異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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124 報告

 

 

 

 

 

ベイル

 

 

 

 

 

 食事を済ませベイル亭を出ると、新たにアンドレアを加えたパーティーの面々が口々に感謝の言葉を述べてきた。

 わざわざ外まで見送りに来た上でそんなことを言うなんて、本当に気のいい奴らだ。

 

「こちらこそ有意義な時間だった。それじゃあ、俺たちはこれで失礼する」

「本当に世話になった。アユム、明日はよろしく頼むな」

「ああ。明日の朝に商人ギルドで会おう。では、ロクサーヌ、セリー。自宅へ戻ろう」

「かしこまりました」

「はい」

 

 手を上げて挨拶を交わし、二人を伴って冒険者ギルドへ歩き出した。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 自宅に戻ると手早く風呂を済ませ、リビングへ移動する。

 今回は真剣な話し合いだからか、ロクサーヌとセリーは俺の向かいのソファーに腰を下ろす。

 

 ……抱きしめたままでもいいと思うんだけどなぁ。

 

 少しだけ残念に思いながら話し合いを始めることにした。

 ハルツ公領の出来事についても伝えたいが、今は一刻も早くセリーが調べたスキル結晶について聞いておきたい。

 

「それじゃあ、セリーの報告からお願い」

「かしこまりました。少々お待ちください」

 

 彼女はソファーの横に置いていたリュックからパピルスを取り出して捲り始め、お目当てのページを探し当てたのか、それを見ながら口を開く。

 

「では、それらしいものが見つかったスキル結晶についてご報告します」

「うん。よろしく」

「楽しみですね」

 

 ワクワクしている俺たちを見て微笑みを浮かべると報告を始める。

 

「まず、防御力浸透と防御力貫通というスキルを発見しました」

 

 防御力浸透に防御力貫通! めちゃくちゃそれっぽい!

 

「それは、どんなスキル!?」

 

 思わず大きな声が出てしまう。

 

「どちらも相手の防御力を弱めて攻撃が通りやすくなるスキルだそうです。ただし、このスキルは武器にしかつけることが出来ず、防御力が弱まるのはその武器による攻撃だけで、効果が重複することもないそうです。そして、これが付くのは竜のスキル結晶でした」

 

 ゲーム的にいえばルカニが入るわけではなく、そのスキルが付いた武器による攻撃時に相手の防御力が下がるわけだな。

 なるほど。確かにデュランダルの防御力無視によく似ている。

 おそらく、ドラゴンの最上位種からドロップするスキル結晶で防御力無視が付くのではないだろうか?

 

「そのまま融合すると防御力浸透。それから、コボルトのスキル結晶と共に融合すると防御力貫通になります」

 

 それにしても竜のスキル結晶かぁ。めちゃくちゃ高そうだなぁ。

 しかし、腕力二倍に攻撃力二倍、そして防御力貫通のスキルを良い武器に付ければ、彼女たちの攻撃が魔物に通るようになるはずだ。買わない手はない。

 

「ご主人様!」

 

 ロクサーヌが輝くような笑みを浮かべ、こちらを見つめていた。

 おそらく、彼女も同じことを考えているのだろう。

 

「ですが、強力な魔物であるドラゴンが残すスキル結晶なので価格がとても高く、それでいて効果の方は今一つだそうです」

 

 嘘だろ!? 超強力なスキルじゃないか! なんでそんな評価なんだ!?

 

「セリー、今の話を聞く限りでは有用に思えるんだけど、どうして今一つなんて評価になるの?」

 

 問いかけてみると、彼女は一つ頷き解説を行う。

 

「なんでも、腕力二倍や攻撃力二倍を付けた場合と比べ、魔物が倒れるのに必要な攻撃回数がそれほど変わらないのだそうです。なので、相場に見合わないスキル結晶だといわれているようです」

 

 いや、でもそれを組み合わせればハンパないシナジー……。あっ。

 

 セリーは俺が理由に思い当たったことに気が付いたのだろう。微笑みながらそのまま続きを口にした。

 

「通常、融合に成功した装備品に再び融合を行うことはありません。失敗すると、せっかく作った装備品がなくなってしまいますからね。それに、高階層で戦っている者は命を守るため、絶対に身代わりのミサンガを装備します。なので、アクセサリーへ他のスキルを融合することもまずありません」

 

 セリーは一旦言葉を止め、ニヤリと笑みの種類を変えてこちらを見つめる。

 

「しかし、ご主人様の鑑定があれば腕力二倍と攻撃力二倍、防御力貫通を組み合わせるなど容易いことです。他の人にとっては金額に見合わないスキル結晶なのでしょうが、私たちにとっては費用対効果の高いスキル結晶といえるでしょう」

 

 これはかなり美味しいな。

 他の者が価値に気付いていないうちに買い漁っておこう。

 明日、商人ギルドへ行った際にルークへ依頼しておかなければ。

 

 彼女たちへ目を遣るとセリーだけではなく、ロクサーヌまで悪い笑みを浮かべている。

 こんな表情も新鮮でいいなぁ。

 この娘たちはどんな表情もよく似合うわ。

 うん。二人とも実にかわいい。

 

 

 

 俺たちの興奮が収まったところで、セリーが報告を再開する。

 

「それから、クリティカル無効についての情報ですが、亀のスキル結晶は防具に融合することができ、そのまま融合するとクリティカル失錯。コボルトのスキル結晶と一緒に融合するとクリティカル不発となります。どちらも会心の攻撃を受けた際にダメージを減らす効果があるようです」

 

 間違いない! 亀の最上位種からドロップするスキル結晶で、クリティカル無効が付くはずだ。

 

 クリティカル攻撃などという恐ろしいものをくらってしまえば、怪我だけでは済まず、即死する可能性すらあるだろう。

 たとえ身代わり装備を身に着けていても、二発連続で食らってしまえば本当に死んでしまうかもしれない。

 しかし、その対策ができるとなれば、たとえ無効じゃなかったとしても重宝するはずだ。

 こいつもルークへ頼んでおかないとな。

 

 

 

 そして、セリーは笑みを浮かべ、ロクサーヌと目を合わせながら言葉を発した。

 

「それから、ロクサーヌさんが望むものを見つけたかもしれません」

「空中跳躍ですか!」

 

 すると、テンションが一気に上がったロクサーヌの声がリビングに響き渡る。

 

「はい。鯉のスキル結晶を防具に融合すると空中制御というスキルが付き、空中で動きやすくなるのだそうです。そして、コボルトのスキル結晶と一緒に融合した場合は空中制動というスキルになり、着地までの間に少しだけ移動できるようになるみたいです」

 

 なんで水生生物である鯉のスキル結晶でそんなスキルが付くんだ?

 水面をジャンプする様子からか?

 それとも鯉のぼりや、滝を登ってそのまま天へ至り竜になるという登竜門の故事が関係しているんだろうか?

 

 この世界には地球の神話や伝承の影響がそこかしこに存在している。

 やはり、地球を基に何らかの知性体が作った世界なのかもしれない。

 

 

 

 考え込んでいると、ロクサーヌから声を掛けられた。

 

「とても素晴らしいスキルです! ご主人様! パーティーの戦力強化を図るため、絶対に入手するべきではないでしょうか!」

 

 ロクサーヌさんや。パーティーの戦力強化ではなく、君のおもちゃとして必要だって顔に書いてあるんですが?

 

 ……原作のロクサーヌは迷宮の階層を上げたがることはあっても、こんな風に物を強請ることはなかったはずだ。

 わがままを言っても大丈夫だという気安さと、こんなことを言っても嫌われるはずがないという俺に対する信頼があるのだろう。

 原作とは違う自分たちだけの関係を築けているようで、それがたまらなく嬉しく、彼女への愛おしさが湧き上がる。

 

 満面の笑みを浮かべている彼女につられ、口角が上がっていることを自覚しながら答えた。

 

「そうだね。これがあればロクサーヌの動きに磨きがかかりそうだ。絶対に入手しないといけないね」

「はい! ご主人様、ありがとうございます!」

 

 ロクサーヌはさらに輝きを増した笑みを浮かべ、感謝の言葉を口にする。

 それに頷きを返し、セリーと目を合わせながら告げた。

 

「セリー、ありがとう。君のおかげで有用なスキルを知ることが出来た」

 

 感謝の言葉を述べると、花が綻ぶような笑みが彼女の顔を彩る。

 

「お褒めの言葉をいただきありがとうございます。私はご主人様のお役に立てていますか?」

「もちろん。セリーには鍛冶師としてだけではなく、その知識にも助けられてばかりだ。これからもよろしくね」

「はい! 調べ物は私におまかせください!」

 

 こんなに喜んじゃって。本当にかわいいなぁ。

 ロクサーヌもその様子を微笑ましげに見守っていた。

 

 俺は田川歩。同じ過ちを繰り返さない男。

 ロクサーヌだけではなく、セリーのことも大切にしていかなくては。

 

 

 

 和やかな雰囲気の中、セリーが続きを話し出す。

 

「探していたもので確認できたのはこの三つだけでした。レベル補正無視、レアドロップ率二倍、スキル結晶ドロップ率二倍、最大HP二倍、最大MP二倍については何も手がかりが得られませんでした」

 

 うーん……。これらについてはボーナス装備専用のスキルなのかもしれない。

 あ、いや、最上位種のスキル結晶で付く可能性もなくはないか。

 まあ、今は情報を得る手段がない。いずれ帝国解放会に加入したらそこの図書館で探してみよう。

 ……セリーが。

 

 

 

 彼女は調べることが出来たスキル結晶を、すべて書き写してくれており、今まで把握していなかったものだと、蜘蛛のスキル結晶で敏捷上昇。木人のスキル結晶で器用上昇。豚のスキル結晶で土属性。牛人のスキル結晶で精神上昇。ゴーレムのスキル結晶で堅牢。ハーブのスキル結晶で状態異常耐性が付くとのことだった。

 

「セリー、ゴーレムの堅牢っていうのはどういうスキル?」

「このスキルのついた装備品は壊れにくくなるといわれています。コボルトのスキル結晶と一緒に融合した場合は堅固というスキルで、さらに壊れにくくなるようです」

 

 マジか! 迷宮最後のボスは装備品を破壊する能力があるという話だ。

 しかし、このスキルが付いていればそれに対抗できるんじゃないか?

 

 そして、少し気になったことがある。

 

「そのスキルと身代わりスキルを二つ付けた場合はどうなるの?」

「申し訳ありません。それについては情報がありませんでした。おそらく、そんなことを試した者がいないのでしょう」

 

 あー……。まあそうだわな。

 他の者は同じ装備品にスキルを二つ融合するだけでもハードルが高い。

 しかも、それを試すためには致命的な攻撃を受ける必要があるのだ。俺たちだってそんなことを試す気にはならない。

 

 しかし、有用なスキル結晶であることは間違いない。こいつも買い注文を出しておこう。

 

 

 

「それじゃあ、ルークに買いを出すスキル結晶について整理してみよう。今買いを出しているスキル結晶は、えーっと……。ヤギとはさみ式食虫植物は取り下げたから……」

 

 ヤベー。数が多すぎてすぐには出てこない。

 

「コボルト、油脂植物、牛、ウサギ、芋虫、トロール、貝、スライム、カエル、サイクロプス、鳥の十一点ですね」

 

 悩んでいると、セリーがスラスラあげていく。

 

 よくそんな風にパパっと出てくるなぁ。頭の良い人ってのはすげーわ。まさにさすセリだ。

 

「それじゃあ、明日追加するものについてだけど、竜と亀、そして鯉のスキル結晶は確定だ。あとはゴーレム、ハーブにも買いを出しておきたい」

 

 そう言って二人を見ると頷いてくれる。

 

「それから最上位種のスキル結晶は滅多に出品されることがないため、欲しいと思ってもすぐには手に入らない。セリーが隻眼になったときのため、今のうちから買いを出しておこうと思うんだけど、どうかな?」

 

 問いかけてみると、二人はそれについて考え始めた。

 

 でもまあ、どんなに甘く見積もったところで、オークションで入手出来るのは精々七十七階層までに出現するボスの物までだろう。

 七十八階層からは魔物の強さが上がるため、そこまで行けるパーティーがそうそういるとは思えない。

 仮にいたとしても、クソみたいなドロップ率を乗り越えて手に入れたスキル結晶なのだ。そう簡単に手放すはずがない。

 

 それに、チートジョブである英雄を持っていた初代皇帝でさえ、九十一階層までしか到達していないのだ。つまり、彼が倒したボスは九十階層の亀系の最上位種までということになる。

 おそらく、初代皇帝のパーティー以外で、八十九階層以降のボスを倒した者はいないだろう。

 となると、それ以降に出現する最上位種のスキル結晶をオークションで手に入れるのは絶望的だ。

 

 

 

 ……やはり、自引きを狙うしかないか。

 

 かなり厳しいことになりそうだが、希望がないわけでもない。

 ウェブ版の特別編でミチオはソマーラの村へ行き、彼とティリヒの間にできたであろう子供に、攻撃力五倍のスキルが付いた、いかりのシミターを渡している。

 おそらくこれはサイクロプスの最上位種からドロップしたスキル結晶を融合しているはずだ。

 なぜシミターにそんな貴重なスキル結晶を融合したのかは不明だが、彼が前人未到の階層へたどり着いていることは想像に難くない。

 なら、同じ能力を与えられている俺にもそれは可能なはずだ。

 しかも、俺にはスキル結晶ドロップ率二倍の付いたドラウプニルというボーナス装備もある。きっとなんとかなるさ。

 

 ただ、そんな階層へたどり着くには、どのくらいの月日が必要なのか想像もつかないが……。

 

 

 

 三人で考え込んでいると、セリーが疑問を口にする。

 

「最上位種のスキル結晶を求めていることを知られてしまえば、余計な詮索を受けるのではないですか?」

「俺は以前ハイコボルトのスキル結晶を購入しているからね。既にこの情報を流されていて、詮索の対象となっていたとしてもおかしくない」

 

 それを聞いたロクサーヌは目を細めながら言葉を発した。

 

「ご主人様の情報を言いふらすなど許してはおけません。いずれ報いを受けさせるべきでしょう」

「そうですね。仲買人に舐められるわけにはいきません。そんなことをしたらどうなるか教え込むべきです」

 

 物騒なことを言ってんなぁ。

 

 君たち、まだそうと決まったわけじゃないんだから、滅多なことを言いなさんな。

 それに、もしそうだったとしても、奴にはまだまだ働いてもらわなければならない。お仕置きは程ほどにしておきなよ?

 

 

 

「それじゃあ、最上位種のスキル結晶にも買いを出すことにして、二人はその他に必要だと思うものはある?」

 

 その言葉を聞いて彼女たちは再び考え出す。

 そして、程なくしてセリーが口を開いた。

 

「正直なところ確実に融合が成功するので、すべてのスキル結晶に買いを出しておきたいくらいなのですが、それだと際限がなくなってしまいます。ご主人様がおっしゃったものだけでいいのではないでしょうか?」

「そうですね。他についてはそれらのスキル結晶が揃ってからでいいと思います」

 

 確かにその方がいいか。

 それに、安い出物の落札も頼んでいるのだ。思いがけず手に入ることもあるだろう。

 

 懸念事項としては、コボルトのスキル結晶だよなぁ。

 芋虫を除き、すべてコボルトと一緒に融合を行いたい。

 しかし、ただでさえ数が足りない上に例の仲買人と協定を結んでしまっているため、入手できる数が少なくなるだろう。

 どうしたもんかなぁ……。

 

 

 

 あっ。何もクーラタルの仲買人にこだわることはないんじゃないか?

 帝都や他の都市の商人ギルドに所属している仲買人へ依頼するのはどうだろう?

 それならコボルトだけじゃなく、他のスキル結晶についても入手機会が増えるはずだ。

 これはかなり良いアイデアな気がするぞ。

 よし。彼女たちに確認してみよう。

 

「ロクサーヌ、セリー。良いことを思いついたんだけど、聞いてくれる?」

「はい。なんでしょう?」

「どのようなことですか?」

 

 こちらを見つめている二人に、グッドアイデアを開陳する。

 

「いまスキル結晶についてはすべてルークを通して注文しているでしょ? だけど、それだとコボルトのスキル結晶を入手できる数に限りがある。なので、他の都市にある商人ギルドに所属している仲買人にも買いを出そうと思うんだ。それなら、たくさん手に入る上に、クーラタルのオークションとは違うものが出品されるから、求めているスキル結晶が手に入る確率が上がるはず。このアイデアはどうかな?」

 

 内心で自画自賛しながら告げたところ、ロクサーヌから声が上がる。

 

「なるほど。それならスキル結晶が手に入りやすくなることでしょう。そのようなことを思いつくなんて、さすがご主人様です」

 

 ハハハ。面映ゆいではないか。そう褒めるでない。

 

 

 

 二人で盛り上がっていると、セリーが苦々しい表情を浮かべながら口を開いた。

 

「ご主人様。複数の仲買人に取引を持ち掛けることはタブーとされています。それが露見してしまえば、禁を犯したとして今後の取引に支障をきたすでしょう。また、彼らは広範囲で連携を取っているため、他の者へ依頼を行えばその情報はすぐにルーク氏へ届くと思われます」

 

 あー……。仲買人は談合、カルテルなんでもござれの、反社一歩手前な奴らの集まりだもんなぁ。

 縄張りを守るため、そんなことを許すはずがなかったか。

 

「それじゃあ、やめておいたほうがいいね」

「はい。それがいいと思います。どこまで信用できるか分かりませんが、他の都市の仲買人と融通し合うこともあるという話ですので、ご主人様の求めている物については他都市の者に照会をかけているはずです」

 

 ふむ。取引相手をがっちり囲い、そいつからの利益は契約している仲買人が独占するというわけだな。

 

「ですが、取引相手を代えることについては問題ないはずですから、彼に不満があれば取引を打ち切って別の者に代えてしまうのも手です」

 

 二股状態がアウトなだけで、別れた後に別の人と付き合うことはオッケーみたいな感じだろう。

 セリーの説明に納得していると、ロクサーヌが呟いた。

 

「そうですね。あまりにも目に余るようなら早めに切っておくべきでしょう」

 

 ルーク……。うちの娘たちの中で、お前の評価がやべーことになってんぞ……。

 

 

 

 スキル結晶についての話が終わったので、次の話題へ移る。

 

「装備品の製造については何か分かった?」

「はい。時間が足りなかったため、すべてを書き写すことはできませんでしたが、近々手に入りそうな素材については確認しています。それに、今ある素材だけでも製造できる物も見つけました」

 

 ほう。そんなのがあったのか。

 

「今あるものだと、どんな装備品が作れるの?」

「サンダルとバンダナ、それから皮のグローブです。ただし、どれも売却額が低いため、これらを作るより、今まで通り皮の鎧や皮のジャケット、そしてダガーを作った方がいいでしょう」

 

 今更感のあるラインナップだもんなぁ。ぶっちゃけ、今後も作ってもらうことはないだろう。

 サンダルが必要になったとしても店売りで四十ナール、三割引が効くとたったの二十八ナールだ。

 それなら別の装備品を作り、それを売却した上でサンダルを店から買った方が得だろう。

 

 

 

 その他については製造に必要な素材を入手したときに教えてもらうとして、次は魔物についての報告を受ける。

 

「申し訳ありません。時間が足りず、二十二階層の魔物までしか書き写すことができませんでした」

 

 彼女の手元にあるパピルスには魔物の特徴やドロップアイテム、それにスキル結晶についてびっしり書き込まれていた。

 一生懸命取り組んでくれたんだな。

 

「スキル結晶や装備品の製造についても調べていたんだ。十分な成果だよ。セリー、本当にありがとう。君が仲間になってくれて本当に良かった」

「こんなにたくさん書き写すなんて大変だったでしょう。とても頑張ったのですね」

「ご主人様。ロクサーヌさん。ありがとうございます……。働きを認めてもらえるのがこんなに嬉しいことだったなんて……。本当に私は幸せ者です……」

 

 俺たちの言葉に感極まったのか、彼女はうつむいてしまう。

 すると、隣に座っていたロクサーヌがその小さな体を抱きしめ、ゆっくりと撫で始める。

 

「ご主人様も私も、あなたが一生懸命なことはわかっています。セリーは偉いですね」

「はい……。ありがとうございます……」

 

 ロクサーヌの声は優しさにあふれており、それを聞いたセリーから感謝の言葉が漏れた。

 

 二人の様子を見守りながら考える。

 

 俺が今幸せなのは彼女たちがいてくれるおかげだ。これからもこの生活を守るために努力し続けなくてはならない。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv39 英雄Lv34 魔法使いLv38

装備 サンダル 身代わりのミサンガ

 

BP振分 残BP:1

キャラクター再設定:1

サードジョブ:3

必要経験値二十分の一:63

詠唱省略:3

ワープ:1

鑑定:1

ジョブ設定:1

MP回復速度二十倍:63

 

所持金:1,066,659ナール

 

春の37日目

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