異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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109 ボーナス呪文

 

 

 

 

 

ベイルの迷宮

九階層

 

 

 

 

 

 食休みを終え、再び迷宮へ舞い戻る。

 さて、午後もレベル上げの続きといこう。

 

 ロクサーヌの案内で魔物のいる場所へ移動して、片っ端から焼き払う。

 そして、MPが尽きればデュランダルを使って回復だ。

 それを何度も繰り返し行った。

 

 

 

 狩りというより流れ作業のような探索を続けているうちに、思考があてどもなくさまよい、取り留めのない考えが浮かんでくる。

 

 等量交換に最大MP二倍の効果は乗るんだろうか?

 いや、それだけじゃない。消費MP半減はどうなんだ?

 もし両方乗るようなら、複数のジョブで盛りまくっているため、二連発とかできそうだよな。

 それなら、相手が身代わりのミサンガを装備していたとしても確殺できる。一対一の対人戦ではほぼ無敵だろう。

 いざというときの切り札になりえるぞ。機会を見つけて試さなければ。

 

 ……人体爆破を積極的に試そうとする自分にドン引きだ。

 

 

 

 ……ん? あっ。等量交換だけじゃない!

 毘盧帽を装備すれば、メテオクラッシュとガンマ線バーストも発動するんじゃないのか!?

 

 人相手じゃないと試せない等量交換とは違い、こちらはすぐにでも実行できる!

 今すぐに試してみよう!

 

 さて、となるとMPを回復しておかなくてはな。

 

「二人とも。ちょっと待ってくれ。MPの回復を図りたい」

「えっ? もうですか?」

「先ほど回復したばかりですよ?」

 

 訝しげな表情で尋ねる二人に説明を行う。

 

「これから実験をしてみようと思う。強力だが消費MPが大きく、おいそれと発動できないボーナス呪文をいざというときのために試しておきたい」

 

 すると、みるみるうちに彼女たちの瞳が好奇心で輝いた。

 

「ご主人様しか使用することができない強力なボーナス呪文ですか。それは絶対に試しておくべきでしょう」

 

 ロクサーヌの言葉に、セリーも続く。

 

「はい。いざというときのため、なるべく早く試しておくべきです」

 

 君たち……。さては、ただ単に珍しいものを見たいだけだな?

 

 

 

 MP回復を終えたところでキャラクター再設定を開き、フォースジョブをサードジョブに落として、メテオクラッシュとガンマ線バースト、それから詠唱短縮にポイントを振っておく。

 そして、獲得経験値二十倍と頭装備六を入れ替え、出現した毘盧帽を装備した。

 

 おっしゃ。準備オッケー。

 

「ロクサーヌ。魔物のところへ頼む。それと、絶対人に見られるわけにはいかないから気を付けてくれ」

「はい。おまかせください」

 

 楽しそうな顔を隠そうともせず、彼女は弾むような足取りで歩き出す。

 ……いや、いいけどね。

 

 

 

 程なくして、通路の向こうからこちらに向かってくるスローラビット四匹の群れを発見し、すぐさま念じる。

 

メテオクラッシュ

 

 その途端、頭の上に熱と光を帯びた巨大な隕石が出現し、辺りを赤く照らし出す。

 そして、火の粉を纏った四つの隕石が唸りを上げ、魔物目掛けて落下する。

 ロクサーヌはかわしたものの、隕石は俺とセリーの体をすり抜け、迷宮内にとんでもない音を響かせて奴らに着弾した。

 

 えっぐ! 実物の迫力はヤバすぎるって!

 フレンドリーファイアがない仕様で本当によかったー。

 

 

 

 隕石と魔物達が姿を消し迷宮内に静けさが戻ると、歓声が響き渡る。

 

「すごいです! とんでもない迫力でした! さすがご主人様!」

「こんなすごいものを見たのは初めてです! あんなに巨大な隕石が落ちるところを間近で見られるなんて!」

 

 すごいすごいとはしゃいでいる二人をなだめながらも、思考を巡らせた。

 

 残りMPは三分の二ってところか。ということは満タン状態からでも三発しか撃てないということだ。毘盧帽がなければ一発が限界だろう。

 そして、威力については、通常の魔法でワンパンできる魔物に使用したためよくわからなかった。

 これについてはもっと上の階層で試すしかない。

 いずれにせよ、使いどころは限られそうだな。

 

 それにしても、メテオクラッシュでこれだけMPを消費しているって事は、ガンマ線バーストはもっとヤバいはず。

 試す前にMPの回復をしておかなければ。

 

 

 

 再びMP回復を行い、ボーナスポイントを振り分けてからロクサーヌに告げる。

 

「では、先ほどと同じく魔物のところへ頼む」

「かしこまりました」

 

 

 

 彼女の後について歩いていると、程なくして魔物とのエンカウントを果たす。

 スローラビットが三匹にコラーゲンコーラルが一匹か。

 まあ、どうせ威力の確認はできないんだ。問題ないだろう。

 

ガンマ線バースト

 

 念じた途端にごっそりMPが削られる。

 そして、次の瞬間、魔物が同時に倒れ込み煙のように消えていった。

 

 ……やはり原作と同じく、派手なエフェクトは発生しなかったな。

 ガンマ線バーストとは、宇宙で引き起こされる中で最もエネルギーの大きな爆発現象のはずだが、その名を冠する割には随分しょぼく感じてしまう。

 

「一瞬、ご主人様が光りましたね」

「先ほどに比べてあまり威力は高くないのでしょうか?」

 

 自分では気が付かなかったが、ミチオと同じで俺の体も光っていたようだ。

 

「見た感じ強くなさそうに思うかもしれないが、MPをほとんど持っていかれてしまった。先ほどのメテオクラッシュより数段威力が高いはずだ」

 

 毘盧帽を装備していたのに、残りMPは回復を行わなければならないほどの危険水域だ。装備していなければ発動しなかったと断言できる。

 こいつも使いどころに困りそうだなぁ……。

 

 

 

「とりあえず、実験はここまでだな。この後は先ほどの続きを行う」

「ご主人様、素晴らしいものを見せていただきありがとうございます」

「本当に感動しました。普通なら絶対に見ることができないものを見せていただき、ありがとうございます」

 

 実験の終了を告げると、彼女たちは興奮した様子で声を上げた。

 

 ただ試してみたかっただけだけど、君たちが喜んでくれたんならやった甲斐はあったわ。

 

 

 

 ボーナスポイントの振り分けを終え、ロクサーヌに告げる。

 

「では、魔物のところへ頼む」

「かしこまりました」

 

 

 

 

 

 その後もひたすら狩りを続け、魔法戦闘とMP回復を繰り返す。

 ひたすらそれをこなしていると、ロクサーヌがいつもの言葉を口にした。

 

「ご主人様、そろそろ夕方になります」

 

 よし。じゃあ、今日はここまでだな。

 

「では、俺とセリーのMPを回復したらクーラタルに戻ろう」

「はい」

「よろしくお願いします」

 

 返事をした二人に頷き返し、キャラクター再設定を行う。

 とりあえず、獲得経験値二十倍を外して詠唱省略、鑑定、ワープを付け、自分たちのレベルを確認したところ、俺の商人が26に、セリーの鍛冶師が11になっていた。

 

 おっしゃ! あと4上がれば遊び人が獲得できるし、セリーのレベルも順調に上がっている。

 遊び人をゲットしたら、予定通り十階層以降に進んでみよう。

 

 

 

「鍛冶師のレベルが11になっているのですか!? 何年もかけて上げた探索者のレベルを、たった二日で超えてしまうなんて!」

 

 それを告げると、セリーが興奮して声を上げる。

 

 お前がどんだけ良いジョブに就いて、どんだけ良いパーティーに入っても、お前が、一生かかって稼ぐ経験値は田川の二秒。

 

 馬鹿な妄想をしていると、今度はロクサーヌが勢い込んで話しかけてくる。

 

「ご主人様! ということは、あと数日で十階層へ挑むのですね!?」

「うむ。遊び人を取得次第、階層を上げることにしよう」

「はい! 楽しみです!」

 

 元々進むつもりだったけど、彼女のテンションにちょっと引いてしまうのはなぜだろう?

 無理、無茶、無謀は厳禁だからね?

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 ドロップアイテムの売却と買い物を終え、買ってきたものをキッチンへしまい、修行のために庭へ出た。

 

 

 

 少し時間をもらい、ロクサーヌから離れて小声で打ち合わせを行う。

 

「俺たちがそれぞれ別に攻撃をしたのでは、彼女は絶対に躱してしまう。なるべく挟み撃ちにして、どちらかが彼女の死角に回り込んだ上で同時に攻撃を繰り出し、当たる可能性を少しでも上げよう」

 

 とはいっても、後ろに目がついてんのかってくらい不意打ちが効かないし、盾での防御や武器での打ち払いもクッソ上手い。

 これをしたところで普通に捌くんだろうなぁ……。

 

「基本的にはそれが良いと思うのですが、ロクサーヌさんの体勢を崩すことを狙うのはいかがでしょう?」

 

 ロクサーヌの体勢を崩す……。どうやって? そんなこと可能なのか?

 それに、彼女はオーバーホエルミングを使った修行で、虚を突かれて体勢を崩したときでも、アクロバティックな動きで攻撃を回避してしまう。オーバーホエルミングを使った高速での攻撃をだぞ?

 

 なんか絶望的な戦力差だなぁ。

 ナッパに挑むZ戦士の気持ちになるわ。

 

 ……いや、後ろ向きなことを考えていても始まらない。

 

「わかった。何とか彼女の体勢が崩れるように動いてみよう」

「はい。頑張りましょう」

 

 セリーと頷き合い、ロクサーヌの方へ歩き出す。

 

 

 

「準備はよろしいのですか?」

「うん。待たせたね」

「よろしくお願いします」

 

 問いかけてきた彼女に返事をすると、木剣を構えこちらに告げた。

 

「では、始めましょう」

 

 いっちょやってみっか。

 

「セリー、行くぞ!」

「はい!」

 

 ロクサーヌを挟み撃ちにするべく、それぞれ左右に分かれて走り出す。

 彼女はいつものように初手を譲るつもりなのだろう。足を止めてこちらの様子をうかがっている。

 

 左右両方から迫り同時に攻撃を繰り出すも、それをあっさりかわされてしまった。

 

 くっ。だがこのまま攻撃を続けるぞ!

 

 そのまま、お互いにタイミングを計り同時攻撃を繰り返す。

 すると、彼女は体の正面を俺に向け、攻撃を捌きだした。

 

 よし! このまま正面を取り続けよう!

 きっと、攻撃のタイミングを合わせて、セリーが死角から攻撃をしてくれるはず!

 

 

 

 だが、様子見が終わったのか、ロクサーヌはカウンターを入れ始めた。しかも、背後から攻撃しているセリーにもだ。

 レベル補正と物理ダメージ削減の効果。それに使っているのが木剣のため、何とか攻撃に耐えて隙をうかがう。

 

 

 

 そして、耐え続けていたところ千載一遇のチャンスが巡ってきた。

 俺の攻撃に合わせて、背後からセリーが木槍で思いっきり薙ぎ払うと、普段最小の動きで躱している彼女が、大きく体を反らす。

 

 ここっ!

 

 乾坤一擲。ロクサーヌに向けて木剣を突き込んだ。

 

 しかし、その瞬間彼女の体が跳ね上がる。

 何故か一瞬だけ目の前に彼女の姿が映し出され、突きを放ったままの木剣にものすごい負荷が掛かった。

 そして、後頭部に衝撃を受け、自分の意志とは無関係に体が地面に倒れ込む。

 

 あまりの痛みに手当てを使いながら顔を上げると、俺が離脱してしまったため打つ手がなくなったのだろう。セリーもあっさり沈められているのが見えた。

 

 

 

 倒れ込んでいる彼女に駆け寄り、手当てを使いながら考える。

 

 今のはなんだ?

 オーバーホエルミングも歩雲履もないのに俺の武器を足場にジャンプを行い、そのまま後頭部を蹴った?

 馬鹿な。そんなことが可能なのか?

 

「ご主人様、ありがとうございます。もう大丈夫です」

 

 考え込んでいると、セリーから感謝の言葉が聞こえてきたため、まだ痛みが残っている自分自身に再び手当てを掛けていく。

 

 

 

 体力回復を終え、ロクサーヌに尋ねることにした。

 

「最後の攻撃のときに、一瞬ロクサーヌが目の前に現れて木剣に重さがかかったんだけど、もしかして武器を足場にした?」

 

 すると、彼女は新しい芸を覚え、褒めてもらおうとしている大型犬のような雰囲気を出しながら答える。

 

「はい。昨日ご主人様がセリーにしていたのを思い出して試してみたら、ことのほか上手くいきました。刃のある武器以外なら、なかなか使えそうです」

 

 また一つ、進化しちゃったよ……。

 まったく。このバグキャラめー。

 

 めちゃくちゃかわいい笑顔だけど、こっちはドン引きですわ……。

 

「そ、そうなんだ。さすがロクサーヌ。それじゃあ、続きを頼める?」

「はい。おまかせください。すぐに修行に戻ろうとするなんて、さすがご主人様です。今でもお強いのに、その調子ならさらに上の強さを得られるでしょう」

 

 いや、それはない。

 俺は一般人なんだ。君のようなスペシャルな人と一緒にせんとって。

 

 

 

 

 

 修行を終え、リビングで装備品の手入れをしながら思索に耽る。

 

 通常の修行ではセリーと共に、何とか突破口を開こうともがき続けたが、一段強さの増したロクサーヌには通用せず、いつものように地面に転がりまくってしまった。

 そして、オーバーホエルミングを用いた修行でも、ロクサーヌは的確にフォローに入るようになり、セリーからダウンを奪うことさえできなくなっている。

 

 ……たった一日で対応されてしまった。

 成長速度が違い過ぎて、あまりにも理不尽だわ。

 

 でもまあ、そのとんでもないお嬢さんが仲間だというのは本当に頼もしい。

 これからも、ロクサーヌにおんぶに抱っこで迷宮探索に挑んでいくぞ!

 

 ……我ながらめちゃくちゃ情けないなぁ。

 

 

 

 セリーが製造を行っている間に装備品の手入れを済ませ、バスルームで風呂を沸かす。

 そして、それが終わるとキッチンへ移動して夕食の支度だ。

 ハンバーグカレーのために肉を挽いてもセリーが戸惑う様子はない。

 昨日の夕食で完全に慣れたみたいだな。

 よしよし。このまま我が家の流儀に染まってくれたまえ。

 

 

 

 完成した料理をダイニングに運び、早速ハンバーグカレーを口へ運ぶと、めちゃくちゃ美味い。

 相変わらずこの世界の食材はすごいし、ハンバーグとカレーの組み合わせは最強だ。

 

 咀嚼をしながら考えていると、ロクサーヌの声が響いた。

 

「ご主人様! とてもおいしいです! ハンバーグとカレーを合わせてしまうなんて、本当にとんでもないことです!」

 

 おー。幸せそうな顔をしてるなぁ。

 

「なんですかこれは! 複数のスパイスが混じり合った複雑な味わい。それに野菜や肉の旨味が溶け込んで信じらないような美味しさになっています!」

 

 良かった。カレーはセリーにも受け入れられたようだ。

 

「気に入ってもらえたようで安心したよ。そのうちまた作るからね」

「はい! よろしくお願いします!」

「ありがとうございます! 期待しています!」

 

 二人とも笑顔で嬉しそうにしているのが、本当にかわいいなぁ。

 次にカレーを作るときには、カツカレーにでもしようかね。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv37 英雄Lv33 僧侶Lv15

装備 サンダル 身代わりのミサンガ

 

BP振分 残BP:0

キャラクター再設定:1

サードジョブ:3

必要経験値二十分の一:63

詠唱省略:3

鑑定:1

ワープ:1

MP回復速度二十倍:63

 

所持金:1,212,597ナール

 

春の33日目




いつも拙作をお読みいただき本当にありがとうございます。

去年の十月十七日に投稿を始めて、もうすぐ一年。
UA、お気に入り、感想、評価、ここすきが本当に励みになっています。
また、本日初めて挿絵をいただきました。
予想外の出来事に舞い上がっています。

実は次回更新予定だった八日から、十七日まで連続で投稿しようと思い準備をしていたのですが、もう今日から始めてしまいます。

ここまで更新を続けられたのはひとえにお読みいただいている皆様と、素晴らしい世界を生み出した原作者様のおかげです。

当初のプロットを全然消化できていませんが、これからもマイペースに更新していきますので、お付き合いいただければ幸いです。
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