リコリス・リコイル Brilliant Memories   作:ヤニカス

12 / 16
9話

休む暇なくDAに戻った凪は予想通り指令室に呼び出されていた。

 

「テロリストは皆殺し。ハインドはスクラップ。表向きはガス爆発という事になっているが……一人で戦争でもしていたのか」

 

おどけた風に言っているが楠木指令の目はガチで怒っていた。隣に立っているミカも「すまない」と言った風に手を立てる。

 

「…………すみません」

 

しかし凪には言い訳する気力もなくただ黙って下を向くしかなかった。

 

「押収した武器や残っていた書類を解析したところ、奴らの狙いが分かった」

 

楠木はモニターに映っている資料を見ながら言った。

 

「電波塔の占拠だ。あの塔を占拠されれば東京どころか日本中が大混乱に陥る。奴らはそれを狙っていたんだ」

 

「そうか……」

 

ミカが髭を摩りながら言う。

 

確かにあれだけの武器と爆薬があればそれも可能だが、しかしそれは凪の手によって阻止された。

 

「ことが事だ。当面の間は厳重体制になる。もちろん、お前たちにも協力してもらうぞ」

 

「あぁ」

 

「はい」

 

返事を聞いて楠木は満足げな表情をした。それから今度は少しだけ真面目な雰囲気で言う。

 

「ご苦労。よくぞ生きて帰ってくれた」

 

その言葉だけでこれまでの疲労が全て吹っ飛んでしまうような感覚があった。

 

ーーーー

 

どのくらい寝ていたのだろうか。

 

ふと目が覚めた凪は天井を眺める。どう見てもそこは病院で、今自分はベッドの上にいることを理解するまでに数分を要した。

 

それからしばらくして意識が完全に覚醒した凪だったが同時に猛烈な頭痛に襲われる。

 

おまけに体中に痛みがありとてもではないが動けるような状態ではなかった。

 

「起きたんですね。全身打撲に筋肉断裂、その他もろもろ。まぁしばらくは安静にしてください」

 

そんな医者の言葉を聞きつつ、凪は冷静に言葉を吐き出す。

 

「私の心臓は後どのくらい持ちそうですか」

 

「……知りたいですか?」

 

すると一瞬医務室の空気が変わった。凪だって馬鹿じゃない。

それが意味することは良く分かっていた。もうあまり長くはない。

 

「普通に生きているだけでも奇跡ですよ。今までが特別だったんです。医者の立場から言わせてもらえばその傷が癒えたらもうリコリスを引退して休むべきです」

 

「嫌だなー、私が私である為に休んでいる暇なんかないのだよー」

 

そう言ってベッドの上で笑う凪に対して先生が悲しげに言った。

 

「あなたという患者さんは……。本当に……困った人ですね……」

 

それから数週間後、怪我の回復を見せた凪はDAへと戻っていた。

 

「あっれー? 凪ぁ元気なさそうだねえ?」

 

そう声を掛けてきたのは千束だった。相変わらず人を小バカにしているのか天然なのか分からない口調である。

対して凪はため息を吐きながらそれに答える。

 

「そう見える〜? たぶんしばらく千束の成分吸ってなかったからかなー?」

 

そう言って千束を抱きしめる。

千束はこそがしそうに身をよじるが凪の拘束から逃れることが出来ない。

 

「ちょ、おま! こんなとこでやめろ!」

 

「あれ、千束。この制服……ファーストじゃん!」

 

凪はようやく気付いたかのように千束の制服姿をまじまじと眺める。

 

「まーね、私天才だし? あっという間に昇格しちゃったよー」

 

千束はドヤ顔でポーズをとった。彼女は自分の力を自負している節があり、同時にそれが真実だという事も証明してきたのだろう。

 

「ねぇねぇ、久しぶりに私とタイマン張ってよ〜」

 

「生意気だねー。よおーし、お姉ちゃん頑張るぞー!」

 

凪は千束と連れ立って訓練場に向かう。その場所は初めて千束と勝負した場所だった。

 

「今度はぜってー負けないかんな!」

 

「ふっふ、この私を倒したらなんでも言う事聞いてあげる」

 

「言ったな! 後で後悔すんなよ!」

 

そんな会話をしながら訓練場に入る2人。すると、その様子をリコリス達が見ていた。

 

「おー、なんかアツいね!」

 

「千束と凪さん……。どっちが勝つんだろ」

 

2人の勝負は瞬く間に噂になり、ギャラリーが集まる。

 

その中でも特に注目しているのはやはりファーストの凪が勝つのではないかと言う意見だった。

 

なにせ既に何度もファーストの実力を見せているのだ。

 

その実力を知るリコリス達にとって相手は成り立てホヤホヤのファーストという事はハンデ以外の何物でもないと考えているのだろう。

 

「前みたいに手加減はしないよ、千束ちゃん」

 

「あったりまえだ! そっちこそ舐めた事してっと痛い目見るぞー!」

 

2人の間にバチバチと火花が散る。そしてついに勝負の火蓋は切って落とされた。

 

煌めくマズルフラッシュが二人を包み込む。

 

千束の射撃は以前とは違い正確なものになっていた。凪がそれに呼応するかのように回避行動を取る。

 

「やるねぇー千束!」

 

「そっちこそ! 」

 

銃を用いた近接格闘。

それはガン・カタと呼ばれ、映画好きな凪と千束によって一部のリコリス達の間で流行っていた。

 

二人は激しく銃を交わらせながら踊るように戦闘を繰り広げる。

 

フィクションをリアルに落とし込んだこの完成された技術を目の当たりにしたリコリス達は思わず歓声を上げた。

 

「すごーい」

 

「あれが……ファースト……」

 

2つの銃から放たれる弾丸の隙間を縫ってお互いに距離を詰めた二人は拳を相手に撃ち込む。

 

「ぐっ!」

 

「……っ」

 

お互いの攻撃がクリーンヒットしたかのように見えたが、二人ともすぐに距離を保ち相手の動向を窺っているようだった。

 

そんな二人の格闘銃術にリコリス達も思わず見入ってしまう。一日に数十発もの銃声の中にいればある程度慣れてくるものだが、彼女達は違うらしい。

 

「何をやってるんだ、あの馬鹿共は」

 

「あ、楠木指令」

 

遅れてやってきた楠木が呆れたように二人の戦いを眺めていた。

 

「まぁ、好きにさせてやれ」

 

そう言って二人のタイマンを観戦する事にしたらしい。

 

(いいね……これ)

 

凪は銃を撃ちながら今まで感じたことのない高揚感を得ていた。

それは千束も同じなようで時折笑い声を上げている。

 

「ふっふ、凪。あんた中々やるじゃん!」

 

「千束もね……。今まで戦った敵の中で1番強い、かも」

 

2人はまるで昔からの親友のように笑い合いながらも相手に攻撃を撃ち込んでいく。

改めてお互いがお互いをライバルと認め合った瞬間であった。そしてそれは同時に二人の信頼関係を築くきっかけにもなったのだろう。

 

だがしかし、それも長くは続かない。

 

元々凪には限界があるし、千束も同じだったという事だ。

 

「っ、はぁ……はぁ……」

 

「ふふ、どうした? もう限界?」

 

凪が千束に銃を向ける。

勝負は決したと言わんばかりだった。

 

「いいや、まだまだぁ!」

 

千束は最後の力を振り絞って引き金を引く。だがその銃弾は凪の頬を掠めただけだった。

 

「うっそ!?」

 

そして次の瞬間、凪が千束に肉薄する。千束の手から銃を奪い取るとそれで彼女を撃った。

 

「やっぱり強いや……」

 

「これからは私のことをお姉ちゃんと呼んでね?」

 

凪は悪戯っぽく笑う。千束はやれやれと言った様子で手を上げた。

 

「わかったよ……お姉ちゃん」

 

こうして千束のリベンジマッチは幕を閉じたのである。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。