カンニングの濡れ衣を着せられた秀才が試召戦争で大暴れする 作:Kicks
時間はDクラス戦までに遡る。
「明久、お前は皆のフォローに徹して掩護しろ。副官として島田と橘を付ける。」
雄二は中堅部隊の隊長である明久に指示を出した。
「雄二。なんで僕だけにこんな具体的な指示を入れるのさ。」
「何も指示を出さないでいたら、お前が召喚しないで済む方法を考えるからだろうが。」
呆れながら雄二が返す。実際、明久は自分が直接いかに戦わない方法を考えていた。
明久は観察処分者でダメージを受けるとその何割かは自分にフィードバックするからだ。
「じゃあ僕が皆のフォローに徹するのさ?」
「少しは考えろよ。いいか、召喚獣を使う経験はお互い召喚実習以来だから、召喚獣の操作技術は互角だ。そうなってくると、基本は試験の点数が勝負になってくるが、
「うん、そうだね。」
雄二の説明に、明久は認めた。
「そこで、劣勢になっているFクラスメンバーに加勢しろ。例えば、足に攻撃して体勢を崩すとかな。」
「それって効果あるの?」
「ああ。体勢を崩せば、他のFクラスの召喚獣が追撃して、Dクラスの召喚獣を消耗させることができる。そうすれば、Fクラスの戦力の消耗が抑えられる。現状それができるのは、何度も召喚獣で雑用を行ってきた観察処分者であるお前だけだ。」
丁寧に雄二は明久に説明した。
「わかったよ、雄二!フォローに徹して皆を支えるよ!」
「その意気だ、明久。その戦力の消耗を抑えることが、今回の試召戦争でデカいポイントになる。」
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「Dクラスの鈴木がFクラスの橘に化学勝負を申し込みます。
『Dクラス 鈴木一郎 92点 VS
Fクラス 橘怜奈 64点 &
島田美波 48点 &
吉井明久 42点』
Dクラス鈴木の召喚獣が橘の召喚獣に武器を構えて攻撃を仕掛けた。まずは一番得点の高い橘を倒そうと考えたからだ。
「返り討ちにしてやるわ!」
橘の召喚獣は武器である両手槍で、しっかりと防御した。
鈴木が橘の召喚獣に気を取られている隙に、明久の召喚獣が足払いを仕掛けて、鈴木の召喚獣を転ばせた。
「これで終わりよ!」
橘と美波の召喚獣がそれぞれの得物で鈴木の召喚獣に止めを刺した。
「次は、苦戦している横溝君を狙おう。」
『了解!』
こうして明久が何度も劣勢になっている戦友のフォローに徹していると、Dクラスの塚本が指示が飛んできた。
「吉井が厄介だ。先に吉井を潰すぞ。」
「わかったわ!布施先生、Dクラスの小野寺がFクラスの吉井に化学の勝負を申し込みます!
『Dクラス 小野寺優子 110点 VS
Fクラス 吉井明久 42点』
Dクラスの小野寺の召喚獣が自分の武器で大きく横に薙いだ。
しかし、明久は距離を測って、小さな動きで避けさせた。
隙が出来た小野寺の召喚獣に向けて、明久の召喚獣は木刀で滅多打ちにした。
ダメージができて弱ったきた相手に、明久の召喚獣は相手の首筋に木刀を打ち込んで小野寺の召喚獣を戦死にさせた。
吉井の召喚獣が相手を戦死にさせた時、クラスメイトから伝令が飛んできた。
「吉井隊長、総合科目側の通路が残り3人だ!救援を頼む!」
時間が経つたびに、どんどんFクラスが劣勢になっていく。戦力差が出てきたのだ。
「わかった、化学で消耗した須川君と美波と橘さんを投入し、防御に専念!3人ともお願いね!」
『了解!』
皆が明久の指示に従って、陣形を組み始めた。皆へのフォローとDクラスとの一騎打ちでの勝利で明久は皆の信頼を勝ち取ったのだ。
また、これまでの共闘で仲が深まった美波は明久に呼び方を変えるように言ってきたので、明久は美波の呼び方を変えるようになった。
「Fクラスは、明らかな時間稼ぎが目的だ。」
「何が狙いだ!?」
Dクラスの連中が明らかな時間稼ぎに気付き始めた。
「斥候からFクラスに世界史の田中が呼び出されたという報告が!」
「Fクラスめ!長期戦狙いか!」
世界史の田中教諭は採点は遅いが甘いことに定評がある。
補充試験の採点のために、Fクラスが呼び出したのだ。
「吉井隊長。Dクラスは数学の木内を連れ出したみたいだ。」
本陣で待機していた横田が明久に報告してきた。
数学の木内先生は採点が厳しいけど早い。
DクラスはFクラスとは対照的に一気に決着をつけるつもりだ。
目的はFクラスと同様に補充試験の採点だろう。
雄二が中堅部隊に命じられた役割は今日の授業を終えるまで、前線を長く保たせることだ。
そこで明久は有利な状況を作り出すために一緒に戦っている須川に命じた。
「須川君、先生たちに偽情報を流してほしい。時間を稼ぐために。」
「…なるほど。戦線の拡大を防ぐためだな。」
「そうだよ。」
「ああ。流す偽情報の内容は任せろ。確実に騙してみせよう。」
「うん。よろしく。」
須川は駆け足でこの場を離れていった。
「僕らは一対一では勝てないからね、フォローするよ!
明久は劣勢になっている戦友たちにフォローするために参戦した。
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さらに、拮抗状態が1時間経過した。
「塚本、このままじゃあ埒があかない!」
「もう少し待っていろ!今数学の船越先生も呼んでいる!」
Dクラスが数学の船越先生(45歳女性)を呼んだ目的は立会人を用意して、戦線を拡大しFクラスの中堅部隊を全滅させることだ。
中堅部隊の隊長である吉井はさらに悪くなっていくのであろう状況に頭を悩ませた。
ピンポンパンポーン ≪連絡いたします≫
突然、校内放送が流れだした。
≪船越先生、船越先生≫
明久は須川君のファインプレーに感謝した。
≪吉井明久君が体育館裏でデートの申し込みをするそうです。≫
明久の表情が思い切り凍り付いた。
船越先生は婚期を逃してしまい、生徒達に単位を盾に交際を迫るようになった危険教師である。
確かに船越先生は確実に体育館裏に向かうだろうが、その分明久の身が大変なことになるだろう。
「吉井隊長…アンタぁ男だよ!」
「クラスのために犠牲になってくれるなんて!」
「皆、吉井隊長たちの死を無駄にするな!」
『おぉーーー!』
同じ部隊のFクラスメンバー達の士気が急上昇した。
「おい、聞いたか今の放送。」
「ああ。Fクラスの連中は本気で勝ちに来ているぞ。」
「あんな断固たる意思を持った奴らに勝てるのか…?」
Dクラスのつぶやきを聞いて、明久は思わず叫んだ。
「須川ぁぁあああああ!」
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更に30分が経過した。
「工藤信也、戦死!」
士気は例の放送の件で盛り上がったが、どんどん戦況は悪くなっていった。
これで、18人いた明久達の残り8人になった。明久は撤退を考え始めた。
「よくやった、明久。持ちこたえてありがとうな。」
明久たちの後方に雄二達の援軍がやって来た。
それを見たDクラスの塚本が指示を出す。
「援軍だ!合流される前に、吉井達を全滅させろ!面倒なことになるぞ!」
そこで、明久は機転を働かせた。
「あぁ、霧島さんのスカートが捲れている!」
Dクラスの背後を指さして叫んだ。
『何ぃ!』
その一言で、Dクラスの生徒はおろか、Fクラスの男子も振り返っていた。
「隙ありぃぃ!」
「ぎゃぁぁあ!」
『Dクラス 笹島圭吾 DEAD VS
Fクラス 島田美波 33点』
その隙を狙って、女性に興味が無い美波は今戦っているDクラスの笹島を倒した。
「待たせたな、吉井!五十嵐先生!Fクラスの近藤吉宗が行きます!
『Dクラス 中野健太 43点 VS
Fクラス 近藤吉宗 91点』
「くっ!ここは退くぞ!全員遅れるな!」
Dクラスの部隊長の塚本が撤退命令を出した。
「深追いはするな。俺たちも明久の部隊を回収したら一旦戻るぞ」
雄二は深追いして、Dクラス本隊が出てこないように消極的な命令を出した。
「明久、部隊を立て直すために戻るぞ。」
「うん、わかったよ。」
明久達は部隊を立て直す為に、戦場を後にした。