや、そうじゃなくて、嬉しい誤算なんじゃが」

 

 秀吉は少し困った顔をして答えた。

 

「喫茶店が繁盛して、人手が足りないんじゃ。写真目当てもあって、会計が凄い行列でのう」

 

「「おお!!」」

 

 明久と雄二は目を輝かせた。

 これはいい意味での神野の誤算だった。

 写真が予想以上に人気が出てしまい、レジに行列が出来てしまって、対応に時間がかかってしまっているのだ。

 

「じゃから、同じレジ担当の雄二にも手伝ってほしいのじゃ。あの数じゃ、1人でも大変じゃ」

 

「ま、雄二にお任せだね。こういう頭の回転が速い雄二には適任だし」

 

「いいだろう。喫茶店の利益で設備を向上しなければ、()()()()()()()()()が転校してしまうからな。協力してやろう」

 

「べっ!別にそんなことは一言も……!」

 

「あー。わかったわかった」

 

「その態度は全然わかってない!」

 

 再三に渡ってからかってくる雄二に文句を言いながら明久は歩く。

 Fクラス教室近くの廊下に着くと、行列が2組できていた。

 Fクラスの教室の出入り口は2か所ある。出入り口の1カ所は喫茶店の入口専用で、もう一か所が出口専用としていた。

 入口専用だけじゃなくて、出口専用にも行列が出来ていて、行列が廊下まではみ出ていた。

 入口はともかく出口に行列ができているか原因を探るために、明久と雄二は出口を見てみた。

 

「あの、お客様。後ろがつかえておりますので、写真を早めに決めていただきたいのですが……」

 

「木下か橘のメイド写真をどっちにするかで悩んでいるんだ!頼む!もう少し悩ませてくれ……!」

 

 神野が困った顔をして男性客に呼びかけると、真剣な顔で返されてしまった。

 会計は神野1人で対応しているのだが、人数が多いことと客の写真選びのため、会計するのに時間がかかってしまっているのだ。

 

「どうする、雄二?」

 

 明久は、雄二に聞いた。

 写真選びに悩んでいる客の気持ちはよくわかる。

 明久だってチャイナ写真を開店前に購入し、メイド写真を貰っていなかったら、自分も中華喫茶に入って写真選びで悩む自信があるからだ。

 なお、他のFクラスメンバーも前売りとして開店前にチャイナ写真を購入し、欲しいメイド写真を入手済である。

 

「当然俺も会計をやるが、その前に───ムッツリーニ!」

 

「……何?」

 

「AクラスとFクラスの女子が制服姿のバストアップ写真を持っているか?」

 

「……持っている」

 

 雄二がムッツリーニを呼んで急にそんなことを聞いてきたので、ムッツリーニと明久は何に使うのか分からなくて不思議な顔をする。

 

「その写真で、写真表を3セット作ってほしい。厨房も兼任して大変なのは悪いが」

 

「……5分待て」

 

 明久は雄二の狙いがわかった。

 会計で並んでいる客に写真表を渡して、写真選びにかかる時間を短縮しようという考えだ。

 ムッツリーニは凄い速さで写真表を作るために空き教室に向かった。

 

「お客様、私も会計を対応します。お代は800円ですが、チャイナ写真は買いますか?」

 

「木下と姫路と橘と霧島と島田の1枚ずつ買います」

 

「チャイナ写真は1枚200円となりますので、合計1800円です。メイド写真が1枚貰えますが、誰にしますか?」

 

「木下で頼む」

 

「かしこまりました」

 

 雄二が神野の横に立って、会計とレジの担当をすることになった。

 数分後にムッツリーニが持って来た写真表を会計前に渡して、客が並んでいるうちにどの写真にするか決めることができるようになり、会計にかかる時間を短縮することができた。

 

 

 姫路は橘達と一緒にウェイターを担当していて、注文票とペンを持ってお客さんの注文を聞いたり、お茶や飲茶を渡したりしていた。

 入り口に行列が出来ているので、席の回転率を少しでも上げるために、急いでさばいていた。

 

「姫路さん、注文してもいいかな?」

 

「あ、はい。どうぞ」

 

 近くの席のお客さんから声がかかったので、姫路は失礼のないように急いで注文票を構える。

 

「本格ウーロン茶と、あんまんを」

 

「かしこまりました。本格ウーロン茶とあんまんですよね」

 

 姫路はメモを取り、注文内容の確認の為にお客さんに顔を向けると、そのお客さんはBクラス代表の根本であることに気付いた。

 

「ありがとうございます。後ほどお待ちしますので、少々お待ちください」

 

「それと話したいことがあるんだけど、いいかな?」

 

「はい。何でしょうか?」

 

「俺達も召喚大会に出場していてね。2回戦に姫路さんと神野に当たることになっているんだけど……」

 

 根本はニヤニヤとした顔でもったいぶって姫路に言う。

 

「姫路は2回戦に出場しないでほしいんだ」

 

 召喚大会のルールでは、ペアの片方が何らかの事情で参加に遅れる若しくは不参加の場合でも敗退にならずに、ペアの片割れだけ出場もできる。

 遅れた片割れが来る前に、もう片方の召喚獣が戦死したら、そのペアは失格になってしまうが。

 

「ごめんなさい」

 

 姫路は即座に断った。

 姫路が承諾する理由がないので、当然だが。

 

「姫路さんに何も恨みはないけど、こっちも負けられない理由があるんだ」

 

「私も負けない理由があるんです」

 

 姫路が負けじと返す。

 2年Fクラスコンビが召喚大会で優勝・準優勝しないと、中華喫茶の利益で設備を購入できない。

 このことは1回戦突破後に雄二経由で聞いている。

 

「じゃあ、これを見てまだ言えるかな?」

 

「……!そ、それは……」

 

 姫路は目を見開いた。

 根本が見せたのは、明久に見られて必死で隠していた姫路のラブレターだった。

 

「まだ、中身は見てないけど、何が書いてあるのかなぁ~。誰宛てなのかなぁ~」

 

「っ!!返してください!!」

 

「返してほしかったら、わかるよなぁ」

 

 姫路は絶望的な顔をする。

 2回戦の科目は英語で、神野の比較的得意科目ではあるが、流石に数学・化学程圧倒的な点数ではない。

 姫路抜きでは敗退する可能性が高い。

 

 

 

「随分と面白いことをしているよね、根本君」

 

 明久は、根本の脅迫の一部始終を見ていた。

 姫路のチャイナドレス姿が可愛らしくて、暇さえあれば拝んでいたのだ。

 根本の合理的で失うものもリスクもない作戦に舌を巻いた。

 とりあえず、一人きりになって途方に暮れた姫路に声をかける。

 

「姫路さん」

 

「はい……」

 

「次の召喚大会2回戦なんだけど、お店が盛況だから出場しないんで欲しいんだ。体調も心配だし」

 

「え、でも」

 

「大丈夫、大輝の強さなら姫路さんがいなくても勝ってくれるから」

 

「あっ!」

 

 まず、大輝に2回戦は1人で出場するように声をかけるために、大輝のいるレジに向かう。

 そして、心の中で呟く。

 あの野郎、ぶち殺す。

 

 

「大輝!」

 

「どうしたの?そんな怒った顔をして。俺が何かしたのか?」

 

「お願いがあるんだ」

 

「レジの列はまだましになったけど、それなりに混んでいるから、あんまり乗れないよ」

 

「いや、召喚大会のことなんだけど」

 

 明久が前置きして、言う。

 

「次の召喚大会2回戦は、姫路さんは出さないで1人で戦って勝ってほしい」

 

「…………何で?」

 

「理由は言えない」

 

 明久はきっぱりと返す。

 

「何か言えない理由なのか?」

 

「うん。どうしても」

 

 神野は困惑しながらも考えた顔をして、明久の顔を見つめる。

 

「お願いだよ!大輝!」

 

 明久はそんな神野に頭を下げる。

 

「……根本が姫路に何かしたのか?」

 

「ど、どうしてそれを!?」

 

「いや、まあ次に戦う相手が相手だから、想像はできる。……あいつには振り分け試験で煮え湯を飲まされたし」

 

 大輝が忌々しい顔をしながら返す。

 

「それなら、条件がある。根本か小山どちらかを出場できなくして欲しい。科目が英語なら1対1に持ち込めば勝てる」

 

「わかった。何とかする」

 

「頼んだぞ」

 

 明久は作戦を考えて───思いついた。

 ただ、この作戦はムッツリーニの協力が不可欠なので、雄二とムッツリーニに事情を話して作戦の準備を始めた。 

 

 

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