九人分の夕食代を支払い、食堂の入口にいた店員に各々好きなメニューを告げてから中へ入り、許可をもらってテーブルを動かし二つをくっつける。
各自好きな席に座ることにしたが、その際ケヴィン以外のパーティーメンバーは俺の首筋へ視線を送っていた。
……キスマークを付けるのなら、次からは見えない位置に付けてもらうことにしよう。いくらなんでも気まずすぎるぞ。
全員が腰を下ろすと、俺の向かいに座っているケヴィンが話し出す。
「名前を知らない者もいるだろうから、まずは自己紹介をしよう。俺はケヴィン。冒険者だ」
ブラウンの髪に太めの眉。彫りが深くて男臭い顔立ち。
改めて見ると、こいつもかなりの男前だよなぁ。
まるでハリウッド俳優を見ているような気分になる。
続けてケヴィンの向かって右隣。ロクサーヌの正面に座っている男が口を開く。
「ウォルターだ。禰宜のジョブについている」
茶色の瞳と、同じく茶色のウェーブヘアー。
おそらく、彼は悪い奴ではないだろう。なんたって天然パーマだからな。
そして、ちょい悪系の顔立ちでめちゃくちゃモテそうだ。
鑑定っと。
ウォルター 男 28歳
禰宜Lv11
装備 駿馬の竜革靴 身代わりのミサンガ
神官の中級ジョブである禰宜か……。
でも、ヒーラーとは思えないような顔をしてるなぁ。
しかし、禰宜が所属しているんだ。こいつらはかなり有望なパーティーなんだろう。
さらに右隣の柔和そうなイケメンが続く。
「魔法使いのゴンザレスです。アユムさんと奥方にはご迷惑をおかけして、申し訳ございませんでした」
ゴンザレス!
なんか、ゴンザレスって名前はパワーキャラの印象があるわ。
それに、金髪碧眼で王子様然とした容姿の男には似合わない気がする。
まあ、こんなことを思うのは日本人である俺だけなのだろうが。
ゴンザレス 男 28歳
魔法使いLv54
装備 ビットローファー 身代わりのミサンガ
防具屋で会ったときにはスルーしたが、レベルも50を超えているし魔道士にジョブ変更できそうだよな? どうして魔法使いのままなんだろう? 何か事情があるのかね?
「あれはあの男が悪いんだ。あんたたちが気にすることはない」
「そう言っていただけると助かります」
一先ず疑問を飲み込みこんで返事をすると、彼は柔らかく微笑んだ。
ゴンザレスなんて厳つい名前なのに、シュッとしていて五人の中で一番の男前。その上、敬語キャラなんて属性を盛り過ぎだろうよ。
そして、その隣に座っているネコミミの男が言葉を発する。
「探索者のマルコ。見ての通り猫人族だ。よろしくな」
マルコ ♂ 27歳
探索者Lv68
装備 耐火の竜革靴 身代わりのミサンガ
銀色の髪に頭の上に生えた三角の耳。内側はピンク色の肌が見え、そこに毛がかかっている。
そして、ヘーゼルアイというのだろうか? 不思議な色をした目が実に印象的だ。
でも、ネコミミが男に付いていると、ガッカリしてしまうのはなんでだろう……。
そして、ケヴィンの左隣でセリーの正面に座り、彼女をチラチラと見ている髭もじゃの男が話し出した。
「最後は俺だな。武者のジョブに就いている、ドワーフのガストンだ」
ガストン ♂ 30歳
武者Lv21
装備 身代わりのミサンガ
毛量が多いもじゃもじゃの頭に、たっぷりと貯えられた髭。そして、百六十センチもなさそうな身長。それなのにもかかわらず、こいつも相当男前だ。
どいつもこいつも顔面偏差値が高い奴ばかりで、この世界の人はずるくないか?
他の奴らの目には、俺がどれほど不細工に映っているのか不安になってしまうぞ。
それに、武者とはどんなジョブなんだろうか?
俺が少し考え込んでいる間も、奴はセリーに熱い視線を送り続けていた。
こいつまさかセリーを狙っているんじゃないだろうな?
見るだけならまだしも、手を出すつもりなら即決闘だ。
こっちとら対人戦においては最強のチート持ち。いつでも相手になるぞ。
パーティーメンバーすべての自己紹介が終わったところでケヴィンが口を開く。
「この五人でベイルの迷宮に挑んでいるんだが、前衛が一人欠けたのが響き今は足踏みをしている状態だ」
今日も勧誘に失敗したのか。
それにしても、なぜこいつらは戦闘奴隷を購入しないのだろう?
レベルや装備を見るに、それなりの蓄えがありそうだよな?
いや、こいつらだけじゃなくアンドレアも奴隷は眼中にない様子だ。
彼に関しちゃ即金で五十万ナールを出せて、さらに上乗せも出来そうだった。おそらく、相当な金を持っているはず。
何か戦闘奴隷を求めない理由があるのだろうか?
……帰ったら二人に聞いてみよう。
そして、ロクサーヌの席から二つ飛ばしたところに座っているアンドレアが口を開く。
「それじゃあ、次は俺か。竜騎士のアンドレアだ。クーラタルで組んでいたパーティーが解散しちまってな。それで今は心機一転、一人でベイルの迷宮に入っている」
すると、ケヴィンたちはにわかに色めき立ち、目配せを交わし始めた。
ベテランであるフリーの竜騎士を見つけたんだ。そりゃこうなるのも無理はない。
パーティー構成を見たところ、前線を支えることができるのは、武者というジョブのガストンだけだろう。獣戦士がいなくなった穴は大きそうだ。
だが、そんな状況でガチガチの前衛職である竜騎士が加わるとなれば、まるでテトリスの棒のようにぴったり嵌るはず。
こいつらにとって、この会合はまさに渡りに船だろう。
彼らの中で意思の疎通が取れたのか互いに頷き合うと、こちらが自己紹介をする前にケヴィンが声を掛けた。
「俺たちも心当たりに片っ端から声を掛けたのだが、なかなか色よい返事がもらえなくてな。それで、鉄壁の。一人で探索をしているのならうちに来ないか?」
その言葉を聞いた彼は目を閉じて考え始める。
きっと、パーティー構成的にも、またレベル的にも釣り合いが取れていて良いパーティーになるだろう。
でもまあ、俺がとやかく言うことでもないし、わざわざ口を挟むつもりはないけどな。
五人はアンドレアをじっと見つめ返事を待っている。
「そうだな……。正直なところ俺の方も低階層をうろつくことしかできず、限界を感じていたところだったんだ。迷宮の嵐があのろくでなしの尻拭いをしているところは、何度も目にしていたからな。お前ら五人となら上手くやっていけそうだ。正式に加入するかは一先ず置いといて、しばらく一緒に迷宮へ入ってみよう」
彼の言葉を聞いた男たちから歓声が上がり、握手を交わしながらありがとうだの、歓迎するだのと言い合っていた。
……俺が金を出しているのに、完全に蚊帳の外だぞ。
それに、さっきから気になっていたんだが、鉄壁や迷宮の嵐ってのは何なんだ? 二つ名でも付いているのか?
モヤモヤしながらその様子を見守っていると、しばらくして彼らは落ち着きを取り戻す。
「すまない。自己紹介の途中だったな。アユムさん、続きを頼む」
ケヴィンに促されたものの、話の腰をバッキリ折られているため今更感が漂っている。
それでも、なんとか気を取り直して口を開いた。
「一応ここに居る全員と面識があるが、俺はアユム・タガワだ」
それを聞いたアンドレアから声が上がる。
「へー、家名持ちか。アユムは自由民だったんだな」
苗字を名乗るたびにこういった反応が返ってくるが、一般の庶民と自由民の差がよく分からないんだよなぁ。
庶民でも領地を跨いだ移動をしているようだし、奴隷の売買も行えている。
揉め事があった場合に自力救済が認められていたり、紛争を解決する手段である決闘を申し込める権利の他にも何かあるのかね?
おっと。考え込んでいる場合じゃなかった。
「まあな。そして、彼女たちが俺の大切な妻であるロクサーヌとセリーだ」
二人を紹介すると、ロクサーヌは喜びと戸惑いが混じったような表情を浮かべながら言葉を発する。
「一番奴隷を務めております、ロクサーヌです。ご主人様、結婚の申し込みについてはまだ承諾していません」
「とまあ、プロポーズを保留されているが、いずれ妻になるので手を出すんじゃないぞ? その時は自由民の権利を行使させてもらうからな?」
俺たちの言葉を唖然としながら聞いていた彼らから声が上がった。
「マジかよ……。奴隷だったのか」
「あの馬鹿は他人の奴隷に手を出そうとして、危うく決闘沙汰になるところだったのか」
「馬鹿だ馬鹿だと思っていましたが、本当にどうしようもない愚か者でしたね」
ケヴィンから聞いた話では女癖も相当悪かったらしいし、彼らがこうなってしまうのも無理はない。
その様子を不思議そうに眺めていたアンドレアが尋ねる。
「それは、あの跳ねっ返りのことか? 奴はアユムと揉めたのか?」
「ああ。あの馬鹿はいきなり彼女に手を出そうとした上、彼から奪おうとしたのだ。それで決闘を申し込まれ、危うく俺たちまで巻き込まれそうになったためパーティーから追放した」
その時の怒りがまだ収まっていないのだろう。ウォルターが吐き捨てるように告げた。
彼らの様子が落ち着いたところでアンドレアが言葉を続ける。
「相変わらずとんでもないろくでなしだな。しかし、腕だけは確かな男だ。アユムと彼女が狙われるのではないか?」
あー……。奴のその後について伝えてもいいものなのか? というかケヴィンはパーティーメンバーに伝えたんだろうか?
彼らの顔を見遣ると全員落ち着いており、奴の末路について納得している様子がうかがえた。
ケヴィンはこちらを見ながら一つ頷き、アンドレアに説明を行う。
「あの馬鹿は盗賊と組んでアユムさんを襲い、返り討ちにあっている」
「本当か! どうしようもない男だったが、まさか盗賊の仲間になるなんてなぁ」
彼は一つ息を吐きだし、うんざりしたように首を振っていた。
さて、最後はセリーの紹介だ。
「彼女はセリー。彼女も大切な妻なので、手出しは絶対に許さない」
ガストンを見ながら告げると彼は慌てたように声を出す。
「いやいや、そんなつもりはない! ただ、あまりの美しさに見入ってしまっただけだ!」
それを聞いた他の男たちは、呆れたような表情で彼を見つめている。
「うむ。これだけの美貌だからな、その気持ちはよくわかる。まあ、手を出さなければ問題ないのであまり気にするな」
そのやり取りを見ていたセリーは先ほどのロクサーヌ同様、喜びと戸惑いがない交ぜになったような表情で口を開いた。
「二番奴隷のセリーです。妻にしていただけるという話はいま初めて耳にしました」
うん。いま初めて言ったしね。
というか、君まで二番奴隷とか言い出すの? 論理的なセリーにしては珍しいなぁ。
それを聞いたロクサーヌはセリーと顔を見合わせ嬉しそうに頷き合っていた。
二人が納得しているようで一安心だ。
全員の名前を確認したところで、疑問に思っていたことを尋ねてみる。
「ところで、あんたたちは顔なじみだったのか? それに、鉄壁や迷宮の嵐ってのは何なんだ?」
すると、ネコミミ男が説明を始めた。
「クーラタルの迷宮では入るまでに時間が掛かるだろ? だから頻繁に顔を合わせることになる。そのときには会話だって交わすし噂話も入ってくるからな。それに、探索者ギルドで売却を行う際、そのアイテムでどの辺りに入っているのかも大体予想がつく。だから、クーラタルの迷宮を狩場にしているパーティーはある程度お互いのことを把握しているんだ」
なるほど。確かに売却しているアイテムを見れば、どのくらいの階層を探索しているのか丸わかりか。
それに、迷宮ごとに魔物の出現する階層が異なるため、どこの迷宮のドロップアイテムなのか推察される可能性がある。
となると困ったことになるぞ……。
俺たちに当りを付けて情報を分析された場合、入口に並んでいるところを誰も見ていないのに、クーラタルの迷宮のドロップアイテムを売却していることに気付かれてしまう。
どうしたもんかなぁ……。
うーん……。原作ではこれらのことが問題になることはなかった。
ドロップアイテムの売却を控えるわけにはいかないし、まったく違うところへ売却するのも面倒だ。
それに、俺たちに注目した上で売却しているギルドを探し当て、そのドロップアイテムを確認するなんて労力が掛かり過ぎる。
そこまでする奴はいないはず。あまり気にすることはないか。
「なるほど。そういうことだったのだな」
返事をすると今度はガストンが口を開く。
「ある程度名前が広まると二つ名が付くだろ?」
『だろ?』とか言われても、原作にそんな話は出てこないし、まったく分からないんだよなぁ。
あっ、そういえば狂犬のシモンには付いていたか。
「アンドレアは前線で魔物の攻撃を防ぎ続ける様子から、鉄壁と呼ばれていたのだ」
「まあ、そういうことだ。少々面映ゆいがな」
ガストンの説明を聞いていたアンドレアは照れくさそうにそう言った。
二つ名か。俺はこの年になっても中二魂を失っていない男。めちゃくちゃ羨ましいぞ。
だが、戦闘スタイルを見られるわけにはいかない以上、俺にそれが付くことはないだろう。
麦わらのアユムとか、海賊狩りのアユムみたいに粋なやつが欲しかった。
……いや、ダメだわ。この世界だと海賊狩りに別の意味が発生してしまう。
他の奴らに二つ名があるのかを確認していると食事が運ばれてきたため、食べながら話すことにする。
俺とロクサーヌ、それから猫人族のマルコが白身魚のムニエルのセットで、他は全員牛肉炒めのセット。
そして、飲み物は俺とロクサーヌがハーブティー。それ以外にはワインが運ばれてきた。
セリーは俺におもねることなく自分の好きなものを注文している。
さすがセリー。さすセリだ。
今後、迷宮探索を行う上でイエスマンばかりだと不味いこともあるだろう。彼女にはこの調子で自分の意見を主張してもらいたい。
全員の前に食事と飲み物が行き渡るとケヴィンが声を掛けてきた。
「じゃあ、アユムさん。乾杯の挨拶を頼む」
えー。なんで俺が。すげー嫌なんだけど……。
……でもまあ、会社にいる頃は総務だからって、歓送迎会や忘年会の司会をさせられたしなぁ。
よし。面倒なことはさっさと済ませよう。
この国の流儀はわからないが、とりあえず座ったままでいいか。
「それでは、将来有望な者たちとの出会いと、アンドレアのパーティー加入を祝して、乾杯」
俺の言葉の後に続き、口々に乾杯と言いながらコップを傾けた。
食事を続けながら彼らの二つ名について確認するが、この五人には付いていなかったそうだ。
そして、今度は金髪のイケメンが話し始める。
「迷宮の嵐は我々のパーティー名だったのですが、これはナギィが考えたものだったのです。なので、もう使用していません」
そりゃ、そんな曰く付きのパーティー名を名乗る気にはならんわな。
「別にどうしても必要というわけではないので、良いものが思いつくまではパーティー名は付けないつもりです」
一頻りパーティー名について話した後に、ケヴィンが質問してくる。
「ところで、アユムさんたちはどうしてアンドレアに会いに来たんだ?」
そういえば、それについては話していなかった。
答えようとしたところ、機先を制してアンドレアが話し出す。
「今日の午前中にベイルの防具屋でアユムと会ったんだ。それで――」
「ちょっと待ってくれ! 午前中に会ったのか!?」
「ん? ああ。アユムとは間違いなく午前中に会ったぞ」
「ということは、物資の運搬を午前中で終わらせたのか……。本当にとんでもない男だ」
ヤバっ。余計な情報が伝わったかもしれん。
あ、いや。これに関しちゃハルツ公やゴスラーだって把握しているし、別に隠す必要はないか。
「それほどでもない。それで、俺がダマスカス鋼の大盾を購入しようとしたところで、アンドレアに声を掛けられてな」
「そのときはソロで迷宮に挑むつもりだったから、良い防具を手に入れるために必死だったんだ。アユム、迷惑をかけてすまなかった」
そう言うと俺に向かって頭を下げる。
「そのおかげで五十万ナールとダマスカス鋼のグリーヴが手に入ることになったのだ。気にすることはない」
「そう言ってもらえると助かる。ありがとうな」
他の奴らはその会話を不思議そうに聞いていたが、どうしても気になったのだろ。ちょいワルヒーラーが尋ねてきた。
「どういうことだ? 何故五十万ナールやダマスカス鋼のグリーヴなんて話になるんだ?」
その疑問にアンドレアが答える。
「アユムはダマスカス鋼の大盾にスキル結晶の融合を行うつもりだったんだ。それで、成功した場合は五十万ナールとダマスカス鋼のグリーヴで譲ってもらうことになっていた」
「なに!? ダマスカス鋼の大盾に融合だと!? 一体何のスキルを付けるんだ!?」
アンドレアの言葉を聞いたモジャ公が興奮した様子で声を上げる。
ドワーフだもんな。スキル結晶の融合には興味があるのだろう。
「うちのセリーがスライムとコボルトのスキル結晶の融合に見事成功している。それを知らせるためにここへ来たのだ」
「セリーは鍛冶師だったのか。その若さで融合に成功するとはたいしたものだ」
それを聞いたガストンは感心したような声を漏らす。
しかし、彼の言葉に他の男たちは困惑したような表情を浮かべていた。
……おそらく、若いって言葉に引っかかっているんだろうなぁ。
「ああ、他種族は耳でしかドワーフの年齢がわからないんだったな。彼女は相当若いぞ。おそらく、まだ十代だろう」
「うむ。セリーは十六歳でありながら素晴らしい腕を持った鍛冶師だ」
他の奴らはそれを聞いて驚きの声を上げていた。
かわいいセリーをババアだと思われるのは我慢ならん。これについては情報云々なんて言ってられない。
そして、その流れのままアンドレアに予定を確認する。
「そちらの馴染みの防具商人へ確認するんだろ? 俺たちはどうすればいいんだ?」
「まだベイルへ来たばかりだからな。親しくしている防具商人はクーラタルにしかいないんだ。明日の朝、クーラタルの商人ギルドで落ち合おう」
アンドレアが時間の確認をしてきたが、俺ではわからないためロクサーヌに丸投げだ。
姉御。いつもありがとうごぜぇやす。
結局、朝食後に商人ギルドを尋ねるということになり、彼女がいつものように時間を知らせてくれるらしい。
必殺のロクサーヌに全部おまかせ、おんぶに抱っこ戦法だ。
「じゃあ、俺がフィールドウォークで送っていこう」
「すまん、ケヴィン。感謝する」
「もうパーティーの一員なんだ、気にすることはない。その後は迷宮で頑強のダマスカス鋼大盾を試してみようぜ」
「新しい装備で新しいパーティーの初陣だからな。腕が鳴るぞ」
彼らは明日の予定について盛り上がっているが、気になっていたことをさらに尋ねてみる。
「ゴンザレスは魔法使いなんだろ? ずいぶん経験を積んでいるように見えるのだが、どうして魔道士へジョブ変更していないんだ?」
問いかけられたゴンぎつねは大きく目を見開き、一つ息を吐いてから口を開いた。
「実は二年ほど前にジョブ変更を試みたのですが、魔道士になることは叶いませんでした。まだまだ経験不足だったようです」
なるほど。しかし、彼のレベルは54だ。そのときは50未満でジョブ変更に失敗していたのだとすれば、今なら問題なく魔道士になれるはず。
まあ、これも何かの縁だ。アンドレアがパーティーに加入したご祝儀としてお節介を焼いてやろう。
こんなサービス、めったにしないんだからね!
「俺は人を見る目には自信があるつもりなんだが、ゴンザレスは魔道士でもおかしくないように見える。もう一度ジョブ変更を試してみた方がいいのではないか?」
「そうなのですか?」
縋るような眼差しでこちらを見てきた彼へ頷きを返す。
「うむ。確実とは言い切れないが可能性は高いだろう」
すると、ケヴィンがゴンザレスに声を掛けた。
「よし。それなら、明日クーラタルへ行くときに帝都を経由して魔道士ギルドへ立ち寄ろう。もし、お前が魔道士になれるのなら、アンドレアのパーティー加入と共に大幅な戦力強化になるだろう」
「それは良いな! 今までは四十六階層が限界だったが、魔道士と竜騎士が加わるとなりゃ、五十階層を越え迷宮攻略が叶うかもしれない!」
マルコが興奮したように声を上げ、アンドレアがそれに続く。
「前のパーティーでは四十八階層が限界だったからな。おまえたちとなら、もっと上を目指せそうだ」
おいおい、マジかよ。
帝国解放会において一般会員の入会条件となっている、四十五階層突破をクリアしてんのか?
十二巻終了時点のミチオより上だぞ。とんでもねーな……。
しかし、原作にこのようなパーティーは登場していないし、彼らに帝国解放会の会員らしい様子も見られない。
おそらく、このように在野で埋もれている者が他にもたくさんいるんだろうな。
奴らは六人でこれからの目標を語り合っており、その様子を眺めていると羨ましさを覚えてしまう。
俺には、こんな風に大人になっても夢を語れるような同性の仲間なんていなかった。
仕事が忙しかったし、二人しかいなかった友人も彼らの結婚を機に付き合いが減り、子供が生まれてからは会うこともほぼなくなった。
ん?
両サイドから手が伸ばされ、黄昏ていた俺の膝にそっと添えられる。
左右を確認すると、ロクサーヌとセリーが微笑みながらこちらを見ていた。
……そうだな。俺には彼女たちがいるのだ。
それに手を伸ばし恋人繋ぎで絡め合う。
俺以上の幸せ者なんていないだろう。別に他人を羨む必要なんてない。
彼らはこちらに気が付くと、ジトっとした視線を向けてきた。
その様子に自尊心がくすぐられてしまう。
ふふん。羨ましかろう?
でも、彼女たちは誰にも渡さないぞ。
田川 歩 男 18歳
探索者Lv39 英雄Lv34 魔法使いLv38
装備 硬革の靴 身代わりのミサンガ
BP振分 残BP:1
キャラクター再設定:1
サードジョブ:3
必要経験値二十分の一:63
詠唱省略:3
ワープ:1
鑑定:1
ジョブ設定:1
三十パーセント値引:63
所持金:1,066,659ナール
春の37日目