異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

111 / 300
110 ハンバーガー

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 朝、目が覚めると、昨夜の出来事が思い浮かぶ。

 黒のキャミソールに黒いランジェリーを纏ったロクサーヌと、ピンクのキャミソールに下着を身に着けていなかったセリー。

 あまりの妖艶さに自分を抑えることができず、何度も彼女たちを求めてしまった。

 ロクサーヌは喜んでくれていたが、セリーには負担をかけてしまったかもしれない。

 無理をさせないよう、気を付けなければ。

 

「おはようございます。ご主人様」

 

 考え事をしていると、かわいくて艶のある朝の挨拶が耳に届いた。

 

「おはよう、ロクサーヌ。今日も一日よろしく」

「はい。こちらこそよろしくお願いします」

 

 俺達の会話を聞いていたセリーも口を開く。

 

「ご主人様、おはようございます。昨晩はたくさんかわいがっていただき、ありがとうございました」

「おはよう、セリー。何度も求めてしまったけど体は大丈夫?」

「とても優しくしてくださいましたし、手当ても使っていただきました。まったく問題ありません」

 

 口調からは本当に無理をしている様子は感じられない。

 良かった。それじゃあ、朝の準備を整えよう。

 

「よし。それじゃあ、今日も一日頑張ろう」

 

 二人の返事を聞き、ベッドから起き上がる。

 

 

 

 身だしなみを整え、大切なルーティーンを行ったところで、リビングへ移動し今日の予定を確認だ。

 

「今日は予定があるけど、早朝の探索と朝食は普段と同じように行おう」

 

 そう言って正面に座っている彼女たちの顔を確認すると、二人は真剣な表情で頷く。

 俺も頷き返し、話を進めようとしたところで、機先を制してロクサーヌが口を開いた。

 

「あの、ご主人様。その後の予定について提案があるのですが、よろしいでしょうか?」

 

 提案? その後というと妨害の銅剣を残して全滅するパーティーについてか? 一体なんだ?

 

「大丈夫だよ。どんな提案?」

 

 問いかけると、彼女は続きを話し出す。

 

「ご主人様は以前、妨害の銅剣を持ったパーティーは午後に全滅するので、早めにお昼を取って備えるとおっしゃっていました」

「そうだね。確かにそう言った」

 

 というかこの後も同じことを言うつもりだったし。

 

「セリーとも話したのですが、何らかの理由によりその者たちが午前中や、私たちが迷宮を離れている間にボス部屋に入ってしまえば、装備品を回収することができなくなってしまいます」

 

 確かにその可能性も考えられるな……。

 

「なので、朝食後は七階層で狩りを行い、事が済んでから昼食にするのはいかがでしょうか?」

 

 うーん……。早い段階でそいつらが来た場合は問題ないが、遅くなったり、来なかったりした場合、すきっ腹を抱えて探索を行わなくてはならない。

 ぶっちゃけ、ボス部屋に来ない可能性や既に全滅していることだって考えられるんだよなぁ。その場合が問題だ。

 

 悩んでいると、セリーも口を開いた。

 

「あの、朝食を作る際に多く作っておいて、お昼になったらワープで取りに戻り、ボス部屋近くの小部屋で食事をとるのはいかがでしょうか? ロクサーヌさんの鼻なら見逃すことはないはずです。それなら問題ないと思うのですが」

 

 なるほど……。

 普段の探索でも用足しに自宅へ戻っているし、水分補給のために休憩も取っている。

 毎日これだと忙しなくて嫌になるだろうが、今日一日だけなら問題ないか。

 

「ロクサーヌ、セリー。提案してくれてありがとう。すごくいい考えだね。本当に二人は頼りになるよ」

 

 感謝の言葉を告げると、彼女たちははにかんだような表情を浮かべた。

 

「ふふ。どういたしまして。ご主人様のお役に立てて嬉しいです」

「こちらこそ意見を取り入れてくださり、ありがとうございます」

 

 なんってかわいい娘たちだろう。本当に俺は幸せ者だ。

 

 

 

 打ち合わせを終え、セリーによる製作が済むと、装備を整えて早朝の探索に出る。

 

 

 

 

 

ベイルの迷宮

九階層

 

 

 

 

 

 迷宮に移動し、まるでネトゲの狩りを行うかのように、日々のルーティーンを行う。

 だが、それとは違い体を動かしているため、充実感や達成感が桁違いだ。

 日本にいた頃のPCモニターの前からほとんど動かなかった生活に比べ、随分健康的な生活を送っているよなぁ。

 

 

 

 魔法を用いた戦闘とMP回復を繰り返していると、ロクサーヌからいつもの言葉が発せられた。

 

「ご主人様、そろそろパン屋の開く時間です」

「よし。それでは、早朝の探索はここまでにしよう。俺とセリーのMPを回復したらクーラタルへ戻る」

 

 そう伝え、キャラクター再設定を開いてボーナスポイントの振り分けを行う。

 設定した鑑定で自分たちを確認してみると、昨日に引き続き商人のレベルが上がっていた。

 さすが経験値効率四百倍。とんでもない成果を叩き出している。

 彼女たちと喜びを分かち合ったあとは、MP回復だ。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 今日は昼の分まで作らなくてはいけないため、パンと食材をいつもより多く買い込んで自宅に戻る。

 手軽に食べられるものということで、ハンバーガーを作ることにした。

 ファーストフードの王様だからな。きっと彼女たちも気に入ってくれるはず。

 

「三日連続ハンバーグで悪いんだけど、いいかな?」

「あんなに美味しいのです。毎日でも問題ありません。」

 

 いや、あるやろ。

 ロクサーヌさんは本当に無茶を言いなさる。

 

 昼食分も含めてハンバーグを焼いていく。

 それが終わるとバンズに焼き目を付け、チーズとケチャップ替わりのトマトソースにハンバーグ。そして、刻んだ玉ねぎとレタスの上にバンズを乗せたら完成っと。

 こいつと生野菜のサラダ、それから昨日の残りのカレー。うん。これは豪華な朝食だ。

 

 

 

「ご主人様! これはすごいです! ハンバーグとチーズと野菜の美味しさを一度に味わえるなんて!」

 

 笑顔でもしゃもしゃと食べながら、ロクサーヌが弾むような声を上げた。

 

「ハンバーグは本当に美味しいですね。食べもせずミンチを忌避している人たちは損をしています」

 

 セリーさんや、一昨日までの君もそうだったんですが……。

 

 

 

 食事を終え、歯磨きと装備品の製造を済ませて、リビングのソファーでセリーを抱きしめ、いつもより短い食休みをのんびり過ごした。

 

 

 

 

 

ベイルの迷宮

七階層

 

 

 

 

 

 ベイル七階層の待機部屋近くへ移動してボーナスポイントの振り分けだ。

 

 七階層のため、魔物から得られる経験値が少ない上に、最大三匹までしか出現しないため、レベル上げという点でも資金稼ぎという点でもまったく旨味がない。

 それに、この階層ではウサギの毛皮のように高額買取されるようなドロップアイテムはないし、装備品の素材を残す魔物も出現率の低いミノのみで激マズときた。

 もし、今日奴らに遭遇しなかった場合は潔くあきらめよう。こんなのは何日も続けることじゃない。

 

 振り分けを済ませたところでロクサーヌに声を掛ける。

 

「例の件が済むまでは待機部屋の近くにいる魔物へ案内してくれ。それから、待機部屋へ向かう男六人のパーティーがいたら教えてもらえるか」

「はい。おまかせください」

 

 よし。それじゃあ、いきますかね。

 

 

 

 

 

 待機部屋付近でひたすら狩りを行っていると、不意にロクサーヌが声を発する。

 

「ご主人様。男性六人組で待機部屋へ向かっている者がいます」

 

 マジで!? まだ午前中だってのにだいぶ早いな。

 

「分かった。俺たちもすぐに移動しよう」

 

 二人と頷き合い、待機部屋へ向かって歩き出す。

 

 

 

 

 

ベイルの迷宮七階層

ボス待機部屋

 

 

 

 

 

 待機部屋に入ると、ボス部屋へ続く扉の前に立っていた男たちが一斉に振り返る。

 そいつらを鑑定したところ、強権の鉄剣を持っている者はいたものの、妨害の銅剣を装備している者はいなかった。

 

 ハズレかぁ。

 

「ここは待機部屋のようだ。パーンに挑むのはまだ早い。通路に戻ろう」

 

 変な詮索をされないよう、適当なことを言って彼女たちを促し、そこを後にする。

 

 

 

 

 

ベイルの迷宮

七階層

 

 

 

 

 

 待機部屋へ続く小部屋から離れたところで、説明を行う。

 

「装備品が違った。奴らではなかったようだ」

「ご主人様、申し訳ありません……」

 

 それを聞いたロクサーヌは、しょんぼりとした様子で謝罪の言葉を口にする。

 いやいや。全然問題ないから。君のせいじゃないから。

 

「大丈夫。すぐに気が付いてくれて頼もしいくらいだ。この調子で確認を頼むな」

「はい! ありがとうございます、ご主人様!」

 

 良かった。やる気が戻ったようだ。

 俺は本当にロクサーヌに頼りっきりなのだから、落ち込まれると困るぞ。

 

 

 

 

 

 その後も狩りを続けていると、再びロクサーヌが口を開いた。

 

「ご主人様。まだお昼には早いですが、そろそろ昼食をとっておいた方がいいのではないでしょうか?」

 

 あっ、そっち?

 うーん……。そうだな。原作では午後一番で事が起こっている。

 早めに昼食を済ませておく方がいいか。

 

「では、ハンバーガーを取ってきて、近くの小部屋で休憩しよう」

「かしこまりました」

「はい」

 

 ワープを付けるためキャラクター再設定を開くと、ボーナスポイントが1余っている。

 

 探索者のレベルが上がったのか!

 

 大急ぎでそのポイントを鑑定に振り、自分に向けて使用してみた。

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv38 英雄Lv33 魔法使いLv37 商人Lv27

装備 ひもろぎのスタッフ ダマスカス鋼の盾 硬革の帽子 頑強の竜革鎧 硬革のグローブ 硬革の靴 身代わりのミサンガ

 

 おお! 探索者だけじゃなく、魔法使いまで上がっている!

 よし! よし! ナイスだ!

 そう遠くないうちに冒険者を取得できそうだな。

 

 そのうちハインツ一味がハルツ公爵領を荒らし、手配が回るだろう。

 奴らを倒してインテリジェンスカードを手に入れたら、冒険者として何の問題もなく騎士団に提出できるぞ。

 まあ、早期に提出した場合、手配書が回収されバラダム家が狂犬シモンを倒すためにボーデの迷宮に入ることがなくなってしまうはずだ。

 奴らを始末するまでは、インテリジェンスカードの提出を控えておこう。

 

 あと、原作でミチオは一番レベルが高かった狂犬のシモンを等量交換で爆殺したため、インテリジェンスカードの回収に失敗している。

 奴は悪名が轟いている男。おそらく、懸賞金も高額だろう。

 詠唱省略による魔法発動で気を逸らし、オーバーホエルミングからのデュランダルによる攻撃という必殺コンボで、奴のインテリジェンスカードを回収してやるぞ!

 

 

 

 思索を打ち切りロクサーヌとセリーも確認してみるが、彼女たちのレベルは上がっていなかった。

 まあ、しょうがない。

 

 

 

 ポイントの振り分けを済ませ自宅へ戻り、葉っぱにくるんだハンバーガーをリュックに入れて再び迷宮へ戻る。

 そして、待機部屋に近い小部屋に入って腰を下ろし、それぞれのリュックからハンバーガーを取り出したところで、ロクサーヌから声が上がった。

 

「ご主人様! 六人組の男性が待機部屋に向かっています!」

 

 えー! マジで!? 今!?

 

 大急ぎで再びそれをリュックにしまい込み、駆け足で小部屋から飛び出す。

 

 

 

 

 

ベイルの迷宮七階層

ボス待機部屋

 

 

 

 

 

 待機部屋に入ると九人の男たちが扉の前で順番を待っており、俺たちが入ってきたことに気が付き、全員こちらへ視線を向けてくる。

 前の方に並んでいた三人は、すぐに扉の方へ向き直り、打ち合わせを始めた。

 しかし、後ろの方にいる六人は、まるでチンピラのように下卑た表情を浮かべ、品定めをするようにロクサーヌとセリーへ不愉快な視線を向けている。

 

 こいつらか?

 

 視線にムカつきながらも鑑定を行ったところ、六人中五人が妨害の銅剣を装備していた。

 

 ビンゴだ。

 まだお昼前なのにマジか……。時間が原作とズレているぞ。

 危なかった。彼女たちの忠告がなければ、この時間は自宅に戻っていただろう。

 

 彼女たちに頷くと、こちらの意図を理解したのだろう。二人も頷きを返す。

 そのまま歩みを進め、彼らの後ろに並ぶことにする。

 

 近くに来たというのに、奴らはこちらを見ながらコソコソと話を続けていた。

 時折笑い声を上げながら、ロクサーヌとセリーの顔や体に対し、舐めまわすような視線を送っている。

 

 これはかなり癪に障るな。ミチオがムカついていたのも無理はない。

 

 しかし、こいつら原作とは違ってセリーのことも眺めているんだが……。

 いや、確かに彼女はむちゃくちゃ愛らしいんだが、一体どういうことだ?

 

 実際に視線を受けている彼女たちは、抗議をしたり手を出したりするわけにはいかないため、嫌悪感に顔を歪めながらもジッと耐えている。

 

 

 

 不愉快な思いをしながらボーナスポイントの振り分けを済ませて順番を待っていると、待機部屋の入り口が開き、一人の背の高い男が入ってきた。

 

 でっか! なんだあいつ!

 

 あまりのことに、つい鑑定で確認してしまう。

 

アンドレア ♂ 31歳

竜騎士Lv42

装備 強権の聖銀剣 鋼鉄の大盾 ダマスカス鋼の兜 オラクル聖銀鎧 聖銀のガントレット ダマスカス鋼のグリーヴ 身代わりのミサンガ

 

 えっぐ! なんでこんな奴がソロで七階層なんかにいるんだ!?

 

 気になって、装備品にも鑑定を掛けてみる。

 

 うっわ! グリーヴには四つのスロットまでついているぞ!

 マジでなんなんだ、こいつ!

 

 

 

 男はゆっくりとこちらに向かって歩みを進め、俺たちの後ろに並ぶ。

 

 竜騎士ってことは竜人族だよな? 間近で見ると迫力がすげー。

 これ絶対二メーター二十はあるだろ。NBA選手かよ。

 

 俺が凝視していたためか、彼はニッと人好きのする笑みを浮かべると、こちらに話し掛けてきた。

 

「よう。こんな美人を二人もつれているなんて、あんたすげーな」

 

 こんなに、嫌味なく話し掛けてくるなんて、さてはお前陽キャだな?

 

「まあな。自慢のパーティーメンバーだ。だがそれより、あんたの装備品の方がすごいぞ。それに、めちゃくちゃ強そうなのに、なんだってこんな低階層に一人で挑んでいるんだ?」

 

 自分は人に詮索されるのが嫌いなくせに、あまりにも気になり過ぎて、思わず尋ねてしまう。

 すると、男は気にした様子もなく話し始めた。

 

「ちょっと前まで仲間と共にクーラタルの迷宮に入っていたんだが、色々あって解散することになっちまった」

 

 パーティー解散か……。方向性の違いとかだろうか?

 それとも、メンバーの誰かがやられてしまったのか……。

 

「ん? ああ。メンバーが欠けたとか、喧嘩別れとかじゃないからそんな顔をしないでくれ。二組が結婚して田舎に帰ることになったんだ。残りの一人は騎士団への入団が決まったし、俺だけあぶれちまってなぁ」

 

 その状況でこんな笑みを浮かべるのか。メンタルつえー。

 

「それで、どうせ一から出直しになるなら、新しくできたベイルの迷宮に入ってみようと思ったのさ」

 

 えー? なんでそうなるん? 釣り合いの取れた仲間を探す方がよくない?

 

 

 

 彼とあれこれ話していると、いつの間にか扉が開き、俺たちの番になっていた。

 

 よし。扉を潜るとパーンが待ち構えているはずだ。気合を入れていくぞ!

 

「ロクサーヌ、セリー。行くぞ」

「かしこまりました」

「はい」

 

 二人と頷き合い、アンドレアという男に一声かける。

 

「それじゃあ、お先に」

 

 すると、彼は笑みを浮かべたまま口を開いた。

 

「おう。気をつけてな」

「ありがとう。あんたもな」

 

 右手を上げて挨拶を済ませ、そのままボス部屋へ続く扉に身を埋めていく。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv38 英雄Lv33 剣士Lv2

装備 硬革の帽子 頑強の竜革鎧 硬革のグローブ 硬革の靴 身代わりのミサンガ

 

ロクサーヌ ♀ 16歳

戦士Lv20

装備 強権のエストック ダマスカス鋼の盾 ダマスカス鋼の額金 竜革のジャケット 竜革のグローブ 駿馬の竜革靴 身代わりのミサンガ

 

セリー ♀ 16歳

鍛冶師Lv11

装備 強権のダマスカス鋼槍 竜革の帽子 硬革のジャケット 硬革のグローブ 竜革の靴 身代わりのミサンガ

 

BP振分 残BP:63

キャラクター再設定:1

サードジョブ:3

必要経験値二十分の一:63

詠唱省略:3

ジョブ設定:1

鑑定:1

ワープ:1

 

所持金:1,212,531ナール

 

春の34日目

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