異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

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137 指輪

 

 

 

 

 

クーラタルの迷宮十九階層

ボス待機部屋

 

 

 

 

 

 

 どうしても避けられない戦闘が数回発生したものの、無事待機部屋へたどり着きセリーからボスの情報を伝えられる。

 

「ロートルトロールのボスはロールトロールです。力が強く通常攻撃も注意が必要ですが、時折繰り出す強烈な攻撃を受けると大きなダメージを負ってしまうでしょう。他にも転がりながらの攻撃や、雷魔法といったスキルも持っています。この魔法を受けると麻痺することがありますので、誰かが麻痺した場合は無事な人が速やかに抗麻痺丸を使用してください」

 

 原作を読んでいたときから思っていたが、こいつは第二ランクのボスの中では飛び抜けて強いよな。

 雷魔法は耐性をつけることができず、食らってしまえば麻痺する可能性があるなんてヤバすぎだ。

 その上クリティカル持ちとか恐ろしすぎるだろ。

 麻痺ったところにクリティカルをもらった場合、下手をすれば死にかねん。

 

 迷宮によっては四十五階層以上でこんなのがまとめて六匹出てくる可能性があるんだろ?

 キャラクター再設定もなしにそんなところへ行くなんて頭がどうかしてる。

 

 帝国解放会に所属している奴らはそれをクリアしてんのか……。ほんま恐ろしいで……。

 というかケヴィンやアンドレアもそうだよな。あいつら生き急ぎ過ぎだぞ……。

 

 

 

 命知らずな野郎どもに戦慄しているとセリーが説明を続ける。

 

「それからロールトロールが残すアイテムは鉄です」

 

 おお! 鉄だ! セリーが製造を行うためにもここでボスマラソンをするのもありかもしれない。

 

「ここのボス部屋を周回して鉄を集めるか?」

 

 彼女に確認したところ困ったような表情で答える。

 

「鉄製の装備品を作る場合、革や燃料である木炭が必要となります。クーラタルの迷宮だと木炭は二十階層のラブシュラブのレアドロップで、革も二十七階層のシザーリザードのレアドロップとなるため今すぐに製造を行うことは出来ません。急いで集める必要はないでしょう」

 

 へー。原作では出てこなかったが鉄の製造にはそんなのが必要だったのか。

 それなら彼女の言う通り急ぐ必要はないな。

 

 ボーナスポイントの振り分けを行う際に確認するとセリーのレベルが上がっている。

 しかし、17だとまだレベル補正が働かない。

 なるべく彼女が攻撃を受けることがないように気をつけなければ。

 

 レベルが上がっていたことを伝え喜びを分かち合ったところでロクサーヌから声が掛かる。

 

「ご主人様。そろそろ夕方になります」

 

 んー。もうそんな時間か。それじゃあボス戦で終了だな。

 

 この後の予定を伝えボス部屋へ続く扉の前へ移動する。

 

 今から突入しまーす。

 

 

 

 

 

クーラタルの迷宮十九階層

ボス待機部屋

 

 

 

 

 

 これまでの必勝パターンを踏襲しオーバーホエルミングからのダブルアタックでマーブリームを斬り捨てた。

 そして、スローモーションのなかロクサーヌにあしらわれている、毛むくじゃらのおっさんの背後から襲い掛かる。

 ラッシュとスラッシュを乗せたデュランダルで斬りまくっていたが、時の流れが元に戻ってしまう。

 そして、その瞬間に奴の足元が輝き出す。

 

 不味い! スキル攻撃か!

 

 しかし、横からセリーの槍が突き込まれ魔法陣の展開を阻んだ。

 

 ナイスキャンセル!

 

 よっしゃ! もういっちょいくぞ!

 

 リキャストタイムが明けたため、再度オーバーホエルミングを発動する。

 

 

 

 その後は完全に消化試合となりロールトロールはあっさり沈んでいった。

 

 正直、ボス戦についてはデュランダルと腕力二倍、それからオーバーホエルミングにダブルアタックを用いた高火力攻撃を叩き込むため、まったく危なげない立ち回りが出来ている。

 この階層でも問題なくボスマラソンが行えるだろう。

 

 やはり課題は雑魚戦だな。

 特にMP回復時の戦い方というか、両手剣の取り回しを磨かなければ。

 

 ……毎日の修行を頑張ろう。

 

 

 

 十九階層突破の喜びを二人と分かち合い、床に転がっている白っぽい金属の塊を拾い上げたが手のひらに収まるほどの量しかない。

 

 へー。割と小さいんだな。

 

 白身と鉄をアイテムボックスへしまい込み、ボーナスポイントの振り分けを済ませて次の階層へ続くゲートに身を沈める。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

 ドロップアイテムの売却と夕食の買い出しを済ませて自宅へ戻る。

 今回の買い出しでは仕込みのためにニンニクとローリエも購入しておいた。

 

 キッチンに食材をしまったところで物置部屋へ移動し装備品の製造に挑むことにする。

 腕装備六にポイントを振り出現したヤールングレイプルをセリーへ手渡した。

 

 彼女が装備をしている間にサードジョブに料理人、フォースジョブに賞金稼ぎを設定しておく。

 現在、手持ちのジョブで器用の上げ幅が大きいのはこの二つだからな。

 

 アイテムボックスからメノウと鉄を取り出しクローゼットへ入れてセリーに声を掛ける。

 

「それじゃあ指輪の製造に挑んでみようか。おそらくこれにはスロットが二つ付く可能性があるはずだ」

「そうなのですか? でも、指輪はメノウ一つで製造できる上に失敗しても素材を失うことはありませんからね。気負わず試すことができます」

 

 へー。燃料とかはいらないのか。

 

 その言葉を聞いたロクサーヌは微笑みながらセリーに話しかける。

 

「ふふ。そうなのですね。では、落ち着いて挑んでください」

「はい。ありがとうございます」

 

 彼女は両の手のひらを上に向けてくっつけ、そこにメノウを乗せると何度か深呼吸をした後に口を開いた。

 

「それではいきます」

 

 そして、目を閉じ詠唱を始める。

 

「今ぞ来ませる御心の、言祝ぐ蔭の天地の、防具製造」

 

 その途端に彼女の手から光が溢れ、それが収まると鉱石のあった場所に指輪が乗っていた。

 

指輪 アクセサリー

 

 出来上がったそれに鑑定を使用するがスキルスロットは付いていない。

 

 うーん……。まあ、確実に成功するわけじゃないしな。

 

 よーし、次行ってみよう!

 

 続けてお願いしようとセリーの顔を見ると少し苦しげな表情を浮かべていた。

 

「セリー! 大丈夫!?」

 

 それを見て思わず大きな声を上げてしまう。

 すると、彼女は笑みを浮かべ答える。

 

「消費MPが思いのほか大きかったため少し驚いただけです。問題ありません。ただ、防具製造はあと一回が限界でしょう」

 

 今まで製造してきたものに比べ、指輪を製造する際に消費するMPは大幅に増えているのか。

 普通の鍛冶師がレベル17で挑んだ場合、一回でガス欠になるのだろう。

 いや、たとえ発動したとしても鬱に陥るかもしれない。

 

 

 

「では、もう一度試してみます」

 

 考え込んでいるとセリーに声を掛けられた。

 

 おー。やる気満々だ。

 

「自分のMPと相談しながら無理はしないように注意してね」

 

 その言葉を聞いた彼女は嬉しそうな笑顔で答える。

 

「お気遣いありがとうございます。あと一回なら問題ありません」

 

 まあ、本人が大丈夫だと言っているんだ。頑張ってもらおう。

 

 

 

 メノウを手のひらに乗せた彼女へロクサーヌが声を掛ける。

 

「セリーなら大丈夫です。頑張ってください」

「はい。ロクサーヌさん、ありがとうございます」

 

 言葉を交わすと表情を引き締めて詠唱を開始した。

 

 

 

 よし。出来上がった指輪を鑑定だ。

 

指輪 アクセサリー

 

 マジか……。

 器用のパラメーターがスロットの発生率に影響を与えていることは明らかだ。

 ミサンガのときはセリーの鍛冶師も俺の英雄も今よりずっとレベルが低かったし、器用が上がるジョブを複数つけたりもしていない。

 だが、それでもヤールングレイプルを装備していればスロット付きがポコポコ出来上がっていた。

 下振れをしているだけならいいんだが、もし装備品の性能が上がるとスロットが付き難くなるというなら大問題だ。

 バフを盛りまくった状態でこれなら今後どうなってしまうのだろう……。

 

 

 

 いやでも、まだセリーのレベルが低いため器用の基礎パラメーターが低く、五倍になってもそれほど高くなっていない可能性もあるか。

 今後、レベルアップによってパラメーターが上がりさらにそれが五倍されたなら、加速度的に高まっていくことが予想できる。

 まだまだサンプル数が少ないため確実なことはいえないが今後の経過を注視しよう。

 

 

 

「ご主人様……」

 

 思索に耽っているとセリーがおずおずと話しかけてきた。

 

「ん? どうしたの?」

 

 問いかけたところ彼女は躊躇いながら口を開く。

 

「あの、製造した指輪にスキルスロットは……」

 

 ああ。それは気になるよな。

 俺は今までスロット付きができたらすぐにその喜びを伝えていた。

 しかし、今回はそれをしていない。この状況から結果を察しているのだろう。

 

「残念ながら付いていなかった」

「そうですか……」

 

 落ち込んだように言葉を漏らした彼女へロクサーヌが声を掛ける。

 

「セリー、大丈夫ですよ。たとえ失敗したとしてもご主人様がすぐに成功へ導いてくださいます。落ち込むことはありません」

 

 えっ? 俺?

 

 それを聞いた彼女は表情を引き締めて口を開く。

 

「そうですね。ご主人様ならきっと何とかしてくださるでしょう。私はそれを信じて挑み続けるだけです」

 

 待て待て。君たちの俺に対するその信頼はなんなんだ。無理なものは無理だぞ。

 

「ご主人様、よろしくお願いします」

「セリーを助けてあげてくださいね」

 

 あ、はい。

 

 

 

 庭へ出て今日の修行を開始する。

 我らがお師匠様はこの後の魔法を使った修行が待ちきれないのか、いつも以上に気合が入っておられた。

 俺とセリーの体と得物を足場にピョンピョン跳ね続け、その動きをまったく捉えることができない。

 強敵(ロクサーヌ)との戦闘経験を積み俺たちのコンビネーションもそれなりのものになっているはずなのにそれが一切通用しない。

 

 

 

 何度も地面に転がり、その度に手当てを掛けて戦闘へ復帰し続ける。

 しかし、彼女の強烈な攻撃を食らい、とうとうセリーが頽れた。

 

「セリー!」

 

 思わず声を上げてしまうがそれを聞いたロクサーヌが口を開く。

 

「ドワーフは頑丈なのであの程度は何でもありません。さあ、次はご主人様の番です」

 

 魔王か君は。

 いくら何でも戦力差が絶望的すぎやしませんかねぇ。

 

 何とか隙を見つけるためになるべく動かず彼女の様子をジッとうかがう。

 だが、ものすごい速さで接近されて木剣をぶち込まれた。

 

「隙を探すのもいいですが動きを止めてはいけません。それではただの的です」

 

 心をへし折られそうになるが、なんとか自分を奮い立たせロクサーヌに向かって走り出す。

 

 

 

「では、今日はここまでにしましょう。ご主人様もセリーも段々動きがよくなってきていますね。近いうちに攻撃を食らうかもしれません」

 

 絶対嘘だ。そんな余裕の表情で何を言うか。

 

 

 

 手当ての使い過ぎでレッドゾーンに突入していたMPの回復を行い、少し思いついたことがあるのでセリーにもデュランダルを振るってもらった。

 オーバーホエルミングの重ね掛けでトラブルが起きたせいで、魔法を用いた修業がうやむやのままだ。

 ロクサーヌもそれを気にしているのか、強請るようなことはなかったため、それをいいことになし崩し的にずっとスルーしている状態だ。

 しかし、アレを手に入れたことでそれほど危険はなくなるはず。

 

 フォースジョブをサードジョブに落とし遊び人を魔法使いと入れ替える。

 それが済むとジョブ設定とワープを外し余っている6ポイントのうち3ポイントを盾二に振って出現した装備品をロクサーヌへ差し出す。

 

「今日からは修業に魔法を用いようと思う。その強情の盾には精神上昇と魔法ダメージ軽減が付いているから魔法攻撃を受けても耐えることができると思う」

 

 その言葉を聞き、二人とも満面の笑みを浮かべている。どうやら楽しみにしていたらしい。

 ロクサーヌの持っていたダマスカス鋼の盾を預かると、受け取った強情の盾を嬉しそうに身に着け始めた。

 

「ご主人様、ありがとうございます」

 

 一頻り腕を振って盾の感触を確かめてから彼女が感謝の言葉を口にする。

 

 ただ、これだけでは不十分だ。身代わりのミサンガがあるので最悪の事態は起こるはずがないとはいえ、対策は万全にしておいた方がいい。そこでこいつの出番。

 アイテムボックスの中にはルークから受け取ったばかりの蝶とコボルトのスキル結晶が入っている。

 これを防具に融合し風耐性のスキルを付けるのだ。

 今後は風耐性の付いた防具を人数分揃え、修行中に使用する魔法は風魔法に限定しておこう。そうすれば事故が起こる確率を減らせるはず。

 セリーが装備しているオラクルダマスカス鋼グリーヴには魔法ダメージ削減が付いているから、風耐性はロクサーヌの装備品に付けた方がいいよな?

 

「ロクサーヌの装備品に蝶とコボルトのスキル結晶で風耐性のスキルをつけようと思うんだけど、どれに付けた方がいいと思う?」

 

 二人に尋ねてみると、尻尾を振りながら満面の笑みを浮かべた娘さんが口を開く。

 

「ありがとうございます! ですが、蝶ではなくカエルのスキル結晶を付けるのはどうでしょう? 跳躍力二倍があれば魔法をかわすことも可能なはずです」

 

 おいおい。なんちゅうことを言いなさるんだ。

 

 いや、確かにかわせるようになるかもしれないけど、いざというときのために魔法防御力を上げようって話題で出すアイデアじゃないぞ。

 セリーも戦慄の表情で彼女のことを見つめている。

 

 コボルトのスキル結晶が一つしかない状態でそっちを選ぶことは出来ない。申し訳ないが今回は我慢してもろて。

 

 それを伝えると彼女はかなりがっかりしていた。

 そのうち敏捷二倍と回避力二倍、それから跳躍力二倍に移動力増強。そして、空中制動のスキルが付いた装備品を用意するから我慢しておくれ。

 

 

 

 フォローによって彼女のテンションが戻ったところでセリーが告げる。

 

「風耐性をつけるならダマスカス鋼の額金の方がよいのではないでしょうか。竜革のジャケットの方が高価なので、そちらに安価な属性防御系のスキルを付けるのはもったいないです。良い装備品に良いスキルを付ければ売却したときの利益が大きくなりますからね」

 

 なるほど。ならその方がいいか。

 

 ボーナスポイントをいじって毘盧帽をセリーへ渡し竜皮の帽子を預かってアイテムボックスへしまっておく。

 そして、彼女がそれを身に着けている間に蝶とコボルトのスキル結晶を取り出すとロクサーヌも額金を外していた。

 

「では、セリー。お願いしますね」

「はい。おまかせください」

 

 俺たちから装備品とスキル結晶を受け取り何の躊躇もなくサクッと融合を成功させる。鑑定っと。

 

耐風のダマスカス鋼額金 頭装備

スキル 風耐性

 

「うん。問題ないね。それじゃあロクサーヌはこれを装備して」

「はい。ご主人様。セリー。ありがとうございます」

 

 セリーが耐風のダマスカス鋼額金をロクサーヌに渡し、毘盧帽を俺に返却する。

 それを受け取ったところで頭装備二まで落として出現した強情の革帽子を再びセリーへ差し出した。

 

「これには精神上昇のスキルが付いていて魔法ダメージが減るはずだからセリーが装備してね」

 

 それを聞いて嬉しそうな顔で口を開く。

 

「私にもボーナス装備をお貸しいただけるなんて思いませんでした。ご主人様、ありがとうございます」

 

 なるべく怪我のないようにしたいからな。

 

 

 

 俺の方も歩雲履を装備して準備完了だ。

 

「それじゃあオーバーホエルミングを用いた修行を始めよう」

 

 その言葉に尻尾をブンブン振っているお嬢様が大きな声で答えた。

 

「はい! どんな修行になるのかワクワクしてきますね!」

 

 君は興奮しすぎだ。少し落ち着きたまえ。

 

 

 

 彼女たちと向かい合いロクサーヌが動き出したところで念じる。

 

オーバーホエルミング

 

 その瞬間、二人の動きがスローモーションになり俺だけのスペシャルな時間が訪れた。

 一気に距離を詰めロクサーヌに向かってブリーズボールを放ちつつ地面を蹴って移動を始める。

 彼女からすれば不可視の球が超高速で迫る状況だ。ところが、信じられないことにそれを盾で受け止めてしまった。

 

 嘘だろ! おい!

 

 しかし、それでも衝撃はあったようで体勢を崩しているのが確認できる。

 動揺を抑えつつ大きく飛び上がってセリーの後ろに回り込み、さらに空中を蹴って背後から腰に手をやり思いっきり投げ飛ばした。

 そして、倒れているところに蹴りを入れておく。

 

 その間にロクサーヌがフォローに入るためこちらに迫ってきたため一旦距離を取った。

 

 

 

 この一連の流れでちょっと気になったことがある。

 オーバーホエルミング中に使った魔法は俺の主観に基づいた速さで飛んでいった。

 おそらく彼女たちからはとんでもないスピードに感じられたはずだ。

 

 魔法を使った後にオーバーホエルミングを使った場合はどうなるのだろう?

 今までも対人戦で使用したことがあるはずだが、あまり覚えていない。

 

 今後のことを考えて少し試してみるか。

 

 考え事をしている間にボーナスタイムが終わったため、リキャストタイムが明けたところでブリーズボールをロクサーヌへ放ち、再びオーバーホエルミングを使用する。

 いつものように俺以外全ての動きが遅くなり、それは撃ち出された魔法も例外ではなかった。

 

 目には見えない風の球が迫っているはずだが、彼女は少しだけ体を横にずらしてやり過ごすとこちらへ向かってくる様子が見える。

 

 避けてるじゃん! カエルのスキル結晶がなくてもちゃんと避けてるじゃん!

 

 接近戦を避け距離を取ってリキャストタイムが明けるのを待つが、いつまでたっても魔法を使用することができない。

 

 マジかよ!? 再使用時間も使用した状況を引き継ぐのか!?

 これはダメだな。魔法を使うならオーバーホエルミングの発動後にしないといけない。

 

 

 

 効果が切れたところでセリーの体力を回復させて仕切りなおすことにする。

 

 うーん……。リキャストタイムが延びるというデメリットはあるものの、魔法もスローモーションになるわけか。

 

 ……放った後に魔法を追い抜いて接近戦を行い、相手を誘導してそれにぶつけるといったスタイリッシュな戦闘も可能だな。

 いや、もちろん迷宮でそんなお遊びをするつもりはない。ないんだが、対人戦の魅せプとしては最高だ。めちゃくちゃかっこいい気がする。

 

 ん? あっ。人前で魔法を使うわけにはいかないんだから魅せプも何もないわ。

 

 いや? 待てよ? 魔法じゃなかったらいけるのか?

 剣を相手に投げたところでオーバーホエルミングを発動してそれを追ってダッシュ。そして、相手の目前でその剣を取って斬りつける。

 

 すげーかっこよくない?

 めちゃくちゃやってみたくなるわー。

 

 ……分かっている。何の意味もないことはちゃんと分かっている。

 それに、ロクサーヌには絶対通用しないだろうということも予想が付く。

 さらに、自分の投げた武器に追いつくなんて、いくらファンタジー的な世界だったとしても異常すぎるだろう。

 

 ……でも、やってみたくなるよなぁ。

 

 

 

 スタイリッシュな戦闘について考察を重ねていたところロクサーヌから声が掛かる。

 

「ご主人様! そろそろ続きをお願いします!」

 

 おっと。考え事をしている間にお嬢様が痺れを切らしたようだ。

 

 

 

 その後、模擬戦を続けオーバーホエルミング中に四発もの攻撃魔法を放つことが可能だと確認できた。

 

 原作ウェブ版ではリキャストタイムの関係上、オーバーホエルミングより効果時間が長いオーバードライブですら、魔法を二回発動することは不可能。

 だが、アニメ版ではそれがないかのように魔法を連発している描写があった。

 もちろん、使用する魔法やスキルによってクールタイムに差はある。

 ラッシュやスラッシュはほとんど感じないし、オーバーホエルミングも魔法に比べれば短い。

 しかし、アニメ版のミチオが乱発していたのはファイヤーボールだ。

 

 もしかしたら、この世界のそれはウェブ版や書籍版より短く、アニメ版より長いのかもしれない。

 あるいは、オーバーホエルミングの効果時間が原作に比べ長い可能性もあるか。

 いずれにしてもありがたいことには違いない。

 

 

 

 でもねぇ。超高速で迫る魔法の連発をものともせず、そのことごとくをかわしてしまった人がいるんですよぉ。

 本当にどうなってるんですかねぇ。

 

 セリーにはバカスカ当たっていたが、最後の方ではそのフォローに入れるほどの余裕っぷりだ。

 結局、今日の修行で彼女に対し魔法のクリーンヒットは一発もなかった。

 本当に戦力に絶望的な差があるなぁ……。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv42 英雄Lv37 魔法使いLv41

装備 硬革の帽子 頑強の竜革鎧 倹約の硬革グローブ 藕絲歩雲履 身代わりのミサンガ

 

BP振分 残BP:0

キャラクター再設定:1

サードジョブ:3

必要経験値二十分の一:63

詠唱省略:3

鑑定:1

盾二:3

頭装備二:3

足装備六:63

 

所持金:1,172,575ナール

 

春の42日目

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