カンニングの濡れ衣を着せられた秀才が試召戦争で大暴れする   作:Kicks

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第16問

「明久よ、第3回戦はどうたったのじゃ?」

 

「無事に勝てたよ」

 

 中華喫茶で、明久は秀吉と神野に3回戦の結果を報告する。

 

「よく勝てたね……。相手はあの久保君だったのに……」

 

「雄二の作戦でね。久保君と清水さんに未婚のカップルしかチケットが使えないことを話して揺さぶりをかけたんだ。」

 

「雄二もなかなか酷な揺さぶりをかけるのう……」

 

「え?何で秀吉も大輝も微妙な顔をするの?」

 

「それはそうと、雄二はどうしてる?」

 

 神野は強引に話題を変える。

 あんまりこの話題を続けると、久保の思いに明久が気づく可能性があるからだ。

 

「トイレだってさ」

 

「早く戻って欲しいね。こっちは大盛況で忙しいんだけど……」

 

 明久と雄二が召喚大会で抜けてしまった結果、並んでいるレジ対応を3人で対応している。

 明久達にとって嬉しい悲鳴ではあるが、その分忙しい。

 

『あの、おっきなお兄ちゃん。葉月、今探している人がいるのですけど』

 

『チビッ子、その探している人は誰なんだ?』

 

『あう……わからないです』

 

『?家族の人じゃないのか?』

 

 雄二の話し声が聞こえて来たので、神野達は待っていると、雄二と小学生くらいの女の子を連れて来た。

 

「坂本、妹か?」

 

「可愛い女の子だな~。ねえ、俺と5年後に付き合わない?」

 

「俺は今だからこそ付き合いたいんだけどな~」

 

 ホール班の男性陣が騒ぎ出す。

 雄二が連れて来た女の子は将来性が期待できる程可愛かったのだ。

 

「何で俺の妹が来た時には異端審問会が開かれて、雄二には開かれないんだ……」

 

 神野は思わず不平を漏らす。自分の時は異端審問会が開かれて、雄二には開かれないことに納得いかなかったのだ。

 

「雄二には霧島さんがいるからね」

 

「それに、いくら何でも女子が幼すぎるからのう。2人きりで遊んでいると、警察に職質質問されそうじゃ」

 

「その前に霧島さんに刺されそうだけどね」

 

「おい、何てことを言うんだ。お前らは」

 

 確かに、180cmを超える雄二と小学生くらいの女の子が一緒に歩いていると、何も知らない人が心配して警察を呼ぶ可能性がある。

 その後、それを見た霧島に雄二はオシオキされそうである。

 

「そんな事よりも、雄二どうしたの?」

 

「このチビッ子が人を探しているんだとよ。家族じゃないようで、名前も知らないようだ」

 

「チビッ子じゃなくて、葉月ですっ」

 

「忙しいのに、探そうとするなんて…。面倒見がいいね、雄二」

 

「そりゃあどうも。その探している人の特徴を教えてくれないか?」

 

 名前がわからない相手でも探してあげようという雄二の心温かい気遣いが感じられる。

 

「えっと……バカなお兄ちゃんでした!」

 

 あまりにも酷い特徴で思わず神野は手で目を覆った。

 

「そうか……」

 

 それを聞いた雄二は首を巡らせて、自分のクラスメイトの皆を次々と見た後に応える。

 

「……沢山いるんだが?」

 

 雄二の回答に神野達は何も言い返せなかった。

 

「あ、あの、そうじゃなくて、その……」

 

「うん?他に何か特徴があるのか?」

 

「その……すっごくバカなお兄ちゃんだったんです!」

 

「「「吉井だな」」」

 

 女の子とクラスメイトにバカにされた吉井は思わず傷つきながらも言い返すことを決意した。

 

「全く失礼な!僕に小さな女の子の知り合いなんていないよ!絶対に人違い───」

 

「あっ!バカなお兄ちゃんだっ!」

 

 女の子が駆けてきて、そのまま明久に抱き着いた。

 

「絶対に人違い、がどうした?」

 

「……人違いだと、いいなぁ……」

 

 小さな子まで明久をバカにしてくるので、明久は思わず泣きそうになった。

 

「って、君は誰?見たところ小学生だけど、僕にそんな歳の知り合いはいないよ?」

 

 明久は顔を見る為に女の子を引き剥がす。

 

「え?お兄ちゃん……。知らないって、ひどい……」

 

 明久が自分の事を知らない女の子の表情は歪む。

 

「バカなお兄ちゃんのバカぁっ!バカなお兄ちゃんに会いたくて、葉月、一生懸命『バカなお兄ちゃんを知りませんか?』って聞きながら来たのに!」

 

「明久───じゃなくて、バカなお兄ちゃんがバカでごめんな?」

 

「そうだな。バカなお兄ちゃんはバカなんだ。許してやってくれんかのう?」

 

 あまりにもバカを連呼されたので、明久は涙がこぼれないために思わず天を仰いだ。

 

「でもでも、バカなお兄ちゃん、葉月と結婚の約束もしたのに───」

 

「瑞希!」

 

「美波ちゃん!」

 

「「殺るわよ!」」

 

「瑞希!今、吉井君に攻撃するのはダメよ!」

 

「島田よ、ここで危害を加えたら悪評が広まって、喫茶店の経営が厳しくなるからダメじゃ!」

 

 姫路と島田が危害を加えようとしたので、橘と秀吉がそれぞれ腕を掴んで抑える。

 

「ちょっと待って!結婚の約束なんて、僕は全然───」

 

「ふえぇぇんっ!酷いですっ!ファーストキスもあげたのに───っ!」

 

「坂本は包丁を持ってきて。5本あれば足りると思う」

 

「吉井君、そんな悪いことをするのはこの口ですか?」

 

「お願いひまふっ!はなひを聞いてくらはいっ!」

 

 島田は秀吉に抑えつけられてるので明久のオシオキ用に使う包丁を出すようにお願いし、姫路は拘束しようとしている橘をひきずりながら明久のほっぺたをつねっていた。

 

「あ、お姉ちゃん。遊びに来たよっ!」

 

 女の子が美波を見て涙を引っ込めた。

 

「ああっ!あの時のぬいぐるみの子か!」

 

 明久は女の子のことを思い出した。

 去年姉にプレゼントをしたいけどお金が足りない、と哀しそうにしてたから明久は持ち物検査で取られた自分と鉄人の私物を盗んで売ってプレゼントを買ったのだ。

 その後バレて観察処分者に認定されてしまったため、明久の頭から抜け落ちていた。

 よく停学にならなかったものである。

 

「ぬいぐるみの子じゃないです。葉月ですっ」

 

 女の子───葉月がぷぅっと頬を膨らませる。

 

「そっか、葉月ちゃんか。久しぶりだね。元気だった?」

 

「はいですっ!」

 

「うんうん。それは良かった。それにしても、よく僕の学校がわかったね?」

 

「お兄ちゃん、この学校の制服着てましたから」

 

 葉月はそう言って明久の制服を引っ張る。

 

「あれ?葉月とアキって知り合いなの?」

 

 美波はそんな様子を見て首を傾げる。

 

「うん。去年ちょっとね。美波こそ葉月ちゃんのこと知ってるの?」

 

「知ってるも何も、ウチの妹だもの」

 

「へ?」

 

 明久はマジマジと葉月の顔を見る。美波と比較してみると、元気そうな雰囲気やちょっと勝気な目のあたりが似ていることに気付いた。

 

「吉井君はずるいです……。どうして美波ちゃんとは家族ぐるみの付き合いなんですか?私はまだ両親にも会ってもらってないのに……。もしかして、実はもう『お義兄ちゃん』になっちゃってたり……」

 

 姫路は、明久が美波の妹と仲良しであることを知って暗い表情になった。

 美波と明久の仲が深まっていることを憂いているのだ。

 

「あ、あの時の綺麗なお姉ちゃん!ぬいぐるみありがとうでしたっ!」

 

 葉月は姫路にぺこりと礼儀正しくお辞儀をした。学園長とは大違いである。

 

「こんにちは、葉月ちゃん。あの子、可愛がってくれてる?」

 

「はいですっ!毎日一緒に寝てます!」

 

「良かった~。気に入ってくれたんだ」

 

 実は姫路は明久と葉月の出会った経緯を知っており、もし明久がうまくぬいぐるみを買うことができなかったら代わりのぬいぐるみを作ってプレゼントしていたのだ。

 

「お兄ちゃん、葉月と一緒に遊びにいこっ」

 

 葉月はギュっと明久の手を握る。

 

「ごめんね。葉月ちゃん。お兄ちゃんはどうしても喫茶店を成功させなきゃいけないから、あんまり一緒に遊べないんだ」

 

 明久は葉月の頭を撫でながらも断った。

 姫路の転校を阻止するために、明久は喫茶店の仕事と召喚大会の出場がある。

 葉月と遊んでいる時間は無い。

 

「む~。折角会いに来たのに~」

 

 葉月の頬は不満げに膨れてしまった。

 

「それなら、チビッ子が一緒に喫茶店の仕事も手伝えばいい。今喫茶店が繁盛していて人手が足りないからな」

 

 そこで雄二のフォローが入る。喫茶店の人手が足りていない状況と葉月の希望を考えた一石二鳥の提案である。

 

「でも、雄二。その子の分のチャイナ服が無いよ。サイズも違うし」

 

「…………!!(チクチクチクチク)」

 

「ム、ムッツリーニ!どうしてそんな凄い勢いで裁縫を!?っていうかさっきまでいなかったよね!?」

 

「…………俺の嗅覚を舐めるな。できた」

 

「速っ!」

 

「わ、このお兄ちゃん凄いです!」

 

 神の如き速度で葉月用のチャイナドレスが出来上がっていた。

 

「じゃあ、着替えて手伝って。葉月ちゃん」

 

「はいです!んしょ、んしょ……」

 

「…………!!(ボタボタボタ)」

 

「は、葉月!こんなの所で着替えちゃダメよ!」

 

「そうだよ!ムッツリーニが出血多量で死んじゃうから!」

 

 大量に出血しているはずなのに、鼻を押さえているムッツリーニは心から幸せそうだった。

 

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