カンニングの濡れ衣を着せられた秀才が試召戦争で大暴れする   作:Kicks

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第5問

「騙されたぁ!」

 

明久は命がけで廊下を走り、Fクラスの教室に転がり込んだ。

 

Dクラスの連中が物凄い勢いに掴みかかってきたので、明久は逃げ出してきたのだ。

 

「やはりそうきたか。」

 

雄二が平然と言い放った。

 

Dクラス生徒にとってはFクラスと試召戦争をして勝っても何も得られないのに、負けたら設備が格下げになるのだから、いい感情は抱かない。

 

その上Fクラス使者を倒せば、一人分戦力が減って自分たちが有利になるのだから、使者に何もしないわけがないのは自明の理であった。

 

「やっぱり使者への暴行は予想通りだったんじゃないか!」

 

「当たり前だ。そんなことも予想できないで代表が務まるか。」

 

「少しは悪びれろよ!」

 

雄二にしてみれば、明久が試召戦争をやろうと言い出した以上、本人に一番嫌な役割をやらせるのは当然だと考えていたからだ。

 

「吉井君、大丈夫ですか?」

 

「吉井、本当に大丈夫?」

 

「吉井君、大丈夫?」

 

姫路と美波と橘が駆け寄ってきた。

 

「平気、心配してくれてありがとう。」

 

明久は女子たちのいる前もあり、強がる。

 

「試召戦争前に戦闘不能になってなくてよかった。」

 

「ウチが殴る余地はまだあってよかった。」

 

「なんてこと言うんだ!死にそう!」

 

明久は女子たちの非情な言葉に嘆きながら、転げまわった。

 

「そんなことよりも、今からミーティングを行うぞ。」

 

他の場所で話し合いをするために、雄二は扉を開けて外に出て行った。

 

「あの、本当に痛かったら言ってくださいね。」

 

「マジで痛かったら、保健室で休んでね。」

 

橘と姫路は歩いて雄二の後を追った。

 

「気の毒じゃったの。」

 

美少女にしか見えない秀吉が明久の肩を叩いて廊下に出た。

 

雄二と一緒に階段を登って、屋上に出ると雲一つない空から眩しい光が差し込んだ。

 

「明久。宣戦布告は何時に開始にした?」

 

雄二はフェンス前にある段差に座った。

 

「一応、昼休憩直後に開戦するって宣言してきたけど」

 

明久たちもそれに習って、各自腰を下ろした。

 

「じゃあ、先に昼ご飯ってこと?」

 

「そうなるな。明久、今日ぐらいはまともな物を食べろよ?」

 

「そう思うなら、何か奢ってくれると嬉しいけど?」

 

明久は羨まし気にパンを食べようとしている雄二を見る。

 

「えっ?吉井君ってお昼食べない人ですか?」

 

姫路さんが驚いたように明久を見る。

 

「いや、一応食べているよ。」

 

「…あれは食べているといえるのか?」

 

雄二は明久にツッコミを入れる。

 

「雄二、何が言いたいの?」

 

「いや、お前の主食って、水と塩だろう?」

 

雄二が憐れんだような声で指摘する。

 

「水や塩だけではない!砂糖だって食べているさ!」

 

「吉井君、塩と砂糖を食べるではなく、舐めるって言った方が適切だよ。」

 

神野君が明久の言い回しの訂正をする。

 

皆が明久を優しく見始めた。

 

「ま、飯代までゲームや漫画につぎ込むお前が悪いよな。」

 

「仕送りが少ないんだよ!」

 

明久の両親は仕事で海外にいる為、明久は一人暮らしをしている。

生活費は貰っているけど、そのほとんどに明久はゲームや漫画に使っていた。

 

「…ほい。」

 

神野が明久に二つある内のおにぎりを一つ渡した。

 

「あれ、いいの?」

 

「Dクラスに宣戦布告をしてくれたお礼だ。」

 

「ありがとう!!」

 

明久が大喜びで、神野から貰ったおにぎりをほおばっていた。

 

「良かったじゃないか明久。」

 

雄二が明久をからかう。

 

「あの、もしかして神野君って同性愛者?」

 

橘が目を丸くして神野に聞く。

 

「違うわ。午後の試召戦争に頑張ってもらうために昼飯を分けているだけだ。後、俺は普通に女の子が好きなんだ。」

 

神野が橘の無神経な質問に呆れながら返す。

 

その発言に皆、笑い声を押し殺していた。

 

「…あの、よかったら私がお弁当作ってきましょうか?」

 

「え?」

 

姫路の突然の優しい言葉に明久は一瞬耳を疑った。

 

「本当にいいの?」

 

「はい、明日のお昼でよければ。」

 

明久は女の子の手作り弁当を貰うことになって大喜びになった。

 

「…ふーん。瑞希って随分優しいのね、吉井()()に作ってくるなんて」

 

美波は面白くなさそうに棘のある言葉で言ってきた。

 

「あ、いえ!勿論、皆さんにも…」

 

「俺たちにもいいのか?」

 

「はい。嫌じゃなかったら。」

 

「それは楽しみじゃのう。」

 

「…お手並み拝見ね。」

 

「わかりました。それじゃ、皆に作ってきますね。」

 

姫路は嫌そうな顔一つしないで皆に言う。

 

「…ウチも作るわ。八人分を一人で作るのは流石にキツイし。」

 

ここで、橘も提案した。

 

「橘さんもいいのか?」

 

神野は突然宣言することに驚きながら聞く。

 

「うん、ウチ母子家庭でお弁当は基本一人で作っているから、そーいうのは慣れてる。」

 

「姫路さんと橘さんって優しいよね。」

 

明久は心からそう思った。

 

「そ、そんな…」

 

姫路は明久の褒め言葉に照れていた。

 

「今だから言うけど、僕、初めて会った時から姫路さんのこと好き-」

 

「おい明久、もし振られると弁当の話はなくなってしまうぞ。」

 

「-にしたいと思ってました。」

 

明久は失恋を回避するために急いで言葉を取り繕った。

 

「吉井君、それだと自分の欲望をカミングアウトした、ただの変態になるぞ。」

 

「明久、お前はたまに俺の想像を超えた人間になる時があるな。」

 

「だって…お弁当が…」

 

「さて、話が逸れたな。そろそろ試召戦争に戻そう。」

 

雄二は話題を変えて、試召戦争についての作戦に戻した。

 

「雄二、一つ気になっていたんじゃが、どうしてDクラスなんじゃ?順序で行くならEクラスじゃろう?」

 

「そういえば、そうですよね。」

 

「ああ、一言で言うなら、姫路と神野がいるから正面からやりあってもEクラスには勝てるからな。だからまともに戦えば確実に勝てると言えないDクラスを狙ったんだ。」

 

「なら、最初から目標のAクラスを挑もうよ。」

 

「初陣だからな。戦って勝って今後の景気づけにしたい。それに、さっき言いかけたAクラスを倒すための布石になるからな。」

 

雄二はDクラスを狙う理由を簡単に説明した。

 

「あの、さっき言いかけたって、吉井君と坂本君と神野君は、試召戦争について話し合ってたんですか?」

 

姫路は大きな声で雄二に聞いてきた。

 

「ああ、それはさっき明久に相談」

 

「それは置いておいて、Dクラスに負けたら意味ないよ。」

 

明久は雄二の余計な発言を遮って大きな声を出して聞いた。

 

「負けるわけがないさ。」

 

雄二は明久の心配を笑い飛ばした。

 

「お前らが俺に協力してくれるなら勝てる。いいか、お前ら。ウチのクラスは―最強だ。」

 

根拠のない言葉なのに本当である、そんな力のある言葉を雄二が言った。

 

「わかった。やってみるよ。」

 

「ま、やってみないとわかんないよね。」

 

「が、頑張りますっ」

 

神野たちは、雄二の言葉を信じて、前向きになった。

 

「そうか。それじゃあ、作戦を説明しよう。」

 

屋上で、神野たちは勝利の為の作戦に耳を傾けた。

 

 




徐々に1話辺りの文字数を増やしたいです。
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