異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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119 災害救助

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 今日はハルツ公爵領の災害救助に参加するが、いつも通り早朝の探索を行う。

 怠け癖をつけないためにも、なるべく日々のルーティーンを崩さない方がいいはずだ。

 

 遊び人のレベルは一気に上がり15に到達してしまった。セリーの鍛冶師も14になっているが、あまりにも差がありすぎるため霞んでしまっている。

 レベルアップを告げる度、彼女たちの表情が引き攣っていたように見えたのは気のせいではないだろう。

 まるでまさゆきの地図に潜ったような状態だ。

 

 

 

 

 

 探索を終え自宅に戻って朝食をとり、セリーが製造を行っている間にボーナスポイントの振り分けやジョブ設定を行うことにする。

 今回は戦闘を行うわけではないからな。MP重視で考えよう。

 

 まずはMP回復速度二十倍を外してポイントを確保だ。

 詠唱短縮を詠唱省略に、そしてフォースジョブからシックススジョブへ上げておく。

 うーん……。まだまだポイントも残っているか。

 それじゃあ、ジョブ設定に振って残りは体力で。

 

 次は遊び人の効果とスキルの設定だな。

 これは悩む必要はない。効果は英雄のMP中上昇。スキルは料理人のアイテムボックスを選ぶ。今回はこれで問題ない。

 

 よし。最後にジョブの設定だ。

 探索者、英雄、遊び人、魔法使いの布陣を崩すわけにはいかない。

 現在、俺が持つ最高火力というだけではなく、MPという面から見ても最適となるはず。

 

 武器商人や防具商人をつけてアイテムボックスの拡張ってのはやめておいた方がいいよな。

 そんなことをしたらアイテムボックスの容量がとんでもないことになる。

 もし、うっかり二千五百個以上のアイテムを入れてしまった場合、冒険者なのにどうしてそんなことが可能なんだと不信感を抱かれてしまう。

 偉い学者さんに人体実験をされるなんて、絶対に嫌だぞ。

 

 ……うん。やっぱ安牌でいこう。

 

 MP小上昇を持つ色魔と神官をそれぞれフィフスジョブ、シックススジョブにしておいた。

 

 よし。こんなもんかな?

 

 おっと。アイテムボックスの整理もしておかないと。

 向かいのソファーで見守っていたロクサーヌに一声掛けて、物置部屋へ移動する。

 

 

 

 部屋に入るとまぶしい光が目に入ってきた。

 そして、それが収まり俺の入室に気が付いたセリーが尋ねてくる。

 

「何かありましたか?」

「アイテムボックスを開けておかなくてはいけないから、荷物の整理をしようと思ってね」

「なるほど。それもそうですね」

 

 彼女は納得した様子で、再び製造作業に戻る。

 俺の方も今朝のドロップアイテムをクローゼットにしまい込み、今度は自室へ移動した。

 

 

 

 金貨は全部で九十九枚。料理人のアイテムボックスだと四枠埋まってしまうことになる。二枠はこのままにしておき、一枠を料理人の方に移動しておこう。

 銀貨は三十九枚あれば十分なはず。これもこのままだな。

 

 装備品を置いとくわけにはいかないので、節約のため料理人の方に移しておく。

 薬類は滋養剤と滋養錠、そして強壮剤と毒消し丸だけ持っていこう。これも料理人の方に入れ替えだ。

 あとは、食材の類か……。ウサギの肉とヤギの肉が入っているがこれをここに置いとくのは不味いよなぁ。

 いくらドロップアイテムとはいえ、生肉を常温放置は問題があるだろう。これも料理人の方だな。

 

 これでどのくらい入るようになったんだ?

 えーっと……。助けてー、商人えもん。

 

 しょうがないな、アユ太くんは。

 

 どれどれ。探索者の方が三十六枠の三十九スタックで千四百四個。料理人の方が二十三枠の三十スタックで六百九十個。合計二千九十四個。

 よし。これだけあれば十分だろう。

 準備オッケーだ。

 

 キャラクター設定を開き商人と神官を入れ替えて部屋を後にする。

 

 

 

 リビングに入り、楽しそうに話をしている二人を見て大きく心臓が跳ねた。

 

 ヤバっ! 何この娘たち!? エロすぎやしないか!?

 このまま寝室に直行したくなるんだが!

 

「ご主人様?」

「いかがなさいましたか?」

 

 訝しげな表情でこちらを見つめている二人の様子に、少し落ち着きを取り戻す。

 

 ああ。これ色魔の効果だ。

 性力増強ってこんなに強力なのか? ヤバすぎるだろ。

 これを一日我慢できるなんて、ミチオはすげーな。

 いや。それ以上に、何日も我慢し続けるこの世界の色魔は頭がおかしい。

 

 とっととジョブを変えてしまおう。

 他にはMPが上がるジョブは……。僧侶でいいや。

 よし。オッケーっと。

 

「ふぅ」

 

 ジョブを変更した途端、抑えきれない欲望は鳴りを潜める。

 いまだに悶々としたものは残っているが、この程度の衝動なら若い頃に幾度も経験済みだ。

 

 二人の正面に腰を下ろし、話を始める。

 

「それじゃあ、この後はセリーと一緒に帝都へ行って、買い物を済ませたら図書館へ送っていこう」

「はい! ありがとうございます」

 

 ワクワクが伝わってくるような笑みを浮かべており、期待からか瞳は眩いほどに輝いている。

 

「そしたら、俺はそのままクーラタルの冒険者ギルドへ行くから、ロクサーヌも休日を楽しんでね。あっ。ただし、危険なことはしないように。約束だよ?」

「ふふ。ご主人様は心配性ですね。それなら、家事を済ませた後はクーラタルの町をのんびり歩いてみたいと思います」

 

 この娘さんなら今の自分の力を試すとか言って迷宮に入りかねない。そりゃ心配するでしょうよ。

 

「おそらく、お昼過ぎには終わるだろうから昼食はベイル亭でとろう。食事の支度をしなくていいからね」

「ベイル亭で食事をとるのですか? あそこの料理は本当に美味しいので今から楽しみです」

 

 ロクサーヌはニコニコ笑顔になり、弾むような声で返事をした。

 

 あ、そうだ。

 

「セリーにも昼食代を渡しておくから、図書館で好きに食べてね」

 

 原作では図書館で酒を飲んでいたからな。おそらく飲食可能な場所があるのだろう。

 

「お気遣いいただき、本当にありがとうございます」

 

 まあまあ。いいってことよ。

 

 

 

 それじゃあ、給金を渡すとするか。

 セリー加入前はロクサーヌに千ナール。他の娘たちには五百ナールと考えていた。

 しかし、実際にセリーと触れ合ったことで、ここまでの金額差をつけていいものなのか、躊躇いが生じている。

 

 ……よし。

 

「ロクサーヌ。迷宮ではとても頼りになるし、毎日修行も付けてくれている。それに、一番奴隷としてセリーのことも丁寧にフォローをしていたね。感謝の気持ちとして今回から給金は千二百ナールにしようと思う」

 

 それを聞いた彼女は戸惑ったように口を開く。

 

「そんな……。よろしいのですか?」

「もちろん。いつも頑張っているロクサーヌへの正当な報酬だから遠慮はなしだよ。これからもよろしくね」

「こちらこそありがとうございます。これからもご主人様からお受けしたご恩に報いるよう励んでまいります」

 

 ロクサーヌさんや。大げさすぎですって。

 まあ、今後も昇給は考えないといけない。今の稼ぎなら十分それも可能だろう。

 あのクソ会社で、それがないことに心底不満を抱いていたんだ。彼女たちにそんな思いをさせるわけにはいかないからな。

 

 俺たちの様子を見ていたセリーは、ポカンと口を開き驚きの表情を浮かべていた。

 給金を渡していることは伝えていたが、具体的にいくらだとは言っていない。

 ロクサーヌと二人で過ごしているときにも、その話題はなかったのだろう。

 

「セリー。うちに来てから五日。色々戸惑うことも多かっただろうに一生懸命頑張ってくれたね。君のおかげでドンドン装備品が整っていっているし、豊富な知識も本当に心強い。これからもよろしくね」

 

 差し出された硬貨を震えた手で受け取り口を開く。

 

「銀貨八枚……。まだ五日しか経っていないのに……。これほどの額をいただいていいのでしょうか……」

「大丈夫だよ。遠慮なく受け取ってね」

 

 セリーはその額に衝撃を受けているようだが、俺の方は内心罪悪感に苛まれる。

 

 ロクサーヌと差をつけてしまって本当にすまない。でも彼女の性格を考えると、序列をはっきりさせておく必要があるんだ。いずれ昇給を考えているから勘弁してくれ。

 

 

 

 セリーは受け取った給金をアイテムボックスにしまっている。

 

 ん? アイテムボックスはいっぱいじゃなかったっけ?

 

「セリー。アイテムボックスに空きがあるの?」

「え? あ、はい。先ほどご主人様がアイテムボックスに空きを作るとおっしゃっていたので、私もこの後で必要になるのではないかと思い、すぐに使わない物は置いてきました」

 

 問いかけてみると、彼女は呆然としていた表情を引き締めて答えた。

 

 なるほどな。給金がもらえることはわかっていたのだ。そりゃそうするわな。

 

 あっ。そういえばセリーに巾着袋を渡していない。銅貨はアイテムボックスに入らないんだ、出発前に渡しておかなければ。

 

 

 

 自室に戻って外套を羽織り、鍵の掛かるチェストから巾着袋を一つ取って玄関へ移動した。

 セリーにそれを渡し、靴を履き替えてからロクサーヌへ告げる。

 

「ロクサーヌもゆっくり羽を伸ばしてね」

「ふふ。お気遣いありがとうございます」

「それじゃあ、行ってくるよ」

「はい。行ってらっしゃいませ」

 

 丁寧に頭を下げた彼女に見送られ、俺とセリーはワープゲートを潜る。

 

 

 

 

 

帝都

 

 

 

 

 

 帝都へ移動し図書館までの道すがら雑貨屋へ立ち寄り、セリーに筆記用具を選んでもらう。

 

 

 

「これでお願いします」

 

 すると、彼女はすぐに羽根ペンとインク、それからパピルスを持って戻ってきた。

 

 決めるのがめちゃくちゃ早いなぁ。さすが、即決即断のセリーさんやで。

 

「分かった。では、購入しよう」

「ご主人様。ありがとうございます」

 

 

 

 雑貨屋を出て歩いているうちに巨大な建物の姿が目に入っていたが、近くまで来たらその佇まいに圧倒されてしまう。

 見ているだけでため息が出てしまうほどの優美な建築様式に真っ白な外壁。

 地球でもそうだったが、やはり図書館というのは独特の雰囲気というものがある。

 なんというか歴史を積み重ねてきた重みと、それでいて現役で利用されている施設という気安さが調和しており不思議な印象だ。

 

 建物の中に入り、受付近くで金貨と銀貨五枚をセリーに手渡す。

 

「預託金と入館料、それからセリーの飲食代だ。夕方になったら迎えに来るからここで待っていてくれるか?」

「かしこまりました。夕方にはここにいるようにします」

 

 彼女は笑顔で答えると嬉しそうに受付に向かっていく。

 

 ……よし。中に入ったな。それじゃあ、俺も移動しよう。

 

 

 

 

 

クーラタル

冒険者ギルド

 

 

 

 

 

 クーラタルの冒険者ギルドに移動すると、こちらに気が付いたギルド職員が声を掛けてきた。

 

「お待ちしていました。この度は急な依頼をお受けいただき誠にありがとうございます」

「なに。問題ない」

「そう言っていただけると助かります。もうじきハルツ公爵の使いの方がお見えになるので、今しばらくお待ちください」

 

 しばらく会話をしていると他の冒険者が現れたため、一言断りそちらへ向かって行き同じようなやり取りを行っている。

 

 

 

 他にやることもないのでそれを眺めていると、とんでもない美男美女の集団がやってきた。

 

 おいおい。顔面偏差値ヤベーな。

 こいつら全員エルフなんだよな? やっぱとんでもない種族だわ。

 もし、俺みたいな顔で生まれたら生きづらいなんてもんじゃないだろ。

 

 彼らはギルド職員と話をしてから、集まっていた冒険者へ向けて声を上げた。

 

「お集まりいただいた皆様。この度は我がハルツ公爵領の救助活動へご協力いただき、誠にありがとうございます。これより、我々のパーティーに加わっていただき救助活動の拠点へと移動しますので、現在のパーティーを抜けるか解散してください」

 

 そう言ってこちらの様子をうかがっている。

 

 あ、そうだな。俺もパーティーを解散しとかないと。

 

 

 

 しばらくすると、エルフの冒険者たちは各々パーティー操作の詠唱を始めた。

 

 飛んできたパーティー申請を承諾すると、エルフの冒険者が近づいてくる。

 

 ……男かぁ。

 いや、いいんだけどね! 俺にはロクサーヌとセリーがいるから本当にいいんだけどね!

 

「では、お送りいたします」

 

 

 

 

 

ボーデ

宮城

 

 

 

 

 

 フィールドウォークで移動した小屋から出ると、小高い丘の上に建てられた大きな城を目指してボーデの町を徒歩で移動する。

 しばらくしてたどり着いた場所は人であふれ喧騒に満ちていた。

 

 確認をしながらアイテムボックスへ食材を入れている者がいるかと思えば、騎士と一緒にフィールドウォークでゲートの向こうに消えていく者。反対にこちらへやってくる者。

 

 

 

「おお! アユムさんじゃないか!」

 

 ん? なんだ?

 

 救援物資のピストン輸送をながめていたところ突然声を掛けられ、そちらを向くと先日ペルマスクへ送ってくれたケヴィンの姿があった。

 

「よう。あんたもこの依頼を受けたのか?」

「ああ。ギルドに所属しているので断るわけにもいかん」

 

 なるほど。特別な事情がない限りギルド員は強制参加なのだろう。

 

「まあ、新しい仲間も見つかっていないしな。俺が依頼を受けている間に他の奴らはもう一度心当たりをあたっているんだ」

 

 まだ見つかってなかったのか。

 でもまあ、レベルも高い上に装備も良いものを身に着けていた。こいつらにつり合うような奴がそう簡単に見つかるとは思えない。

 

 

 

「申し訳ありません。早くまいりましょう」

 

 おっと。依頼の途中だった。

 

 話をしていると引率していたエルフの冒険者に声を掛けられる。

 

「それじゃあ、お互い依頼を果たそう。では、いずれまた」

「アユムさんも頑張ってくれ。俺の方も仕事に戻るとしよう」

 

 手を上げて挨拶を交わしてケヴィンと別れ、パーティーを組んでいる者たちと合流して歩き出す。

 

 

 

 指揮所のような場所に着くと、指示を出している男に向かい引率してきた男が声を上げる。

 金髪を短くしており、細長い特有の耳が突き出している。

 そして、御多分に漏れずこいつもかなりのイケメンだ。

 

「団長。ご報告いたします。クーラタルより冒険者五名がお越しくださいました」

「ご苦労。我がハルツ公爵領の危機にご助力いただきありがとうございます。ハルツ公爵領騎士団長のゴスラーと申します」

 

 えっ? ゴスラー!? マジか!?

 

ゴスラー・ノルトブラウン・アンハルト ♂ 46歳

魔道士Lv61

装備 ひもろぎのスタッフ 身代わりのミサンガ

 

 とっさに鑑定を使用すると間違いなくゴスラーだった。

 いわれてみれば、確かにこんな感じだったような?

 

 となると、もうすぐか……。もうすぐ重要な出来事が起こる。

 上手いこと立ち回らなければ……。

 

 

 

「これより、この者が皆様のご担当する村へご案内いたします。その後、一度こちらへ戻っていただき、同行する騎士一名をパーティーに入れ運搬作業の開始となります。そして、規定数量の運搬が終われば依頼完了。また、規定数量の運搬が終わっていない場合でも、日没で終了です」

 

 騎士と一緒に行動するのか。持ち逃げを防ぐためには仕方がないとはいえ、俺が使うのはフィールドウォークではなくワープなのだ。気を付けなくては。

 

 

 

 エルフの冒険者に連れられ複数の村を回ってブクマ登録を済ませると、再びゴスラーの下へ戻る。

 すると、彼と共に五人の騎士たちが待っていた。

 

「それでは、これより振り分けを行いますので、皆様のお名前をお聞かせ願えますか」

 

 他の奴らが次々と名前を告げ、俺もそれに続く。

 

「アユムだ」

「え?」

 

 俺の名前を聞いたところでゴスラーが声を上げ、こちらを凝視する。

 

 どういうことだ? なんで俺の名前に反応した?

 

 不思議に思い彼を見ると、一つ咳をして話を続ける。

 一人一人の運搬場所を指定し、最後に俺の方を向いて告げる。

 

「アユム殿にもターレをお願いしてもよろしいでしょうか?」

「うむ。構わない」

「ありがとうございます。それではよろしくお願いいたします」

 

 どうせ拒否権はないし、それにミチオも問題なくターレを十往復していたからな。どこだろうと大差はないだろう。

 

 

 

 ターレの担当となった他の二組と共に集積場となっている場所へ行き、指示に従いアイテムボックスに食材アイテムを詰めていく。

 騎士は俺たちが詰めているアイテムを細かく確認し、メモを取っている。

 

 ガンガン詰めていると、騎士の男から声が掛かった。

 

「お、お待ちください。どのくらいの空きを作ったのですか!?」

「二千くらいだな。災害救助とのことだったので、最低限必要なもの以外はすべて置いてきたのだ」

 

 彼は驚いたような表情を浮かべながら、感謝の言葉を口にした。

 

「千個以上の空きがあれば十分だったのですが、それだけ空けてもらえると本当に助かります。運搬する回数も少なくて済むでしょう」

 

 それはめちゃくちゃ助かるわ。ロクサーヌとの時間が多く取れる。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv39 英雄Lv34 遊び人Lv15 魔法使いLv38 神官Lv1 僧侶Lv15

装備 硬革の靴 身代わりのミサンガ

 

BP振分 残BP:0

キャラクター再設定:1

シックススジョブ:31

必要経験値二十分の一:63

詠唱省略:3

ワープ:1

鑑定:1

ジョブ設定:1

体力:36

 

所持金:1,107,641ナール

 

春の37日目

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