【百合・バトル】 魔術適正0の陰キャサムライ少女、魔術学園で鍛冶師のスパダリ令嬢に作ってもらった刀で無双しますっ!   作:ぴよぴよっぴ

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4話 最強の、可能性

 

 

 

 

 

 

 ウィスプを倒すには、コツがある。

 

 

 なるべく、ウィスプの魔力を乱さずに、一太刀で核を斬る。

 手間取ると、倒しても魔石に宿る魔力の質が落ちて、価値が下がる。

 

 ウィスプの魔石は、レアなウィスプのもので状態が良ければ、10万ゴルの値がつく。

 それだけあれば、王都の高級店で豪勢な食事もできれば、良い武器も買える。

 

 

 ナギサは、マガハラにいた時代に、大抵のモンスターについての知識は学んでいた。

 

 

 もっとも、彼女はモンスターとの戦いはあまり好きではないのだが……、好きではなくとも、彼女はプロの冒険者として、高ランクのクエストをこなしてきたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 つまり、ウィスプなど、倒す手段さえあれば、ナギサにとっては容易い相手だ。

 

 

 

 

 

 

 

「…………なんだよ、あいつ……ッ!?」

 

 ギルナも必死に追っているが、ナギサのスピードについていくのがやっとだった。

 

 

 

 

 実際に戦って負けた相手だ。

 強いとはわかっていたが、改めて異様だ。

 こんな身のこなしをできる者は、学園にもそういない。

 

 

 

(体の使い方、魔力の使い方が……、ただの基本なのに、洗練されすぎて理解できねえ技術に見える……ッッ!)

 

 

 

 魔力による身体強化は、誰でもしていることだが、奥が深い。

 

 魔力は出力を上げれば、コントロールが難しくなる。

 体の動きを速くするほどに、その動きに合わせることが難しくなる。

 

 つまり、高速で動く程に、その動きを強化する難度は跳ね上がる。

 

 それも、ただ平地を走るのではなく、障害物だらけの森の中だ。

 一歩間違えば、自身のスピードのせいで、枝に体が引き裂かれてもおかしくないほどの速度を出している。

 

 だというのに、自身の体を魔力で覆う、といった安全面での魔力を一切使っていない。

 

 

 弓矢の飛び交う戦場を全裸で駆け抜けるような、危うい狂気。

 

 そんな状態で、ウィスプとすれ違う度に正確に切り裂き、魔石を回収している。

 

 

 

 

(そりゃあ……勝てねえわけだ……)

 

 先日の戦いでは、《ブランク》相手だと馬鹿にしていたせいで、目が曇っていた。

 

 

 

 

 まっすぐに見つめていれば、よくわかる。

 単純な基本技術での隔絶を思い知らされ、ギルナは彼我の差を理解した。

 

 

 

 

 そこで、ギルナの視界を、奇異な光が掠めた。

 

 

 

 

 白いウィスプだ。

 

 白。

 その魔力の色は、特別な意味を持つことがある。

 

 基本の七属性、地・水・火・風・木・雷・氷に当てはまらない属性。

 

 光と闇。

 

 白は、《光属性》の色だ。

 

 

 

 

 

 

「…………ナギサッッ! 《ホワイト・ウィスプ》だ! ぜってえ逃がすな!」

 

 

 叫ぶと同時、ギルナは地の術式を起動。

 

 

 

 

 

 

 地面を隆起させ、土の柱で、《ホワイト・ウィスプ》の逃げ道を封じていく。

 

 

 

 

「そいつは魔力に反応して逃げる! 魔力閉じて、攻撃の時にだけ出せ! タイミングをミスったら逃げられる!」

 

 

 

 《ホワイト・ウィスプ》が討伐困難な超レアモンスターである理由だ。

 動きは通常種と段違いな上に、魔力察知の感度もケタ外れ。

 

 

 

 

 凄まじく、素早く、臆病。

 

 どこかの誰かによく似た特徴。

 

 

 

 

 捕獲したいのなら、それに特化したメンバーと装備を整えなければまず無理だ。

 

 それでも、ナギサならば…………。

 

「……クソ…………、さすがにキツいか……ッ!?」

 

 本来であれば、遠距離から包囲していく使い手が二人は欲しい。

 ギルナ一人は、人数も技量も足りていない。

 

 高速で動き回る《ホワイト・ウィスプ》がギルナが出現させた土柱を縫うように、駆け抜けていく。

 輝線だけが残り、本体を捉えることは到底叶わない、

 

 そう、思った直後。

 

「…………なァ……っ!!?」

 

 ナギサは、未だの振り放されていない。

 それどころか、距離を詰めている。

 

 そして。

 

(なんなんだよアイツ……、魔力のブレが、まったくねえ)

 

 通常、速く走ろう、と思えば必ず脚力の強化に回す魔力が漏れる。

 理論上、無駄な魔力のロスをゼロには出来るだろうが、現実的ではない。

 その魔力のブレ・漏れは、必ずウィスプに察知されてしまう。

 

 これは、人間同士の戦いでも同じことで、そういう些細な兆候が、技の『起こり』として表れ、それをもと、相手の技をかわすのは基本だ。

 

 

 ナギサのただ『走る』という動作を見て驚愕させられたが、さらにそこにステップを組み合わせることで、難度が激変する。

 

 

 

 

 

 《ステラ・ルクス》。

 

 星の光という意味で、断続的に瞬く魔力の軌跡が、星のように連なることから、そう名付けられている。

 

 

 言ってしまえば……ただの、基本の走法。

 

 そして、基本にして、秘奥。

 

 

 

(…………冗談だろ……。アタシは、今……なにを考えた……?)

 

 

 現在の人類の頂点。

 

 それが、魔王を倒したルミリフィア・アウルゲルミルだ。

 

 ギルナの敬愛する、大切な恩人。

 

 ギルナは自分の考えを振り払う。

 ありえない。

 

 ナギサとルミリフィアは、どちらが強いのかなんて……、そんなことは、考える必要が、あるはずがないのだ。

 

 

「やったー! やりました! ギルナさん! レアなの取れました!」

 

 

 《ステラ・ルクス》による高速移動と同時に、正確な太刀筋を崩さない。

 

 ギルナの驚きをよそに、ナギサは無邪気な笑顔で、《ホワイト・ウィスプ》の魔石を掲げていた。

 

 

 

 

 

 

 □

 

 

 

 

 

 

 成績発表。

 

 ・ギルナ 

 

 ノーマルウィスプ 20体 レアウィスプ 1体

 

 合計査定額 11万2000ゴル

 

 

 

 

 

 

 ・ナギサ 

 

 ノーマルウィスプ 26体 レアウィスプ(ホワイトウィスプを除く) 1体

 

 合計査定額 12万9000ゴル

 

 

 

 

 

 

 単位の取得すら危うかったナギサは、歴代最高の成績を叩き出した。

 

 

 

 

 

 

 □

 

 

 

 

「ギルナさん……、いえ……ギルナちゃんのおかげです!」

 

「ア? なに急に馴れ馴れしくなってんだよ」

 

 

 

 

「え…………、だ、だって……、さっき、わたしのこと『ナギサ』って呼び捨てに……」

 

 

「……聞き間違いだろ? 都合のいい耳してんな」

 

 ギルナは《ホワイト・ウィスプ》を見かけた時、興奮と、確実にナギサに意図を伝えるために、名前を呼んだことは覚えている。

 だが、とぼけることにした。

 

「勘違いしてんじゃねえぞ、ブランク。なんでアタシがテメェとなれ合わないといけねえんだ」

 

「そ、そんなぁ……、呼び捨てにしたらもう友達じゃないんですかあ……?」

 

「してねえ。テメェなんざダチにならねえ」

 

「…………、友達になってくれたら、もっとわたしの剣、み、みせて、あげようかなあ……?」

 

「……なっ!?」

 

「い、いいのかな~? み、見たくないんですか……?」

 

「…………。……き、きたねえ……。……クソっ……。まあ……、授業で組んでやるくらいはかまわねえよ」

 

「や、やった! 友達ですね!? ギルナちゃん!」

 

「ちゃんじゃねえよ、ブランク!」

 

「もう一回ナギサって呼び捨てにしてくださいよ!」

 

「しねえよ!」

 

「そんなぁ~…………。……あっ、そうだ……ほわいとうぃすぷ? なんですけど……、あれギルナちゃんにあげますよ。そ、その……パーティー組んでくれたお礼に…………、友情の、証……?」

 

「…………」

 

 ナギサの提案に、ギルナはこれまで以上に鋭い視線を突き刺してくる。

 

 

 

「…………ざけんじゃねえよ」

 

 苛立たしげな声。

 ナギサは、心臓を冷たい手で握られたように、「……ひっ……」と弱々しい声をもらした。

 

 また、失敗した。

 また、自分は変なことを言った。

 

 

「…………アタシがテメェを……。……おもしれえと思ったのは、そうじゃねえし……、テメェだって、そうじゃねえだろ……」

 

 

 

 ――――「……そ、その剣の柄も、巻いてる布も、傷があるけど、でも、補修されて……大事に、されてるじゃないですかあ……!」

 

 

 ギルナの中に、残っている言葉がある。

 

 ギルナがいきなり、ナギサの手を掴んだ。

 

「…………ひぅっ」

 

 ぶたれる。

 この間のしかえしをされるんだ。

 ナギサはそう思った。

 

 

「…………テメェの手柄は、テメェがこれまでやってきたことへの、正当な報酬だろ。……まあ、アタシと組んだから、ってんなら……その分は受け取ってやってもいいが、哀れみの施しなんかテメェにされるくらいならブチ殺してやるよ」

 

「…………え?」

 

 ギルナは、ナギサの手を見つめながら言う。

 

 ナギサの手。

 ボロボロの、剣ばかり握ってきて、皮が剥がれて、傷だらけの、かわいくない手を、見つめて。

 

 ナギサはその視線の意味がわからなかったが、ギルナが背負う、大切にされた剣と、ギルナが自分に向ける視線を見比べて、なんとなく、わかった気がした。

 

 

 哀れみはいらない。

 お金なんて、いらない。

 

 でも……、頑張ったことへの、正当な報酬ならば、それは良い。

 

 

 ナギサは無意識に、ファシルから聞いた孤児院の話などで、ギルナに認めてもらう手段を『お金』で考えていてしまった。

 

 違う。

 そうじゃなかった。

 

 そもそも、自分が彼女を、『悪い人じゃない』と思った最初の理由はなんだ?

 

 ファシルの大切な剣を破壊した、イヤな人のはずなのに。

 それだけではない、とファシルも言っていた。

 わからない。

 わからないことだらけだ。

 

 『友達』を作るのは、本当に、難しすぎる。

 

 それでも。

 

 

「…………ふ、ふへ……、えへへ……じゃあ、山分け、ですね…………ギルナちゃん!」

 

「ッるせえよ、クソブランク! いつまで触ってんだッ!」

 

 自分から握っておいて、ぱちんっ、と手をはたくギルナ。

 

「…………あぁーッ、またブランクってえ……、名前でえ……呼び捨てにしてくださいよぉ……友達じゃないんですかぁ…!?」

 

「友達ではねえよ!」

 

 

 

 

 

 

 《ホワイト・ウィスプ》

 

 査定額 30万ゴル

 

 15万ゴルずつ、ナギサとギルナで山分け。

 

 

 

 

 

 

 

 □

 

 

 

 

 

 

 

 ナギサとギルナのやりとりを、木の陰から伺っている者がいた。

 

「お嬢様…………、なにをしているんですか?」

 

 

 

 

 

「…………失敗だ…………、思ったより、仲良くなってる…………。私だってまだ、ナギサさんのこと、呼び捨てにしたことないのに………………」

 

 

 ナギサへの最初の試練は、ファシルの想定以上の結果となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 □

 

 

 

 

 

 

 SIDE:ギルナ

 

 

 

 

 アウルゲルミル寮内 図書室

 

 

 ギルナは、今あることを調べている。

 

 

 《吸血鬼》。

 ギルナの恩人である、ルミリフィアと、あの忌々しいファシルリルが倒した《魔王》の種族だ。

 魔族の最強種。

 基本七属性には当てはまらない、《闇属性》の力を操る。

 

 その中の一つに、《霊体化》というものがある。

 

 霊体になれば、物理攻撃を無効化できる。

 それだけでなく、対象に憑依して操ることなどもできる。

 

 ふと、ひっかかることがあった、

 

 ナギサ……あの鬱陶しい《ブランク》が、最初に教室にやってきた時。

 なにもないところに、隠れるような仕草をしていた。

 まるで、そこに誰かいるかのように。

 

「まさか、な……アホくせえ……」

 

 あの馬鹿のやることを真面目に考えても仕方がない。

  

 単純に霊体、というだけなら、ゴースト系のモンスターや、ウィスプだって同じようなものだ。

 

 

 

 

 

 

 『神器信仰』を司る《教団》は魔族を許さない。

 

 

 

 

 

 

 《吸血鬼》など、断じてその存在を許容しない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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