異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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クーラタルの迷宮

六階層

 

 

 

 

 

 風呂を沸かすために迷宮へ入り、MPの回復を行う。

 皮を集める必要があるとロクサーヌを言いくるめ、今回は六階層で行うことにした。

 

 デュランダルでサクサクっとミノを倒し、MPを満タンにしてからセリーへ問いかける。

 

「セリー、この後もう一度装備品の製造に挑んでみないか?」

 

 すると、彼女は真剣な眼差しで俺を見つめ、口を開く。

 

「はい。これだけご期待いただいているのです。是非挑戦させてください」

 

 よっしゃ! チャレンジしてもらえるぞ!

 失敗したところでたいした問題はないし、駄目で元々ってな感じで気楽に挑んでもらおう。

 

 

 

 デュランダルをセリーへ渡し、ロクサーヌへ声を掛けた。

 

「では、もう一度ミノを探してくれ」

「はい。おまかせください」

 

 

 

 彼女の案内であっさりミノの集団とエンカウントし、セリーのMP回復と皮の確保に成功する。

 

「MPの具合はどうだ?」

「なんとなくですが、これ以上は回復しない気がします」

 

 よし。問題なさそうだな。

 

「なら、自宅へ戻るとしよう」

 

 二人が頷いたのを確認し、通路の壁へワープゲートを展開した。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 自宅へ戻り、まずはリビングで装備品の手入れを行う。

 すると、セリーは早々に手入れを終え、ロクサーヌから合格をもらっている。

 手際が良い上に器用だなぁ。ドワーフの特性なんだろうか?

 

 いくつかの装備品をアイテムボックスへしまい込むと、彼女は緊張したような面持ちで話し掛けてきた。

 

「あの、ご主人様。先ほどお尋ねになった、皮の鎧と皮のジャケットを製造するための素材と、それらを作る順番についてなのですが……」

 

 ああ、そうだそうだ。このあと試すんだもんな。ちゃんと聞いておかなければ。

 

「セリーはそれを知っている?」

 

 装備品の手入れを行いながら問いかけたところ、彼女は頷いて続きを口にする。

 

「はい。まず素材ですが、皮の鎧の製造には皮が四枚必要です。そして、皮のジャケットでは五枚となります」

「なるほど。ジャケットの方が高いのは、そういう理由だったのですね」

 

 セリーの話を聞いて、ロクサーヌは納得したように頷いていた。

 確かに彼女の言う通りだ。価格を考えると必要な素材の数に差があることも納得がいく。

 

「では、製造難易度についてはどうかな?」

「どちらも棍棒の次に製造できるようになるといわれています。ちなみに、その次が木の盾で、さらに次がウッドステッキですね」

 

 ふむ。どれも低レベル帯で作るものって感じだな。

 

「その後は?」

「板や革、それから銅を使った装備品が続くはずですが、申し訳ありません。それしか分かりません」

 

 まあ、知らなかったところで特に問題はない。

 現在はそれらの素材を自力調達することすらままならないんだ。素材を購入してまで試すことではないだろう。

 仮にそれで成功したとしても、利幅が小さくなるため製造するメリットも薄い。

 

 レベルはともかく、俺たちはまだまだ迷宮探索を始めたばかり。

 低階層をうろちょろしている、よちよち歩きの初心者みたいなものだ。

 まあ、焦らずいくさ。

 

 

 

 しかし、今後のことを考え準備だけはしておこう。

 

「それじゃあ、図書館でスキル結晶について調べるときに、装備品の製造についても確認してもらえる?」

「はい! もちろんです!」

 

 おお。やる気満々だ。

 

「よろしく、セリー」

「おまかせください」

 

 輝くような笑みがめちゃくちゃかわいいわぁ。

 

 

 

「ご主人様。それでは、皮製の胴装備に挑んでみようと思います」

 

 一頻り話が終わると、セリーが宣言した。

 その顔にはまるで鍛冶師としての決意と誇りが表れているかのようだ。

 ロクサーヌもその様子を微笑みながら見守っている。

 

 よし。それじゃあ頑張ってもらうとしよう。

 

 アイテムボックスから先ほど迷宮で手に入れたばかりの皮をすべて取り出し、ローテーブルの上へ載せていく。

 そして、キャラクター再設定を開き、MP回復速度二十倍と腕装備六を入れ替え、出現したヤールングレイプルをセリーへ差し出した。

 

 彼女は受け取ったそれを装備すると、確認の言葉を口にする。

 

「皮の鎧と皮のジャケット、どちらを作った方がいいでしょうか?」

 

 うーん……。とりあえず、売却額が高い皮のジャケットの方にしとくか。

 そして、成功した場合はそれが鍛冶師のレベルによるものなのか、それとも増加したパラメーターのおかげなのかを確認するため、ヤールングレイプルを毘盧帽に替え、もう一度防具製造を試しておいた方がいいだろう。

 

 

 

「それじゃあ、皮のジャケットでお願い」

「……かしこまりました」

 

 返事をする前に、セリーの唾を飲む音がはっきり耳に響いた。

 可哀そうなほど緊張しているなぁ。

 

「大丈夫、大丈夫。失敗したからといってセリーに辛く当たるつもりはないし、ましてや君を手放すなんて思うはずがない。本当に軽い気持ちで試してみて」

 

 努めて明るい口調を心掛けながら声を掛けると、ロクサーヌも続けて話しかける。

 

「ご主人様のおっしゃる通りです。セリーはまだ鍛冶師になったばかりではありませんか。それに、私たちのご主人様はその程度のことで怒るほど器は小さくありません。安心して挑んでください」

 

 セリーは俺たちの顔を確認し、本心からの言葉だと納得したのだろう。強張っていた表情を緩めほっとしたように口を開いた。

 

「ありがとうございます。では、失敗を恐れずに試すことにします」

 

 そうそう。俺たちは成り上がるために、命を懸けて迷宮攻略に挑むような悲壮感漂うパーティーではない。

 安全マージンを確保しつつ、迷宮攻略を趣味として楽しむエンジョイ勢なのだ。

 セリーも気楽にいこうじゃないのさ。

 

 

 

 ロクサーヌと共に装備品の手入れを止めてその様子を見守っていると、セリーが告げる。

 

「始めます」

 

 そして、ローテーブルに置いてある皮を五枚取り、それを持ったまま詠唱を開始した。

 

「今ぞ来ませる御心の、言祝ぐ蔭の天地の、防具製造」

 

 詠唱が終わり、彼女の手から今日何度も目にした光が放たれる。

 程なくしてそれが止むと、まるで手品でも行われたかのように、その手にはジャケットが乗っていた。

 

皮のジャケット 胴装備

スキル 空き

 

 よっしゃ! 成功だ!

 やはり、装備品の製造は順番に行う必要があるのではなく、飛ばすことも可能だったんだな。

 

「さすがセリー。全然問題なかったね。しかも、これにはスロットが付いているし、本当にすごいよ」

「セリー、やりましたね。やはり、ご主人様のおっしゃった通りでした」

 

 俺たちの言葉にはにかんだような笑みを浮かべると、感謝の言葉を口にする。

 

「ご主人様、ロクサーヌさん。ありがとうございます。これもすべてお二人のおかげです」

「そんなことはありません。今日一日あなたがずっと頑張ってきた努力の賜物です。胸を張ってこの成果を誇ってください」

「そうだよ。ロクサーヌの言う通り、これはセリーが頑張ってくれたからこその成果だ。セリー、本当にありがとう」

「はい! こちらこそ、ありがとうございます!」

 

 それを聞いた彼女は弾むような声でもう一度感謝を述べた。

 

 

 

 一頻り三人で喜びを分かち合ったところで、次の実験に移ろう。

 

「じゃあ、次はヤールングレイプルがない状態で試してみよう」

「ヤールングレイプルがない状態で、皮のジャケットを製造してみるのですか……」

 

 それを聞くとセリーは少し考える。そして、意図を理解したのか納得したような表情を浮かべ口を開く。

 

「なるほど。製造可能な装備品がレベルによって決まっているのか、パラメーターによって決定されているのかを確認するのですね」

 

 今日与えられただけの情報で、よくそこまでたどり着くなぁ……。さすがセリーだわ。

 

「ヤールングレイプルなしで作れた場合、装備品の製造にはパラメーターではなく、鍛冶師のレベルが関わっている可能性が高いということになる」

「そうですね。確認のため試しておいた方がいいでしょう」

 

 推測を述べると彼女は頷きながら返事をした。

 

 

 

 俺たちの様子を見守っていたロクサーヌが、少しだけ落ち込んだ口調で喋り出す。

 

「ご主人様もそうですが、セリーも色々なことを考えていてすごいです。これからたくさんの相談に乗ることができますね」

「いやいや、ロクサーヌも今までたくさん相談に乗ってくれたでしょ。とても頼りになったし、今後も頼りにするつもりだから」

 

 彼女を暗い気持ちにするわけにはいかないため、即座に声を上げる。

 

「はい! ありがとうございます!」

 

 うおっ! 圧つよ!

 

 その言葉が嬉しかったのか、ロクサーヌの顔には輝くような笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 ……それにしても、改めてミチオのすごさに気付かされる。

 

 彼はパーティーメンバーのことを大切にしていたものの、自分の事情を話すことはなく、彼女たちへの想いを口にすることもなかった。

 そのため、ロクサーヌの嫉妬や他メンバーの感情に対して、どこかドライな印象を覚えたものだ。

 しかし、それこそがハーレムパーティーを成り立たせていた秘訣なのかもしれない。

 

 一方俺は、事情をすべて打ち明けているし、事あるごとに好意を口に出している。

 そのため、お互いにガッチリと束縛し合っており、かなりウェットというか、共依存に近い関係だ。

 まだ、ロクサーヌとセリー二人だけなので何とかなっているが、今後ミリア、ベスタ、ルティナとメンバーが増えていけばどうなるのだろう?

 

 脳裏にときメモでキャラを全員出したときの、爆弾処理に明け暮れる日々が思い浮かぶ。

 そうならないよう、対策を考えておかなければ……。

 

 

 

 恐ろしい想像を振り払い、再びセリーへ顔を向けて話し掛ける。

 

「まあ、現時点でパラメーターの条件を満たしているという可能性もあるけどね。特にセリーは英雄の持つ圧倒的なパーティーこ――。あっ!」

 

 そうだ! 条件を絞るためにも英雄は外しておいたほうがいい。そうすれば、より推論が補強されるだろう。

 

 不思議そうにこちらを見ているセリーにヤールングレイプルを返してもらい、ポイントに戻す。さらに、サードジョブ、セカンドジョブと解除していった。

 そのポイントで頭装備六にチェックを入れ、出現した毘盧帽を彼女へ手渡す。

 

「それじゃあ、お願い」

「セリー、頑張ってください」

 

 俺たちの言葉に笑顔で頷いて、詠唱を開始する。

 

 

 

 光が収まると、まるで焼き増しをしたかのように、先ほどと同じ光景が目に映っていた。

 

皮のジャケット 胴装備

 

 成功だ! 製造可能な装備品は鍛冶師のレベルで決まると考えてよさそうだな。

 仮にパラメーター依存だったとしても、レベルアップで上昇する分で十分なのだろう。

 

 

 

 ボーナスポイントの振り分けを戻し、恥ずかしそうにしているセリーをロクサーヌと共に褒めちぎっていると、彼女は笑顔を浮かべながら口を開く。

 

「こんなに早く皮のジャケットを作れるようになるなんて思ってもいませんでした。ですが、そのおかげでもっともっとご主人様のお役に立てそうです」

 

 本当にいじらしくてかわいい娘だなぁ。

 

「それじゃあ、MPに余裕があるときは装備品の製造をお願いね」

「かしこまりました。それでは、何を作ればいいでしょうか?」

 

 製造を頼むと彼女は問いかけてくる。

 

 うーん……。

 ミサンガとダガー、それから革装備一式のうちどれか……。

 

 とりあえず、先にミサンガをある程度確保しておき、その後はひたすら売却用の装備品を作ってもらう方がいいか?

 十個も作っておけば、しばらく持つだろう。

 

 それをセリーに告げようとしたところで、ふと気づく。

 

 スロットの発生率は器用のパラメーターに依存する。

 それなら、ミサンガはもっとレベルが上がってから作った方がいいかもしれない。

 なにせ、ヤールングレイプルに付いているのは器用五倍。

 素のパラメーターが高ければ高いほど効果を増していくはずだ。

 

 よし。しばらくは売却用の装備品を作ってもらおう。その場合、どれを作る方がいいんだ?

 

「金策として装備品の製造を行うなら、何を作るのがいいと思う?」

 

 彼女は少し考えてから口を開く。

 

「お店の在庫状況などにもよるでしょうが、通常の相場では皮のジャケットが二百五十ナールほどで一番高く売れます。ですが皮の鎧も二百ナールほどなので、素材あたりの売却額はほとんど変わりません。また、ダガーも二百ナールほどで売却できるはずです」

 

 なるほど。皮を五枚用いる皮のジャケットが二百五十ナール。そして、四枚使う皮の鎧が二百ナールで、どちらも一枚あたりの売却額は五十ナールなのか。

 それに、ダガーについても素材の種類は複数あるが、コボルトナイフが二個に皮が一個、そしてブランチが一個で、一つあたりの価格は五十ナール。

 ギルドへの売却額から考えても、そこまで変わらない感じだな。

 

 それなら、皮の帽子、皮のミトン、皮の靴についてはどうだ?

 

「皮を一枚しか使わない方の三つについてはどうかな?」

 

 新たに湧いた疑問を尋ねてみると、セリーはスパッと答える。

 

「やはり売却する防具屋の在庫次第となるでしょうが、その三つはどれも二十ナールほどで、売却額にほとんど差はありません」

「そうなの?」

「はい。どれも素材と必要数が同じため、高い物があれば皆それを作るようになるでしょう。そうなれば、過剰に供給されてしまい、結局は価格が落ちてしまいます」

 

 あー。まあ、そりゃそうだ。

 

 しかし皮の鎧やジャケットと比べ、皮一枚当たりの売却額に、二・五倍もの開きが出るのか……。

 もしかしたら、製造時に消費するMPやレベルが高い鍛冶師の技術料といったものが、売却額にのせられているのかもしれない。

 

 いずれにせよ、たとえ消費MPが大きかったとしても、俺たちはその問題を無視できる。この三つはなしだな。

 

「それじゃあ、セリーの判断でダガー、皮の鎧、皮のジャケットの製造をお願い。その時はボーナス装備を渡すから声を掛けてね」

「はい! おまかせください!」

 

 今後は五日ごとに装備品の売却を行うことになる。三割アップがあるため、結構な利益を得られることだろう。

 それに、ルークから安いスキル結晶を入手できれば、スキルを付けた装備品の売却もできる。

 もちろん融合の成功率を疑われないよう、売却する数を調整する必要はあるだろうが、荒稼ぎをすることも可能だ。

 日本では絶対に無理だった、富豪になることも夢ではない。

 

 いやー、未来は希望に満ちているなぁ。

 

 

 

 将来のことを妄想していると、好奇心がうずいているのか瞳を輝かせながらセリーが尋ねてきた。

 

「ところで、ボーナス装備は何を使うのですか?」

 

 うん? ヤールングレイプルと毘盧帽。どっちを使うべきか……。

 

 ミサンガはスロットを付けなければならないため、ヤールングレイプルを用いる必要がある。

 しかし、ダガーや皮装備を俺たちが使うことはないので、スロットの有無は問題にならない。

 なら、売却数を増やすためにも、毘盧帽を装備して製造した方が良いか。

 

「ミサンガを作るときにはヤールングレイプルを使うけど、しばらくはダガーや皮装備の製造になるから毘盧帽かな」

「なるほど。私たちに必要なものはミサンガだけですからね。そのほうが良いでしょう」

 

 もしかしたら、スロットが発生したときには、製造で取得する経験値が増加するという可能性もあるが、魔物を倒して得る経験値が圧倒的なため、誤差にしかならない。気にすることはないだろう。

 

 

 

「あの、まだ、製造を行えそうなので、靴をしまいながら他の素材を取ってきていいでしょうか?」

「大丈夫だよ。それじゃあ、お願い」

「はい! ありがとうございます!」

 

 セリーは大きな声で返事をすると、足取り軽く部屋を出て行った。

 それを見送り、ロクサーヌと顔を合わせて笑い合う。

 

「嬉しそうだったね」

「そうですね。セリーは鍛冶師に憧れを持っていたようなので、あきらめていた夢が叶い、心が躍っているのでしょう」

 

 そんな感じだったな。

 今後とも鍛冶師として頼りにさせてもらおう。

 

 

 

 ロクサーヌと話をしながら装備品の手入れを行っていると、素材をどっさり抱えたセリーが戻ってくる。

 

「……随分たくさん持ってきたんだね」

「……すごい量です」

 

 彼女は俺たちの言葉を聞くと、好きな物を買ってあげると言われ、両手いっぱいにおもちゃを抱えた子供のような表情で答えた。

 

「はい! どのくらい作れるかわからないので、多めに持ってきました!」

 

 いや、毘盧帽を使ってもその量は無理じゃね?

 

「そうなんだ……。それじゃあ、よろしく」

「ありがとうございます」

 

 彼女は返事をすると、そのまま素材を手に取って詠唱を開始する。

 

 あ、ソファーに座らないのね。

 

 

 

 セリーの手に乗っているダガーを確認してみるが、やはりスロットが付いていなかった。

 

 でもまあ、これは売却用なのでまったく問題ない。

 

 彼女はまだ続けるつもりなのだろう。さらに素材へ手を伸ばしているので、念のため声を掛ける。

 

「セリー、MPは大丈夫? 気分が悪くなったりしてない?」

「そうですね……。なんとなくですが、あと一回いけそうな気がします」

 

 毘盧帽なしで一回。毘盧帽を使って三回ってことは、通常なら二・五回分か。

 鍛冶師のレベルが10のときは、三回連続の製造は無理ということだ。

 

 あ、違うわ。

 彼女には俺の持つ英雄のMP中上昇と、僧侶のMP微上昇のパーティー効果が乗っている。普通の鍛冶師とは比べられないだろう。

 いやでも、途中で英雄を外したり、つけなおしたりしてるしなぁ。この辺はどう影響したのかわからないか。

 

 まあ、それはともかく、他の鍛冶師に比べ大きなアドバンテージがあるのだ。セリーにはガンガン装備品を作ってもらい、金策に励むとしよう。

 それが彼女の自信にもつながるはず。

 

 

 

 考え事をしている間に、完成していた皮の鎧を確認してみるも、やはりスロットはついていなかった。

 

 ヤールングレイプルを使わないと全滅か……。

 こんなに変わるものなんだな。そりゃ、スキル結晶の融合に失敗が多いわけだ。

 

 そうなると、ますますヤールングレイプルの重要性が高まるぞ。

 さすがボーナスポイントを63も要求するだけのことはある。ガチで神装備だわ。

 

 

 

 セリーの様子を確認してみると、MP減少による気分の落ち込みは感じられない。

 うん。問題なさそうだ。

 

「それじゃあ、今日はここまでかな。お疲れ様。セリーがパーティーに加入してくれて本当に良かった」

「今日一日で、こんなにたくさんの装備品を作ってしまうなんて、セリーはとてもすごいです」

 

 俺たちの言葉に感極まったのか、彼女は瞳を潤ませながら口を開く。

 

「はい……。ありがとうございます……」

 

 その震えた言葉が耳に入りロクサーヌを見遣ると、彼女も同じようにこちらを見つめていた。

 頷き合ってセリーに近づき、俺は正面から、そしてロクサーヌは背後から、その小さな体を抱きしめる。

 

「今日は驚きの連続で大変だったはずなのに、一生懸命頑張ってくれてありがとう」

「何事にも真剣に取り組み、ご主人様のお役に立とうとするあなたとなら、きっと上手くやって行けるでしょう。これからもよろしくお願いしますね」

 

 セリーは俺の体に手を回して抱き着き、そのまま胸に顔を埋めた。

 

 

 

 抱きしめていた腕を解き、彼女の頭を撫でる。

 しばらくそうしていると、くぐもった声が聞こえてきた。

 

「ありがとうございます……。これから、ご主人様とロクサーヌさんと共に暮らせることが、本当に嬉しいです……」

 

 この娘たちのことが愛おしくてたまらない。

 ロクサーヌだけではなくセリーも……。いや二人だけじゃないな。ミリアもベスタもルティナも絶対に幸せにしよう。

 誠実とは言い難い男だが、この誓いだけは違えるわけにはいかない。

 

 彼女の気持ちが落ち着くまで、三人で寄り添い続けた。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

 

探索者Lv37 英雄Lv32 僧侶Lv15

装備 サンダル 身代わりのミサンガ

 

BP振分 残BP:0

キャラクター再設定:1

サードジョブ:3

必要経験値二十分の一:63

詠唱省略:3

鑑定:1

ワープ:1

頭装備六:63

 

所持金:1,211,116ナール

 

春の32日目

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