カンニングの濡れ衣を着せられた秀才が試召戦争で大暴れする 作:Kicks
「騙されたぁ!」
明久は命がけで廊下を走り、Fクラスの教室に転がり込んだ。
Dクラスの連中が物凄い勢いに掴みかかってきたので、明久は逃げ出してきたのだ。
「やはりそうきたか。」
雄二が平然と言い放った。
Dクラス生徒にとってはFクラスと試召戦争をして勝っても何も得られないのに、負けたら設備が格下げになるのだから、いい感情は抱かない。
その上Fクラス使者を倒せば、一人分戦力が減って自分たちが有利になるのだから、使者に何もしないわけがないのは自明の理であった。
「やっぱり使者への暴行は予想通りだったんじゃないか!」
「当たり前だ。そんなことも予想できないで代表が務まるか。」
「少しは悪びれろよ!」
雄二にしてみれば、明久が試召戦争をやろうと言い出した以上、本人に一番嫌な役割をやらせるのは当然だと考えていたからだ。
「吉井君、大丈夫ですか?」
「吉井、本当に大丈夫?」
「吉井君、大丈夫?」
姫路と美波と橘が駆け寄ってきた。
「平気、心配してくれてありがとう。」
明久は女子たちのいる前もあり、強がる。
「試召戦争前に戦闘不能になってなくてよかった。」
「ウチが殴る余地はまだあってよかった。」
「なんてこと言うんだ!死にそう!」
明久は女子たちの非情な言葉に嘆きながら、転げまわった。
「そんなことよりも、今からミーティングを行うぞ。」
他の場所で話し合いをするために、雄二は扉を開けて外に出て行った。
「あの、本当に痛かったら言ってくださいね。」
「マジで痛かったら、保健室で休んでね。」
橘と姫路は歩いて雄二の後を追った。
「気の毒じゃったの。」
美少女にしか見えない秀吉が明久の肩を叩いて廊下に出た。
雄二と一緒に階段を登って、屋上に出ると雲一つない空から眩しい光が差し込んだ。
「明久。宣戦布告は何時に開始にした?」
雄二はフェンス前にある段差に座った。
「一応、昼休憩直後に開戦するって宣言してきたけど」
明久たちもそれに習って、各自腰を下ろした。
「じゃあ、先に昼ご飯ってこと?」
「そうなるな。明久、今日ぐらいはまともな物を食べろよ?」
「そう思うなら、何か奢ってくれると嬉しいけど?」
明久は羨まし気にパンを食べようとしている雄二を見る。
「えっ?吉井君ってお昼食べない人ですか?」
姫路さんが驚いたように明久を見る。
「いや、一応食べているよ。」
「…あれは食べているといえるのか?」
雄二は明久にツッコミを入れる。
「雄二、何が言いたいの?」
「いや、お前の主食って、水と塩だろう?」
雄二が憐れんだような声で指摘する。
「水や塩だけではない!砂糖だって食べているさ!」
「吉井君、塩と砂糖を食べるではなく、舐めるって言った方が適切だよ。」
神野君が明久の言い回しの訂正をする。
皆が明久を優しく見始めた。
「ま、飯代までゲームや漫画につぎ込むお前が悪いよな。」
「仕送りが少ないんだよ!」
明久の両親は仕事で海外にいる為、明久は一人暮らしをしている。
生活費は貰っているけど、そのほとんどに明久はゲームや漫画に使っていた。
「…ほい。」
神野が明久に二つある内のおにぎりを一つ渡した。
「あれ、いいの?」
「Dクラスに宣戦布告をしてくれたお礼だ。」
「ありがとう!!」
明久が大喜びで、神野から貰ったおにぎりをほおばっていた。
「良かったじゃないか明久。」
雄二が明久をからかう。
「あの、もしかして神野君って同性愛者?」
橘が目を丸くして神野に聞く。
「違うわ。午後の試召戦争に頑張ってもらうために昼飯を分けているだけだ。後、俺は普通に女の子が好きなんだ。」
神野が橘の無神経な質問に呆れながら返す。
その発言に皆、笑い声を押し殺していた。
「…あの、よかったら私がお弁当作ってきましょうか?」
「え?」
姫路の突然の優しい言葉に明久は一瞬耳を疑った。
「本当にいいの?」
「はい、明日のお昼でよければ。」
明久は女の子の手作り弁当を貰うことになって大喜びになった。
「…ふーん。瑞希って随分優しいのね、吉井
美波は面白くなさそうに棘のある言葉で言ってきた。
「あ、いえ!勿論、皆さんにも…」
「俺たちにもいいのか?」
「はい。嫌じゃなかったら。」
「それは楽しみじゃのう。」
「…お手並み拝見ね。」
「わかりました。それじゃ、皆に作ってきますね。」
姫路は嫌そうな顔一つしないで皆に言う。
「…ウチも作るわ。八人分を一人で作るのは流石にキツイし。」
ここで、橘も提案した。
「橘さんもいいのか?」
神野は突然宣言することに驚きながら聞く。
「うん、ウチ母子家庭でお弁当は基本一人で作っているから、そーいうのは慣れてる。」
「姫路さんと橘さんって優しいよね。」
明久は心からそう思った。
「そ、そんな…」
姫路は明久の褒め言葉に照れていた。
「今だから言うけど、僕、初めて会った時から姫路さんのこと好き-」
「おい明久、もし振られると弁当の話はなくなってしまうぞ。」
「-にしたいと思ってました。」
明久は失恋を回避するために急いで言葉を取り繕った。
「吉井君、それだと自分の欲望をカミングアウトした、ただの変態になるぞ。」
「明久、お前はたまに俺の想像を超えた人間になる時があるな。」
「だって…お弁当が…」
「さて、話が逸れたな。そろそろ試召戦争に戻そう。」
雄二は話題を変えて、試召戦争についての作戦に戻した。
「雄二、一つ気になっていたんじゃが、どうしてDクラスなんじゃ?順序で行くならEクラスじゃろう?」
「そういえば、そうですよね。」
「ああ、一言で言うなら、姫路と神野がいるから正面からやりあってもEクラスには勝てるからな。だからまともに戦えば確実に勝てると言えないDクラスを狙ったんだ。」
「なら、最初から目標のAクラスを挑もうよ。」
「初陣だからな。戦って勝って今後の景気づけにしたい。それに、さっき言いかけたAクラスを倒すための布石になるからな。」
雄二はDクラスを狙う理由を簡単に説明した。
「あの、さっき言いかけたって、吉井君と坂本君と神野君は、試召戦争について話し合ってたんですか?」
姫路は大きな声で雄二に聞いてきた。
「ああ、それはさっき明久に相談」
「それは置いておいて、Dクラスに負けたら意味ないよ。」
明久は雄二の余計な発言を遮って大きな声を出して聞いた。
「負けるわけがないさ。」
雄二は明久の心配を笑い飛ばした。
「お前らが俺に協力してくれるなら勝てる。いいか、お前ら。ウチのクラスは―最強だ。」
根拠のない言葉なのに本当である、そんな力のある言葉を雄二が言った。
「わかった。やってみるよ。」
「ま、やってみないとわかんないよね。」
「が、頑張りますっ」
神野たちは、雄二の言葉を信じて、前向きになった。
「そうか。それじゃあ、作戦を説明しよう。」
屋上で、神野たちは勝利の為の作戦に耳を傾けた。
徐々に1話辺りの文字数を増やしたいです。
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