異世界迷宮へ行ったなら   作:三星織苑

140 / 300
139 献上品

 

 

 

 

 

クーラタルの迷宮

二十階層

 

 

 

 

 

 今日も今日とて早朝から迷宮に入る。

 遂に二十階層での戦闘を試すことになった。

 問題ないようならここを狩場にし、無理な場合は即座に撤退だ。

 

「セリー。ラブシュラブについて教えてくれ」

「はい。ラブシュラブは低い木の魔物で主な攻撃方法は枝を飛ばす遠距離攻撃です。それから、スキル攻撃として鋭く尖った太い枝を飛ばしてくることがあります。食らってしまえば大きなダメージを受けるため発動させないように詠唱中断を狙いましょう。昨日お伝えしたように十九階層のロートルトロールと同じく弱点は火属性なので魔法による殲滅を狙えるはずです」

 

 ラブシュラブとロートルトロールの組み合わせならファイヤーストームのダブルスペルで片付くんだろうが、問題は他の魔物が混ざった場合だよなぁ。

 まあ、試してみるしかない。

 

「それから、残すアイテムは通常ドロップが板。そして、レアドロップが木炭でこちらは鉄や鋼鉄の装備品を製造する際の燃料となっています」

 

 原作には木炭なんてアイテムはなかった。

 それに、作中で鉄製の装備品を製造している様子も描かれていない。

 昨日、風呂場で聞いたこともそうだが、知らない情報がいっぱいで少し異なる世界であることを改めて思い知らされる。

 攻略本があるから大丈夫だなんて慢心しないよう気を引き締めなければ。

 

「ありがとう、参考になった。では、ロクサーヌ。今日からしばらくは待機部屋を目指すのではなくひたすら魔物を狩っていくので、近くの魔物へ案内してくれ」

「あ、はい。でも、念のために地図を見ておいた方がいいと思います。確認させていただけますか?」

 

 うん? んー。まあ、その方がいいのか?

 

 リュックから地図を取り出し彼女に差し出すと、それにさっと目を通しただけで返却してくる。

 

「もういいのか?」

「大丈夫です。全て頭に入れました」

 

 嘘でしょ? 段々すごくなってない? 前はもっとじっくり見てたよね?

 

「そ、そうか。では、魔物をガンガン狩っていくから案内を頼む」

「はい! おまかせください!」

 

 大きな返事に輝くような笑み。尻尾なんかブンブン振っちゃって、まあ。本当に嬉しそうですこと。

 

「では、ご案内します!」

 

 意気揚々と歩き出した彼女に続き通路を進む。

 

 

 

「この先に魔物がいます」

 

 程なくしてロクサーヌから声が発せられた。

 

 通路の奥から腰ほどの高さの植え込みのような木が二つのそのそと動いている。鑑定がないので定かではないがあれがラブシュラブなのだろう。

 そして、毛むくじゃらの爺さんが二体にかわいい子豚ちゃんが一頭。

 

 ラブシュラブって想像よりずっと小さいな。ニードルウッドより少し低いくらいの姿を思い浮かべていたわ。

 

「いっだっ!」

 

 魔物を見ながら考え込んでいると左肩に痛みが走る。

 

「ご主人様! 大丈夫ですか!?」

 

 しまった! ラブシュラブは遠距離攻撃持ち! ぼさっとしてはいられない!

 

ファイヤーストーム

ファイヤーストーム

 

 ロクサーヌは一瞬心配そうな表情をこちらへ向けたものの、魔法の発動を確認すると敵に向かって駆け出した。

 こちらに攻撃をさせないよう、ラブシュラブのヘイトを取っている。

 そして、ロートルトロールにも攻撃を加え合計四匹を引き付けていた。

 

 相変わらずとんでもねぇことするなぁ。

 

 セリーの方はというと俺の前に立ちこちらに向かってきたピッグホッグに槍を突き入れている。

 

 

 

 杖を構えながら彼女たちの様子を見守っていると、程なくして迷宮を照らしていた炎と共にラブシュラブとロートルトロールの体も消えていく。

 残っていたピッグホッグもリキャストタイム明けにウォーターボールを叩き込むと、その一発で片付いた。

 

 

 

「申し訳ありません。ご主人様を狙われてしまいました」

 

 戦闘終了後にしゅんとした表情でロクサーヌが謝る。

 

「いや、あれはぼーっとしていた俺が悪いのだからロクサーヌが謝る必要はない。今後は油断しないように気を付ける」

 

 というかノーモーションで遠距離攻撃は反則だって。あんなもん避けようがないじゃないか。

 対策としては確認次第、速攻で魔法攻撃を入れること。MP回復時にはデュランダルのHP吸収を頼りにゾンビ戦法といったところか。

 とりあえず二十階層でも問題なく戦うことができそうだな。

 

 

 

 それからはサーチアンドデストロイでひたすら魔物を狩っていく。

 俺とセリーはノーモーションから繰り出される遠距離攻撃という反則技を食らってしまうこともあったが、毎日の修行のおかげで戦意喪失することなく戦闘を継続できる。

 痛いのは嫌だが修行のときに受けるロクサーヌの攻撃に比べればたいしたことはない。

 修行の成果だと喜んでいいのかは微妙なところだが……。

 

 そして、我らが戦女神はというと、魔物の攻撃を一切食らうことがなかった。

 基本スペックに差がありすぎなんですよねぇ……。

 

 サンプル数が少ないため確実ではないが、木炭のドロップ率は二十分の一といったところだろうか。

 低く感じるものの、そこは数で補えばいい。

 しばらくはここでレベル上げを行う予定だから十分な量が集まるだろう。

 

 そして、ロクサーヌからパン屋が開く時間だと告げられ迷宮を後にした。

 

 

 

 

 

クーラタル郊外

アユムの家

 

 

 

 

 

「じゃあ納品に行ってくるから朝食の用意をお願いね」

 

 買ってきた食材をキッチンへ運び込み、二人に声を掛けて自室へ移動する。

 鍵の掛かるチェストから献上品であるタルエムの小箱を取り出す。

 蓋を開けてコハクのネックレスを確認してみるが、やはり俺には他との違いが分からない。

 

 これがロクサーヌと同じ価格……。どう考えてもおかしいだろ……。

 

 大枚をはたいたのだ。頼むからルティナへと続く道を切り開いてくれよ。

 

 物置から鏡を取り玄関へ移動してワープゲートを開く。

 

 

 

 

 

ボーデ

宮城

 

 

 

 

 

 ゲートから出るとエンブレムの番をしている騎士たちに声を掛けた。

 毎日のことなので彼らも慣れた調子で執務室に向かうよう告げられる。

 

 そして、執務室にはいつものようにハルツ公とゴスラーが待っていた。

 

「おはようございます。本日も鏡の納品にうかがいました」

「うむ。待っておったぞ。早速、確認をしようではないか」

 

 ほんと、この人はせっかちだわ。

 

 布を取り三人で鏡を確認したところ特に問題は見当たらない。

 まあ、当然だ。うちのロクサーヌとセリーが購入した物だからな。

 

 確認をしながら頭の中には疑問が浮かぶ。

 癖になっているため、つい公爵へ鑑定をかけたところ聖騎士のレベルは14だった。

 オリハルコンの剣にレベル制限があるのなら彼には扱えないはず。あれにはセリーが言っていた限定というものをかけているのだろうか?

 

 

 

 考え事をしている間に確認が終わり公爵はデスクチェアーに腰を下ろす。

 そして、ゴスラーが用意した金貨一枚と銀貨五十枚を受け取りアイテムボックスへしまい込んだ。

 

「では、アユム殿。明日もよろしくお願いします」

 

 いやいや。締めに入っているが今日はここからが本番だから。

 

「本日は公爵閣下へ献上したい品をお持ちいたしました」

 

 そう告げると二人の表情が引き締まる。

 

「献上品、ですか……。それには手続きが必要となるのですが……」

「かまわん。アユム殿なら滅多なことにはならんだろう」

 

 えっ!? マジ!? そういうもん!?

 

 いや、まあ、考えてみれば当然か。日本の市区町村長にだってそう簡単に物品を渡すことは出来ない。

 ましてや封建社会の公爵に献上品なんて何をか言わんやだ。

 ハルツ公があまりにもフレンドリーだったためそのことに思い至らなかった。迂闊だったなぁ……。

 

 ゴスラーは少し呆れたように公爵を見て口を開く。

 

「分かりました。それではアユム殿、一旦私が受け取りますので献上の品を」

 

 この人苦労してそうだよなぁ。面倒をかけてすんません……。

 

 リュックからタルエムの小箱を取り出しローテーブルの上に置くと、彼の顔に驚きの表情が浮かぶ。

 

「これは……、タルエムですか?」

 

 ふふん。どうだ、驚いたか。

 

「はい。ご紹介いただいたコハク商でネックレスを購入したのですが、それを入れるものがなかったのです。私の故郷では宝石を購入すると専用の入れ物が付属し、それもまた高級感を増す要素になっておりました」

 

 すると、話を聞いていた公爵が立ち上がりこちらへ近づいてくる。

 

「なるほど。白木の木目が実に美しい。間違いなく我が領のタルエムであるな。ほう。触り心地も良いではないか」

 

 彼はそのまま小箱を取り表面を撫でている。

 

 おいおい。献上品の手続きという話は何だったんだ。

 この人、普通にその辺の子供からでも物を受け取るんじゃないか?

 

 まあ、それは置いといて話の本題へ入ろう。

 

「コハク商へ製造方法を伝えて作らせました。今後は自由に取り扱ってよいと伝えておりますので、公爵家のお墨付きを与えた上で領地の特産品としてはいかがでしょう」

 

 それを伝えた瞬間、二人の顔が驚きに染まる。

 

「なに? 我が公爵家でこれを差配せよと? アユム殿は利益を捨てるつもりか?」

「いえ。私が扱ったところですぐに真似をされて同じものが出回ってしまいます。それなら信頼できるお方にお譲りした方がいいでしょう」

 

 すると、疑問を覚えたのかゴスラーが口を開く。

 

「それでも真似をされるまでは儲けが出るはずです。それをただで手放すなど……」

「わずかな儲けを手にするより、私にとってはこちらの方が利益になりますので」

 

 だから、ルティナを私めに! 何卒、何卒!

 

 内心で拝み倒していると公爵が笑い声を漏らす。

 

「であるか。しかし、これほどのものをもらっておいて何もなしではハルツ公爵家の面目が立たん。アユム殿への報酬を考えねばな」

 

 おっと。それだけではないのだよ。

 

「お待ちください。献上品は宝石入れのアイデアだけではありません。ゴスラー殿、それを開いていただけますか?」

 

 それを聞いたゴスラーはハルツ公からジュエリーボックスを受け取る。

 そして、ロックの外し方を伝えると蓋を開いた。

 

「ほう。たいしたものだな」

「はい。なんと見事な……」

 

 彼らにはそれの価値が分かるらしい。

 俺にはセンスがないんだろうか……。

 

「タルエムの小箱を献上する旨をコハク商へ伝えたところ、それ相応の格が必要だと言われこちらをご用意いたしました。公爵夫人にお使いいただければ幸いです」

 

 すると、公爵は少し呆れたように呟く。

 

「安いものではなかろうに……。その方はまこと豪胆であるな」

 

 何を言いなさる。こっちは血涙を流してのた打ち回り、その状態で清水の舞台から飛び降りるくらいの気持ちで用意したのだ。恩に着てもらわなければ困る。

 

 彼はゴスラーから小箱を受け取ってデスクへ戻りそれを置いた。

 そして、ベルを鳴らすとほどなくして以前の男が現れる。

 

「お呼びでしょうか」

「うむ。カシアを」

「はっ」

 

 公爵が伝えると彼はすぐに部屋を出て行った。

 

 遂にカシアを見ることができるのか……。

 一体どれほどの美しさなのだろう?

 

「コハクのネックレスは使う本人が確認した方がよかろう。それに、これほど見事な宝石入れなのだ。女性にも確認してもらわねばな」

 

 仰せのままにー。

 

 

 

 タルエムの小箱の取り扱いについてやコハク商人に世話になったことを伝えておく。

 魚心あれば水心。あの店主にはマジで世話になったからな。このくらいのことはしておこう。

 お墨付きの品を扱える店として繁盛するといいんだが。

 

 彼らは俺の故郷に対する興味を深めたようで、初めて会ったときよりもあれこれと質問された。

 しかし、答えられることが少ないため、虚実織り交ぜのらりくらりとかわす。

 この世界において民主主義の概念や科学知識なんて毒にしかならないだろうしな。

 

 

 

 そうこうしているうちにノックの音が響いた。

 

「閣下」

「うむ。入るがよい」

「失礼いたします」

 

 扉が開くとそこにはドレス姿の美女が三人。

 その中でも真ん中にいる女性は信じられないほどの美しさだった。

 

カシア・ノルトブラウン・アンセルム ♀ 29歳

魔法使いLv41

装備 身代わりのミサンガ

 

 間違いない。彼女がカシアか。

 なるほど。確かにミチオがガチ惚れするのも無理はないくらいの美人さんだ。

 

 ……でも、ロクサーヌとセリーの方が魅力的な気がするな。

 これは思い入れの差なんだろうか?

 

 彼女たち、特にロクサーヌについては、十数年間毎日妄想をしていたほど恋焦がれていた。

 この世界には美しい女性が多いし、その中でもカシアは群を抜いている。

 だが、ロクサーヌとセリーを初めて見たときほどの高揚感はない。

 なんというか、あの娘たちの存在は俺の心の中を揺さぶるのだ。

 彼女たちと共に過ごしたい、幸せにしたいと魂がそう訴えてくる。

 それは、他の女性を見て可愛いとか美人だとか思うのとはまったく異なる想いだ。

 

 俺は彼女たちと生きていく。願わくばミリア、ベスタ、ルティナについても同じ高揚感を抱きたい……。

 

 

 

 考え込んでいる間に三人が部屋に入り公爵が紹介を始める。

 

「紹介しよう。余の妻室のカシアだ。そして、こちらが冒険者のアユム殿だ」

 

 彼女はカーテシーというのだろうか? 片足を引き両手でドレスの裾を摘まんで頭を下げた。

 

 うわっ。谷間が見えるデザインのドレスなため、そこをバッチリ拝んでしまったぞ。

 うーん……。それはそれとして、やはり美人は目の保養になるなぁ。

 しかも、これほどの美人さんなんだ。視力だって上がっちゃうかもしれないぞ。

 

「お目にかかれて光栄です。アユムと申します」

 

 内心を表に出さないように気をつけながら頭を下げる。

 こんなことを思っているなんて知られたらとんでもないことになりそうだ。

 あ。女性は視線に敏感だというし、おっぱいに目がいかないようにしなければ。

 

「公爵からとても優秀だとうかがっております。災害救助の折には我が公爵領にご助力いただいたそうですね。ありがとうございます」

「もったいないお言葉、痛み入ります」

 

 顔だけを見るように気をつけながら挨拶を交わす。

 そして、彼女はデスクに置いてある小箱に目を止め尋ねた。

 

「そちらが?」

「うむ。タルエムで作られた宝石入れだ」

「拝見させていただきます」

 

 あの男には事情を説明してなかったよな? なんで話が通っているんだろう?

 この部屋の音が聞こえる場所があるんだろうか?

 

 どうでもいいことを考えていると、カシアは実にエレガントな動きでデスクに近づきジュエリーボックスを手に取った。

 

「まあ。なんと滑らかな触り心地。それに、とても美しい木目です」

「我が領が誇るタルエムを使っているからな」

「はい。見事なものです」

 

 彼女は息を漏らしうっとりと見つめている。

 

 あら、可愛い。こんな表情もするんだな。

 

「中を見てみるがよい」

 

 箱そのものに見惚れていたカシアに公爵が声を掛け、開け方が分からなかった彼女に得意げに教えていた。

 

 子供か。あなたは。

 

「まあ」

 

 中のネックレスを見たカシアから声が上がる。

 

「どうだ? 見事であろう?」

 

 彼女はそれを凝視しながら公爵の質問に答える。

 

「はい。一つ一つのコハクがどれも素晴らしい品質です……。これほどの品が出回ることなど滅多にないでしょう」

 

 ……価値が分かってないのは俺だけのようだ。

 ぶっちゃけ、五万くらいの物と並べられてどっちが高いか聞かれても分からない自信があるぞ。

 

 カシアは少し困ったような表情を浮かべ問いかけた。

 

「本当にこれを受け取ってもよろしいのでしょうか……。それに、宝石入れの権利も我が公爵家に譲渡するとのこと。アユム様のご厚意にどのように報いればよいのか……」

 

 すると、公爵が笑顔で告げる。

 

「問題ない。アユム殿には報酬として武器庫の中から好きな物を三つ選んで持っていってもらう。コハクのネックレスの分で一つ、宝石入れの権利の分が二つで合計三つだ」

「なるほど。それなら問題ありませんね」

 

 彼の言葉を聞いたカシアも笑顔で頷いていた。

 

 武器庫の中から好きなものを選べる? え? マジ? これヤバない?

 

 ハルツ公の言葉に動揺していると、彼はこちらに顔を向け言葉を続ける。

 

「とはいえ、目ぼしいものは使用者がいるため貸し出してある。それに、下賜したものもあるため、それほど貴重な武器が残っているということはない。だが、その方が迷宮討伐を目指す上で有益となるであろう。遠慮なく選ぶがよい」

 

 なんだよー。残り物かよー。残り物の中から三つを好きになんて、中身が選べる福袋的な感じじゃん。

 

 でもまあ、元々あると思っていなかった報酬だ。ありがたくいただいておくさ。

 それに、俺には鑑定という心強い味方がついている。掘り出し物が見つかる可能性だってあるかもしれない。

 

「閣下のお心遣いに感謝申し上げます」

 

 それにしても武器庫か……。

 RPGで鍵を手に入れてお城の宝箱を手にいれる場面を思いだす。

 よくいわれることだけど王侯貴族の宝物庫に侵入して財宝を持ち出すなんて、現実だとめちゃくちゃヤバいよなぁ。

 

 ……というか原作でカッサンドラ婆さんのところの宝物庫に入ったときにミチオも考えていたが、遮蔽セメントでフィールドウォークの対策をしていてもワープを使えば難なく侵入できてしまう。

 今回の武器庫にも……。

 

 いや、もちろんやらないよ? ゲームと違い現実でそんなことをするわけにはいかない。

 不法侵入や窃盗の罪もさることながら、遮蔽セメントが用いられた場所に移動できることを知られてしまったらお終いだ。

 

「うむ。ゴスラー」

「はっ」

「アユム殿を武器庫へ案内せよ」

「かしこまりました」

 

 感謝の言葉を述べるとハルツ公がゴスラーに告げる。

 

 この男のフッ軽っぷりよ。これで公爵だってんだからビビるわ。

 

「ん? ああ。すぐに選ばせなければ、貴重な武器を移したと口さがない者がうるさいのでな」

 

 俺が驚いていることに気が付いたのか理由を説明する。

 その際、カシアの後ろに控えていた侍女へほんの一瞬目を遣った。

 

 なるほど。おそらく彼女はミチオが冒険者だとセルマー伯に告げた女性なのだろう。

 セルマー伯はそれを聞いて貴族の居城に冒険者を入れるとは何事だとハルツ公に恥をかかせようとした。

 しかし、実際にはミチオは探索者だったため事なきを得る。もし冒険者になっていたら面倒なことが起こっていただろう。

 彼女に悪気があったのかは不明だが口が軽かったことは間違いない。公爵はこの時点でそれに気が付いていたのか。

 

 そして、報酬を後日にした場合にはあらぬ噂を立てられると。

 

 はー。やだやだ。貴族の世界はドロドロしていてやだねー。

 

 あ。でも、普通の中小企業勤めだったけど俺もあることないこと言われてたなぁ……。

 いや、普通じゃなくブラックだったわ……。

 

 

 

 内心へこみながら感謝の言葉を伝えるとゴスラーが声を掛けてきた。

 

「アユム殿。ご案内いたします」

 

 そう言って部屋を出る彼に続いて歩き出そうとしたところで美しい声に呼び止められる。

 

「アユム様。タルエムの宝石入れにコハクのネックレス。まことにありがとうございました」

「いえ。公爵閣下にはお世話になっている上に報酬までいただけるのです。お気になさらず」

 

 現時点ではそれほど世話になっていないが、今後はガチで世話になる予定だ。

 帝国解放会への勧誘とルティナの件。本当に頼むよ?

 

 頭を下げたカシアと笑みを浮かべた公爵に見送られ部屋を出る。

 あの……。ジッとこちらを観察している侍女が怖いんですが……。

 

 

 

 

 

田川 歩 男 18歳

探索者Lv42 英雄Lv37 遊び人Lv27 魔法使いLv41

装備 竜革の靴 身代わりのミサンガ

 

BP振分 残BP:0

キャラクター再設定:1

フォースジョブ:7

必要経験値二十分の一:63

詠唱省略:3

ワープ:1

鑑定:1

結晶化促進二倍:1

MP回復速度二十倍:63

 

所持金:1,187,409ナール

 

春の43日目

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