カンニングの濡れ衣を着せられた秀才が試召戦争で大暴れする   作:Kicks

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第12問

「神野君、何で姫路さんはいないの?」

 

 神野は試験召喚大会2回戦に出場するために特設ステージに来たら、対戦相手の1人であるCクラス代表の小山友香が聞いてくる。

 

「清涼祭の喫茶店が忙しいから姫路さんは参加できなくなった。俺1人で戦うことにしたよ」

 

「……ふぅん…。なるほどね……」

 

 神野は軽く肩をすくめて返すと、小山は意味ありげな笑みを浮かべた。

 この様子から、姫路の無力化作戦は知っているようだった。

 

 根本君が姫路さんの何の弱みを握ったのか知らないが、知ってて止めなかった時点で同罪だなと神野は心の中で呟く。

 

「遠藤先生、そういう訳で今回は姫路さん抜きで出場します」

 

「あ、はい!わかりました」

 

 今回の立会人は、多少のことは目を瞑ってくれることで有名な英語の遠藤先生である。

 

「姫路さんがいないなら貰ったも同然ね。しかも英語は神野君の得意科目じゃないし」

 

「2回戦前に、確認したいことがあるんだけど……」

 

 神野は勝ち誇った顔をする小山に質問する。

 

「相方の根本君はいないけど、どうしたの?」

 

 今いるのは神野と小山と遠藤先生の3人で、根本は特設ステージにいなかった。

 

「そうですね……。小山さん、根本君に連絡してください」

 

「わかりました。恭二に電話をかけます」

 

 小山はポケットから携帯電話を取り出し、根本に電話をかける。

 

『おかけになった電話は電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません…。おかけになった───』

 

「先生、恭二が電話に出てくれないです。」

 

「わかりました。校内放送を使って呼び出します」

 

 連絡が着かなくて困惑した小山の報告に、遠藤先生が放送室に連絡して放送を入れるようにした。

 

≪───放送連絡です。Bクラス根本恭二君。至急召喚大会の特設ステージに来るように≫

 

 しかし、10分待っても根本は来なかった。

 

「遠藤先生、この場合どうなります?」

 

「…………仕方ないですね。神野君と小山さんが召喚獣勝負をして勝った方が勝利ということにしましょう」

 

「先生!?もう少し待ってみませんか!?」

 

 小山が慌てて、遠藤先生に訴える。

 神野との1対1ならば勝ち目が薄いことを知っているからだ。

 

「すみません、小山さん。これ以上延ばすと、召喚大会のスケジュールに支障が出ますので……」

 

 遠藤先生は申し訳ない顔で、小山の訴えを却下する。

 

「その代わり、召喚獣の戦闘中に根本君が来たら、根本君の参戦を許可します。根本君の参戦前に小山さんの召喚獣が戦死したらそのまま敗退になりますが……」

 

「………………分かりました」

 

 小山は不承不承とした顔で受け入れた。

 

『『試獣召喚(サモン)』』

 

 お互いの召喚獣が現れて、神野は相変わらずの鞘付きの日本刀と武者鎧で、小山は和服とプリーツスカートを合わせた服装に三又戟だ。

 

『英語W

 Cクラス 小山友香 165点 VS

 Fクラス 神野大輝 252点』

 

「しっ!」

 

 神野の召喚獣が瞬時に間合いを詰めようとしたのに対し、小山の三又戟を突いて動きを止める。

 しかし、それは本気で倒すという勢いじゃなかった。

 神野の間合いを詰めるのを防ぐための牽制だ。

 

 今回の神野の点数は400点を超えていないので、腕輪の特殊能力である刀身の拡張攻撃は使えない。

 そのため、得点では神野は勝っているが、武器のリーチでは負けている。

 下手に突っ込んだら、万一がある為、神野は迂闊に攻めれない。

 

 仕方がないので、神野は横に回り込ませて、突撃させようとした。

 しかし、小山は落ち着いて神野の召喚獣に近づけないように突かせる。

 慌ててステップで避けて、近づけようとしたが、急いで小山の召喚獣は後ろに下がって距離を置きながらも、連続突きを放つ。

 

 近づけさせない徹底的な防衛を取っている小山の召喚獣を見て、神野は確信した。

 

「……なるほど。根本が加勢することに期待しているんだね」

 

「そうよ。これも作戦の内。合理的な作戦だと思わない?」

 

 小山は強気な態度で神野に言う。

 

「そうだね。合理的な作戦だと思うよ」

 

 神野は落ち着いて返答して、決断した。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()万一を考えて、敢えて強気に攻めることにした。

 

 神野は召喚獣を早く後ろに回り込んでから突撃させた。

 当然、小山の召喚獣は振り向きながらも横薙ぎの一撃を放つ。

 

 しかし、神野はその攻撃を読んでいた。

 左手で鞘を抜いて、横薙ぎの一撃を鞘で受け止めたのだ。

 鞘はそもそも、攻撃を受け止める物ではないので、小山の一撃で鞘に罅が入って、左腕に突き刺さった。

 

 そんなこと気にせずに神野の召喚獣は接近して、小山の召喚獣に一撃を入れる。

 

「くっ!!」

 

 小山の召喚獣は両手で自分の得物を持って守ろうとしたが、神野の召喚獣は左腕を三又戟の下から突き、左腕を切り落とした。

 小山の召喚獣は慌てて右腕で薙いで来たので、神野は慌てて召喚獣を下がらせた。

 

 

『英語W

 Cクラス 小山友香 103点 VS

 Fクラス 神野大輝 191点』

 

「……鞘は使えないから、同じ手は通用しないわよ。」

 

 お互いの点数と召喚獣を見て小山は強気で言い返す。

 確かに、鞘はもう罅が入っており、武器としてはもう使えない。

 しかもお互い左腕が死んで、同じくらいの点数が消耗しているから、状況は一見すると変わっていないように見える。

 それでも。

 

「大幅に俺が有利になったね。小山さんはそれに気づいていないよ」

 

「……へぇ。どこに有利になったのか、教えてほしいわね」

 

「すぐに気づくよ」

 

 神野の召喚獣は小山から見て左方向に回りこんで、突進する。

 小山の召喚獣は体勢を立て直そうとして、横薙ぎを入れようとしたが、ぐらついて倒れそうになった。

 

「くっ!召喚獣の制御が急に難しくなってる!!」

 

 小山が歯噛みする。

 お互いの召喚獣が違う所は、神野は左腕を刺されているのに対し、小山は左腕を切り落とされている所だ。

 小山の召喚獣は左腕を切り落とされている上に、武器が三又戟であるため、重心が先程と違っており、操作が別物になっているのだ。

 その結果、小山は先ほどと上手く動かせない隙を突かれて、止めを刺されて敗北した。

 

「神野君の勝利です!」

 

 遠藤先生の勝ち名乗りを受けて、神野は思わずホッとする。

 

「……恭二、何をやっているのよ。これで推薦の話が無くなったのじゃない」

 

 小山のぶつぶつと悪態をついていたが、気にせずに神野は小山に話しかける。

 

「小山さん、小山さん」

 

「……何よ」

 

 小山のキッとした視線を浴びせられて、一瞬躊躇したが、神野は落ち着いて話しかける。

 

「小山さんに渡したい物があるんだけどいいかな?」

 

「何かしら?」

 

 神野は訝しげな表情をする小山に写真を渡した。

 その写真はメイド服を着ていた人からプレゼントをもらって照れていた根本の写真だった。

 メイド服を着ていた人は後ろ姿だったこともあり、誰だがわからない。

 その写真を見た小山の顔から表情と目のハイライトが消えていった。

 

 

 明久は雄二とムッツリーニと秀吉に事情を話した。

 ただし姫路のラブレターについては話さなかった。

 要は根本が姫路に脅迫されて召喚大会に出場できないことを説明すればいいのだから、わざわざ話す必要はどこにもない。

 

「で、どうするんだ。明久」

 

「雄二、ムッツリーニ、秀吉。頼みがあるんだ」

 

 明久は雄二達に真面目な顔をして答える。

 

「Aクラスのメイド服を貸して欲しいんだ」

 

「…………どうしてそれで、メイド服を借りることになるんだ」

 

「……度肝を抜かれた」

 

「女装趣味に目覚めても、変わらず友達じゃぞ?」

 

「いや、そうではなく!作戦に必要なんだ!根本君を参加させないように!」

 

「まあ、それくらいなら翔子に頼めば用意できるんだが……。それだけか?」

 

 雄二は呆れた顔をして、明久を見る。

 しかし、明久はムッツリーニを見て言う。

 

「ムッツリーニ!姫路さん手作りの胡麻団子を使いたいけど、いいかな?」

 

「……構わない」

 

 ムッツリーニが頷くのを見て、雄二と秀吉は明久の狙いが分かった。

 

「なるほど、毒殺か」

 

「お主もなかなか外道な手を使うのう」

 

 明久は言われたい放題言われたが、何も言い返さなかった。

 姫路を傷つけた根本に、もはや遠慮する必要は無いからだ。

 

「秀吉はメイド服を着て根本君に渡せばそれで……」

 

「待て、明久。それだと木下姉に余計な恨みを買うだろうが」

 

「…じゃあどうするのさ?」

 

「お前が着ればいいだろう。秀吉、明久の着付けとメイクをやってくれ」

 

「いやぁぁぁぁっ!」

 

「うむ、了解じゃ」

 

「ムッツリーニか雄二が着ればいいじゃないか!無理をしたら着られるはずだよ!」

 

「俺にサイズの合うメイド服が無いから無理だな」

 

「……作戦を聞いた大輝に頼みごとがあるから」

 

「ちくしょー!薄情者ー!」

 

 かくして、明久はメイド服を着て、根本にプレゼントすることになった。

 

 

「こ、この上ない屈辱だ……!」

 

「明久、存外似合っておるぞ」

 

 秀吉が男子トイレで明久の着付けとメイクを数分でやってくれた。

 凄いけど、全然ありがたくないと明久は思った。

 

「では、存分に根本をやっつけるが良い」

 

「ん。りょーかい」

 

 秀吉と別れ、明久は2-Bの教室にいる根本の元へ向かった。

 

「あ、あの根本君」

 

「なんだ?」

 

「こ、これをよかったら食べてください」

 

 明久が根本にプレゼントを渡した。

 根本がニヤつき、舐めるような視線がまとわりついたので、明久の鳥肌がたった。

 

「ふっ、俺も隅に置けないな。友香に見つからない内に急いで食べないと」

 

 根本は胡麻団子をつまんで一口で食べた。

 

 パクッ───ダッダッダッダッ

 

 根本は弾丸のような凄い速さで男子トイレに向かった。

 まるで陸上競技の選手の様だ。

 

 ダッ───ガシッ

 

 根本がトイレの個室に入ったら、雄二が根本を抑えつけて、秀吉がロープで根本を縛り付けて、ガムテープで口元を貼り付ける。

 さらにまだ抵抗していたので、ムッツリーニがスタンガンで止めを刺した。

 誘拐犯顔負けの手際である。

 

 ビクンッビクンッ

 

「じゃ、後は根本をトイレの用具入れに入れて、鍵をかけておけば終わりだな」

 

「うむ。1仕事完了じゃのう」

 

「……一件落着」

 

「あ、その前に」

 

 明久はお開きになる前に、根本の制服のポケットから携帯電話と姫路のラブレターを回収した。

 これで根本は外部からの連絡と余計な事はできないだろう。

 根本の携帯電話はゴミ箱に、姫路のラブレターは姫路の鞄に入れておくことに決めた。

 




なお、根本は激怒した小山に責められたことは言うまでもない。
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