再建された神秘部にて、新たな予言が保管された。
一人の魔法使いがそれを手にする。
予言の内容は新たな闇の復活とそれを阻止する存在の示唆。
特に魔法使いは後者に興味を惹かれた。
『稲妻の傷の男、黒髪の魔女、揃いし時、再び闇は消滅
するであろう』
具体的な人物像が告げられた。体の何処かに稲妻の傷がある男。黒髪の女。
前者は絞ることが出来るだろうが、後者は同じ特徴のある人が多い。
思い耽る。稲妻の傷と言えば、今では英雄として語られる男
ハリー・ポッターを彷彿させる。となれば彼としては人を絞ることが
出来る。
イギリスに一人の少女がやって来た。彼女の名前はマナ、ここに来たのには
理由がある。彼女は日本の魔法学校、魔法処と言う場所に通っていた。
にもかかわらず彼女はホグワーツに転校することになった。イギリスの魔法省から
魔法処へ要請があって、話を受けた。クロエは受け入れた。彼女の両親がいない、
親戚もいない天涯孤独の身と言うことでイギリスの一家が彼女を快く
受け入れてくれたのだ。
「おーい、こっちこっち」
マナは待ち合わせ場所とは反対方向に歩いていたらしい。恥ずかしいと
思いながら、迎えに来た青年と顔合わせする。分かりやすい。服装等も
教えておいてくれたのだ。
「ジーク・ヴァーミリオンだ、これからよろしく。それじゃあ早速
必要なものを買いに行くか」
ジークは早速必要な物を揃えに行こうと誘った。彼女は杖を失っている。
折れて直すことが出来なくなった桜の杖は捨てきれず持っている。
「母さんと父さんもついて行こうかなって言ってたんだけど、ほら新しく
君が住むからね。空き部屋の掃除を終わらせないと」
「えぇ?そんな、わざわざ…」
「部屋があった方が良いだろ。部屋も片付けて、マナは必要な物を揃えられる。
一石二鳥って奴さ」
ダイアゴン横丁では学校に必要なものはあらかた揃う。ローブに制服、それを
揃えた後は杖を買う。オリバンダーという人物が店主をしているらしい。今は
ギャリック・オリバンダーの弟子である女性ソフィア・ネーヴェと呼ばれる人物が
店主としているらしい。
「待っていたよ、ジーク」
男勝りな女性は前々から来ることが分かっていたらしい。彼女はマナに目を
向けた。
「その顔立ち、日本から来たんだね?アタシはソフィア・ネーヴェだ。
ようやく杖職人として独り立ちして、今はここの店主を師匠から任されてる」
杖は木材と芯の二つで構成される。使用者が杖を選ぶのではなく、杖が使用者を
選ぶらしい。折れた杖は残念ながら修復できないということで新しく
買い直すことになった。杖が独りでに動き出し、一本の杖が彼女の手元に
やって来た。
「良いかい。杖は大事に使うんだよ」
「ありがとうございます」
「良いさ。アタシとしては楽しくて仕方ない。杖の木材にはそれぞれ特徴がある。
だから杖から人が分かるものさ。ただ、このタイミングでアンタはホグワーツに
転校してくるのか…」
ソフィアは何やら眉を顰める。何かあるだろうか。珍しいからか?そうでも無い
らしい。転校生が珍しいのは否定しないが、それ以上に気になることがある。
予言が知れ渡っている。闇の帝王は死んだはずなのに、再び闇が蘇るという
予言。そしてその闇を滅するキーマンの存在が予言されている。稲妻の傷の男と
黒髪の魔女。
「そりゃあ、私は黒髪だけど…」
「同じ黒髪の魔女なんて探せば幾らでもいるさ。アンタは気にすることは無いよ」
「稲妻の傷ってのは、聞き覚えがあるな。確かハリー・ポッターも額に稲妻の傷が
あるよな」
良く知られた特徴だ。闇の帝王は赤子であったハリー・ポッターを襲ったが
彼の母親による愛によって攻撃が跳ね返った。受けた攻撃によってできたのが
彼の額の傷。
「ポッターといえば、孫がいたな。ソイツは今は闇祓いを辞めていたんだったか?」
ソフィアは彼の孫の存在を示唆した。孫は闇祓いをしていたが、突如辞職した
らしい。その後、何をしているのか誰も分かっていないという。
「そんな凄い人の孫なら、有名になっていそうなのに」
「凄い人だろうけど、その重圧は洒落にならねえだろうな。祖父があれだけの
活躍をした英雄なんだ」
英雄の孫ならばこれぐらいは、と常人は普通に考えてしまい、そしてその予想を
相手に押し付ける。人間関係で苦しまないコツ、期待しない事、執着しない事、
依存しない事、こだわらない事、偽らない事。期待するといざそれと違う結果
だったときに綻びが生まれる。
「家族が凄いからって、子どもが出来て当然な訳ないもんね」
杖、制服が揃った。ホグワーツに入学すると四つの寮に生徒は組み分けされる。
グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリン。因みに
ジークは在籍時、グリフィンドールの生徒だったらしい。転校は来週。
緊張に加え、ワクワクする気持ちも込み上げている。