午後からはセリーのレベルを上げるため、ハイペースで狩りを行っていく。
彼女はその様子に戸惑っているようだったが、弱音を吐くことなくついてきた。
まあ、今は後ろで見ているだけなので、精神的にはともかく、肉体的には負担も掛かっていないしな。
魔法による超高速での殲滅と、デュランダルによるMP回復を繰り返していると、ロクサーヌが動きを止めて話しかけてくる。
「ご主人様、そろそろいつもの終了時間の一時間前になります」
もうそんな時間になるのか。
ボーナスポイントを鑑定に付け替える必要があるため、レベルを確認する時間も惜しんで、ひたすら狩っていたもんなぁ。
「ロクサーヌ、ありがとう」
「このくらいなんでもありません」
感謝の言葉を口にすると、彼女は嬉しそうに笑みを浮かべて答える。
「では、準備をするから少し待っていてくれ」
彼女たちに断りを入れ、キャラクター再設定を開き、獲得経験値二十倍のチェックを外して鑑定を付け、確認を行う。
田川 歩 男 18歳
探索者Lv37 英雄Lv32 魔法使いLv36 商人Lv25
装備 ひもろぎのスタッフ ダマスカス鋼の盾 硬革の帽子 頑強の竜革鎧 硬革のグローブ 硬革の靴
おお! 商人のレベルが2つも上がっている!
これなら近いうちに遊び人を獲得できそうだぞ!
さすが、経験値効率四百倍は伊達じゃないな。
今日は探索者と魔法使いも上がっているし、めちゃくちゃ順調だ。
じゃあ、次はロクサーヌだ。
ロクサーヌ ♀ 16歳
戦士Lv20
装備 強権のレイピア ダマスカス鋼の盾 ダマスカス鋼の額金 竜革のジャケット 竜革のグローブ 竜革の靴
ロクサーヌも上がってる!
「おめでとう、ロクサーヌ。戦士のレベルが20になっている」
「本当ですか! これもすべてご主人様のおかげですね。ありがとうございます」
嬉しそうに感謝を伝えてくるが、それを言うならこの成果は彼女のおかげだ。
「そんなことはない。君が素早く魔物を見つけてくれているからこその結果だ。俺の方こそいつも助けられている。ロクサーヌ、本当にありがとう」
「ふふ。どういたしまして」
かわいい笑顔だなぁ。
最初の頃に比べて、過度に謙遜するようなこともなくなり、素直に感謝を受け取ってくれるようになったよなぁ。
それだけ親しくなったのだと思いたい。
「たった三十日でレベルが20……。本当に途轍もないパーティーです……」
俺たちの様子を呆然と見ていたセリーから、呟きが漏れた。
まあ、世間一般で知られている探索者のレベル推移を考えると、とても信じられないのだろう。
でも、そういう彼女も……。
セリー ♀ 16歳
鍛冶師Lv10
装備 ダマスカス鋼の槍 竜革の帽子 硬革のジャケット 硬革のグローブ 竜革の靴
おお! 10になってる!
「セリーもおめでとう。鍛冶師のレベルが10になっている」
「えー! まだ一日も経っていないのですよ!?」
獲得経験値二十倍のことを聞かされていても、信じられなかったのだろう。彼女から悲鳴のような声が上がった。
「ふふ。おめでとうございます。初日でレベル10達成ですね」
祝福の言葉を伝えているが、君は戦士にジョブ変更して数時間でレベルが8になっていたじゃないですか。
戸惑っていたセリーも俺たちが喜んでいるのを見て、徐々に笑顔へ変わっていった。
今後も訳の分からないことが起こり続けると思うが、慣れてくれるとありがたい。
一頻り喜びを分かち合ったところで、やるべきことに戻る。
まずはミサンガの製造からだな。
キャラクター再設定を開き、フォースジョブをサードジョブに下げ、詠唱省略とワープ、それから腕装備六にポイントを振る。
そして、出現したヤールングレイプルを差し出しながら、セリーへ声を掛けた。
「これを装備してもらえるか? ロクサーヌ、セリーの硬革のグローブを預かっていてくれ」
「え?」
「あの……。これは?」
そう言うと、ロクサーヌはキョトンとした表情を浮かべ、セリーは戸惑った様子で問いかけてくる。
あ、そうか。器用のパラメーターがスロットの発生率に与える影響についての仮説を、彼女たちへ話していなかった。
そりゃあ、疑問も覚えるだろう。
「それはヤールングレイプルというボーナス装備で、器用五倍、体力五倍、腕力五倍、雷抵抗、氷抵抗、最大HP二倍のスキルが付いている」
「えー! すべてのスキルに聞き覚えがありません! そんなにすごいものを私が装備してもいいのですか!?」
彼女は大きく目を見開き、声を張り上げる。
この娘さん、今日一日で完全に常識をぶっ壊されているんだろうなぁ。
その様子を見ていたロクサーヌが、優しく告げる。
「大丈夫ですよ。私も以前装備させていただいています」
「そうなのですか?」
「はい。なので、セリーも遠慮することなく、ご主人様の言葉に従ってください」
「は、はい。わかりました」
ロクサーヌの言葉に後押しされ、セリーは硬革のグローブを外し始めた。
ヤールングレイプルをロクサーヌに渡し、セリーが装備している間に、アイテムボックスから糸を取り出しておく。
そのままセリーの様子を見守っていると、装備が済んだところで彼女が質問をしてきた。
「ところで、ご主人様。どうしてこれを装備する必要があるのでしょう?」
ちゃんと伝えておかないとな。
「推論なのだが、スキルスロットの発生率や数には、器用のパラメーターが関わっているのではないかと考えている」
彼女はその言葉を聞き、眉間に眉を寄せ少し考えてから、再度疑問を口にする。
「どうして、そう思われるのですか?」
「確証はないのだが、鑑定でスキルスロットを確認していると、ある人が作った装備品には複数のスロットが付いたものがいくつもあるのに、別の人が作ったものにはほとんどスロットがなく、付いていても一つだけ。このように製造する人によって有意差が存在している気がするのだ」
推論を聞いたセリーは思考を巡らせている。
きっと、この推察を今までの知識や常識に照らし合わせているのだろう。
しばらくして考えがまとまったのか、言葉を発する。
「……なるほど。鑑定が使えなければ、絶対に気が付くはずありません。ご主人様はその差が器用のパラメーターだとお考えなのですね」
「うむ。先ほども言ったように根拠は薄いがな」
「いいえ。鑑定の結果から論理的に導き出された、素晴らしい推察だと思います」
彼女の言葉を聞いて、興奮したようにロクサーヌが喋り出す。
「セリーの言う通りです。そんなことを思いつくのは世界でただ一人、ご主人様だけでしょう。本当に素晴らしいことです」
君は少し落ち着きなさい。
そう言われてもサンプル数が少ない上に、本当に同一人物が製造した物なのか確証が得られていない。なので、いうほど論理的でもないんだけどな。
まあ、それは置いといて、話の続きに戻ろう。
「先ほども言った通り、ヤールングレイプルには器用五倍が付いている。もしその推察が正しいのなら、それを身に着けて装備品の製造を行った場合、スキルスロットが付く確率が高くなるはずだ」
「そういうことだったのですね。確かにおっしゃる通りです」
「はい。ご主人様はいつも色々なことをお考えですから」
納得してくれたところで糸を差し出すと、彼女は緊張した様子でそれを受け取った。
セリーは両手のひらにその糸玉を載せ、大きく深呼吸を繰り返す。
「いきます」
そして、一声発し詠唱を開始した。
「今ぞ来ませる御心の、言祝ぐ蔭の天地の、防具製造」
あれ!? スキル結晶の融合と詠唱が同じだ!?
そう思った途端に、セリーの手から猛烈な光が溢れ出し、視界を奪う。
程なくして光が収まると、彼女の手のひらの上には紐が載っていた。
ミサンガ アクセサリー
スキル 空き
「きたーーー!!!」
それを目にした瞬間、思わず声を上げていた。
「すごい! さすがセリーだ! 初っ端からスロット付きを作ってしまうとは!」
二人はその声にビクッと体を震わせたが、意味を理解したのだろう。徐々に表情が輝いていく。
「ふふ。おめでとうございます。本当にセリーはすごいですね」
ロクサーヌと二人で、すごいすごいと褒め称えていると、恥ずかしそうにしていたセリーが口を開いた。
「俗説ですが鍛冶師の間では、最初に作ったミサンガで身代わりのミサンガが作れた者は大成するといわれているのです。この結果はご主人様のおかげですが、身代わりのミサンガが作れるとなると、たとえ俗説でも嬉しいものですね」
あー、確かそんなエピソードがあったな。
「それじゃあ、先に身代わりのミサンガを作っておくことにしよう。セリー、MPはどうだ? 毘盧帽に変えて融合を行うか? それともデュランダルで回復を挟むか?」
彼女はそれを聞くと、少し考えてから答える。
「おそらく、毘盧帽を装備すれば問題ないと思いますので、先に融合を行ってもいいでしょうか?」
まあ、レベルも10になっているのだ、消費MPが半分になれば問題ないのだろう。
「わかった。では、装備品を交換しよう」
ヤールングレイプルを返してもらい、ボーナスポイントを振り分け、出現した毘盧帽をセリーへ差し出す。
彼女がロクサーヌへ竜皮の帽子の装備を預け、それを装備したのを確認したところで、アイテムボックスから芋虫のスキル結晶を取り出し、手渡した。
「では、頼む」
「……かしこまりました」
緊張している様子がうかがえる。まあ、まだスキル結晶の融合は二回目だ。無理もない。
「大丈夫ですよ。ご主人様を信頼して挑めばいいのです」
それを聞いて、フッと表情を緩めるとセリーが呟く。
「そうですね。ご主人様がこのミサンガに、スキルスロットがあるとおっしゃっているのです。問題はないですよね」
「うむ。先ほども言ったが、今後セリーが融合に失敗するようなことがあれば、それは君のミスではなく、装備品を渡し間違えた俺のミスだ。気負うことなく融合を行ってくれ」
「はい。お気遣いありがとうございます」
セリーはスキル結晶を受け取り、ミサンガへ押し当て詠唱を開始する。
言葉が終わったタイミングで、手のひらのミサンガが白い光を放ち出す。
光の奔流が収まると、セリーの手からスキル結晶が消え、ミサンガだけが残されていた。
そして、それに向けて鑑定を念じる。
身代わりのミサンガ アクセサリー
スキル 身代わり
っしゃー! 身代わりのミサンガゲットだぜ!
「セリー、おめでとう。見事に成功させたな。これで、君の成功は約束されたようなものだ」
「はい。本当にすごいです。これからもっともっとご主人様のお役に立てますね」
俺とロクサーヌの言葉に、はにかんだような笑顔を浮かべ答える。
「まさか、鍛冶師へのジョブ変更が叶い、最初に作ったミサンガで身代わりのミサンガが作れるなんて夢にも思いませんでした。これもすべてご主人様のおかげです。本当にありがとうございます」
彼女はそう言って、丁寧に頭を下げた。
「セリー。これからもよろしくな」
「はい! こちらこそよろしくお願いします!」
俺の声で上げられた顔には、満面の笑みが浮かんでいる。
めちゃくちゃかわいらしいなぁ。
よし。それじゃあドンドンいこう。
「では、身代わりのミサンガはロクサーヌが装備してくれ。次にできたものはセリーだな」
そう言ったところで、ロクサーヌから声が上がる。
「いけません! 身代わりのミサンガについては、今までの防具とはわけが違います。これは絶対にご主人様が身に着けるべきです」
「そうです。ご主人様に何かあればパーティーが全滅してしまいます。これだけは私たちを優先するわけにはいきません」
続けてセリーにも窘められた。
いやでも、俺はメギンギョルズを装備しないといけないから、アクセサリー枠を潰すわけにはいか――、あっ。
魔法攻撃力二倍のスキル結晶が判明して、ルークに買い注文を出している。
落札できるまでに時間はかかるだろうが、そもそも今のボーナスポイント数では、メギンギョルズを出す分を捻出できない。そうなるとアクセサリー枠はしばらく空いたままだ。
ってことは、身代わりのミサンガを装備しても問題ないわけか。
今後、レアドロップ率二倍が必要になったときにドラウプニルを装備したり、複数スロットのアクセサリー装備を見つけて、攻撃系のスキルを付けてそれを装備することもあるだろう。
しかし、頭装備に身代わりスキルを付けるのはそのときでも遅くない。
現状では身代わりのミサンガを装備しておくのがベストだな。
よし。芋虫のスキル結晶は一つ残しておき、今回融合するのは三つだけにしておこう。
「二人とも、俺のことを心配してくれてありがとう。その心遣いが本当に嬉しかった。では、これは俺が装備させてもらうことにしよう」
感謝の言葉を述べ前言を撤回すると、彼女たちの表情が緩む。
「大切なご主人様のことなのです。当然です」
「そうです。ロクサーヌさんの言う通りです。それに、最初に作った身代わりのミサンガは是非ご主人様に装備していただきたかったので、とても嬉しいです」
うちの娘たちがかわいすぎるんですが……。
こんなに俺の心を虜にするなんて、君たちは一体どういうつもりなんだい?
セリーから身代わりのミサンガを受け取り、それを巻くために盾をアイテムボックスへしまおうとしたところで、ロクサーヌが声を発する。
「私におまかせください」
「うむ。では頼む」
それを手渡すと、彼女は問いかけてきた。
「どちらに巻きますか?」
うーん……。
これまで出会ってきた人たちには、俺たちが手に何も巻いていなかったことを知られている。
それがいきなり、全員手首にミサンガを巻いていたら、いらん詮索を受けてしまうかもしれない。
「身代わりのミサンガは全員、足首に巻くことにしよう」
「かしこまりました」
「はい。余計な反発を招くこともありますから、その方がいいでしょう」
ああ、彼女たちが奴隷だと知っている人が、身代わりのミサンガを装備していることを知れば、そういうこともあり得るか。
奴隷に身代わりのミサンガを付けるような金持ちだと思われ、やっかまれてしまうのだろう。
ズボンの裾を捲り上げると、ロクサーヌがしゃがんで身代わりのミサンガを巻いてくれる。
田川 歩 男 18歳
探索者Lv37 英雄Lv32 魔法使いLv36
装備 ひもろぎのスタッフ ダマスカス鋼の盾 硬革の帽子 頑強の竜革鎧 硬革のグローブ 硬革の靴 身代わりのミサンガ
うん。バッチリだ。
んじゃ、続きといくか。
「では、これからMP回復を行うので、三階層へ移動しよう」
「三階層ですか? ここでも問題ないと思いますが」
その言葉にロクサーヌは難色を示す。
セリーのMPなら三階層で十分だ。わざわざ危険を冒してまで九階層でやることじゃない。
……とはいっても、それじゃ納得しないだろうなぁ。
「いや。三階層なら糸を集めながら回復が行える。スロット付きのミサンガを作るため、糸はいくらあってもいいからな」
「確かにそれは合理的です」
セリーが感心したように頷く。
「なるほど。ご主人様は、そこまで考えていたのですね」
よし。ロクサーヌさんにも納得していただけた。
気が変わらないうちに、さっさと移動するべ。
セリーから毘盧帽を受け取りデュランダルを取り出そうとすると、その間にダマスカス鋼の槍をアイテムボックスへしまい込んでいた。
俺の他にアイテムボックス持ちがいるのはありがたいなぁ。
あ、いざというときのため、滋養丸、滋養錠それに強壮丸。そして各状態異常回復薬をセリーのアイテムボックスに入れていてもらおう。
この後ドロップアイテムを売却に行くときに、忘れずそれらを購入しないとな。
デュランダルをセリーへ渡し、ロクサーヌに声を掛ける。
「では、なるべくグリーンキャタピラーを探してもらえるか?」
「はい。おまかせください」
「ロクサーヌが魔物の注意を引いてくれるので、セリーはその後ろから攻撃するように」
「かしこまりました」
そんで、私はいざというときのため、いつでも魔法を撃てるようにしておくってことで。
「さあ、始めよう」
ロクサーヌがあっという間に魔物を発見し、セリーも一撃でそれを倒していき、すぐにMPの回復が済む。
デュランダルとヤールングレイプルを入れ替え、セリーが装備したところで糸を渡す。
しかし、防具製造を二回行うものの、どちらにもスロットは付いていなかった。
まあ、原作ではスロット付きができるまでに、七、八回くらいかかっていたはずだ。焦らずいこう。
「どうする? 一度回復を挟むか?」
「大丈夫です。あと何度かできそうな気がします」
まあ、鍛冶師のレベルも10になっている。レベルだけでいえばジョブ変更後、数年経っているようなものだ。
それに、俺が持つ英雄のMP中上昇や、魔法使いのMP微上昇のパーティー効果もあるしな。
糸を渡すと、セリーは再び詠唱を始め、手のひらから光が溢れ出す。
そして、光が消えたところで手のひらに残ったミサンガへ鑑定をかける。
ミサンガ アクセサリー
スキル 空き
「よっしゃー! スロット付きだー!」
俺の上げた声に反応し、彼女たちも喜び始めた。
それにしても、四個中二個がスロット付きか。
まだまだ、サンプル数が少なく、上振れしているだけかもしれないが、スロットの発生数に器用のパラメーターは関係してそうだな。
喜んでいる彼女たちへ声を掛ける。
「次はスキル結晶の融合だな。どうだ? まだいけそうか?」
「はい、大丈夫です。毘盧帽へ変更していただけますか?」
ボーナス装備品のおかげで、サクサク進んでいくなぁ。本当にありがたいことだわ。
装備品を変更し芋虫のスキル結晶を受け取ると、彼女は何の気負いもなくアッサリと融合を成功させてしまう。
「もう完璧だな。本当にセリーはすごい」
「はい。もう一人前の鍛冶師ですね」
俺たちの言葉に、照れ臭そうな笑みを浮かべている。
セリーから身代わりのミサンガを受け取り、ダマスカス鋼の盾をアイテムボックスに放り込むと、ロクサーヌに近づく。
「では、身代わりのミサンガを巻くから、ズボンの裾を捲り上げてくれるか」
「ご主人様にそのようなことをしていただくなんて、畏れ多いです」
ええい。何を言う。
これは大切な女性を守るための装備品を自らの手で付けるという、神聖にして重大な意義を持つ儀式。
誰にも譲るわけにはいかぬ。
「大切な女性を守るための装備品を、俺の手で付けたい。ロクサーヌ、そんなことを言わずにさせてもらえないか?」
「ご主人様……。はい。あの、よろしくお願いします……」
俺の誠意が伝わったのだろう。ロクサーヌの顔には感激したような表情が浮かんでいた。
彼女の前にしゃがみ込むと、ゆっくり裾が捲り上げられていく。
めちゃくちゃきれいな脚だよなぁ。
毎日見ているのに、風呂や寝室で目にするのとは、また違った艶めかしさがあるわ。
おっと。ここは危険と隣り合わせの迷宮だ。見惚れている場合じゃない。
手早く結び終え、立ち上がる。
「ご主人様、ありがとうございます」
「うむ。ロクサーヌの生存率が大きく上がり本当に安心した。それもこれもセリーのおかげだな」
「そうですね。セリーのおかげで、迷宮攻略へ一気に近づくことが出来ました」
「そんな。こんなことが出来るようになったのも、ご主人様とロクサーヌさんのおかげです。本当にありがとうございます」
嬉しそうに話をしている二人を見ていて改めて思う。
二人とも本当にいい娘だよなぁ。大切にしていかなければ。
毘盧帽とデュランダルを入れ替え、MP回復を図った後にヤールングレイプルへ変更しミサンガの製造を行うと、今度は一回でスロット付きが作れてしまった。
五個中三個か。これはもう確定だろう。
発生率自体は不明なものの、器用のパラメーターによって、それが高まっていることは間違いないはず。
今後製造を行う際に、ヤールングレイプルは必須だな。
サクッとスキル結晶の融合も済ませ、身代わりのミサンガを受け取り、セリーの前にしゃがみ込む。
恥ずかしそうな顔でズボンの裾を捲り上げる姿が、何ともいじらしくて胸がキュンキュンする。
所謂一つの萌えという感情だろう。
セリーの脚はスラリとしていて、とても長い。
縮尺を考えると、均整の取れた素晴らしいスタイルだ。
このまま撫でまわしてしまいたくなるが、そんなことをすると、せっかく好意を抱いてもらっているのに、それをぶち壊してしまうだろう。
欲望を抑え、粛々と巻いていった。
さて、今度はウサギとコボルトのスキル結晶を融合していくことにする。
「セリー、続けて融合はいけそうか?」
「はい。問題ありません」
よし、オッケー。それじゃあ、そのままいこう。
アイテムボックスからウサギとコボルトのスキル結晶、それからエストックを取り出し、彼女へ差し出す。
「では、エストックにウサギとコボルトを融合してくれ」
「かしこまりました」
セリーは返事をすると、どこか余裕の感じる笑みを浮かべながらそれらを受け取った。
おお。まだジョブ変更をした当日だというのに、既にベテランじみた自信と風格を漂わせている。
妙な卑屈さがないことと、立て続けの成功体験の影響だろうか?
おそらくこれは良い傾向だろう。
何の気負いもなくスキル融合を行うと、彼女の手にはエストックが残されていた。
強権のエストック 片手剣
スキル 詠唱中断 空き 空き
うん。問題なし。
「ロクサーヌ、武器を交換しよう。これからは強権のエストックを使ってくれ」
「ありがとうございます。このように貴重な武器を装備できるなんて、本当に光栄です」
何をおっしゃるオオカミさん。
これから、もっともっと貴重で有用な装備品を渡していくことになるから。
ロクサーヌから受け取った強権のレイピアをアイテムボックスへしまい、セリーへ問いかける。
「まだいけそうか? それとも回復を行うか?」
「お気遣いありがとうございます。まだ大丈夫だと思います」
毘盧帽のおかげで、融合で消費したMPは二回分にも満たない。
防具製造の一回分と合わせても、まだ余裕があるのか。
再びウサギとコボルトのスキル結晶を差し出し告げる。
「では、今度はセリーのダマスカス鋼の槍へ、ウサギとコボルトの融合を頼む」
「私が持つ武器へ付けるのですか?」
「うむ。セリーが魔物の詠唱を潰せるようになれば、安全性が高まるからな」
ロクサーヌも頷きながら口を開く。
「そうです。前衛とご主人様の間に位置するあなたが、詠唱を潰せるようになるのは本当に心強いです」
この娘さん一人で前線を支えるつもりですよ……。
次に加入するミリアは遊撃だから、ベスタ加入までは本気でそうするつもりなのかもしれん。
でも、原作より動きが極まっているし、このあと移動力増強のスキルも付ける。マジでいけるか?
本当に、とんでもねぇなぁ……。
「ありがとうございます。ご期待に添えるよう頑張ります」
フンスと気合を入れて答えるとスキル結晶を受け取り、アイテムボックスからダマスカス鋼の槍を取り出して詠唱を始めた。
そして、問題なく融合を成功させる。
強権のダマスカス鋼槍 槍
スキル 詠唱中断 空き
オッケーオッケー。順調順調。
「MPの具合はどうだ?」
「申し訳ありません。もう一度というのは厳しそうです」
「いや、大丈夫だ。それでは回復を行おう」
MP回復を済ませ、ロクサーヌの竜革の靴へ牛とコボルトのスキル結晶を融合しようとしたところで、はたと気付く。
替えの靴がないんだから、ここで融合するわけにはいかないじゃん。
まさか、融合が済むまでロクサーヌを靴下のまま放置するわけにもいくまい。
「最後の融合は自宅で行うので、今日はここまでにしておこう」
「かしこまりました」
「はい」
いつもよりだいぶ早いが、この後セリーの歓迎会もあるしちょうどいい。
ボーナスポイントの振り分けを行い、通路の壁へワープゲートを展開する。
田川 歩 男 18歳
探索者Lv37 英雄Lv32 魔法使いLv36
装備 硬革の帽子 頑強の竜革鎧 硬革のグローブ 硬革の靴 身代わりのミサンガ
BP振分 残BP:0
キャラクター再設定:1
サードジョブ:3
必要経験値二十分の一:63
詠唱省略:3
鑑定:1
ワープ:1
買取価格三十パーセント上昇:63
所持金:1,217,541ナール
春の32日目