カンニングの濡れ衣を着せられた秀才が試召戦争で大暴れする   作:Kicks

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第19問

「明久、何てことしやがるんだ!」

 

「雄二が作戦を読まれていたのがいけなかったんだろうが!」

 

「ざけんな!俺の人生を危険に晒しやがって!」

 

 雄二を連れて空き教室に戻った後、腹を殴って薬を吐かせた後で冷水につけたら、雄二は正気を取り戻した。

 そして、自分を生贄にした明久と大喧嘩を始めた。勝手に生贄にしたのだから当然だが。

 

「雄二よ。後で、ワシの声真似だったと霧島にフォローしておくからの。それで仕舞にすればいいじゃろ」

 

「甘ぇよ、秀吉。翔子がそれで納得する訳がねぇだろ。……というか、前に俺が翔子に追い掛け回された時に電話出てたの、翔子じゃなくて秀吉だろ」

 

「よくわかったのう」

 

 以前清涼祭に協力させるために雄二を脅迫してたのが、電話の声が霧島本人ではなく秀吉の声真似であったことにとうとう雄二は気づき、秀吉を睨み付ける。

 明久と協力して雄二を生贄にしたのだから、当然である。

 

「雄二、明久。喧嘩しないで、大変なことになっているんだ」

 

 神野がムッツリーニを連れて空き教室に入って来た。

 

「大輝とムッツリーニか。何かあったのか?」

 

「…………ウェイトレス達が連れていかれた」

 

「ええっ!?姫路さんたちが!?」

 

「やはり大輝達と正攻法で戦っても勝ち目がないと考えたか。当然と言えば当然だな」

 

「どうして、大輝がついていたのにこんなに一方的にやられたの!?さっきチンピラに絡まれた時は返り討ちにしていたじゃないか!」

 

「すまない。プラカードや竹刀みたいな長物があれば何とかなったかもしれないんだが…………」

 

「…………大輝を責めるのは酷。島田妹の人質で動きを封じられ、羽交い絞めにされて5人がかりでボコボコにされた」

 

 神野は剣道を経験しているだけあって、()()()()()()普通の男子と比べて喧嘩には強い。しかし、剣道は1対1で行うため乱戦には弱く、竹刀等の長物が無いと発揮できないという欠点がある。

 

「って、大輝を責めることより、姫路さん達は大丈夫なの!?どこに連れて行かれたの!?相手はどんな連中!?」

 

「落ち着け明久。これは予想の範疇だ」

 

「え?そうなの?」

 

「ああ。俺や明久、あるいは大輝か姫路に何かを仕掛けてくるとは予想できたからな」

 

「それって、大輝達が試験召喚大会に出場しないようにするため?」

 

「珍しく正解だな、明久。恐らく狙いは大輝と姫路を出場できなくするためだろう」

 

 雄二・明久ペアはともかく姫路・神野ペアの点数はAクラス相当で科目次第では霧島・木下を下す実力がある。ならば召喚獣で真っ向勝負よりも、召喚大会に出場できなくさせる方が勝算が高いだろう。

 

「なんだか随分と物騒な予想をしていたんだね」

 

 明久は姫路達を拉致して監禁という雄二の想定に思わず舌を巻いた。

 

「引っ掛かることが随所にあったからな」

 

 明久は雄二が最近たまに何かを考える素振りをしていたことを思い出した。

 

「…………行先はわかる」

 

「なにこれ?ラジオみたいに見えるけど」

 

「…………盗聴の受信機」

 

「オーケー。敢えて何で持っているのかは聞かないよ」

 

「さて、場所がわかるなら簡単だ。かる~くお姫様を助け出すとしましょうか、王子様?」

 

「そのニヤついた目つきは気に入らないけど、今回は雄二に感謝しておくよ。姫路さん達に何かあったら、正直召喚大会どころの騒ぎじゃないからね」

 

「そうだな、まずはあいつらを助け出そう。ムッツリーニ、タイミングを見て裏から姫路達を助けてやってくれ」

 

「…………わかった」

 

「雄二、後30分で俺は準決勝に出ないといけないけど、姫路さんは出場できそう?」

 

「苦しいな、大輝は先に行って可能な限り時間を稼いでくれ。姫路は途中で合流して出場できるようにする」

 

「なかなかキツイことを言うよね……。次の相手は3年Aクラスコンビでしかも片割れが首席なんだけど」

 

「キツイだろうが、何とか時間を稼げ。姫路を途中参戦してみせる」

 

「雄二、僕らはどうするの?」

 

「王子様の役目は昔から決まっているだろう?」

 

 雄二は茶目っ気たっぷりの目で明久を見る。

 

「王子様の役目って?」

 

「お姫様をさらった悪者を退治することさ」

 

 

「姫路さんがいない?」

 

「はい、Fクラスの中華喫茶でウェイトレスをしていたのですが……。姫路さんがいなくなってしまいました。今、クラスメイトが頑張って探しています。姫路さんが出場できるまで準決勝の開始を延長していただけないでしょうか?」

 

 神野は召喚大会の係員に事情を話して、準決勝の開始を遅らせるようにお願いする。

 ただし、姫路が連れて行かれたことは伏せておく。

 係員が出場不可能と判断して不戦敗になってしまうことを防ぐためだ。

 

「……そうですね。15分待ちましょう。それで姫路さんが来なかったら、神野君だけが出場してください」

 

「……わかりました。ただ」

 

「ただ?」

 

「もし、召喚大会の終了前に姫路さんが来たら、姫路さんの途中参戦を認めてください」

 

 それを聞いた時に召喚大会の係員は困惑した表情をした。

 認めていいか悩んだだろう。

 

「2回戦で遠藤先生は戦闘中にきたら参戦を許可していました。勿論、姫路さんが参戦する前に俺の召喚獣が戦死したらそのまま敗退になるということになっていましたが」

 

 係員は再び神野の意見を取り入れていいか検討した。

 

 そもそも、延長が出来ないのは召喚大会のスケジュールが遅れるからである。

 そして、対戦相手は3年Aクラスの優等生コンビで、その片割れは学年主席。

 普通に考えて長くもつれることはなく、姫路が参戦する前に神野が戦死して終わるのがオチだろう。

 提案を呑んでも問題ないと係員は判断した。

 

「いいでしょう。姫路さんが来た時に勝負が着いてなかったら、参戦を許可します」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

『さあ、いよいよ準決勝を始まります!出場選手の皆さん、入場してください!』

 

 15分経っても姫路が来なかったので、神野は黙って入場する。

 ただし、できるだけゆっくりと。

 焼け石に水だろうが、少しでも時間を稼ぐためだ。

 

『入場したのは、優勝本命中の本命!3年Aクラス所属・高城雅春君と、同じくAクラス所属・小暮葵さんです!皆様拍手でお迎え下さい!』

 

 最初にアナウンサーが対戦相手コンビを紹介したので、神野は対戦相手の顔を見た。

 1人はスラリと背が高く、細目に切れ長の目という、整った顔立ちをした顔立ちをした格好の良い男子生徒。

 もう1人は髪を結い上げた切れ長の目の綺麗な着物を着た色っぽい女子生徒だった。

 美男美女でとても絵になるコンビである。

 

『対する選手は、2年Fクラス所属・神野大輝君と、同じくFクラス所属・姫路瑞希さんです!皆様、こちらも拍手でお迎え下さい!』

 

『小暮アナウンサー、姫路さんがいらっしゃらないのですがどうしてでしょうか?』

 

『なんでも、諸事情で後から参加するようです。その場合ですと、姫路さんが参加する時に神野君が戦死してしまっていたら、姫路・神野ペアは敗退になってしまいます!』

 

『なるほど……。それですと、神野君が圧倒的に不利ですね』

 

『順当に考えればそうですが、実際に戦ってみないと分からないのが勝負というもの。そもそもFクラスがここまで勝ち進むことは恐らく誰も思わなかったでしょうしね』

 

『そうですね、ルールを簡単に説明します。試験召喚獣とはテストの点数に比例した───』

 

 神野は1試合ごとにルール説明するアナウンサーの配慮に感謝した。

 少しでも時間を引き延ばせるからだ。

 ───そして、勝負前に確認したいことがあったからだ。

 

「高城先輩、小暮先輩。1つ聞いておきたいことがあります」

 

「何でしょうか?神野君」

 

「姫路さんがどこにいるかご存じでしょうか?」

 

「私達が知っている訳無いでしょう」

 

 小暮が意味ありげな笑みを浮かべて答える。

 高城もにこやかな笑みを崩さない。

 

 その表情を見て、神野は2人の先輩も一枚噛んでいることを確信した。

 準決勝で姫路が拉致されていなくなるなんて、あまりにも向こうに都合が良すぎるからだ。

 

「もう一度聞きます。どこへやりました?」

 

「ですから、()()()()()()()()()()()の所在なんて知っているはずがないじゃないですか」

 

「……俺が聞いたのは姫路さんだけです。他のクラスメイトのことは何も言ってないのですが」

 

 神野の発言に、2人は笑みをどんどんと深める。

 整った顔立ちから、神野は2人を悪魔に見えてきた。

 

「Aクラスの私達がFクラスに何かしたと神野君が言っても、証拠が無いので誰も信じてもらえないでしょう。せいぜい、負けの言い訳にデマを吹いたと思われるのがオチですよ。自分の品位を落とすだけなので、言わない方がいいですよ」

 

「……先に自分の品位を落とすことをしたのは、そっちでしょうが」

 

 高城が諭す発言を聞いた神野は憤りを露わにした。

 しかし、2人は聞いてないフリをする。

 

「姫路さん達はどこに隠しました?」

 

「今から神野君の仲間達が探しに行っているでしょうが、間に合うと思っているでしょうか?」

 

「可能性が低いでしょうが、ゼロでは無いです」

 

「ふふっ、流石はFクラス。おめでたい頭を持っていますね」

 

 高城が嘲笑って挑発するが、神野は聞き流す。

 

『それでは、ルール説明はこれまでにして試合を始めましょう!選手の皆さん、どうぞ!』

 

 対戦相手同士のビリビリした雰囲気を余所に、審判役の先生が神野達の間に立つ。

 

『『『試獣召喚(サモン)』』』

 

 掛け声をあげ、それぞれが分身を喚び出した。

 向こうの装備は、着流し姿の侍に、レオタード姿に鞭。比較的マイナーな装備である。

 神野の装備は相変わらずの日本刀と武者鎧だ。

 

『化学

 Aクラス 高城雅春 364点 &

 Aクラス 小暮葵  235点』

 

 表示された点数はAクラスらしい立派な点数だ。

 それに対し、神野の点数は───

 

『化学

 Fクラス 神野大輝 483点』

 

 幸いなことに、準決勝の科目が神野の得意科目で、400点超えの点数である。

 

「Fクラスらしかぬ点数ですね。姫路嬢がいなければ、厳しい戦いになったでしょう」

 

 高城は顔色1つ変えずに、召喚獣を構えさせた。

 神野も小暮も同じく得物を構えさせた。

 戦闘開始だ。

 

 そしてそうなってしまった以上、3年Aクラスのコンビを姫路が来るまで足止めするしか神野が勝つ方法が無い。

 それがどれだけ困難であったとしても。

 

 

「信じているからな、明久、雄二、ムッツリーニ」

 

 




タグにアンチ高城を付けるか悩む……
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